夜桜家長女夜桜初   作:LiLiL

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ちょっと(だいぶ)変えました。
これから初の視点で進めたいと思います。


気持ち

先日夜桜家に新しい家族ができた。

六美の夫となった朝野太陽。 凶一郎を()()()()()桜の指輪を手に入れた一般人。肉体的な強さは話にならない。が、六美を思う気持ちは凶一郎にも匹敵するほどだ。

本当にこれからの成長がたのしみだ。

 

ある日のことだった。

私と二刃以外のみんなが外出し、私は部屋の隅で本を読んでいて、二刃部屋の真ん中でトレーニングをしていた。

 

本を半分くらい読んだときだった。

覚悟というか、何か決心したような顔で太陽が家を訪ねてくる。

 

「急にどうしたんだい。六美は皆と買い物だよ。 凶一郎も出張中だ」

 

二刃が身の丈位もあるバーベルを軽々と振り回しながらそう尋ねる。

それは一体何のトレーニングになるのだろうか?

 

「いえ 、いいんです実は折り入ってお願いがあって来ました」

 

「お願い?」

 

「俺、を強くしてください・・・!」

 

彼の声には、迷いがなかった。

一瞬だけ、ページをめくる手が止まる。

 

「強く・・・ね、なるほどそういう話か。あせるこたないよ。常人のあんたに合わせて少しずつ育てる予定だからね」

 

「それじゃ遅いんです」

 

おそらく、太陽は先日の爆弾の件を気にしているのだろう、あの時は六美を遠ざけるので精一杯だったみたいだ。せっかく六美が自分を選んでくれたのにとでも思っているのだろう。だけど、つい先日まで裏社会を知らずに生きてきたんだ。それにもかかわらず、いきなり裏社会の人間を相手に六美を守り抜いただけ上出来と言えるだろう。いくらいつでも助けに行けるからといって凶一郎も無茶するもんだ。

 

本を読みながらそう考えていると、ただならぬ表情を浮かべた太陽を見た二刃は、そう発言する太陽の胸倉をつかんで振り回す。

 

だけど・・・その気持ちを無下にするのもなんだ、短い付き合いでも太陽の思いは凡人のそれではないことはわかっている。

 

「まぁ、いいじゃないか」

 

そういって、小説…『スーツケースに眠る国家』というタイトルの本(ちなみにスーツケースの中の機密情報を巡る実話スパイ小説。面白い)から顔を上げる。

 

「夜桜家当主の夫としてどうせ強くならなければならないんだ。本人に強い覚悟があるのならば、構わないだろ」

 

「そうねぇ、六美を想ってくれるあんたの気持ち無下にはしたくないね。夜桜式の本格的な訓練をしてもいい」

 

「!ホントですか!?」

 

これは・・・きっと二刃は太陽を試そうとしているのだろう。だけど、太陽ならやってくれるだろうと信じている。それくらい私はあの子を認めている。

そう思っていると、おもむろに二刃は近くの引き出しから鍵を取り出して

 

「ただし一つだけ条件がある。一つ部屋を使っていいから、一か月この屋敷に住んで頂戴」

 

「・・・えっ!?そ、それだけですか・・・!?」

 

「初姉さんもそれでいいかい?」

 

「あぁ、ちょうどいいんじゃないか?」

 

そう言って、ニヤリと笑う。

いきなりやらせるには少し厳しいかもしれない。だけどそこまで言うのだ、これくらいの乗り越えてくれないと困る。

 

「ありがとうございます」

 

それならと太陽が必要なものを取りに帰ろうと階段を降りようとした瞬間

 

ガコッ

 

いきなり階段が抜けて、その穴に落ちかける。

 

「一つ言い忘れていたよ。この屋敷にはスパイ訓練用のトラップがいたる所に仕掛けられている。この夜桜家では生活そのものが訓練の一部。でもこの程度軽くこなせないと本格的な訓練なんて夢のまた夢さね。まずは一か月頑張るんだよ」

 

二刃が恐ろしい笑顔でそう告げる。

 

「まぁ、兄弟たちを頼ってもいい。とにかく頑張るといい」

 

脅かしてばかりでもなんだ、少しは励ますか。

 

そうして太陽の夜桜家での命がけの生活が始まった。

 

 

その翌日は大変そうだった。爆発する目覚まし時計から始まり、少量の毒が入った食事、錠のピッキングとパスコード解析が必要なトイレ、麦茶を取ろうとしただけでハチの巣にしてくる冷蔵庫、蛇口のダイヤルを最小限の負荷で回さないと溺死させてくるシャワー、そして訓練は家庭内に留まらず外に出る時も50㎏のTシャツを着る。

でも六美を守るためと思って頑張り続けた。

 

 

ーーそして一週間がたち太陽は他の兄弟たちの協力で徐々にこの家での暮らし方を叩き混んでいった。

辛三に銃の打ち方を習い、毒の知識を七悪から習う。

 

そして静かに動く方法や、華麗に動く方法を太陽が私に聞きに来た。

 

「どうやって静かに動くか?」

 

私は大概の場合、家の図書室で本を読んでいる。読んでいた本から顔を上げてそう聞き返す。今読んでいる本は「目撃者は誰もいない」――静寂の中で進む心理戦が秀逸だった。

 

「そうね、兄弟の中だったら私が一番適任かな」

 

私は兄弟の中では一番、隠密系や暗殺系の任務が多い。

 

「どうすればいいんですか?」

 

太陽がそう尋ねる。

 

「それは・・・」

 

「ゴクッ、それは・・・」

 

私は真剣な表情で口を開く。

 

「スッてやって、フワッてやって、バッてやればいい」

 

「・・・?」

 

「スッてやって、フワッてやって、バッてやれば簡単」

 

「・・・えっと、もうちょっと具体的な方法はないんですか」

 

太陽は困惑しながらそう聞いてくる。何かわからないことがあっただろうか?とても簡単に教えたつもりなのだが。

そこに猫のパーカーを着た嫌五が通りかかる。

初が太陽に教えているのを見た嫌五は驚いて、太陽を手招きで呼び寄せる。

 

「太陽、初姉さんに何か教えてもらってるのか?」

 

「そうだけど・・・」

 

「やめたほうがいいぞ。姉さん天才肌で超感覚派だから教えるの下手なんだ」

 

「嫌五、聞こえてるよ」

 

失敬な、私のどこが下手なのか。

 

「やっべ」

 

そう言って嫌五は逃げる。

 

……失礼な。

 

 

こんなこともありつつ、三週間もたてば夜桜家にもだんだん慣れてくる。

だが、がんばりすぎが祟ったのだろうか太陽はは過労によって倒れてしまう。

 

「だから言ったろう常人があたしらのレベルについてくるのは無理なんだ。とりあえずしっかり体を休めな」

 

二刃がそう溢す。

 

「だ、大丈夫ですできます・・・!ちゃんと残り一週間生活して見せます・・・!」

 

息切れぎれになりながらも太陽はそう答える。

 

「この体でかい?」

 

そういって二刃は太陽の皮膚を引っ張る。すると擬皮がバリッと剥がれ、中からは傷と痣に覆われた生身の身体が現れる。

 

「こんなやり方続けてたら、いくつい日があっても足りやしない。最初から気づいてたよ異常な成果の影には異常な手段が必ずあるんだ。四六時中トラップに挑んではデータを集め、四怨の解析と辛三ぼ実践で効率的な成長を補助してもらったり、度重なるケガの治療や不眠不休用の劇薬処方は七悪の医術、そして傷を隠すための嫌五の擬皮技術」

 

「えっ、わたしは?私も手伝ったよ」

 

隅で黙って見ていた私はそう言う。私も太陽に教えたのになぜ名前が上がらないのか。

 

「姉さんはまぁ、うん」

 

二刃は歯切れ悪く言う。

 

「というか初姉さん、気づいていただろ。なぜ止めなかったんだい」

 

「私からは何も言わないよ。そういうのは凶一郎と二刃のでしゃばでしゃば

 

「み。皆は悪くないんです・・・皆止めたんだけど・・・俺が強くお願いしたから・・・一日も早く・・・六美を守れる男になりたいって・・・!」

 

「馬鹿だね」

 

そう言って二刃は太陽にチョップをする。

だけど、そうも言いつつ太陽にアドバイスを送る二刃はなんやかんや「気持ち」を認めたのだろう。

 

 

ーーそして一か月がたちすべてのトラップを攻略し、家にみとめられた太陽は兄弟たちに祝福されていた。

 

尚その隅っこではー

 

「私も教えたのに・・・」

 

「うん、まぁ姉さんは仕方ない」

 

私は役立たずみたいに扱われてショックを受けていた。

 




夜桜初


8月2日生まれ 23歳 金級スパイ


身長:165㎝ 髪色:銀髪 開花:『加速』


好きなもの:家族、芸術鑑賞(読書、絵画、音楽などなんでも)

苦手なこと:ものを教えること(本人自覚なし)



夜桜家の第一子であり、最速のスパイとして知られている。バトルスタイルはナイフを用いた不意打ちであり、目にもとまらぬ速さで依頼を遂行する。別に対面での戦いが苦手というわけでもなく、その実力は凶一郎と打ち合っても負けぬほど。家族のことをよく見ており、大体兄弟の思っていることはわかる。超感覚派であり、物事を教えるのが下手。ちなみに天然。
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