羽沢先輩がヤンデレ?ハッハッハ、御冗談を   作:コントラポストは全てを解決する

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エピローグ.つぐみ先輩がヤンデレ?ハッハッハ、御冗談を

 

 つぐみと付き合い幸せ最絶頂を爆走する秋。しかし、一つだけ気がかりな事があったため、蘭達に連絡を入れた。

 

「で、なに。聞きたいことって」

「結局、つぐみ先輩はヤンデレでも何でもなかったわけじゃないですか?あらぬ疑いをかけたなら、ちゃんと謝らないと駄目だと思うんですよ。仲良し同士だからこそ、親しき仲にも礼儀を──」

 

 蘭とひまりにボコスカ殴られ、秋はその場に正座で直らされた。

 蘭の家なので周囲は気にしなくて良いのだが、人がいないゆえに蘭たちの圧がノイズなしで秋に降りかかる。端的に言うと怖かった。

 

「あんた……つぐが大人しくて良い子だったからなんとかなっただけなのに……わかってんの?」

「はい……」

「そうだよ!つぐじゃなかったら最低十回は刺されてたよ!!! 」

「はい……」

 

 過去一怒られた。内心納得できなかった秋ではあるが、これ以上殴られたくないので、全力で聞き手役に徹した。

 

「はぁ……それで、付き合ってからのつぐみはどう?秋の事だから不満はないだろうけど」

「はい、全く無いです。文句無しの幸せ最高潮ですよ」

「なんだか拍子抜けしちゃうね。女の子との接触禁止くらいは言われてると思ったのに」

「どこからどう見ても、そんな事をする人じゃないと思うのですが……。蘭先輩達の言ってるつぐみ先輩って、本当につぐみ先輩なんですか?」

「それ以外に誰かいる?」

「ほら、高一の夏に幽霊を見たって前に話してくれたじゃないですか。その類とか」

「だったら良かったんだけどね」

 

 蘭とひまりはため息をつく。幽霊の仕業であってくれたらどれだけ楽だったか。

 むしろ、蘭とひまりからすれば、つぐみを純情乙女として見続けられた秋の目を心配してしまう。

 

「ほんと、つぐのためだけに生まれてきたような男だよねー、秋って」

「褒めても何も出ませんよ」

「まあ、そのうち秋にも分かる時が来るよ」

 

 それでもなお秋はつぐみと一緒にいるのだろうけど。というか別れたら秋をシバく。

 

 なんて、少々物騒な事を2人が考えていた時、秋のスマホからアラーム音が鳴り響いた。

 

「あっ、もう時間か。すいません、そろそろ御暇しますね」

「なんか、思ってたよりも忙しそうじゃん。ちゃんと休めてるの?」

「そうだよ!これからはつぐの店だってたくさん手伝うんだし、身体は大事にしないと」

「あぁ、いえ。これはただの会話アラームですので」

「なにそれ?」

「えっと……確か、女の子と話す時は15分以内に話を終わらせるのがベスト……って、つぐみ先輩から教わって。だから、意識するようにしてるんです」

「……そっか」

「あはは……まあ、その、がんばってね」

「はい!」

 

 屈託のない笑みでつぐみに束縛されている秋に、哀れみを感じてしまった蘭とひまり。

 恋は盲目だからか、それとも躾けられるのに慣れている犬だからか。答えは神のみぞ知る。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 羽沢珈琲店バイト戦士第二号のつくし(第二号の座を賭けて秋とバトり中)は、つぐみと秋が付き合い出した事を先日知った。

 

 最初はただ純粋に祝福をしていたのだが、なにやら秋が女の子と接する時間を削るようで、それに伴いつくしとの会話時間も減るらしかった。

 それは、つくしからすれば死活問題……は流石に言い過ぎだけども、出来れば阻止したいくらいの問題だった。

 

 なので、先程バイト戦士予備軍に降格した秋(理由、バイトに遅刻したため)に、休憩がてら相談してみた。

 

「ねぇ、しゅうくん。これからもさ、しゅうくんに話しかけて良い?」

「えっ、良いけど。そもそも許可がいるものなのか……?」

「だ、だって、女の子との会話時間、減らさなきゃなんでしょ?」

「減らすと言うか、ちょうどいい時間に修正って感じだし、相手が嫌じゃなければ好きなだけ話して大丈夫じゃない?」

「ほ、ほんと!?」

「ほんとほんと。つぐみ先輩は御心の塊だから、そんな人と会話禁止ー!みたいな事は言わないよ。この間だって、れおなちゃんとモカ先輩を連れてパスパレ事務所に行ったけど、お咎めなんて1ミリもなかった。なんなら、事務所まで迎えに来てくれたくらいだし。束縛どころか俺が振り回してる」

「そ、そうなんだ……良かったぁ……」

 

 胸を撫でおろしたつくし。これからも秋とのいつも通りは続けられるらしかった。

 つぐみが昨日、秋にGPSを持たせたと言っていたので、てっきり束縛的な物かと思っていたのだが、どうやらつくしの勘違いだったようだ。秋本人も束縛はないと言っている。

 

「寂しかった?」

「いや、別に……ちょっと不安だっただけ、みたいな……」

「可愛い妹を持ててお兄ちゃんは嬉しいよ」

「いや、私が姉──ちょっ……な、撫でないで!」

「ハッハッハ、やっぱりつくしーはこうでなくっちゃね」

 

 ぷりぷり怒るつくしを見ていると、いつも通りの穏やかさを実感できる……そんな思いのこもった目を向けられたつくしは、子ども扱いにキレた。

 

 

 ◇

 

 

 とある休日の午後、パスパレ事務所にアポなしで特攻して来たつぐみの世話に、日菜が駆り出された。というより、つぐみが日菜を指名したのだ。

 

「日菜先輩、秋くんの周りから女の子を減らしたいんですけど、どうしたら良いですか」

「つぐちゃん……?目、怖いよ……?」

 

 まずはお前だ……と、セリフが続きそうな眼力を前に日菜はたじろぐ。

 

「シューくんと付き合えたのに、なんで前より重くなってるの?」

「籍を入れるまでが戦いなので」

「お、おぉ……そっか……」

 

 付き合う前にあった『秋を取られるかも』と言う不安は消え、今は『秋を取られるかも』と言う警戒を抱いていた。

 まさか、付き合う前より重さが悪化するなんて、この日菜の目をもってしても予想が出来なかった。

 

「とりあえず、そのレベルになっちゃうとあたしにも分からないかな。こう見えて初恋がシューくんだし」

「もしかしてまだ狙ってます?」

「ないない。それに好きになる前から、シューくんがつぐちゃんを好きなのは知ってたからね」

「でも、アプローチはしてたじゃないですか?」

「あたし、我慢が苦手だからね〜。それにさ、シューくんを取り合ってると、あたしの知らないあたし自身が見れるんだ〜。それがもう楽しくて楽しくて」

 

 事務用チェアに座りながらくるくる周り、日菜はつぐみと恋のバトルをしていた時を思い出す。

 なんとも刺激的で、才能だけではどうにもならない未知の体験だった。

 

「あたしさ、すご〜い負けず嫌いだったみたい」

「負けず嫌い、ですか?日菜先輩が」

「今まで勝負らしい勝負なんて出来なかったからね。でさ、初めて本気で何かを争って、それで負けて。とってもるんってした!」

「全部良い思い出って事ですか」

「うん!だから、シューくんはつぐちゃんに任せるよ。元々そう言う約束だしね」

 

 日菜にしてはやけに聞き分けが良い……と、内心失礼なことを考えながらも、一番の脅威が去った事につぐみは胸を撫で下ろした。

 

「まっ、つぐちゃんと別れたらあたしのところに来るだろうし、それまでは2人を眺めてるんってしてるよ」

「日菜先輩?」

「はっはっは、冗談冗談」

「その笑い方、秋くんもしてますけど、真似するほど好きなんですか?」

「良いでしょ。あたしの後輩」

「秋くんは私のです!」

「言うようになったね〜」

 

 以前のつぐみからは考えられない攻め方に、日菜はゲラゲラ笑った。

 本当に、秋と出会えて良かったと心の底から笑いが溢れ出る。つぐみからすればたまったものじゃないと思うけど。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 結局、日菜は秋を狙うのをやめただけで諦めたわけではなかったし、秋自身これからも女の子との付き合いは続ける気満々な様子なので、つぐみの胃が休まることはなさそうだった。

 

「ただいま〜……」

「おかえりなさい、つぐみ先輩」

「えっ……秋くん!?バイトの時間もうとっくに過ぎてるよ!?」

「あぁ、はい。それは承知しています。ただ、俺がここにいたくて残っていただけですので」

「そ、そっか……。あっ、無理してない?お店、ずっと任せちゃってたし」

「大丈夫です。つくしーとイヴちん先輩と一緒に乗り越えました」

 

 なんだか、正式に跡継ぎとして認められたような風格が秋から漂っていた。流石にこの話をするのは早すぎると、つぐみは自重し店の片付けを申し出る。

 

「そういえば今日、お父さんからここを継ぐ気があるのかと聞かれたんですけど──」

「えっ!?そ、そんな急に……。ごめんね、秋くん……お父さんには後で話しておくから……」

「あぁ、いえ。雑談のようなノリだったので、半分冗談かと」

「そ、そっか。秋くんの迷惑になってなくて良かったよ……」

 

 誰にも秋を渡さないけど、それはそれとして婚約の話を持ち出されると、つぐみは恋する乙女に戻ってしまう。

 

「つぐみ先輩って、将来はここを継ぐつもりなんですか?」

「ま、まぁ……たぶん、そうなるのかな……?一応、今の私の予定的には、そんな感じだけど……」

「お店の持ち主って、基本男ってイメージがあるんですけど、この場合ってどっちが店主になるんですかね」

「それは……確かに旦那様の方が店主になりそうな──」

 

 そこまで言いかけたところで、つぐみはバッと秋の方を見ながら口をパクパクさせる。

 

「い、いやいやいや!秋くん!まだそういうのは早いと思うな!ほ、ほら!私達まだ学生だし!」

「えっ。でも、プロポーズは俺からするって言いましたし、こういうのは早めに……」

「〜〜〜!ま、待って!少し待って!」

 

 顔が熱くなりすぎて爆発しそうだった。

 惚れた男が無垢な顔で自分に求婚してくるのだ。流石に乙女心が息吹いてしまう。

 

「ふ、ふぅ……しゅ、秋くん、結婚の話はもう少し後にしよう。私の心臓が持たない……」

「な、なるほど……でも、また俺を取られそうで不安になったりするんじゃ──」

「そこら辺の話は忘れて良いから!!!」

「わ、分かりました」

 

 あの日、どうしてあんな破廉恥な姿と卑しい言動を晒してしまったか……そんな葛藤がつぐみの中に溢れる。アレのせいで、秋の中のつぐみ像が愛の重いメンヘラ女になっている気がした。

 

「うぅ……ごめんね、秋くん……。めんどくさい恋人で……」

「つぐみ先輩がめんどくさいなら、世の人はみんな超面倒くさいってことになっちゃいますよ」

「秋くん、そういうところ直した方が良いよ」

「えっ。じゃ、じゃあ……つぐみ先輩ならめんどくさくても全然OKとか」

「この話に付き合ってる時点で女の子キラーなんだよ。秋くんは女垂らしの悪い男の子。浮気はダメだからね」

「ぜ、絶対しません!そ、それにほら、女垂らしだのなんだの言っても、結局は浮気相手になるほど好意を寄せてくる女の子が──」

「はぁ……」

「え、えぇ……?」

 

 あまりの危機感のなさにつぐみはため息を漏らしてしまった。ここまで来ると、日菜やその他の女の子達がかわいそうに思えてくる。

 

 

「本当に……そういうところだよ、秋くん」

 

 

 憂さ晴らしの勢いに任せて、初めてつぐみからキスをした。

 パチクリ瞬きをする秋を見ながら、盗聴器の解放を決意するつぐみ。

 

 冗談抜きに、荒上秋には躾が必要である。

 

 

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