TS魔法少女、悪友チャラ男ニ雌落チス 作:ラッダイト
「勝ったぞ」
「ええ……?」
「わけがわからないですよ」
もの言いたげなその目に、
「ダメだろ、しっかりしてよ」
「そうは言われましてもですね。それは確かに魔法少女はあくまで人類ベースの存在、力の源となっているのも元をただせばありふれた精神エネルギーにすぎませんよ?」
ぐぬぬと右衛門が短い前足で頭を抱える。
猫ミームで見たな、と戦車はのんきしていた。
「ですが、では人類が魔法少女に勝てるかと言えばそんな簡単なことではないわけです」
「俺は勝ったが?」
「普通勝てないんですよねえ……!」
力強く誇示された戦車の上腕二頭筋に一瞬うっとりとした表情を見せた世界一がすぐに気を取り直して突き放す。
「チャリは黙ってて、で、何があったの」
「一瞬の攻防でした。この私でなければまったく見逃してしまっていただろうほどに……!」
「いいから本題」
「はじまりは
「うん」
「意表を突かれたんでしょう、マジカル★ムーンライトは反応が遅れました。そして剛田さんの手が腰あたりに触れた瞬間『あひゃあ♡』とあられもない声をあげまして」
「うん?」
「次の瞬間には剛田さんは背に回り込んでいました。そのまま脇に頭を潜り込ませ、自らも後方に倒れこみながらの投げ――いわゆるバックドロップですね」
「うん」
「なお本来は相手の腰をクラッチするはずの剛田さんの手はそれぞれムーンライトの衣装の胸部と
「ふーん??」
「あとはもう一方的です。投げられた拍子に武器を落としたムーンライトがなんとか逃れようとしても、押し付けられた剛田さんの
「怒られるぞオマエ」
「そこに体格差を活かして上からのしかかった剛田さんに完全に制圧され、身動きが取れないでいるところに急所へのスクラッチで完全無力化に至ったというわけです」
「口ほどにもねえ奴だったな、三分も持たなかったわ」
やっぱダメだな、メスガキは、と言って戦車がしゅぱっと手刀を作った腕を振る。
「……へえ」
「以上がおおよその
「別に?」
「つか右衛門さっきまでユニのことわざわざユニバースとか呼んでなかったか?」
「あぁ、それはお二人はムーンライトと面識がありませんのでプライバシーに配慮いたしました。さすがに剛田さんが戦おうとしたときはついつい名前が出てしまいましたが、すみません」
「いや、全然いいけどよ。また変なところでリテラシーがたけえっつうか、むしろ感心するわ」
「いえいえそれほどでも。私共のつとめとして当然のことですから」
チャラ男とネコ(仮)がそんなやりとりをしているところに、にゅっとユニバーサルフープが割って入った。
ほのかに発光し、低い振動音を立てるそれはすでに臨戦態勢である。
戦車が顔をしかめた。
「――なんだ、魔法少女パイセンにセクハラしたとか言うなよ? こっちゃ命がかかってたんだ。手〇ンくらい正当防衛とか緊急避難とかの範囲だろ」
「まぁある意味では平和的な対処ではありましたね」
「だろ?」
「性暴力を受けたムーンライトの精神的衝撃を問題視しなければ、ですが」
「通り魔のメンタルがどうなろうが知ったこっちゃねえよ*1」
「うーんこの」
「――じゃなくてさ」
盛り上がる一人と一匹を世界一の低い声がさえぎる。
「それ、どうすんの? まさかそれまであっちで
戦車のまたぐらにぴたりと視線を止めた世界が、続いてまだ荒い息を吐いて倒れたままのムーンライトへと動く。
さすがに戦車がイヤそうな表情を浮かべた。
「お前、俺を性犯罪者かなんかと思ってねえ?」
「チャラ男がなに言ってんのさ、きっちり返り討ちにしといて」
「だからそりゃやむをえずだろうが」
「それはそれとしてその結果の劣情をどうする気かって聞いてんじゃん?」
そこで世界一は一度視線を外すと、フープを持っていない手で口元を隠しつつ続ける。
「まぁ? チャリがしたいなら? おれがつきあっても――」
「剛田さん剛田さん、さっきからどなたに連絡を?」
「セフレ」
「やりますねぇ”っ!」
メキリ、とフープが右衛門の頭の半ばまで埋まった。
「ぎゃー!」
「右衛門―!? しっかりいたせー!!」
「い、今までになくひどいですよ*2、門倉さん」
「やりますねじゃないんだよ。浮気じゃん、なに褒めてんの」
「ええ……?」
「いや、浮気ではないだろ……なあ」
「ですよねえ」
一人と一匹が顔を見合わせる。*3
しかし暴虐の魔法少女はフープを自らの相棒に叩き込んだままぴくりともしない。
しゃーなし、と戦車が口を開く。
「――ユニ、俺とお前の関係は?」
「親友でしょ。言わせんなよ恥ずかしい」
ほかに恥ずかしがるところあるだろ、と小さく言いながら戦車は問いを重ねる。
「つまり俺がセフレとやっていても――?」
「浮気だよ"!"」
「なるほど、式が正しくても正しい解が導かれるとは限らないわけか……やっぱリアルってクソだわ」
「これもうわかりませんね」
魔法少女事情は複雑怪奇。
「お前がサジ投げてくれんなよ。どうにかしてくれ、お前の魔法少女だろ」
「どうにかと言われましても……あのー、門倉さん?」
戦車の言葉を受けた右衛門は首が回らないので上を向いて世界一へ向き直った。
「なに?」
「剛田さんには協力いただいている関係ですし、なによりナニをするにしても選択の自由意志というものが――」
「ないよ、チャリにそんなもん」
「ダメでした、残念です」
「お前、人のもの*4をあっさりと……!」
いまいちやる気のないネゴシエーターにはぁぁと深いため息を吐いて、戦車は通知音が連続するスマホをしまう。
「――わぁった。一人でシコって寝る。それならいいだろ」
「だから、おれが相手してもいいって言ってんじゃん!?」
「きゃー!」
きれいに右衛/門となったネコ型生物が悲鳴を上げる。
「ひ
「ひどくない」
「いや、ひでえだろ。なんかだいぶ慣れてきたのがこえーわ……しゃあねえ」
ぎゅうぎゅうと左右から頭を押さえつけて右衛門を仮止めした戦車が立ち上がる。
こきこきと首を鳴らすと、友人をまっすぐに見て言った。
「あんま聞き分けねえこと言うようなら――そこで無様してるパイセンと同じ目にあってもらうぜ、ユニ」
「できるものならやってみたら? 望むところだよ*6」
「そうか――ならしょうがねえな。こいよマジカル★ユニバース、
「おれをそこのちんちくりんと一緒にしない方がいいと思うけど、ねッ!」
「勝ったな」
「知ってました」
「――♡♡ ――♡♡♡」
無様な負けっぷりを晒す魔法少女を見下ろして、勝ち誇る金髪マンバン強面チャラ男の肩で、頭のでかい白猫がさもありなんと頷いていた。
チャラ男が魔法少女に負けるわけないだろ!