転生だ!追放だ!売国だァ~!   作:丸米

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⑭※注意 この物語に登場する主人公は原作でおもちゃと化していたキャラを見かけて大喜びしながら蹴飛ばして音を鳴らして遊ぶ感性を持っています。心を広く持ち、適切な距離感でのご拝読をお願い申し上げます。

「――ベルガン本国の諜報部隊も動き始めたみたいだの」

 こちらがラミアスからマモルモンへ流入した隊商に目を付けたと同時、ベルガンの諜報部隊も同じものに着眼し動き始めたようであった。

 隊商所属の人間を秘密裏に連れ去り、尋問を行っているのだろう。勿論、尋問が拷問に置き換わっていてもなんらおかしくない。

 

 こちらは少数で動いている上隣国に潜入している身分だ。多くの人員を閉じ込めていく牢もなければ、そこまでのリスクを冒せない。先手を取られたな、とそうザッハルトは思った。

 

 一昨日もまた、一人ラミアスから入国した隊商の一人が連れ去られたのを確認したと報告を受けた。助けたかったが、ここでベルガンの諜報部隊に隙を見せるわけにはいかずそのまま見送ったのだという。正しい判断だ。

 一行が泊まっている宿に、諜報員が報告に来る。

 

「――その人物の名前は?」

「ベネット・アイスナーという名前です」

 

 その名を聞いた瞬間――傍で聞いていたメルハイムの表情が大きく変わる。

 

「名前の裏取りはすぐに取れました。彼の炊き出しは評判が良かったようでして、行方不明になった瞬間から多くの者が探しに出ていました。隊商でも中心的人物でもあったため、目立っていたのでしょうね」

 

「.....」

 その報告を聞くや否や、すぐさまメルハイムが立ち上がる。

 

「――ちょっと外出るわね」

「.....今目立つのは得策ではないぞ、メルハイム殿」

「解っているわ。無茶はしない。でも――悪いけど、その人物は私の友人でもあるの。やれる事はやらせてもらうわ」

「無茶の定義の擦り合わせはさせてもらおうかの。君の友人の為に我等の目的を阻害するわけにはいかん。ただでさえ、レイラ嬢が新たなビジョンを得てしまったのだからな」

「.....解ったわ。ベルガンの秘密警察に手は出さない。あくまで間接的手段で助けるように努力する」

 

 はぁ、と。メルハイムは溜息を一つ。

 

「どうか無事でいてね、ベネット.....」

 

 

「――はじめましてベルガン秘密警察の従僕の方。いや~こうも綺麗に釣られてくれると餌冥利に尽きるってものです」

 

 ――ベルガン秘密警察の拠点。貧民街のボロ屋敷の地下に急造された地下室で縛られている男が、そんな言葉を放っていた。

 ベルガン王都から追放された三馬鹿がキレイに役職についた悪夢のギルドが、反乱による領主交代が巻き起こったマモルモン領内で出来上がった。そんな与太話でもまだマシな事態が起こったのだというのだから、調査を行うために派遣された諜報部隊。それが、ベルガン王都秘密警察である。

 

 当然、新設ギルドにてあの三馬鹿が役職に就いたのだ。調査を進めなければならないのは、ギルドの手足――つまりは隊商という事になる。

 そうして様々な報告が錯綜する中。夜道で一人間抜けにほっつき歩いていた馬鹿な隊商のメンバーをとっ捕まえたわけだが。

 その男は、そんな現況に関わらず。ヘラヘラと笑いながらこちらを見据えてずっと口を開き続け言葉を吐き出している。

 

「秘密警察の皆様がこういうホームグラウンド外で人攫いする時の基本のキすら知らないクソバカのおかげで本当に助かりました。心から感謝いたします。わざわざ私をこのような安心安全の場所に放り込んでくれたこと、感謝してもし尽せない」

 

「――その口、閉じれないのかね? いい加減にしないと手荒な手段を使う事になるぞ」

「いやいや。閉ざした蛇口を捻って開くのが貴方たちの仕事でしょうよ。そこから溢れてくるのが自分にとって都合が悪い事でも受け入れましょうよ。それが貴方の仕事でしょう」

「妄言を情報として処理するほど暇じゃないのだよ私はなァ!」

「妄言? ならそうですね。たとえば私は貴方の名前がオルツ・クシャドールである事を知っていますし。ベルガン王都貴族連合の不正抹消を肩代わりしてその地位にまで上り詰めた事を知っていますし、ついでに貴方の奥方が堂々と不倫していても元々の身分の違いから何も言えずじまいのクソ情けない男であることも知っていますよ? この情報も妄言ですかね?」

「な....!」

 

 ――オルツの眼前にいる、平凡にしか見えない男のニヤケ面が更に深まっていく。

 

「頭を垂れるのは貴方の方ですよ、ベルガン秘密警察オルツ・クシャドール。さあさっさとこの手枷を外してください。縄のトゲトゲが痛くて仕方がないのです」

「ふざけるでない....!何故この私がそのような事をしなくてはならないのですか.....!」

「オ~ル~ツ~ど~の~。むしろ、貴方の情報のほとんどを知っている相手に対して下手に出ない理由があるのかね~? まだ理解できていないようならまだまだ情報をしゃべくりますよ~」

 

 そうして――眼前の男が次に喋りだしたのは、数字の羅列であった。

 ついに気でも狂ったのか。そう思ったオルツであったが、次第にその意味を理解しだして顔が青ざめていく。

 

「お、ようやく理解出来ましたか。そうですそうです。貴方が秘密警察の立場を利用してちょろまかした裏帳簿の金額ですよ。こればかりは貴族連合とは関係ない、貴方が家の為に個人的にやらかしている不正ですからね。きっと――垂れ込まれたら誰も貴方の味方をしてくれない。貴方の家すらもね」

 

 さあ、と。

 悪魔が、言う。

 

「縄を外して頭を垂れろ。――これから秘密警察は私の下で動いてもらう」

 

 

 やはりね。原作知識というのは神ですよ。

 こういう原作とは異なる流れや状況の中であっても、キャラクターの過去や来歴というものは変わる事はありませんからね。いやー。まさか本当に自分でこの音の鳴るおもちゃをガラガラ出来る日が来るとは夢にも思いませんでした。テンション爆上げです。

 

 オルツ・クシャドール。ベルガン王都で受注するサブクエストで数多く登場する人物で、音の鳴るおもちゃである。本当に様々な角度から音を鳴らしてくれる愉快な奴である。

 例えばベルガン税務局から受けられるクエストでは彼の裏帳簿を手に入れ脱税の証拠を手に入れるものがあったり。例えばベルガン貴族連合から受けられるクエストでは彼が隠蔽に失敗した事件のもみ消しに奔走したり。例えば彼の妻から受けられるクエストでは不倫について口出しするようになってきて鬱陶しいから脅しかけて黙らせろなんてものもある。

 

 彼からクエストを受注することも出来る。多くは不正隠蔽の手伝いをするものであるが、妻の不倫相手を一緒に懲らしめるクエストなどもあったりする。クエストの展開によっては不倫相手がなんとグリンドになってたりする事もある。

 クエストの最後は大抵、彼が不憫な目に遭って終わる事が多い。

 脱税が暴かれ絶叫したり。貴族連合と反目する勢力にこれまでの罪を暴かれ断罪され絶叫したり。隠蔽に失敗して今まで味方だった貴族連合から命を狙われる羽目になり絶叫したり。間男の反撃にあって絶叫したり。絶叫が断末魔に変わったり。本当にずっと味がするキャラでした。

 こいつ関連のクエストは本当に面白かったからとにかく印象に残っているし記憶にも焼き付いている。裏帳簿の数字を暗記できる位には。

 

 ベルガン王都の秘密警察がやってくる――という展開が来た時には、間違いなくこいつも出張ってきているだろうなと確信し。確信は確定をもって迎え入れられた。うーん、このおもちゃ最高や!

 

 しかし、助かった。

 こいつの秘密警察は悲しいかな。不正を隠蔽する事は出来ても、まっとうな情報収集には向いていない。ちょっとギルド側で情報を流してやればこの通り。隊商の人間を狙うように仕向けてこうして秘密警察の本拠を暴くことに成功できた。

 

 現在、ザッハルトがラミアスから呼び寄せた諜報部隊はこいつらの練度とはまさしく天と地ほどの差がある上、ラミアスとの関係を考えてもこちら側から下手に手を出せない存在でした。その上で、あの襲撃時の状況から隊商へと狙いを絞って監視を始めたのだからたまったものではない。時間さえ与えれば、恐らく自分の所まで辿り着けるだけの実感があった。

 

 こうしてベルガン側にとっ捕まったという情報さえ与えてやれば、ザッハルト側はヒューイとベネットを結び付ける事はあるまい。その上、ベルガンの秘密警察を実質そっくりそのまま頂ける事となった。

 

「暫く私はここに滞在し、貴方を通じて秘密警察を動かします――これで貧民街に流入している禁制品の調査に注力できる」

 

 ザッハルトの諜報部隊及び王都からの秘密警察。この一手にて、片が付いた。

 残る問題はあと一つ。マモルモンに流入している禁制品についてだ。

 

「.....」

 もはやオルツは言葉を発せず俯きながら、更に首を上下に動かし俯くことで首肯をしている。首の骨が折れそう。

 

「まあ安心してください。――王都側が喜びそうな情報は与えますよ。こちらとしても貴方達を通じて王都側に与える情報をコントロールしたい」

「ほ、本当か.....!」

「その代わり、王都の情報もこちらに流すように。いわばこれから貴方は二重スパイです。励んでくださいね」

 

 さてさて。ここからは暫く情報の集積のお時間だ。

 秘密警察というマンパワーも手に入れたことだし、ほとぼりが冷めるまではここで引きこもりの時間だ――。

 

 

 マモルモン商業ギルド、警備隊長グリンド・バーンハルト。

 彼の一日は昼を大きく過ぎた頃に始まる。

 娼館で目覚めた彼はひとまず手元にある果実酒で喉を潤し、天蓋付きのベッドで一夜を共にした女に目をやる。目覚めた時に見るべきものは朝日ではなく、少し汗ばんだ女体の肌と乳だ。間違いない。そうして素晴らしい気分で朝(昼)を迎えると、カーテンを開けて生まれたままの姿に日の光を浴びせる。眩しくも力強いその光を存分に味わうと、その気分のまままた酒を煽った。

 

 女と酒はある。後は賭場があれば最高なんだがな。内戦の傷跡深いこの場所じゃあ叶わぬ願いだ。くそう。酒だってギルドの倉庫からくすねたものしか無いのだからこの世の中終わっている。

 

 ギルド宛の請求書にサインを記入し、外を出る。

 瞬間。

 

「あらぁ、お久しぶりねぇ。まあ生きているだろうと思ってはいたけど、残念だわぁ」

 

 グリンド・バーンハルト。その眼前には――

 

「あ、アンタ.....あの時の.....」

「ええ。あの時以来ねぇ」

「パッキンデカ乳エルフ姉ちゃ.....ぐえぁ!」

 

 ――勇者パーティの魔法使い、エルフのタスカリカがおり。

 ――その顔面に風マナを収束させた拳を容赦なく叩き込んでいた。

 

 

 

 

 

 

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