羽沢先輩がヤンデレ?ハッハッハ、御冗談を   作:コントラポストは全てを解決する

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12.雷ゴロゴロしどろもどろ

 千聖と秋のデート(feat.丸山)を過ごして早一時間。定番のお化け屋敷や祭りの焼きそば、体育館のミスコンを巡った一同。

 

 しかし、色々と回っては見たものの、今一盛り上がりに欠けていた。

 

「彩ちゃん、何か面白いことをしてちょうだい」

「無茶振りだよ……!」

「ほら、いつもの名乗り文句を千回繰り返すとか」

「なんの修行……?」

「秋もなにか頼んでみると良いわ。今なら何でも──秋?聞いているの?」

「……へ?あぁ、聞いていますよ。アヤ先輩が名乗り口上を千回やってくれるんですよね」

「この流れで聞いてることあるんだ……」

 

 撮れ高はあるが、いつもに比べればどこか静かな雰囲気。

 

 祭りなのに千聖達だけが盛り上がりに欠けている理由。

 

 その答えは単純、秋が静かすぎるからだ。

 

「秋、さっきからソワソワしてどうしたの?」

「い、いえ、その……見たことない天気だったので、少し怯えていたと言いますか」

「そういえば、今日はずっと空が暗いよね。雨は降らなさそうだけど……気分が上がらないなぁ」

「そうね。けど、こればっかりはどうしようもないわ」

 

 そう、諦めた様子で話を締めようとする千聖を前に、秋は閃いた様子で席を立つ。

 

「てるてる坊主、作りましょう。暗い雲をふっとばせるくらい、たくさんのてるてる坊主を」

「ふふっ、秋らしいわね。いいわよ、空が晴れるまでやりましょうか」

「良いの?千聖ちゃん、このあとだって予定が──」

「良いのよ別に。たまのワガママくらい受け入れてもらえるわ」

 

 秋との時間を遮るなんてありえない……と、内心で呟きながら、千聖はポケットティッシュを取り出してるてる坊主を作り始めた。

 

「手錠付きだと作りにくいですね。千聖先輩、これ外せないんですか?」

「無理よ。鍵はロケバスに置いて来たもの」

「あっ、なら私が取ってくれば」

「彩ちゃん?」

「……てるてる坊主作ります」

 

 千聖からの鋭いガンに気圧され、彩はいそいそとティッシュを丸めた。

 

「これ、番組としてはどうなんだろうね。面白いのかな?」

「さあ……?でも、出店を回ってた時よりは楽しいですし。俺は良いと思います」

「秋が良いなら私も良いわ」

 

 そんな駄々甘評価の千聖に、彩は不気味さすら覚えてしまう。これが恋の力。

 相手の矢印が別方向に向いてさえいなければ、彩も満面の笑みで応援できたのに。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 午後の天気は晴れ。しかし、現在はゲリラ豪雨か台風を疑うほどの曇り空。この地域でここまで天気が荒れるのは珍しい。

 そんな事を考えながら、モカは店で買ったあんパン5個を貪りながら、祭りで賑わう校舎内を歩いていた。

 

「あれ〜?パレオちゃんだ〜?」

「モカさん。こんにちは」

 

 パンをモグモグ貪りながら歩いていると、中庭のベンチで一休みをしているパレオを見つけた。心なしか疲れがたまっているように見える。

 

「大丈夫〜?はい、アンパンど〜 ぞ〜」

「えっ。い、良いんですか?」

「疲れには甘いものが一番だからね〜」

「ありがとうございます……」

 

 恐る恐るといった様子で受け取り、そのまま小さな一口でパンをかじるパレオ。少し気が和らいだ気がした。

 

「それで〜?浮かない顔してどうしたの〜?シュウくんとなにかあった〜?」

「いえ……なにかあったと言うか、何もないから何か行動をしようかなって考えて、足踏みをしているところです」

「お〜、大胆だね〜。まずはデートに誘ってみるとか〜?」

「あぁ、そういうのではなくて。最後くらいは何かしようって思っただけなんです。流石にノーアタックは情けないじゃないですか」

「……あぁ、パレオちゃんもわかっちゃってる感じか」

 

 最近のつぐみと秋を見ていれば分かる。流石にそろそろゴールインをすると。

 というより、1年間秋を取り合えていたのが奇跡に等しい。

 

「私もって……えっ、モカさんも秋さんが好きだったんですか?」

「まあね〜。3日で終わった気まぐれだったけど〜」

「悟っちゃった感じですか?つぐみさんには勝てないって」

「悟っちゃった感じだね〜。ず〜〜〜っと優しくされて、支えられちゃって、その気になっちゃってさ〜。でも、少し攻めたら無理だ〜ってなっちゃうんだよね〜」

「分かります。駄目って分かっているのに、歯止めが利かないんですよね」

「そうそう〜。つぐが好きなくせに、こっちへの気遣いも完璧でさ〜。罪なやつだよ〜」

「あはは。やっぱり皆、同じことを思うんですね」

 

『はぁ〜……』とお互いに間の抜けたため息を吐く。これから先、まともな恋愛が出来るのかと胸の内に不安が芽生える。

 

「まぁ、でも〜?つぐだったらしょうがないかなって思うんだよね〜。あたしが男だったら、絶対つぐに告ってるし〜」

「見るからに良妻賢母が似合そうですからね、つぐみさん」

 

 戦う前から負けてた恋バナで二人揃って笑ってしまう。あいにくの天気だが、心だけは晴れやかになった。

 

「はぁ……やっぱり、秋さんを誘うのは今度にしておきます」

「そうだね〜。そろそろ天気が荒れるだろうし〜。秋くんにつぐを預ける準備をさせないと〜。さてさて、つぐはどこにいるかな〜」

「生徒会室で日菜ちゃんといるそうですよ。なんでも、雷が来るーって怯えてパニックになっているそうです。助けて欲しいって日菜ちゃんからのメッセージが来てます」

「お〜、いつにも増して重症たね〜」

 

 雷嫌いで有名なつぐみでも、流石に来てもない雷に怯える事はしなかった。一体、どれだけ豪快な雷鳴が待ち受けているのだろうか。

 

 

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