片田舎の剣聖、TUBAMEを斬る。   作:you are not

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うぉぉぉ!持ってくれよ体!二連続投稿だぁ!

※一部シーンを追加しました。


願いの名を呼ぶ者

 

 それは、風の強い夕暮れだった。

 

レベリス王国の一角、ベリルは冒険者として依頼をこなす日々を淡々と送っていた。かつてのような剣気はない。求めるものを見失った彼にとって、魔物討伐も護衛任務も、ただの繰り返しにすぎなかった。

 

感情は灰のように薄れ、剣を振るう手だけが生きている。

 

(何やってるんだろうな、俺‥‥)

 

故郷に帰るでもなく、剣の腕を鍛えるでもなく、ただ惰性で生きていた。

 

 

そんなある日、王都近くの市場通り。人混みの中でベリルは、一瞬、視線を感じて足を止めた。

 

──ローブを被った小さな影が、黒ずくめの集団に腕を掴まれていた。

 

「……」

 

身体が勝手に動いた。

 

黒装束の男たちに駆け寄ると、一人の腕を掴み、関節を逆に折る。

「いでえぇぇ!」

「なんだてめぇ!」

鈍い悲鳴が上がり、残りの二人も即座に剣の鞘で殴り倒した。まるで、本能のように。 

 

「大丈夫か」

そう尋ねた相手は、まだ幼い少年だった。その身なりから、恐らく魔術師学院の生徒だとすぐに理解できた。

 

「おい、こっちだ!」

そこへ、騎士団と魔法師団が駆けつけた。ベリルの背後に構えると、見知った声が届く。

「ベリル。なぜ、ここにおる?」

振り返ると、ルーシーが立っていた。いつも通り紺色を基調とした魔術師の衣装に身を包んでいた。。

 

「答える必要、あるか?」

「必要ある。わしは魔法師団の団長じゃからの」

「あぁ、そういえばそうだった」

その言葉にルーシーは呆れた顔をした

「本当に、変わらぬな。お主は……」

 

魔術師団の者なら誰もが、彼に敬意を払うように指導されている。

だが、ベリルはそんな扱いを当然のように受け流す。

それどころか、わしを呼び捨て、目をそらさずに言葉をぶつけてくる。

 

(ああ、そうか――わしを『ただの人間』として見ておるのか)

なぜだか、それが嬉しく感じられてしまった。

 

「まぁ、よい。この子はこちらが引き取ろう。すまんが、ベリル。少し話を聞いてもらってもよいか?」

ベリルは無言で頷いた。

 

 

―――

 

 

場所を移し、簡易の詰所でルーシーが語り始めた。

 

「ここ最近、魔法を扱うことのできる者。特に魔術師学院に通う下級生などを襲う事件が多発しておる」

「魔力を持っている人間ばかり襲われているというわけか。きな臭いな」

魔力を持つ人間を襲う目的など、多岐にわたるが、そのどれもが碌でもないものだとベリルは考える。

 

詰所の中は静まり返っていた。窓の外では、救護所に運ばれる魔術師学院の少年が見え、護衛の騎士たちが周囲を警戒していた。

 

ルーシーは、手元の書簡を一瞥すると、慎重に言葉を選ぶようにして口を開いた。

「調べたところによるとな、スフェン教が事件に関わっている可能性が高まっておる」

スフェン教。唯一神スフェンを信仰し、大陸中に教会を構える古い宗教だ。隣国スフェンドヤードバニアでは国教とされ、レベリス王国にも深く根を張っている。

 

「……宗教絡みか。厄介だな」

ベリルがぼそりと呟くと、ルーシーは軽く頷いた。

「しかも、動いているのは『教徒』ではなく『聖職者』――それも、かなり上の立場にある司教クラスのようじゃ」

ルーシーの眉がわずかに険しくなる。

「捕まえた下っ端を尋問したところ、奴らは『聖杯』と呼ばれる魔道具を完成させようとしているという」

「聖杯?」

「願いを叶える万能の器。わしも伝承でしか聞いたことがないのう」

そこでルーシーはため息をつく。

 

(……願い、か)

ベリルの中で、何かがざわめいた気がした。

 

「まぁ、何であれ、司教がよからぬことを考えておることは確かじゃ」

ベリルは腕を組み、質問を投げかける。

「そこまでわかってて、何で捕まえないんだ?」

「黒幕は奴であることに間違いない。じゃがの、どれも決定的な証拠たりえんのじゃ、下手にこちらが動けば、『信教の自由』を盾に、あちらの国――スフェンドヤードバニアが文句をつけてくるやもしれん。外交問題に発展すれば、最悪、国同士の衝突になろう」

静かに語るその声音には、苛立ちと焦燥が混じっていた。

 

「じゃあ、王国の『騎士団』も、『魔法師団』も動けないってことか」

「残念ながらの‥‥これは独り言じゃが」

ルーシーはこちらを見ながら、呟く。

「通りすがりの冒険者が偶然、旧市街の北端にある教会に立ち寄って、偶然、事件に巻き込まれてくれでもせんと、難しいじゃろう」

ベリルは、そのわざとらしすぎる言動をただ静かに聞いていた。そして、席から立ち上がる。

 

ルーシーはベリルを見た。かつて戦いに飢えていた彼の目ではない。かといって、生を諦めたような目でもない。空洞。だが、何かを探そうとしているような、そんな目だった。

 

(変わらず、危うい奴じゃ‥‥)

 

「……わしも行く」

思わず、ルーシーも立ち上がり、言葉は自然と口をついて出た。

ベリルが歩みを止め、ゆっくりと振り返る。

 

目が合った。

 

ほんのわずか、ルーシーの頬が赤らんだ気がした。

 

(そんなに見るな。……お主にだけは、強がれんくなる)

 

「わしが、ただ偶然そこにいた。それでよいじゃろ?」

「いいのか?立場上?」

「構わん、一緒に歩いていたというだけじゃ」

そうして、二人は目的の教会を目指し、歩きはじめた。




ベリル君、一回剣鬼封じたように振舞いますが、消えてません。全然元気です。なんなら、冒険者として依頼をこなす日々でモンスター狩りまくってます。
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