TS魔法少女、悪友チャラ男ニ雌落チス 作:ラッダイト
「
カラオケルームに場所を移した
ふくれっ面の
「指さすなよ」
「もちろんですとも」
「根拠は。明らかに変身の悪影響出てるだろ」
「今までいわゆるメス堕ちと認められた多くの例では、ネットを使った『同性でのセックス方法』の検索履歴が跳ね上がりましたが、
ほな違うか……と言う思いと、そんなに例がそろってんのかよという
「――ユニ、弁明」
一時保留をしながら、さらなる判断材料を求める。
しかし無慈悲にも世界一は不服そうな表情のまま首をかしげるだけだった。
「おれはなにもすることないけど」
「あってくれ……」
「まぁ門倉さんの目的はあくまで変身時の性欲の解消ですしね、そして生物学的に雌雄の交尾はより一般的な例です。なおこの発言が現在の地球人類のレイヤーにおいて一部から不適当とみなされることは承知しております」
「そうそう」
「加えて言えばそういった関係を持つことにより、剛田さんに口止め――運命共同体としての安心感を得たいという狙いもあります。打算も含んだ現実的な提案と呼べるでしょう」
「そうそう」
「……」
信用してないってことか、という思いを戦車は飲みこむ。
具体的な言葉にしてその認識を共有してしまう、それこそが関係を終わらせる第一歩だと知っているからだ。
あと適当な
「なお最近では女性向けのサイトなどで『彼との気持ちよいセックス』の検索をするのはほぼ門倉さんの日課となっていますね」
「右衛門?」
「きゃー」
やっぱりメス堕ちしてんじゃねえか。
投げかけられた追撃に目を閉じて戦車は深呼吸した。
つらい現実に立ち向かう術は不幸にも良く心得ていた。
心を殺せ、歯を食いしばって目をそらせ。
人生はいつだって見て見ぬふりをすることが必要なのだ。
「フー……よし、わかった。ゴツい見た目のがいいのか、テクい奴がいいのか、なんとか用立てられないかやってみるから要望を言ってみろ」
「チャリ、おれ以外に友達いないでしょ」
「友情はなくともつながりはある……!」
「なら体がデカくてテクがあって強面だけどおれのことを良く知ってて安心して体を任せられそうな奴」
(ほな俺しかいないか……)
「そいつだいぶチンコデカいと思うが大丈夫か?」
絶望的な思いで最後のカードを切る。
自慢のように聞こえるだろうが、同時に普通に破局の理由にもなる情報だった。
一瞬、世界一も動きを止める。
「…………」
そうして猛然とスマートフォンをいじりはじめた。
「おい待てェ、何を検索してる」
「彼氏、性器、大きい、と言ったところですね」
「言うなってバカ」
「あいたっ」
「彼氏ではない……断じて違う……!」
「ひどいですよ門倉さん」
それだけは本当のことを伝えておきたかった。
性欲の解消が目的という建前はどこにいったのか、と思いながら戦車は逃走も視野にいれて今後の策を考える。
もちろん、スマホで検索中の世界一側の問題と同じくすぐにいい案は出なかった。
「……ちょいトイレ行ってくるわ」
「逃げんなよ」
地の底から響いてくるような世界一の声に「帰りてえ」そう切実に思った。
◇
「――剛田さん剛田さん」
部屋を出るや後をついてきたらしい右衛門が声をかけてくる。
「なんだよ」
「どうしてそこまで避けようとするのかお教えいただけませんか?」
「なにを」
「なにって門倉さんとのセックス!!ですが」
「勢いが良すぎる……」
どうせ認識阻害で他人には聞こえないからって好き勝手やりすぎだろ、と思う。
「お二人の関係性は他の方々とは少々違いますが、かなり良好なものであるのは間違いないと思われます。また早期に門倉さんが下心を明かしたにも関わらず剛田さんは嫌悪に基づいた行動をとられていません」
「なげーよ、短く頼むわ」
「セックス!!なさってもいいとお考えなのでは? ということです」
「うるせえ」
戦車がトイレに一歩踏み込んだところで右衛門は背に飛びつくと右肩へとよじ登ってきた。
バスケゴールにダンクしたときに気づいていたことだが、そのサイズに反し重さとしては大したものではない。
つくづく普通の生き物ではないのだった。
「おい、なんで乗った?」
「私は気にしませんし実際的にも問題はありませんがトイレの床を歩いたその後にあれこれ触るのは文化的に剛田さんがご不快かと思いまして」
「……ホント変なところは対応してんよなあ」
なるほど確かにこのあとカラオケルームでソファやテーブルをうろつかれれば、いい思いはしないかもしれない。
ケガレの概念まで理解してるとは感心するやら呆れるやらだった。
「それで、話の続きですが」
「
「どこへ……?」
「ハンドドライヤー」
「右衛門、灼熱の
なんでちょっと楽しそうなんだよ、と思いつつ小便器の前に立ち戦車はボロンする。
「話の続きですが」
そして全く引く気配のないネコもどきに観念した。
「あー、まぁ体が女なら別にいいっちゃいいんだけどよ。ただ一回やって彼女面とかされると迷惑だしな……」
「お、チャラ男らしいことになってきましたね」
「ただそういうヤツってたいてい俺をヤベー場面に立ち会わせようとすんだよな。
「おやおやおや、ただのおいたわしい方になりそうですね」
「茶化すな、まじめに話してんだよ」
「素直な感想だったのですが、そう取ってしまう剛田さんのレイヤーへの配慮が足りず申し訳ありません」
「お前は素直に謝罪すると死ぬ病なのか?」
「人類の流行にのっとったつもりでしたが……」
それは流行りではない、と戦車は思った。
もし流行っているとしたら病気の類だろう。
「ですがまさか門倉さんをそういったレイヤーの方と一緒だとお考えなのではないでしょう? やはり理由としては弱いように思えますが」
「んー、あー……」
それは確かにそうだった。
本心を打ち明けるべきかどうかを考えて、そうすべきだと結論する。
話していて感じるのは、このネコ風味の生物は無条件で世界一の肩をもつわけではないということだ。
「まぁ、あれだよ。ヤったあとに関係変わんのなんて男と女でもだぞ。ダチとやった日にゃどうなるかなんて本気で分かんねえじゃねえか」
それは断り続けても同じことかもしれない、問題を先送りにしているという自覚はあった。
そしてもしそうであっても、容易に決断はできないという自覚も。
「――なるほど」
「含みありそうだな? おい」
「いえ、さすがにこういったまだ未成熟な時期の人類につきものの悩みについては慎重に対応すべきと把握しておりますので感想は差し控えようかと」
「全部言いやがったな」
「邪推はおやめください。ですがまぁ剛田さんの意向は理解できました。この件に関しましては私も事後の影響について正確な予測はできかねるところです」
「そうかい」
「ですので以降は中立――門倉さんと剛田さんのお二人が結論を見つけるのを静観しようかと思います。それをお望みでしょう?」
「そうしてもらえりゃ助かるな」
もし自分が世界一の誘惑に屈してしまえば、それはもう他の誰のせいでもない自業自得だ。
どうなろうと納得はできる。
思惑通りの展開になったことにほっとしつつ、あとは待ち構えている世界一を今日のところはどういなすか、ということだった。
「了解しました――ところで剛田さん、それが平常時の姿でいらっしゃる?」
そこへ肩越しに用足しをのぞき込んでいた右衛門が首をかしげながら聞く。
ガラス玉のような青い目はかつて見たことない揺れを表現していた。
「見てんなよ。まぁこれで六割くらいか?*1」
「やばいですね。きわめてなにか生命に対する危機を感じます」
「そこまでか……?」
右衛門の報告を受けた世界一が露骨にビビった結果、なんとかその日はうやむやになった。