片田舎の剣聖、TUBAMEを斬る。 作:you are not
師匠が倒れた。
原因は明白だった。あの絶技を放ったせいで、肉体が悲鳴を上げたのだ。足は裂け、両手は皮が剥けて血を滴らせている。剣を握るどころか、立つことすら危うい。
「ぐぉぉ‥‥」
「師匠!」
俺は慌てて、師匠の脇に潜り込み倒れる体を支える。
「見ておったか小僧?」
だが、師匠は痛みすら気にしないで俺に語り掛ける。そこには期待がこもっていた。
「はい!」
きっと、師匠は限界を超えてでも、見せたかったのだろう。俺にあの技を。その事実に俺は自分の背中に乗っている重みを改めて実感する。
それから、師匠は剣を握ることが出来ないため、朝一番に素振りをすることはなくなった。道場の門下生たちも『珍しいな、もう年に勝てなくなってきたか?』と噂するようになっていた。
だが、師匠は気にすることなく俺に剣を教えた。俺もそれに合わせて師匠の剣技を体に叩きこむことにした。何度も、体を追い詰めるような日々を送ったが、親父は遠くで見守るだけで、特に何か言ってくることは無かった。
だが、結局俺は燕返しを完成させることは出来なかった。二撃を同時に放つことに成功してからは、一歩も前進することができない。精々、たまに成功するのを一振りごとに確実に発動するようになっただけ。それがどうしようもなく、悔しかった。
―――
ある日の夜。俺は眠れなくて、夜風に浴びようと家の外に出た。
「眠れんのか?」
すると、声をかけられ、振り返る。声の主は師匠で、師匠が住んでいる道場の横にある小屋、そこの玄関前の階段に師匠は腰かけていた。
「なら、年寄りの話を聞いてくれ」
師匠は自分の横を叩き、隣に座るよう促す。俺はそれに従って、隣にお邪魔する。
「ベリル。わしとの約束覚えておるか?」
「あぁ、ツバメを倒せって言うんだろ。覚えてるよ」
初めて聞いた時、無理だろと思ったものだが、不思議と今では人生の目標になっていた。
「ならよい。TUBAMEとは、わしが勝手にそう呼んでおるだけじゃ。……あやつの名は知らん。ただひとつ、確かなのは……レベリス王国の近くの山に棲まうワイバーンの
「ワイバーンの特別討伐指定個体‥‥」
ギルドが討伐が困難、不可能と判断した魔物個体。それを今の自分が倒せるのか、ベリルは不安になった。だが、やらなければならないと決意を固め直した。
師匠は星空を見上げていた。
「頼んだぞ、ベリル……」
そう呟いた後、わずかに息を吐いた。
「……あぁ、任せろ、爺さん」
けれどその声は、もう届いていなかった。
原作世界にワイバーンいるのかわからんけど、俺の作品にはいる。燕返し可能なんだから、ワイバーン位いる。
あと、次話は28日の0時じゃなくて27日の午前1時に投稿します。