TS魔法少女、悪友チャラ男ニ雌落チス   作:ラッダイト

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十一手 誓って寝取りはやってません

 夏の日差しが窓の外を蛍光灯で照らされた室内より一段明るく照らしていた。

 セミの声は聞こえない。

 時期がまだ早いのか、何らかの異常気象の前触れか。

 コーラを飲みながらぼんやりとそんなことを考えていると、硬くてなめらかでしっとりとやわらかい感覚がちょいちょいと戦車(チャリオット)の腕をつついた。

 

剛田(ごうだ)さん剛田さん」

「あんだよ」

 

 すっかり聞きなれたイケボの呼びかけに振り返らないまま問い返す。

 

右衛門(うえもん)ですが、テーブル席の空気が最悪です」

「…………」

 

 静かな訴えに観念して、窓の外から室内へ視線を戻した。

 腕をつついた右衛門は四人がけのテーブルの対面左側に陣取り、正面の席には門倉(かどくら)世界一(ユニバース)

 ライトグレーのサマーニットのノースリーブがいよいよ女子っぽい親友は、くるくると襟足をもてあそびながらスマホとこちらに視線を行き来させている。

 

「えー、なんで? 別にギスる要素無くない?」

 

 そうして新たな声は戦車の横から聞こえた。

 

「ねー、チャリオ♡」

 

 マジカル★ムーンライトこと姫島(ひめしま)月光(ムーンライト)は先日の襲撃などなかったように猫なで声で媚びる。

 闇落ちの上でかつての相棒の関係者を襲った()は、返り討ちにあったことでメス堕ちのち魔法少女のライトサイドに帰還を果たしたのだった。

 

「ふふ♡」

 

 しなだれかかった戦車とは犯罪的な体格差がある色白で細身の体を、白のへそだしTシャツにホットパンツという露出逆ナン系のAVか海外リゾートでしか見ない露出の多い服装で包んでいる。

 ハーフアップの金髪に黒のキャップを緩くかぶり、耳にはバチボコにピアスをあけた白ギャルスタイルは、金髪マンバンヘア男の隣が実にお似合いだった。

 

「ゲッコーパイセン」

「もー、そのあだ名可愛くなーい。ルナって呼んでってば♡」

「キッツ」

 

 ぼそりと世界一がつぶやく。

 ぴたりと月光が動きを止めた。

 すっと戦車と右衛門の間でアイコンタクトが行われる*1

 鼻を鳴らして、戦車は隣に視線を向ける。

 

「ルナパイセン」

「パイセンもいらないってば。で、なに?」

 

 戦車からすると見慣れたたぐいの媚びた笑みが返ってきた。

 じわりと目元に情欲がにじんでいる。

 

「パイセンっていつもそれなんスか?」

「それって、服のこと? それとも――こっち?」

 

 ぐい、と月光が二の腕を寄せて、薄い体にも確かに()()膨らみを主張する。

 鍛え抜かれた戦車のチャラ男アイは彼の骨格が男のそれでありながら、要所についた肉は女性のそれであることを見抜いていた。

 これがおそらく右衛門が語っていたメス堕ちの結果の肉体変化なのだろう。

 

「どっちもスね」

「ふーん、そんなにルナのこと気になるんだー♡」

「チッ」

 

 響いた舌打ちに右衛門がテーブル上で前脚を交差させて「×」を描く。

 

「ユニ」

「……なにさ、そっちの肩持つの?」

「襲われたの俺でお前は別に被害なかったろ」

「チャリを襲っただけで十分じゃん」

「そのチャリオがいいって言ってんのに、後輩ちゃんめんどくさーい」

「は?」

 

 ぺちん、と戦車と右衛門はそろって額に右手(足)を当てた。

 それに気づいていないのか、わかっていて無視しているのか、殺気も含んだ世界一の視線を受けてなお、月光はメスガキらしい笑みを浮かべる。

 

「せっかく右衛門ちゃんとチャリオがこういう場を作ってくれたのに空気悪くしてさ。ルナならそんなことしないのになー」

「っ! どの口で……!」

「あー、二人ともそれ以上煽るなら俺にも考えがあんぞ」

 

 一気に高まる緊張感に戦車は低い声で警告した。

 世界一は不満そうに、月光は楽し気に「どんな考え?」と視線で尋ねてくる。

 くい、とあごをしゃくって右衛門を招いた戦車は、スマホをテーブルの上に置いてネコ風生物の両の前足をつかむと二足で自分の前へと立たせた。

 

「?」

「ヘーヘーイエーイエー」

 

 そうして困惑する二人を放置して、右衛門の足を動かして猫ミームの再現動画の撮影を始める*2

 青いガラスのような右衛門の目が()()()()な二人に勝ち誇るように輝いた。

 

「「ムカつく……!」」

 

 異口同音に言った二人の魔法少女(成人男性)たちは、一気にヘイトを互いから(元)相棒へと向けた。

 

「右衛門さぁ、なんか最近チャリと距離近くない? メインで仕事手伝ってるのおれだってこと忘れてないよね」

「それは覚えてますし感謝しておりますとも」

「チャリオ、ルナの秘密ならいくらでも教えたげるから、ばっちいネコとかおいとこ、ね?」

「ひどいですよ、姫島さん。私はこのまま無菌室に入っても問題ないくらいに常に清潔です」

 

 ハッピーな感じで飛び跳ねるように身を伸び縮みさせながら右衛門が訴える。

 

「「とりあえず踊るのやめろ」」

「ちょっと楽しくなってきたところですが、仕方ありませんね」

 

 ひとまず場の空気がリセットされたことを受け、戦車は右衛門を開放してスマホの撮影を終えた。

 

「じゃあパイセン。改めて聞きたいんスけど、普段からそれで?」

「そーだよ。正直、慣れちゃうといちいち()()のメンドーになんだよね」

「本来はあまり良いことではないんですが」

「そんなのいまさらじゃーん」

 

 右衛門の懸念を素っ気なく跳ねのけて、月光はぐいと戦車に体を押し付ける。

 

「なに、また触りたくなった? ルナはいつでもいーよ♡」

「あ、そういうの今はいいんで」

 

 それを戦車は月光の頭に手を当てて押し返す。

 唇を尖らせながらも、メスガキ白ギャル(♂)は大人しく離れた。

 

「『今は』ってなにさ」

「絡むなや、面倒くせえ……で、右衛門。パイセンの健康リスクは?」

「そうですね、姫島さんその後闇落ちしていた間のお加減はいかがです?」

「えー、普通の女の子と一緒じゃない? 知らないけど」

「でしたらまぁそうですね。おそらく将来的に一般的な男性より乳がんの発生リスクが懸念されるくらいでしょうか?」

 

 右衛門の言葉にうなずき、不貞腐れた表情の親友に視線を向ける。

 

「だってよ、ユニ」

「聞いてたけど、何が言いたいの」

「ちゃんと変身は考えてしろってこった。こうなるぞ」

「えー、チャリオひどーい」

「別に、おれはビッチやる気ないし」

「は? ルナのどこがビッチなわけ?」

「服装」

 

 ド級の正論にこれには戦車も右衛門もうなずいて同意を示す。

 ギヌロと月光は鋭い眼光でその一人と一匹をにらみつけた。

 

「別に、人がどんな格好しようが勝手だろうがよ」

 

 ドスの効いたその言葉に反論するものはいなかった。

 

「そうですね、それに門倉さん。姫島さんはビッチとは程遠い方ですよ」

「こんだけメスガキなのに?」

「そういやそもそもパイセンなんで闇落ちしたんだ?」

「えー、別に面白い話じゃないけどぉ」

 

 ころっと声を高くして、月光は右衛門を見る。

 

「右衛門ちゃん、お願い」

「では代わりに説明いたしましょうか。プライバシーのために詳細は伏せさせていただきますが、姫島さんにも門倉さんに対する剛田さんのような関係のご友人がいらっしゃいまして」

「「あっ」」

 

 なんとなく展開を察した二人が声を上げる。

 

「こう、姫島さんはそれとなくアプローチをされていたのですが……」

「右衛門ちゃんがあんまり変身して深入りするなって言ったんだよねー?」

「確かに申し上げましたし、今でも間違ったことをお伝えしたとは思っていません。まぁともあれそれを受けてご友人は自分は同性愛者なのか? と疑問を抱かれたようで」

「性癖に疑問を抱くとは覚悟が足りねえな」

「なに言ってんのチャリ?」

「試しにとマッチングアプリで男の()と会ってみた結果すっかりハマってしまい、姫島さんはリングに上がる前に敗退と言う形になったわけですね」

「ひっど」

「哀れすぎんだろ」

「右衛門ちゃーん? 誰が面白おかしく話せって言ったかなー?」

「まぁ寝取られたら闇落ちするのもわかるかな」

「何言ってんだ、寝てねえなら寝取られじゃなくね」

 

 バン! と叩かれたテーブルに二人と一匹は口をつぐむ。

 元より戦車のパッシブスキルによって遠巻きにされていたテーブルから、一斉に周囲は視線を反らす。

 

「――まぁ、そのかわりにチャリオに会えたからいいんだけど? ――あんなことされちゃったし、もちろん責任取ってくれるんだよねェ?」

「は? 親友のおれを差し置いてないでしょ。先輩とはただの浮気だから。ね、チャリ」

 

 にちゃあと音がしそうな粘ついた視線を受けて、戦車は静かに腕を組んだ。

 

「この前のはあくまで緊急避難。浮気でもないし責任も取らんが?」

「男らしいですがひどい開き直りにも聞こえますねえ」

 

 右衛門がしみじみと頷くとバンバンと今度は二度、テーブルが叩かれた。

 

「チャリ? 本気で言ってんの?」

「ちょーっとお話しよっか、チャリオ」

 

 テーブルに手を突き、腰に手を当てるという同じポーズで二人の魔法少女が褐色金髪マンバン強面チャラ男にすごむ。

 腕を組んだ戦車は瞑目し、深々と息を吐いた。

 コーラのペットボトルに手を伸ばし、一気に残りをあおる。

 

「いいぜ、まだ()()()()ねえなら相手になってやる」

「――ッ」

 

 あごをつかまれた魔法少女たちが息をのむ。

 

「それでビビるとおもってんの♡」

「今度は負けないんですけどぉ♡」

「これ争う意味ないと思いますが」

 

 瞳にハートを宿してそうなとろけ顔で強がる二人の惨状に右衛門が至極まっとうな感想を漏らす。

 もちろん、チャラ男は負けなかった(本番ナシ)。

*1
「ダメか?」「ヤバいですね」

*2
仲良し




おわかりかと思いますが性癖を捻じ曲げてやろうという心意気で書いてます
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