転生だ!追放だ!売国だァ~!   作:丸米

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プロットをいっぺんリセットして作り直したので再開します。
それに伴い11話の最後の場面も少し修正しています。

このお話は一回12話を削除して完全に書き直したうえで再アップしたものとなります。どうしてそんな事したんだと気になる方は活動報告に経緯を書いていますが、一言で説明すれば「読者様にとって不快なキャラと展開を出してしまったので君消す。した」です。まあおおよそ半年経ちましたしもうああそんな事あったなぁ....と風化してくれたやろという舐めた想定をしています。

またこんな事にならないようバランスには気を付けて書いていこうと思います。今回は私にとってもいいお灸になりました。以前のプロットよりも大分いい感じになったとも個人的にも思いますので、どうか見放さないで~。



⑫※注意 この物語に登場する人物は所領同士の協定を私物化し目的の為に利用しようとしています。心を広く持ち、適切な距離感でのご拝読をお願い申し上げます。

「......」

 メルハイムと予想外の出会いをしたヒューイは、思索の中にあった。

 やはり。既に過去からして原作の流れから大きく逸脱している。

 ──聖女が、メルハイムの叔父に刺された? 

 原作とは異なる流れでの出来事が巻き起こっている。そもそも、今の時点で勇者パーティが結成されていることそのものが原作とは異なっている。

 

「一度──レイラの周辺を探る必要があるかもな」

 整理をしなければならない。現況を把握するためにまだまだ情報が足りない。

 何処かのタイミングで一度皇国に戻って、情報を集めなければならない。

 とはいえ。こちらでやる事を終わらせてからだが。

 

「──ヒューイ様。手筈の方は整いましてよ」

「ありがとうアメルダ殿。さあて、ここからは地味な交渉事が続きますが、踏ん張っていきましょう」

 

 せっかく、国境上の所領をコントロール下に置いたのだから。好きにさせて貰いましょう。

 

 

 改めて我々の目的に立ち返りましょう。売国です。

 国境線の要所というかなり重要地点を抑えましたが、まだ十分ではない。

 首の挿げ替えが出来たとしても。まだ臓器や手足の末端までコントロール下に置けているわけではないのですよ。

 

「──マモルモン領にはこれより商業ギルドを設置します」

 さてさて。マモルモン領は隣国と隣領との交易に依存していたが故に、商業ギルドが存在しませんでした。民間の商人を排除していたわけですね。この状況を大いに利用させてもらいましょう。

 

「ギルドの代表権はアメルダ殿にお渡しいたします。ギルド管轄の工房の運営をキャラルシン殿に、警備責任者をグリンド殿に。それぞれ役職を与えます」

 

「グリンド殿とアメルダ殿はラミアス帝国将軍の嫡子と元衛兵長に顔が割れています。そしてお三方はベルガンの王都から追放された身分。ベルガンとラミアス双方の権力の板挟みにされる事態は避けたい」

 

「よって。マハムドンとの通商協定を結び直します。これからはこの新設の商業ギルドを通して交易を行うと共に、通商協約も手を加えます。関税の引き下げや輸出入品目の見直しをはじめとした規制緩和を行います。要は──マハムドンに有利な形で協定を結び直す訳ですね」

 

「我々が排除される=ラミアスの国益を損なうという図式を作り出すのです。そうすれば、ラミアスの権力層から狙われるリスクが減らせる。我々の最終目標は売国です。買い手には全力で味方でいてもらわなければなりません」

 

「ただし。通商協定は表向き”あくまでラミアスがマモルモン支援を行うための暫定措置”という立場を取り、二年ごとに更新を行います。我々がマモルモンの統治を行う限り、ラミアスは有利な立場で交易を行える。我々が排除されることは協定の更新が行われず、旧来のものに戻されることを意味するわけですね」

 

 最終的な目標はラミアスにベルガンを売国する事がゴールになる訳でございますが。その為にラミアスに尻尾振って靴をなめて腹見せてここ掘れワンワンしてればいいという訳ではないのです。ラミアス側にも支払うべきものは支払ってもらいます。売り手である我々を全力で守ってもらいます。

 こちらの存在がラミアスの国益になるというなら、ラミアスの権力層がこちらを排除する理由は特段無いでしょう。たとえメルハイムやザッハルトが自身の背後にある権力を動かしこちらを排除せんと動こうと、排除の理由をこちらから消せばいいのだ。

 

「──ラミアスの兵士を駐留させ、交易の条件も軟化させる。成程.....本当に、ここが売国の足場となっているのでございますわね」

 

「そう。こっちが足場を整えてやっているのだから、それに乗らない理由はないでしょう。そしてわざわざ藪蛇に突っ込んで足場を壊す理由もない。以前の襲撃事件も、これでラミアス側からアクションを起こされる危険性は減りました」

 

 その上、と続ける。

 

「お三方は王都から追放こそされていますが、その内容は公表されていません。王子の婚約者との密通も裏社会への武装の密売も隣国への研究成果の横流しもベルガンとしては表沙汰にはしたくないでしょうからね。協定の存在を盾にラミアス側からの庇護を得て、お三方はこれから表で動くことができます」

 

 そう言うと、いの一番に反応したのはグリンドであった。

 

「ようやくか。裏でこそこそ動くのもまあ悪くはなかったが、これで堂々と歩き回れるわけだ」

 

「いいですかグリンド殿。飲む打つ買うも好きにやっていいですが、どれをするにしても後腐れのないようにして下さいね」

 

「んだよヒューイ殿。一緒に遊びてぇならそう言えよぉ」

 

「私の発言のどこにその意図を見出したのか甚だ不明ですが、遠慮しておきますね──まあほら、グリンド殿。この先一番昂奮する場面を想像してください」

 

「あん?」

 

「この先──自分を捨てた連中が泡吹いて倒れていく未来が見れるのですから。路傍の石に転がって見れなくなるのは悲しいですよ?」

 

「.....いい事言ってくれるじゃねぇか、ヒューイ殿」

 

 ね? いい事言うでしょう? だから本当に頼むから多少でも自制を利かせてくれグリンド。路傍の石に躓いて死ぬが、原作でのテメェの一番の死因なんだよマジで。

 

「.....え、えへへ。ボク、自分の工房をもう一度持てるんだ」

「当然ですよ。貴女はこの国一番の賢者ですから」

 

 誉め言葉を与えると、エヘヘと笑う。これだけ見れば愛らしいものなんだがなぁ。

 この女は平常であれば実にコントロールしやすい。褒める讃える持ち上げるというタダで調達できる餌を投げればそれだけで鬼神の如き働きをしてくれる。そこに相応の金と立場を与えてやれば役満だ。これから新設する工房の人員には徹底してこう伝えている──所長であるキャラルシンにはとにかく褒め言葉を与えろ。言動を否定するな。ヤバ目な発言をしたとしても諫めるな。一旦肯定しろ。肯定したうえでこっちに即座に報告しろ。キャラルシンの機嫌の上下で給料に色を付ける約束も裏で交わしている。こいつが裏切る理由は自己愛を傷つけられるか自己保身の本能が働くかの二択。まずは自己愛に関してはしっかり餌をやって腹を満たしてやらねばならない。

 

「──とはいえ。暫くのお仕事はマモルモンに入り込んでくる物資の管理ですわね。仕方ないですけど、退屈な仕事ですわ」

 

「いえいえ。アメルダ殿にそんな木っ端仕事はさせませんよ。貴女には──ここを足掛かりに、金の成る実を抑えていただく重要なお仕事がありますのでね」

 

 さてさて。目的達成の足掛かりは出来たことですし、まだまだ踏ん張っていきましょう。

 

 

「.....」

 

 ──原理原則の解らない力は、不気味。

 その言葉がずっと、メルハイムの頭の中で駆け巡っている。

 如何なる力であっても原理や原則が存在する事が前提である事がさも当然の如く言う様が、新鮮だった。

 

 この力は神からの恵み。選ばれし者の証。それ故に責任を負い、大いなる使命を果たさねばならない。聖印が与えられるという事は、そういう事だ。原理は神であり、原則は神の選択だ。そこに疑問を挟むことなどあってはならない。神聖皇国が掲げる神の導きに反する。

 

 この力に、神以外の原理を、原則を、探求してもよいのだろうか?

 

「──さてさて。皆の者、報告がある」

 マモルモン領の宿の中。老武闘家、ザッハルトは皆を一室に集めると開口一番にそう言った。

 

「それ、いい報告かしらぁ? それとも悪い報告?」

「難しい質問だ。視点の変化で良い悪いも変化する類の報告である」

「.....なによそれ」

「我が国とマモルモンの通商協約が改定される。大まかに言えば、関税が引き下げられ、輸出入可能な品目制限が緩和された。ラミアス側が有利な条件に改定された」

「.....いい事じゃないかしらぁ? どこに悪い要素があるのぉ?」

 

 タスカリカの言葉に、メルハイムも頷く。

 ラミアス側に有利な形で通商協定が結び直される。そこだけを聞けば、我々にとって悪い要素は何処にもない。

 

「うむ。我が祖国の視点で見れば何も悪い要素はないだろうな。さて、ではここで通商協定の改定事項を見ていこう。これまではマモルモン領との交易は、領主が独占的に行っていたが。ここからは、領主が新設した商業ギルドに委託する形で交易がスタートする旨が書かれている」

 

「何が変わるのぉ? 結局はそのギルドも領主の手下でしょぉ? 表向きギルドが交易するってだけで、領主が独占している形式は変わっていないじゃない?」

 

「この新設ギルドの代表名だが──アメルダ・ココルピーとある。この者は、以前国境線で食料をマモルモン側に密輸していた隊商を率いていた人物だ」

「な.....!」

「それだけではない。ギルドの民兵管理部門の責任者のグリンド・バーンハルトも、あの国境線上で儂と果たしあった人物だの。いやはやいやはや」

 

 つまり、とザッハルトは続ける。

 

「ラミアスの国益に鑑みればこの状況は純粋に良いのだがの。諸々の事情を知っている我々の視点からすると、協定の改定に伴う人員にあの時の事件の首謀者と思われる者が二人入り込んでいる事になるわけじゃ」

 

 ──マモルモンとマハムドンの国境線上での襲撃。

 あの時確認できた人物は三人。隊商の陣頭指揮を執り行っていたアメルダ。ザッハルトとタスカリカと交戦したグリンド。そして、包帯で顔を隠していた謎の男。

 

 確認できた三人のうち、二人が──この協定により新設されたギルドの役職に置かれている。

 

「協定は二年ごとの更新。この協定そのものはあくまで暫定処置という扱いだの。ラミアス側からの支援物資の送付の円滑化の為という名目での改正。支援完了とマモルモン側が示せば、二年後には協定は旧来のものに戻される」

 

「成程ねぇ.....つまりはこの協定の結び直しは”二年後からも有利な条件で交易したければ、現在のマモルモンの体制を崩すな”とラミアス側に突き付けているって訳ねぇ」

 

「そういう事だの。そしてラミアスに守れと言っているその体制の中には──あの時の密輸の首謀犯二人が入り込んでいるというわけじゃな」

 

「.....つまり。現状のマモルモン領の統治者は、自身の権力保持の為にラミアスの庇護を引き出そうとしているのですね」

 

 ここまで静かにザッハルトの報告を聞いていたレイラは、そうポツリ呟いた。

 現状を纏めると、そういう事になるのだろう。

 ラミアス軍の駐留許可。ラミアス側に有利な通商協定の改定。マモルモンは、ラミアスにとって都合の良い存在に自らを変化させている。

 反乱によって権力を奪った現体制の者たちは──自身の地盤を固める為に、ラミアスを取り込もうとしている。

 

「ラミアスにとって都合がいい存在故に、我々も大っぴらに彼奴らを突くことも出来ぬ。ただでさえ我々はレイラ殿を隠しながらの旅を行っているのでな。現状のマモルモン領主はラミアスにとっての国益故に、我々の行動で不興を買う訳にはいかないのじゃ。下手をすれば、我々の方が祖国からにらまれる羽目になるやもしれぬのでな」

 

 ううむ、と皆が唸った。

 考えれば考えるほど、あの連中の策謀はとんでもない。マモルモンの内乱からの権力の奪取から、ラミアスの庇護を引き出すための政治的立ち回りも含めて──全てが点と線で繋がっている。

 

「──新領主がよっぽど優秀なのかしらぁ。確か、前領主の叔父よね?」

「.....ここまでの策謀を考え、実行できる力があるのならば。ブーデガルトとの権力争いに敗ける事はあるまいて。間違いなく裏で手を引いている者がおるだろう」

「.....」

 

 その瞬間、全員が──あの包帯の男を思い浮かべた。

 レイラの存在を認識し、同じく未来を知る力を持つ男。ここまでの変化は、間違いなくその男が絡んでいると。

 

「あ」

 

 瞬間。タスカリカがそう呟いた。

 何かに気付いた。その気付きから更に思考を発展させた。そして──ここに深刻な事態が潜んでいると、理解した。そんな表情の変遷をして。

 

「あの包帯男は──聖女様が正式な洗礼を受けていない、という事実は知らないはずよねぇ」

「え、ええ.....そのはずです」

 

 あの包帯男はレイラの存在とその力を知っていた。だが、非正規の手段で洗礼を受け、ラミアスに隠れて秘密裏に旅をしている、という事実は知らない。

 

「不味くないかしらぁ? ──もしも聖女様の秘密を知ったら、ラミアスへの交渉材料としてその秘密を利用される可能性があるわぁ。洗礼の秘匿はラミアスでは重罪よぉ」

 

「あ.....」

 

「その男の目的は、聖女様を災厄から遠ざける事でしょぉ? ──ラミアスへの密告一つでその目的は達成できるわぁ。そうなれば我々の旅は終わりよぉ」

 

「.....」

 

 事態の深刻さに、皆が気付いた。

 そうだ。この状況は、現状のマモルモン領の体制側がラミアス側と深く繋がっていっている途中だ。

 もしも聖女の秘密を知られ、それをラミアス側に伝えられたら──もうレイラはラミアスから出国する事すら叶わなくなるだろう。

 

「──あの男を捕まえなきゃならない理由がまた一つ増えたわねぇ。もう悠長にはしていられないわぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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