TS魔法少女、悪友チャラ男ニ雌落チス   作:ラッダイト

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八手 新たな力、新たなスケベェ

「ユニバーサル・フープ・アターック!」

 

 光源も見当たらないのに妙にまぶしく、広がりがあいまいな空間――位相のずれたフィールドを、キラキラと光と効果音をまき散らしながらフープが飛ぶ。

 実にヒネリのない名前の必殺技だったがその威力は絶大だった。

 直立二足歩行の人型ヴォイドたちをあっさりと両断するとちりへと変えていく。

 本日ついに一つ上のレイヤーのヴォイドと戦うことになった世界一(ユニバース)だが、以前右衛門(うえもん)が説明したとおりにしっかりと備えはできているようだった。

 

「はえー、すっげえ」

「いかがですか剛田(ごうだ)さん」

「なんかすげぇな」

「そうでしょうとも」

 

 戦車(チャリオット)の小学生レベルの言葉に、うんうんとネコ型謎生物は満足そうにうなずくと、心なしか上機嫌な声で続ける。

 

「剛田さんも変身してみたくなってきたりはしていませんか?」

「いやー、俺は変身するなら実写の特撮系のがいいわ」

「男の子ですねえ。ちなみにどういった感じの路線で?」

「変身するたびに寿命とか記憶とかが失われるようなヤツ」

「――どうかされましたか、剛田さん? 何かお辛いことでもあったなら私が話でもおうかがいしましょうか」

 

 ダチがデカ乳女体化(可変式)してメス堕ちしてることかな……という言葉を飲み込む。

 

「いや単なる趣味だろ、趣味の話」

「それにしてもおそらく自分が本当には変身しない前提だと思われますが」

「なんでそんな食いつくんだお前」

「いえ、剛田さんは見た目に反して常識枠と認識していたので、急にそんな闇をお出しされてしまうとこちらとしては少々不安になるんですが」

「さりげなく人をディスりやがったな。あと言うほど闇か?」

「自分で闇だと気づいていない特大の闇……!」

 

 右衛門の大きな頭が小刻みに震える。

 

「その、特撮ヒーロー系に行くとしてももっと良い変身があるかと思いますよ剛田さん?」

「そうかねえ、あとその言い方だとそっち系の変身もできるみたいに聞こえるんだけどよ?」

「はい。しこたまとまでは言えませんがおりますね。とは言いましても私どもはあくまで魔法少女の支援が役目ですので伝手らしい伝手もないのですが。ご期待に沿えず申し訳ありません」

「いやまぁ、別になれるんだったら程度の与太話だしな……」

「なれるなら寿命や記憶を失いたいんですか?」

「別に失いたいわけじゃねーよ。しっかし本当、急に相手もレベルアップした感じあんな」

 

 追及をきりあげるために戦場に視線を移せばやみくもにとびかかるだけだった今までと違い、今回のヴォイドは時間差や挟撃など頭も使って動いている。

 世界一の対処も、気合の入った蹴りやフープを使った打撃を行ったりと攻防にはなかなか見ごたえがあった。

 衝突の際もいちいち痛そうな音が響いている。

 

「以前お伝えした通り、ヴォイドの成長は右肩上がりですからね」

「ほぉん」

「しかし門倉(かどくら)さんも負けてはいませんとも。ご本人のレベルもそうですが、装備も強化されていますので」

「全然気づかなかったわ、なんか変わってるか?」

「ええ、たとえばあのオーバーニーソックスですが、おおよそ五十パーセント透け感が増しています」

「なんのためだよ――いや、説明はいい。わかってるから」

 

 聞くまでもなく羞恥心とスケベ心のために違いなかった。

 

「そうですか?」

 

 と首を傾げた右衛門は、戦車が重々しく首を横に振ると頭の位置を戻した。

 

「さらにスカートの丈は五センチ切り詰め、中のパニエはこちらも透け感の強い軽い素材に変更、コルセットも二センチ締め上げています」

「バカじゃねえの?」

「仕上げに本日、門倉さんはネット通販で購入したエッチな下着を衣装の下に着用済みです……! 横から見ておりましたがかなりどうかと思うデザインですよ!」

「バカじゃねえの??」

 

 直後、縦で飛んできたフープが右衛門を両断した。

 

ぎゃー!

「うおおおおおおおおおおおッッ!?」

「ぷぎゅ」

 

 あわてて戦車は両手で左右から右衛門の体を押さえる。

 拍子にちょっと左右で上下にズレたが、右衛門はなんとかネコ似の尊厳を保つことができた。

 

「剛田さん、剛田さん。手を放さないでくださいね? 今、いそいでくっつけておりますので、絶対に放さないでくださいね? これ、フリではありませんので」

「お、おう?」

 

 さすが謎生物、真っ二つになっても流ちょうに語る姿に「案外余裕そうでは?」と思いつつも、さすがに知り合いの断面図は見たくない(一部シチュエーションにおける異性の特定部位を除く)。

 なんとか押さえつけていると、ざっと高く靴音が鳴った。

 

「――右衛門さぁ、おれ余計な事は言うなって言ったよね」

 

 新体操選手よろしく、腕にひっかけたフープを器用に回しつつ銀河魔法少女マジカル★ユニバースが低い声で言う。

 その姿は実際煽情的だった。

 

「確かにおっしゃいましたが、これはひどいですよ門倉さん」

「警告は、した」

 

 あわれっぽい声を上げる右衛門に、あくまで冷たく世界一は告げた。

 くるくると体に引っ掛けて回るフープが燐光をまとう。

 

「おいユニ」

「なに、チャリはそっちの肩持つの?」

 

 ピリピリと空気を震わせるとげのある言葉に、戦車はおもわず顔をしかめる。

 

「肩持つってか真っ二つは普通にやりすぎだろ。この上刻もうってか?」

「……ふん」

「剛田さん……きゅん♡」

「お前も茶化すな」

「むぎゅ」

 

 じいっと親友たちが視線をぶつけあう。

 先に根負けしたのは世界一のほうだった。

 べちん、と横向きにしたフープで右衛門の頭を叩くとズレがなおり、頭はきれいな丸となった。

 

「乱暴ですよ、門倉さん」

「元に戻してやったんだからいいだろ」

「お前がやったんだけどな」

 

 言いながらも戦車の頭に先ほどの右衛門の言葉がよみがえる。

 自然と目が世界一の衣装に向いてしまう。

 なるほど、健康的な脚を覆うソックスの透け感はそれとわかるほどに増していた、パニエはよくわからないが、スカートの丈も短くなった感じがあった。

 無遠慮な視線から逃れるように、世界一がぐいっと裾をつかむと下へ引っ張る。

 コルセットに覆われた腰はもとより細い、女子激怒待ったなし。

 戦車の視線はそこからさらに上へ、例によって深い谷間に――

 

「待った」

「おれのセリフなんだけど……じろじろ見すぎだろ」

「剛田さんは普段奥手というか紳士というかなのにスイッチ入ると大胆ですねえ」

 

 うるせえ、と言いながら戦車は右衛門を抱え込み、世界一へと背を向けた。

 しゃがみこんだまま三角の耳に顔を寄せる。

 

「――おい、右衛門サンよ」

「はい、なんでしょう。あまり分割されるのも困るのでお話は門倉さんを怒らせない範囲でお願いしますね」

「丸聞こえなんだけど」

「なんかこうよ、ユニの乳しぼんだというか、容量減ってないか?」

「あぁ、それはですねブラのカップが――」

 

 ぽん、と両肩に軽く衝撃が走った。

 視界に半透明でラメの入った輪が見える、もちろんマジカル★ユニバースのメインウェポンユニバーサルフープ(ママ)だった。

 

「引き切っていい?」

「引き切る……?」

「おうバカやめろ」

 

 あっさりと斬首を提案する親友に若干引きつつ、ゆっくりと振り返る。

 その間も抱えた右衛門を自分とフープの間に置いておくことは忘れない。

 

「てかさ、それ以前にチャリはまずおれに言うことあるくない?」

「無いが?」

 

 人をギロチン台にかけておきながら長い襟足を指でもてあそんで乙女面親友に告げる。

 だが戦闘直後で盛り上がっている勝負下着着用の魔法少女には通じない。

 やや子供っぽいしぐさで頬を膨らませ、上目遣いで言う。

 

「こう――可愛いとか、似合ってるとかさ……そういうの、あるじゃん」

「無いが??*1

ぎゃー!

 

 戦車が心底からの否定をした直後、殺意とともにフープが引かれ右衛門の首が落ちる。

 そのわずかな抵抗で生じた一瞬の間に戦車は見事奇跡の脱出ショーに成功した。

 

 ――魔法少女VS悪友チャラ男時間無制限一本勝負、結果:勝負無し。

 セコンド右衛門、全治五分。

*1
なんで彼女面してるんだコイツ

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