オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
今日はツインテール部にもよらずに、家に直帰してきた。
ここのところ敵は現れていないし、家なら地下秘密基地を通して出動することが出来るからだ。
で、今日直帰してきたのは他でもない。母さんやお客さんにオレのコーヒーの味を見てもらうためだからだ。
厨二喫茶と化した我が家ではあるのだが、皆さん舌は肥えているのか結構味にはうるさいのだ。まぁ、毎日のように母さんのコーヒーを飲んでいたら嫌でも舌は肥えてくるのだろう。実際、母さんはその趣味嗜好以外はまともであるし、腕だって確かなのだ。
公の場なら弁える良識だってある。普段はそう言ったところを見せないのが原因だから総二に母さんは変人だと思われているのだろう。
趣味が絡まない限り母さんはいい母親だと思うんだけどなぁ。
話は逸れたが、そんな母さんのコーヒーの味にはまだまだ追いつけていない。その証拠に
「うん、まだもうちょっとねぇ~」
「ふむ……このコーヒーも中々だが、私の血への衝動を抑えるにはまだ足りんな」
と、母さん及びウチ一番のコーヒー通である吸血鬼(という設定)の常連さんからのありがたい一言を今日も貰ったのだった。
「むぅ、やっぱり蒸らす時間がまだ甘かったか?」
「う~ん。蒸らす時間は問題ないと思うわよ?ただちょっとの加減で味って変わるから」
「だ~、なかなか母さんの域までいかねーなぁ。コーヒーはうまく淹れられるようになりたいってのに」
「しかし、その年でなら十分なレベルだと思うがね。まだ継ぐのは先なのだろう?」
「そりゃそうなんですけどね」
「私だってまだまだ若いわよ~?」
「勿論マスターが若いことはここの住人ならわかっておるよ」
と、まぁ吸血鬼さんの言葉に今いるお客さん達全員が頷く。
「こんな素敵な場所を提供してくれているのだから、素晴らしいですしね」
まぁ、ここまで自分の疾患を出し切れる場所は自分の部屋以外だとここくらいのもんだろうなぁ。ここには同類がたくさんいるわけだから。
「ところで話は変わるのだが……」
「なんすか?」
「一樹くんはどういったモノを持っているのだね?」
「はい?」
「つまりどういったモノを心に秘めているのだね?」
それはつまり……オレにどんな厨二があるのかを訊ねてきているわけか。
「あ、お母さんも気になるわね~。まぁ大体の予想はつくけれど」
「なんでだよ……」
「何と言っても母親ですから!一ちゃんの考えてることくらいなんとなくは分かるわよ~」
流石母親といったところなのだろうか?まぁ女手一つで育ててきているのだから、オレらの事を把握くらいはしているのだろう。実際前世でも母親には隠し事がうまく出来なかったわけだし。
「あ~……オレのはですね」
「「「「オレのは?」」」」
あれ?なんか常連さん全員集まってきてる!?
「ハードボイルドです」
「ハードボイルドか」
「やっぱりね~」
これは前世でMovie大戦を見て憧れるようになったのだ。あのおやっさんの背中にはかなり憧れてしまったのだ。まぁ
「まったくそれに近づいてきてるとは思えないんですよねぇ」
「おや?諦めるのか?」
「まぁ諦めてるわけじゃないんですけどね。ハードボイルドになるにはまだまだ先は長いなぁ、って感じてるだけですから」
実際あの背中は遠すぎる。今のオレでは追いつくどころか離されてしまっていることだろう。それだけ長く険しいものだとオレは思っている。
「いやはややはり彼もマスターの息子さんですね」
「ええ。自慢の息子なのよ」
ただ厨二を話して自慢の息子呼ばわりは少し嫌なモノを感じるからやめて欲しいと切に願ったりする。
「そういえば、そのカフはなかなかいいセンスをしているね」
「あーこれっすか。一目ぼれで買いましたよ」
彼が言っているのはトゥアールカフのことである。聞かれた場合の対処は予め考えていたので簡単に返すことが出来た。
「ほう。私も欲しいものだ」
「たまたま露天商で見つけたんで今もいるのか分かりませんよ」
これくらいが妥当なところだろう。実際このモチーフは露天商で見たものだったし。
「しかしコーヒー以外のモノはかなりの腕だというのにな」
「まぁ、賄いレベルですって。とりあえず高校出たら調理師学校に行こうと思ってますし、バイトしながら」
「おや、それじゃ家を出るのかい?」
「まぁ、一回は一人暮らしも体験したいですしね
「ふむ、それもいい経験が出来るのだろうな」
「私としてはそこまで気を遣わなくてもいいと思ってるんだけどねぇ」
「そうは言ってもなぁ」
いつまでも脛をかじって生きていくわけにもいかないしなぁ。
「と、そうだ、一ちゃん」
「なにさ、母さん?」
「ちょっとコーヒー買いに行ってもらってもいいかしら?もう連絡はしてあるから」
「あ~、了解。金はいつも通り振込だっけ?」
「そうよ。ちゃんと連絡してあるからね~」
なんだろう、母さんからおかしな波動を感じるんだけど……。ま、今に始まったことじゃないけどさ。
「んじゃ、自転車で行ってくるわ」
「は~い。よろしくね?」
それじゃ、いつものように猫の尻尾(店名)に行くとしますか。
そんなこんなで無事に猫の尻尾にやってきた。途中友人連中(ツインテイルズ談義してた)に出会い色々言われたが、まぁ学園でのいつも通りの会話だったから無視して自転車を漕いできたのだが。
「こんちわー。アドレンシェンツァです」
「おや、一樹くん。いらっしゃい。話は聞いているよ。ちょっと待ってなさい」
「はい」
とここのマスターの
「い、一樹さん!こんにちわ!!」
「ん?ああ、このみちゃん、こんにちわ」
「は、はいです!」
と、忠道さんの娘のこのみちゃんが顔を出してきた。ちなみに小学3年生になったそうだ。しかしオレが来るといつも顔を出してくるな、このみちゃん。いつもお手伝いをしているのだろう。関心関心。
(当然一樹は気付いていないが、このみちゃんは一樹のことが好きなのである。まぁ初恋であるし、小学生の淡い憧れといったものが多分に含まれているモノではあるのだが)
「一樹さんはいつものですか?」
「うん。最近繁盛してきてね。今までの量じゃ足らなくなってきたみたいなんだ」
「そうなんですか。でもでも一樹さんのお母さんのコーヒーって美味しいですから、流行らないのがおかしいと思ってたんですよ」
「そう言ってもらえると母さんも喜ぶと思うよ」
まぁ、常連さんは全員厨二だが。
「そ、それに一樹さんのコーヒーもおいしいですし!」
「ありがとう。でもまだまだだよ。今日も母さんの味には追いつけなかったし」
「で、でもでもおいしいです!絶対に!!」
「そっか。ありがとう、励ましてくれて」
一生懸命にはげましてくれているこのみちゃんの頭を一撫でしてあげた。
「あ……」
「っと、今気づいたけど、このみちゃん髪留め変えたのかい?」
と、撫でた時に気付いたのだが前髪を押さえている髪留めが今までの物と違っていた。
「はい!でも気付くのが遅すぎたので、要求します!」
と、気付くのが遅れたせいで怒らせてしまったようだ。ふむ、何を要求されるのだろうか?
「なので頭なでなでを要求します!」
「って、それでいいのか?」
「はい!だから早くして下さい!」
ずいっと頭をさしだしてきた彼女に押されなでなでをし始めるオレであった。
結局忠道さんがやってくるまでオレは頭を撫でてあげ、帰り際に忠道さんに「娘はやらんぞ」の一言が印象に残ったオレであった。
後日、この話を慧理那にしたら何故か機嫌が悪くなったのだった。解せぬ。