『あー、あー。聞こえるか?ルルネちゃん」
「聞こえてるよ、リンドウ」
翌日。俺は昨日言われた通りに訓練室(正確には第4訓練場というらしい。扉に書いてあった。)に集合した。到着して待っている間にリンドウに聞いたんだが、俺の神機の刀身パーツである『ハルトハーケン 試』、その形式のヴァリアントサイズ。これもまた試作型のパーツらしい。ゲームでは、リザレクションとか、レイジバーストの時に追加されてたな。
ていうか、身長が124cmしかないから神機がでかい。重さ自体はゴッドイーター補正で何とかなってるけどね。
『嬢ちゃんが持ってるのが、極東初の新型神機だ。本部から送られてきた説明書によりゃ、アーティフィシャルCNSのとこに...あ、アーティフィシャルCNSはわかるか?』
「あ、うん。さっき一応、ターミナルで予習してきた。」
『お~、勤勉なことで。んで、そのアーティフィシャルCNSのとこに意識を集中して...ぐいってやるらしい。』
「...え?ぐい?説明書に、そうやって?」
『そうなんだよ...。感覚は捕喰形態への変形に似てるらしいが、嬢ちゃん、わからねぇよな。う~む、どうしたもんか。』
...そういえば、ゲーム時代もどうやって変形してるのか分かってなかったな。まあ、ダメもとでやってみますかね、と。
意識を神機に埋め込まれた金と黒の球体に集中...神機ってのは接続された時点で体の一部のようなもの。なら自分に流れる血管を意識するような感覚でいけるか?...お、なんか持ち手に流れてるような...もしかしてオラクル?神機にオラクルって流れるんだっけ...違う、そうじゃない。集中集中...。
「神機は自分の延長線上...できる、できるできる...」
目を閉じて神機の持ち手のその先へと意識させていくと、ついにアーティフィシャルCNSへたどり着いた。で、ぐいってやるんだっけ?動かせそうな雰囲気はあるし、やってみるか。
なんとも言えない感覚を操作しようとすると、閉じた目の裏側、少し下側に見慣れた、でもあるはずのないもの。それは青緑の半透明なサークル。クイック設定やface、姿勢変更などのデフォルトに加え、改変で入れた撫で音や服装変更の選択肢。そして見覚えのない『神機』の項目が表示されているそれは、紛れもなく、【エクスプレッションメニュー】だった。
「へ?なんで...え?」
『あ?どうした嬢ちゃん。なんかあったか?』
「あ、いや、なんでもない。少し感覚がつかめたかもってだけ。」
どうなってるんだ、これ。目を開けてもあるぞ。ひとまず神機を選ぶように念じてみる。すると、ピコッという特有の音と共に三つの選択肢が現れた。咬刃形態と、銃形態、最後に捕喰形態。それぞれご丁寧にアイコンまで付いている。
ひとまず怪しまれないように目を閉じて、銃形態を選択。すると、ガシャコン!と音が鳴ると同時に神機が稼働し、エネルギーの行き場を上手く操作できずに、驚きもあって神機が腕からすっぽ抜けてしまう。
「ひゃっ!...で、できた...?」
『おお、やるじゃねぇか、嬢ちゃん。すっぽ抜けちまうのは最初はよくあることだ、気にすんな。あ~、俺の時は捕喰形態にするのに何日掛かったっけか...。ま、そんなとこはどうでもいいな。次は捕喰形態、いけるか?今訓練用ダミーを出した。捕喰形態になれたら、それに向かってガブリ!だぞ』
「了解...!」
なんか本来のやり方とは違うが、好きなゲームのギミックを自分でも出来たってのがうれしい。VRCにはゴッドイーター系っぽいのはあんまなかったからな...。
結構遠くまで飛んだ神機を拾い、もう一度集中。『エクスプレッション』から『神機』、今度は『捕喰形態』を選択。今度は神機がぶっ飛ばないように、できる限り腰を落として構えた。
黒い暴食の神が、獲物を喰らわんと展開を始める。しかしそれは機械により制御され、一定の大きさになるとまるで首輪に押さえつけられた犬のようにうねり、主人の命令を待つ。
(うっ、思ったよりグロい...!)
「いっ...けぇ!」
主人の命により、統制された神が訓練用ダミーへと喰らいかかる。ぐしゃぁ、と肉をちぎる音が訓練室に響き、ダミーの肉片が神機へと吸収され、純粋なオラクルに変換される。それは腕輪を通した一時的な身体の強化とストックに回され、黒い神は役目を終えたとばかりに神機の中へと引っ込んでいった。
「お、おお。これが、バースト?」
『...まじかよ。こいつは将来有望だな。一発でやりやがった...。』
『リンドウ、なぜお前が指導を...いやまて、一発でといったか?』
バースト状態の高揚感に包まれトリップしていると、教官室から女の人の声が。これは...ツバキ教官かな?
『新入り。ここからの訓練は私、雨宮ツバキが行う。これからは全て、命の懸かった戦いと思え。分かったらはい、だ。言っておくが、いいえは許さん。その腕輪を付けた時点で、お前は孤児ではなく人類の守護者だ。すべての行動に責任を持て。』
「(これがツバキ教官の洗礼...!)は、はい!」
『よろしい。リンドウ、銃形態と捕喰形態への変形はできたんだな?』
『おう、かなり筋がいいから、教えがいがあると思うぜ?教官。』
ゴッドイーターのゲームを始めると、大半の人はツバキ教官を苦手な人と認識するだろう。そりゃ、拒否を許さないパワハラ上司のようなものだしな。ただ、実際は新兵を死なせない為の愛の鞭なのだ。ちなみにキャラの中では結構好きなほうでもある。
『では訓練内容は神機の基本的な攻撃の型と、銃撃方法だな。新型は覚えることが多い。しっかりついてこい。いいな?』
「うげっ..、はい!」
げぇ、覚えるの苦手なんだよな。ゲームの時はあんまヴァリアントサイズ使ってなかったからモーション覚えてないぞ...。
~以下、苦戦するルルネの様子~
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ある時は武器の振り方を指摘され。
『そうじゃない、動きを止めるな!流れるように斬撃を放て!』
「は、いっ!」
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ある時は戦闘中での変形を指摘され。
『変形が遅い!そんなではオウガテイルに喰われるぞ!』
「は、はいっ!」
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ある時は捕喰タイミングでキレられ。
『敵が怯んだ時に捕喰をするんだ!何度言えばわかる!』
「は、はいぃー!」
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ある時は大型との戦い方を仕込まれ。
『お前は図体が小さいのだからすばしっこさを活かせ!全てシールドで受けていたら死ぬぞ!』
「は、いぃぃーっ!?」
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「ひぃ...ひぃ...」
『今日はここまで。自室に戻り休むように。』
ひどい目にあった...。さっき好きなキャラとか言ってたけどちょっと訂正しかけそう。でもそのおかげでいっぱしのゴッドイーターにはなれたな。
重い体を引きずり、神機を収納庫に預け、食堂へ。そこにはエリックとソーマが食事をして居た。食堂に入ると、二人の視線が俺に刺さる。
「やあ、もしかして新人教習の帰りかい?」
「...どうも。ツバキ教官にしごかれてきたよ...」
「.....。」
相変わらずソーマは喋ってくれない、か。まだ好感度は低いなー。
エリックはツバキ教官と聞いて諦めと同情の視線を送ってきた。
「ツバキ教官はキツイからね...ただルルネちゃん、教官の指導はためになるから、しっかりと聞いておくといいよ」
「そうだね...たしかにきついけど、すごいためになったよ」
食べ終わったのか、ソーマが席を立ちあがり、どこかに行ってしまった。
「...いつもソーマがすまないね、ルルネちゃん。悪いやつじゃないんだけど...」
「うん、わかってる」
「...そういえば、最初にあった時より喋るのが流暢になったかい?」
「ツバキ教官に、コミュニケーションは大事だって言われてさ。気を付けることにしたんだ。」
ジャイアントトウモロコシと、配給のオレンジジュースを机に置き、貪る。ああ、美味い。前世と比べたら味は凄く落ちるけど、それでも極度に疲労した体に染み渡る。
「それじゃあ、僕はこれで。任務で会ったらよろしくね、ルルネちゃん」
そう言ってエリックも去っていった。結局夜まで続いた訓練後の夕飯を俺は堪能したのち、自室に帰り気絶するかのように眠るのであった。
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リンドウ自室にて
「リンドウ。あの子はいったいなんなんだ?訓練プログラムをたった一日で全てこなしてしまったぞ。」
「だから言ったろ?教えがいがあるってな。....あの子は支部長の実験に巻き込まれてな。P126因子の他に、レトロオラクル細胞に最も近いと言われている、P12因子も微量入れられてる。...可哀想な子だぜ、まったく。」
ため息をつき、机に置いてある残りわずかな配給ビールを飲み切るリンドウ。
「やはり支部長、か。ロシア支部も掌握しているんだったか?」
「ああ、確かな。まあ、今の俺らにできるのはアラガミを倒して人類を守ることだけだ。頑張ろうぜ、お互い」
「...ああ。」
夜は静かに更けていった...。
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登場人物
【主人公】
名前:神宮 ルルネ (かぐみや るるね)
コードネーム:rurune
年齢:推定12歳
身長:124cm
使用神機:『名前なし』
刀身>ハルトハーケン 試
銃身>79式キャノン 序
装甲>汎用バックラー 序
所属:極東第一部隊
性格:臆病だが思い切りがよく、環境に適応しやすい。軽度のコミュニケーション障害を持っている模様。酒に弱い。
特記事項:記憶喪失で雨宮リンドウ少尉に保護されたため、身元が不明である。試作型であるP126因子を投与しているため、他よりアラガミ化の危険性は高い。初等訓練済み。
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