片田舎の剣聖、TUBAMEを斬る。   作:you are not

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AO入試で日曜日は投稿できませんでした。

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増える剣技

 

――ベリルは理解していた。

 

「増える剣技」――それは、自身が追い求めている秘剣《燕返し》に他ならない。

 

「……別にいいけど、子供相手だとなぁ」

 

 確かに、目の前の少女から漂う威圧感は、年相応のものではない。若くして優秀なのか。それとも、見た目以上に年を重ねているのか。

 

 だが――いずれにせよ、自分の剣は見世物ではない。

 

「ほう、わしを子ども扱いか」

 

そう言ったルーシーは、片手を軽く振り上げる。瞬間、そこから灼熱の炎が迸った。

 

音もなく燃え上がった炎は、空気を裂き、空間を焼く。熱と恐怖が同時に押し寄せ、周囲の温度が数度上昇したかのようだった。

 

「これでもか?」

ベリルにとって、それが『本物の魔法』との初遭遇だった。

「……なるほど。あんたが、ただの子供じゃないってことは分かったよ」

その魔力は、練り上げられた芸術のようだった。それだけで、十分だった。

「話が分かればよい。では、場所を変えようかの」

 

 

―――

 

 

 ルーシーに連れられ、ベリルはギルド裏の円形訓練場へと向かった。意外にも、そこには一人の見物客すらいなかった。

 

「さて、ここらで良かろう」

ルーシーが軽く振り返ったその瞬間、ベリルは空気の『変化』を感じ取る。

 

――ザザザッ!

 

鋭い音と共に、彼女の周囲に氷の剣が次々と生成され、宙を舞い、ベリル目がけて射出される。

 

「っ……!」

ベリルは即座にロングソードを抜き放ち、いくつかの氷剣を弾き返す。しかし、それらはルーシーの手前でふわりと融け、跡形もなく消えた。

 

「……どういうつもりだ?」

「いやなに。お主、手の内を見せる気がなさそうじゃからな。こじ開けようと思っての。それに――単純に、強き剣士相手に、わしの魔法を試してみたくなっただけじゃ」

 

なるほど、芸を見せろという話ではなかったらしい。

 

確かに――俺の『燕返し』は、見世物にするつもりはない。だが、喧嘩を売られたのなら、話は別だ。

 

「強者相手への腕試しか。……ああ、結構」

ならばこちらも、それ相応に応じるまでだ。

 

こちらが応戦の意思を示した瞬間、ベリルの頭上から氷の塊が降ってきた。瞬時に細切れにするが、その氷の後ろの死角から魔法が放たれるのを察知したベリルは、剣の平で砕いた氷の一つをはじき出し、電撃を相殺する。

 

そのまま、ベリルはルーシーに肉薄しようと駆ける。

 

だが、ルーシーはその行動を先読みしたように地面に水で満たし、即席の湖を作り出す。その水流に押し流され、ベリルは後方に下がってしまう。

 

「こんなものか?」

ルーシーの挑発じみた煽りがベリルの耳に届く前に、ベリルは水面から高く跳躍する。地面は、凍り付いていた。

「ほぉ、これすらも見切るか‥‥なら、これはどうする?」

両手で包むように、熱の固まりを魔法で生成するルーシー。このままでは、氷の地面と接触し、水蒸気爆発を起こしてしまう。そうなれば、回避も防御も不可能。

 

―――だが、ここに例外が存在する。

 

ベリルは、ルーシーの目の前まで移動していた。

「いつの間に!?」

ルーシーが知るよしもないが、ベリルは縮地と言う技術を用いて、着地と同時に距離を詰めたのだ。だが、ルーシーの手の中にある熱球をどうするのか?

 

『無明三段突き』

 

答えは単純。平突きで熱球を刺突することである。燕返しは斬撃を同時にいくつも発生させる。それを一つに束ね、同じ位置に一の突き、二の突き、三の突きを同時に繰り出すという矛盾を成すことによって、世界はその矛盾を修正しようと、技が発動した周囲を消滅させる。

 

それ即ち、

 

「わしの魔法を打ち消したじゃと!?」

熱球が消滅したことに驚き、無防備を晒した隙にベリルは、一歩踏み出し、顔の左側に剣を構えた。

 

『秘剣・燕返し』

 

三つに増えた斬撃が、ルーシーの首筋を一点に襲う。ルーシーが件の増える剣技が発動したと認識した時には、もう、どうしようもなかった。いかなる魔法も発動する前に斬撃が到達するだろう。

 

だが、到達する前に剣はピタリと静止する。




ちょっと長くなったので、分割して午前一時にまた投稿します
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