私は艦娘または深海棲艦である。正体は未だ不明。   作:キノコ飼育委員

14 / 17
タンク・フォワード!

 いきなり目の前に壁が出現し、あの面白女との射線が完全に途切れた。

 と思った瞬間に、連続した砲撃音。

 そして聞こえる砲弾と空気の擦過音!

 

「全力で防御だ!」

「増加装甲展開!」

 

 私が頭をかばうように上げた腕に、私と尻尾が丸々隠れるほどドでかい盾が出現した。

 先の尖った白いタワーシールドで、随分と分厚い代物だ。

 いきなりで驚いたがちょうどいい!!

 

 それをしっかりと上に掲げると、ゴンゴンと何かの当たる感触がする。

 んー?大して脅威に感じないな。

 これでは下の連中の方がよほど恐ろしかったぞ。

 

「ふん、少々気を張り過ぎたか。しかしあの面白女の使っていたビームライフル、あれはいったい何だったんだ?サイコガンか?」

 

「お前が下で碌に読みもせずにぶち込んだ資料によりゃあ、正確にはレーザーらしい。敵装甲を圧倒的熱量の照射で貫徹。撃沈すンだと」

 

「……原理は?」

 

「あー、よくわからん。虫眼鏡の強い版だろ?」

 

「バリアで防げるか?」

 

「さぁ?イケんじゃね?メイビィ。アイスィンクソゥ」

 

「チッ、いい加減なことを……」

 

 まぁいい、こいつが信用ならんのは今までのことでわかりきっていたことだ。

 

「しかし馬鹿の一つ覚えのように撃ち込んで来るな」

 

 こうやって話している間にもドッカンドッカン、ノーダメとはいえうんざりする。

 

「何とかして距離を詰められんものか」

 

 彼我の距離は約50メートル弱。

 走って詰めるのは私の防御力なら可能だろうが、撃たれながらのイノシシ戦法は好かん。もっとスマートでなければ。

 

「あー、これ使うか?」

 

 これ?……なんだコレ?

 ピピッと脳内に表示されたデータ、そこには一目で『馬鹿か?』と思える代物が写っていた。

 お椀から火が出るようにしたあの、モノによっては50メートルどころか月まで行けるアレ。

 ……ロケットブースター、っておいおい。船に積むには大袈裟過ぎないか。

 

 しかし説明書、というかカタログスペックを読んだところ、中々に使えそうだ。

 増加装甲にこれを付けて盾にしたまま突撃か。悪くない、実に私好みの戦法だ。

 そうなると片腕ではバランスが悪い。

 

「よし、増加装甲を両腕に出せ。そこにブースターも付けろ」

 

「オーケィ……けどよ、この放火の中で変形はちとリスクが高くねぇか?」

 

「馬鹿か貴様は?艦載機の生き残りをぶつけろ。文字通りな」

 

「カァー、また特攻かよもったいねぇ!」

 

 仕方ないだろう、ミサイルは弾がないんだからな。

 

 艦載機を突っ込ませてすぐ、砲撃が止まった。

 

「よし今だ。艤装変更」

「了解ヨーソロー」

 

 タワーシールドが両腕に出る。

 それの一部が溶け、ロケットブースターを形造った。

 

 両腕を前で合わせれば、盾同士が組み合って自分がロケットになった気分を味わえる。

 ちょっと屈まなければいけないのが窮屈だがな。

 

 ……ん?待てよ、この状態……!

 

「フククク……」

 

「あん?どーしたよ?」

 

「おい尻尾、アレを出せ」

 

 ぐにょりと増加装甲の形状を変化させ、尻尾のドリルと主砲が突き出る穴を作ってやる。

 

「……ワイ?」

 

「何というかほら、戦車っぽくてカッコイイだろう?」

 

 装甲にドリル、そして主砲とくれば浪漫の塊だ。面白いじゃあないか!

 それも、私のような存在が戦車の真似事をする。陸軍が聞いたら発狂間違いなしだ。

 

「……オゥイェア、確かにクールだ!オーケィ、80センチ砲、展★開!」

 

 尻尾の三連装砲がどろりと溶け、それが一門の巨大な大砲へと姿を変える。

 下であの忌々しいヤツから奪い取った、80センチ列車砲!

 

 ふはははは!真の砲撃が如何なるものか、その身に刻んでやろうじゃないか!

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 そして現在、うまくこちらの作戦が嵌り奴らの中に飛び込めた。

 まぁ、まさかみすみす轢かれてドリルに刺さる間抜けが出るとは思わなかったが。

 戦闘中にボーッとしていたのか?コメディじゃないのだからちゃんと避けろよな。

 

「ガッ!ガァアアアアアア!!」

 

 おぉ、すかさず殴りかかってくるとは。

 腹にドリルが刺さっているというのに元気なことだ。

 

「ガード」

 

 とりあえず盾でその腕を押さえつける。

 ははは、弱いな。

 か弱い乙女を相手にしているようだ、簡単に抑え込めたぞ。

 

「あーんど」

 

「ファァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッック!!!!」

 

 尻尾がドリルを回転させ面白女の胴を抉り回す。

 ブチぶちィと上と下に別れてしまった。

 

「ふん、脆いな」

 

「でも生きてるぜ」

 

 ん、本当だ。下半身がもげたというのに、まだ戦意と殺意に満ちた瞳を向けてくる。

 

「後ろを片付けろ、私はコイツの相手をする」

 

「オーゥラィ!」

 

 尻尾は素早く伸びると、近くにいた雷巡に噛みつく。

 それを噛み砕かずに体のうねりを利用して戦艦に投げつけた。

 

 おっと、こいつの相手をせねば。

 

「やぁ面白女。元気だったか?」

 

「化け物め!卑小で醜い怪物めぇ!!」

 

「あーはいはいそういうのはいいんだ。私の質問にさっさと答えれば楽にしてや……」

 

 …………。

 

「死ね化け物!ここから出られると思うなよ!」

 

 ……オーソドックスな真似をしてくれるなぁ?

 

 おっとここで鼓膜が破れそうな砲撃音。どうやら後ろは決着がついたようだ。

 

「く、くくく……わかったわかった、現代的コミュニケーションより中世の魔女狩り的コミュニケーションがいいんだな?」

 

 ひとまず武装を没収しよう、まずはこの物騒なレーザーからだ。

 

「よいしょっと」

 

 両腕の盾を切り離し、改めてコイツの腕を掴みなおす。

 そのままコンパクトなコイツの身体を持ち直し、左腕を足で地面に抑える。

 次に膝で胴を抑え、両手でコイツの右腕を持って――――

 

「よーーーいーーーしょーーーーーーーー」

 

「おい、おい貴様なにを?!……あ!き、貴様ァ!!」

 

 ゆーっくり、ゆーーっくり、上に向かって引っ張るーんーだーよー!

 喋りがゆっくりだと思考もゆっくりになると思わないか?

 

「そーーーーおーーーーれーーーーー」

 

「ぎ、ぐぐぎぃ……ぎ、ぎざ、まあ゛…!……がぁッ!!」

 

 ん、ごっきんと鈍くていい音がしたぞ。

 さぁここからだ。

 

「うーーんーーしょーーー、どーーっこーーーいしょーーー」

 

「……ぅんぐぎぃ…ぎぃぃぐぅ……!」

 

 ははは、声を抑えてるのがよくわかる。いいぞぉ冴えてきた!

 肉が裂けるミチミチといった音も聞こえてくる!

 

「あーーとーーーちょーーっとーーーー……飽きたな」

 

「ぐぎゃ?!ガアアアア!?」

 

 なんか唐突に飽きてしまったので、さっさと腕を引きちぎる。

 足で抑えていた方の腕もぽいぽいぽーいとな。

 

 そういえば尻尾が静かだ……なんだ、食事で口がふさがってるだけか。

 

「グウォオオ呪われろ!呪われろ化け物め!!生きてここから出られると思うなよ!」

 

「はいはいいい加減無駄なハッタリは止めてくれ。聞いてて哀れになってくる」

 

 とりあえず腕をかじりながらコイツの無駄に長い髪の毛を掴む。

 それでこいつが飛ばしてきた唾を拭った。

 いやぁまさかそんなお下劣な真似をするとは思いもよらなかったぞこの野蛮人め。

 

 それにしても元気な奴だ、肺から上しかないのにビチビチ跳ね回る。

 まさに鮮度のいいマグロだな。

 

「ハッ!今はせいぜい調子に乗っているがいい!必ず!必ずお前は討ち果たされる!その瞬間が今から楽しみだ!!」

 

「ふーむ、これ、どのくらいまで生きてられるんだ…?首一つまでイケるか?」

 

 物は試しだ。

 盾を拾って、こいつの頭を踏みつけて固定。

 両手で盾をしっかり握って、ギャーギャーうるさいコイツの首へ思いっきり振り下ろす!

 

 ……あ、ミスった。折れて砕けて潰れただけで切れてない。

 もう一回!……駄目だ、仕方ないからゴリゴリしよう。

 

「シャラーーーップ!!もう少し静かにやれや!!」

 

「コイツに言ってくれ」

 

 この状態でもまだ悲鳴を上げられるのか、頑丈だな。

 っと、切れた切れた。

 んー、さすがに静かになったが、『生きてる』な。死んでいない。

 

「ふーーーむ……うん?」

 

「~~ングッ~~♪~~ゴッ~ッグ~~♪」

 

 奇妙な感覚に振り向けば、尻尾が戦艦を頭から丸呑みにしているところだった。

 腹の中で暴れられるのは困る……いやそうか、ソイツの頭はコレか。なら大丈夫だな。

 

 落ちていた頭を上に蹴り投げれば、宙で尻尾が喰いつく。

 ついでに面白女の残りも蹴りやった。

 

 で、こっちの首をどうしたものか。

 耳を澄ませば、微かに呻いている……呼吸してるのか?肺と切り離されたのに?

 興味深いな……。

 

 しかし、いろいろ疑問は尽きねども、時間は有限。

 まずは脱出を優先せねば。

 

 さて、先ほど面白女が言ったことが本当ならば、この先に出口があるはずだ。

 

 振り返れば、爆散した死体を尻尾が床を舐めるようにして喰っている……ハァー、こういう時に同じ体を共有しているのが嫌になる。

 犬かコイツは。

 

「おいボケナス、さっさと食事を切り上げろ」

 

「びちゃびちゃンマァアア~~イ!!あ?あぁはいはい脱出ね。だけどよ、補給は大事だぜ?俺たちは孤立無援孤軍奮闘で世間の荒波に乗り出さなきゃなンねえんだからよ」

 

「ならせめて床を舐めるのは止めろ。貴様のせいで腹を壊したら口を縫い合わすからな」

 

「へいへい。けど実際問題のハナシ、資材不足はいざって時に困るぜ?」

 

「わかっている。だがこいつらでいくらかの資材は確保できただろう。それにな、私はさっさとここから脱出したいんだよ。何だかんだで残り時間が20分切った。艤装変更、80センチ列車砲を通常兵装に切り替えろ」

 

「オーゥケイ……って、そりゃ何だ?新種のゆっくりか?」

 

「んー、コレどうしような?このまま喰うのは勿体ない気がする。どっかに保管できないか?」

 

「あー……胃袋じゃない方に仕舞っておくか?」

 

「は?胃袋じゃない方?」

 

「アレだよアレ、記録媒体仕舞ってる場所」

 

「ふむ、とりあえずそこでいい。何かしそうになったら吐き出せ」

 

「オーゥケイ」

 

 尻尾の口へ面白女の生首を放り込み、通路を走る。

 この辺りは浸水こそないが戦闘跡が酷い。

 其処ら中に砲撃跡と焦げ臭いにおいが漂い、そこに鉄錆びた死臭も混じって酷いものだ。

 

 しかし……何か、忘れているような気がするな。

 空母、駆逐を初撃で撃破。

 戦艦を消し飛ばし、弩級を嬲って、雷巡と戦艦も腹の中だ。

 うん、六隻一個艦隊きっちり沈めてあるな。気のせいか?

 

 真っ赤なサイレンのぐるぐると回る、真っ暗な通路を無言で走り抜ける。

 警報だけが変わらずに鳴り響いている。

 

 

 お?

 

 行き止まりだ。

 いや、梯子がある。

 

 上を見れば、赤い闇の中を四角く切り抜き、星の光が降りてきている。

 

「おぉ……外だ」

 

「……ようやくだな、んじゃさっさと逃げようぜ」

 

 言われなくとも。

 

 ぴょんと跳び、梯子の中ほどを掴む。

 そこから反動をつけて一気に出口に手をかけて

 

 

 

 

 

 星が降ってきた。




Q.何で生首で生きてるの?
A.心臓破壊=機関損失。頭部破壊=艦橋爆散。つまり現在ゆっくり状態の彼女は仮死状態と考えてください。細かいことは気にしないってことで!

ようやく次話で第一部完です。展開の遅さに血反吐を吐きそうです。

アニメ艦これは第一期完結おめでとうございます。そして二期決定だとか?
見るけどさ…グッズも買うけどさ…とりあえず提督と脚本家をCICから叩き出せ!拷問だ!とにかく拷問にかけろ!

一度書き始めたアニメの愚痴が600文字超えてなんか怖くなり、全て消しました。
でも今週のジャンプ、暗殺教室をもう一回読んで世界のすべてを許せる気分になりました。
この感じはあれだ、ナルヒナ派大勝利の報を聞いたときに匹敵する。

何か質問がありましたらお気軽に感想に下さい。軽い一言でも作者は喜びます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。