片田舎の剣聖、TUBAMEを斬る。 作:you are not
組織票だとかヤラセだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
恐ろしい重圧を味わったぜ…
一閃。
ワイバーンの喉を正確に断ち切られ、刃は滑るように肉を裂き、鮮血が岩肌に跳ねた。
「数が多いな‥‥!」
霧の中、ベリルは剣を構えながらぼやく。その声音に焦燥はない。冷静に敵の数と位置を見極め、静かに息を吐いた。
周囲には魔法師団の団員たちが布陣し、次々と魔法を放っていた。炎が唸りを上げてワイバーンの鱗を焦がし、雷光が霧の帳を裂いて轟く。魔法と咆哮、爆発音と羽ばたきの音が入り混じり、戦場は混沌の只中にあった。
この霧は、ただの気象現象ではない。地脈のゆがみか、あるいはダンジョン内部の魔力漏れか。視界を遮る濃霧が、ワイバーンたちの突撃をいっそう凶悪なものにしていた。
ワイバーンの数は十数体。空を舞う者、地を這う者。彼らは無秩序に暴れているように見えて、実際には連携していた。空からの奇襲で意識を逸らし、地上からの急襲で仕留める。まるで、知性があるかのような動き。
それでも、ルーシーは冷静に指揮を取りつつ、自らも魔術を詠唱―――空間をねじ切る魔法でワイバーンの翼を叩き落とす。しかし、背後からの影に気づくのが遅れてしまう。
「後ろ!」
背後から迫るワイバーンに気づいたルーシーは振り返り、咄嗟に魔法を詠唱――する前に、その頭部が刎ね飛ぶ。
「まったく、世話焼きじゃのうお主は‥‥」
斬られたワイバーンの頭部が地面を転がるのを見て、すぐに状況を理解、ルーシーは肩をすくめて、背後に立つ男へと呟いた。ベリルは無言のまま、肩越しに視線を向けていた。
「護衛を依頼してきたのは、そっちだ。それに‥‥」
「それに?」
言葉を途切れさせ、ベリルは一拍置いた。
「‥‥ルーシーが傷つくのが我慢ならなかった。それだけだ」
その言葉に、ルーシーは目を丸くしたが、すぐに口元を緩める。
「‥‥わしを口説くには100年早いぞ、ベリル。」
「別に、口説いたつもりはないんだけどな」
軽口を叩き合いながら、二人は戦場へまた足を踏み入れる。
―――
戦闘は小一時間にわたって続いた。結果、ワイバーンたちは全滅するか、あるいは霧の奥へと退散していった。ベリルの呼吸はまったく乱れていない。ただ、周囲には屍の山だけが静かに横たわっている。
魔法師団は戦闘終了後すぐに調査体制に移行した。地形図を広げ、測量魔法を展開しながら、地脈のゆがみや魔物の巣の位置を記録していく。
やがて全ての調査が終わると、ルーシーは団員たちを集めて言う。
「収穫は充分じゃな。後は戻って報告するとしよう」
地形調査が終わった頃には、日が傾き始めていた。霧もやや晴れて、帰り道がはっきり見える。
「じゃあ、この辺で解散か?」
「そういうことになるの。」
その言葉を皮切りに魔法師団たちは山のふもとを目指し、行軍を開始した。
帰りの馬車の中。
なぜかルーシーの『向かい』ではなく、『隣』に座らされたベリルは、窓の外――夕暮れに染まる空をぼんやりと眺めていた。
「ベリル。ひとつ提案がある」
ふと、ルーシーが真面目な声で切り出す。
「来月――『スワロー』の討伐作戦が決行される予定じゃ。お主の名を、わしから国王に推薦しようと思っておる」
ベリルは、瞼の裏に焼き付いた黒き翼の残像を思い出す。あの刃が届かなかった瞬間を、繰り返したくはなかった。
「……望むところだ」
ベリルは静かに、しかし強く告げる。
右手に力が入る。握りしめた拳が小さく震えていた。
「今度は、仕留める」
「――なら、来月までに備えておけ。今回の相手は、冗談抜きで国を揺るがすぞ」
夕焼けの赤が、二人の横顔を照らしていた。
ベリル「ルーシー(みたいな綺麗な女性)が傷つくのが我慢できない」
すまんな、クソボケ発言だったんじゃよ、これ。ルーシー個人を案じるより、女性なんだから、お肌大事にしなさい的な考えです。わかり辛くて済まぬ・・‥