片田舎の剣聖、TUBAMEを斬る。   作:you are not

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ちょっと親戚の子の子守させられて、日曜日0時に投稿できませんでした。


讃えられし敗者

 

 スワローの討伐から三日後。

 

レベリス王国の首都バルトレーンでは、城の広間を借り切っての祝賀会が開かれていた。王家主催のこの場には、スワロー討伐作戦に参加した全戦力が招かれている。

戦果を挙げた騎士、術士、冒険者、すべてに報奨と名誉が与えられる――当然、その中心には、あの怪物を討った男の姿があった。

 

―――ベリル・ガーデナント

 

無骨な剣を握った片田舎出身の剣士は、壇上で国王の前に立ち、金の杯を授けられていた。

 

「汝の剣は王国を守り、交易の未来を切り開いた。その武勲、誠にあっぱれである」

 

王の言葉に、会場は万雷の拍手で満たされた。祝賀の酒が回り、楽士の奏でる音楽と、参加者たちの談笑が広間を彩っていた。

 

「ベリル殿! あんたがいなきゃ、この勝利はなかった!」

「まさか、あのスワローを一対一で斃すなんてな……英雄ってのは、やっぱ違うな!」

乾杯のたびに、その名は何度も叫ばれた。騎士たちは彼の剣技を称え、冒険者たちは肩を叩き合って笑った。

 

その中央で、ベリルは笑顔を作りながらも、どこか所在なげに杯を手にしていた。

 

(違う‥‥)

 

―――あんなもの勝利じゃない。

 

たしかに、俺はTUBAMEと対峙し、生き残った。奴は俺の剣の前に、確かに伏した。……だが、それは戦いの果てではない。老いと時間の果てに──ただ、死んだのだ。

 

あの瞬間、確かにTUBAMEは満足していた。

 

だが――俺は、まだ、満たされていない。

 

それがどこか欲望の箱に穴が開いたような、置き去りにされたような感覚だった。名誉の言葉も、称賛の杯も、栄誉の証も、ベリルの中には何一つ、降り積もらない。

 

こんな風に周りから称賛されるようなことじゃない。ここが、王城でなければ、酒を投げ捨てて

 

―――斬りかかるところだ。

 

「?‥‥ッ!?。」

咄嗟に出てきた思考をベリルは頭を振って払いのけて、杯の中の酒を一気に喉に押し込んだ。

 

 

―――

 

 

音楽と笑い声が鳴り響く祝賀の会場を離れ、人々の視線から逃げるように、少し外れたテラスでベリルは一人、夜風に当たっていた。

 

杯は手元になく、誰も彼に話しかけるものはいなかった。

 

 

―――今日は、月が綺麗だ。

 

ベリルはふと、月を見上げる。その満月の輝きは、どこかあの日見た師匠の剣技を思い出させた。自分は、まだあの剣に届いていない。至るための相手もいない。

 

―――ならばこそ、斬らなければならない。

 

一切合切、何もかも。斬りつくし、喰らいつくせ。己の糧となり得る全てを、人も、モンスターも。 

 

TUBAMEはもういない。であるならば、新たなる敵を見つけねば、ならない。そうしなければ、

 

―――立ち行かない。

 

「勝手なこと言うな。」

溢れる思考を、ベリルはただ一言で切り捨てる。

 

『立ち行かない』?何を今さら?

自分はもうすでに、『立ち止まってしまっている』じゃないか。TUBAMEを仕留めそこない、全力をぶつける相手を見失った。師匠のあの剣だって、再現することが出来ていない。

 

『何かを成した』だけの空っぽじゃないか。

 

だから、そんな自分が何かを、これ以上を求めるなんて贅沢だ。師匠との約束一つ果たせない愚かものなんて‥‥

 

―――全部、詭弁だ。

 

分かってる。本当は自分がどうしたいのか、どうするべきか。ちゃんとわかってる。

 

それでも。

 

「俺は、剣を求めた強いだけの人間なんだ。」

テラスの向こうで宴がまだ続いていて、笑い声が風に乗って届く。

 

ベリルは立ち上がる。その足は、広間へとは戻らず、静かに夜の街へと消えていった。




そろそろ原作入ろうかなとも思ったけど、やっぱりもう少しだけ若いベリル書くわ。やりたい話が出来た。
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