輸血パックが手放せないアカデミア   作:AMEN!!

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合否勝手に確認すんな!

 

 実技試験が終わってから暫くして……俺は孤児院の自室で棺桶に籠もりながらゆったりとしていた。

 

 えっ?なんで棺桶なんて物を持ってるのかって?誕生日プレゼントに棺桶型ベッドって言う訳の分からない代物を養母さんが買ってきちゃったんだよ……ジョークにしてもこんなの渡してくるか!?と思う。

 

 なにが嫌がって、中に入ると凄い落ち着くんだよ。欠けてたパズルのピースがハマるみたいに、ピッタリとフィットして落ち着いて眠れる。それが何と言うか……癪に触る。

 

 養母さんも流石にマジでベッドにするとは思ってなかったらしい。下手をすれば直ぐにフリマ行きとか考えてたそうな……なもん渡すな!悪趣味にもほどがあるんだよ!使けど!

 

 まぁいいや……この間血液使いすぎたせいで疲れた。今日はもう寝る。

 

「おい!大変だにいーちゃん!」

「にーちゃん!手紙手紙!手紙来てるよ!」

「にーちゃん!棺桶にこもってないで出てこい!」

「紅導さん!ゆ、雄英からお手紙が!」

 

 みんないっぺんに同じ事話すなよ!?

 ……この子らは同じ孤児院に住んでる愉快な仲間達と、養母さんの夢見さんだ。いつも騒がしいことこの上ないが……ってそんな事は今はいい!

 

 雄英から手紙!?合否発表か!?だぁ!棺桶揺らすな!出る出る!ちゃんと出るから!

 

「マジかっ!?遂に来たか!?」

 

 俺は棺桶の蓋をずらして寝床から飛び上がる。

 だが、すでに封筒はちび達と夢見さんの手によって上げられ、謎の投影機が地面に置かれていた。

 

「あんたら何やってんだ!?」

「ごめんなさい!待ちきれなくて……」

「いや開けるにしても本人出て来てから開けるだろ!?ちょっと待てや!」

 

 本当に勘弁してほしい。こっちだって楽しみにしてたのによぉ!俺は立ち上がって投影機の周りを陣取り座り込むチビ達の上から投影機を覗き込む。

 

「これなんだろ?」

「投影機だよ!」

『私が投影されたァッ!!』

「すっげぇオールマイトだ!?」

「まぁっ!」

 

「お前ら人が待て言ってるのによくやるね!?」

 

 勝手に投影機起動せんなよ!?こっちまだ心の準備ができてねぇんだって!?ってかはっ!?オールマイト!?NO1ヒーローの!?なんでぇ!?

 

『念の為言っておくと、これはOBの特別演出とかでわはないからね!実は私、この春から雄英で講師をやる事になってね!その挨拶がてらと言う事さ!』

 

 オールマイトが教師……!?すっげぇ……雄英に受かった奴は幸運だな……ん?まてよ?こんな内部情報はながすって事はまさか……!?

 

『紅導蛮くん!君の仮想敵の撃破ポイント……即ち敵ポイントは47!しかし、我々が見ていたのは敵ポイントだけにあらず!』

 

「「「な、なんだってー!?」」」

「チビ共、お前らよく分かってないだろ。」

 

 何となくの雰囲気だけで叫んでるなこいつら……まぁ、可愛いから良いや!!えっと、敵ポイントだけにあらず……で、なんだっけ?

 

「我々が見ていたもう一つのポイント!それは救助ポイント!紅導蛮少年、私達は見ていた!君が0ポイントに崩された瓦礫を真っ先に破壊したのを!」

 

 おっ、まじか。あれば我ながらナイス判断だったと思う。……自画自賛も過ぎるとただただ恥ずいな。

 

「すべての瓦礫破壊と言うわけには行かなかったが、まず被害を持たらす可能性のあるものを排除する!その心意気素晴らしい!そして、仮想敵を吹っ飛ばし落下した少年を助けた、彼に代わってお礼を言おう!ありがとう紅導少年!………と言うわけで、君の救助ポイントは40P!合計87P!実技試験首席合格だ!おめでとう!」

 

「「「紅導にいちゃんすげぇ!」」」

「ハハハハ!褒め称えろや!」

 

 

チビ達が輝く瞳で俺を見てくる。この機会だから思いっきりふんぞり返っておこう。すると、夢見さんが静かに俺に歩み寄ってくる。

 

 不意に夢見さんの顔を見てみると、彼女は……泣いていた。

 

「うっ……ぐすっ、ひぐっ……」

「ちょっ!?夢見さん!?」

 

 俺がなんかしでかしてしまったのかとオロオロしていると、夢見さんは俺の腕をつかんでそっと抱きしめてくる。まるで実の母が子を抱きしめるようなハグだ。

 

「よく!……頑張ったね、紅導!……」

 

 夢見さんは啜り泣く声を抑えながら、そうつぶやいてくれる……やめてくれよ、なんか小っ恥ずかしい気分になる。

 

「俺も俺も!」

「にいちゃん頑張ったな!」

「よしよひ!」

 

 そう言ってチビ達も俺を抱きしめてくる……やめろよ、優しくすんな……いまされるとマジで泣いちまいそうなんだよ。

 

 目元に熱いものが込み上げてくる……俺の個性は強力だが、デメリットも多いし()()()()()事もあった。親に別れ際に言われたことは覚えている。

 

 

 

 

―――このっ!!!化け物めっ!!!――――

 

 

 

 

 

―――私達に関わらないで!!!――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、くそう。嫌なことを思い出した……だけど、別にいいさ。今の俺には、俺を包んでくれる家族が居るんだからな。

 

 これで俺はただの化け物から、ヒーローを目指す化け物だ。こっちのほうが、何か格好いいだろ?

 

『来いよ!紅導少年!ここが君のヒーローアカデミアだ!』

 

 憧れのNO1の声が、今の俺にはなぜか遠く聞こえた。

 

「頑張れよー!!」

「下手売ったらゆるさねぇぞー!」

「ファイト~!!!」

「紅導!頑張って!」

 

 あんなすごい人の心のこもった一声より……わーわーと喚き叫ぶチビ達の声のほうが、よっぽど耳に残ってしまっていたからだ

 

 

 

 

 

✙✙✙✙✙

 

 

 

 

「実技総合成績でました!」

 

 無数の学生たちの戦績がずらりと表示される。

 ここで行われる会議は、雄英の実技試験の講評……無数にいる学生の中でも、取り沙汰されて話題に上がるのは、首席の紅導蛮、次席の爆豪勝己、そして緑谷出久である。

 

「レスキューポイント無しに次席2位かぁ!」

「低ポイントの仮想敵は標的を捕捉追跡してくる。爆破の個性で敵を引きつけてペースを落とさずの撃破……タフネスの賜物だな。」

 

「反対にヴィランポイント0で8位。名前は……緑谷出久!」

「0ポイントに立ち向かってくる受験生は今までもいたけど、ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないね!」

「だが、個性の反動で腕を負傷……まるで個性を発現したばかりの幼児だ。」

 

 二人はやはり対照的かつ同中出身ということで、教師陣の目にも留まりやすいのか、かなりの議論が繰り返されている。どちらも派手な個性持ちではあるし。

 

 そして、やがて首席の紅導と言う男にも触れられる。

 

「そして首席の紅導蛮……個性は、吸血鬼……吸血鬼っぽい事ができる……か。」

「使い魔?の召喚や変幻自在なエネルギー。能力自体はそう複雑でもないが、出力が優れているな。この先学べば応用力にも期待が持てる」

「咄嗟に瓦礫の方を叩いて被害を減らそうとしているのも良かったな!被害が起こる前にある程度減らせるならそれはそれでヨシよ!」

 

 ヒーロー、そんな彼等の最も望むべき展開は、何かが起こる前に対処できる事前対処だ。

 

 何かが起きてからではなく、何かが起きる前に対処する。

 

 前者も勿論ヒーローの鑑と呼べる行動だ。だが、そればベターではあってもベストではない。

 

 そういう意味では、紅導はベストな選択をつかみかけたと言えるだろう。

 

 完璧にはうまくいかずとも、明らかに瓦礫による被害は減少したのだ。

 

「しかし、デメリットの多い個性であるのも事実か。」

「日光、十字架、にんにく、流水……オマケに血液の摂取が健康に生きる為の必須条件。確かに、まるっきり吸血鬼だな。」

 

 だが、雄英の教師たちからしてみれば「それが何だ」という話だ。どんな個性を持っていようが、ヒーローとしての志を持って雄英高校の門をたたいた。

 

 そして彼はくぐり抜けた。それが全てだ。

 

 そんな化け物の様な彼を、彼だけではない、個性の制御ができない彼も、粗暴な言動をとる彼も、先を生きるオトナとして導く。それが自分達の役目だと……そう考えているからだ。

 

 

 こうして、雄英高校の入学式までの日にちは着々と近づいてくるのだった。

 

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