私は艦娘または深海棲艦である。正体は未だ不明。 作:キノコ飼育委員
本年度も不定期ですがどうぞよろしくお願いします。
鬱蒼とした廊下を、とある一団が慎重に、慎重に進んでいた。
魚と鉱物を混ぜたような奇怪な化け物が三体先頭を進み、その後ろに三つの人影がついている。
「……」
「……」
彼女たちはそれぞれ周囲を警戒しており、会話はない。
まず最後尾の一人。頭にUFOを被った、魔法使いのような杖を持つ無表情っ娘。
そう、空母ヲ級である。
彼女は後ろを警戒しながら前へ歩いており、杖がなければ何度も転んでいただろう。
次に後ろから三人目。頭に白い隻眼の仮面のようなバイザーを付けた女。下半身は先頭の怪魚が変質したようなものと融合しており、左腕には抱えるほどの大砲(ちなみに魚雷発射管)を抱えている。
その大砲の砲口は心なしか、怨嗟の唸りを上げる鬼のようにも……見える。
そんなヘソ出しルックの彼女、雷巡チ級は、仮面から覗く瞳に赤く炎を揺らめかせため息を吐く。
「……怖いっすね」
「やめなさい」
弱音をこぼすチ級を素早く窘めたのは、ヲ級とチ級の間に挟まれて進む女。
黒い流れるような長髪に、黒いノースリーブの中に灰色のシャツ。下には黒いズボンを履いており、これだけならば『イケてるキャリアウーマン』だ。
だがそのキャリアウーマンが手に持っているのは、スーツケースではなく『砲列』だ。
まるでタワーシールドのような代物の前面には、二連装砲二門単装砲一門が重ねて配置されており、目の前に立った者は木端微塵になること間違いなしである。
彼女はこの一団の旗艦であり、戦艦であるル級。
個体名は『ルーシー』という。
「いやでもだってヤバイですよルーシー様。いったい幾つ部隊が潰されたと思ってんですか。先見隊すり潰してようやくここまで来たんですよ?」
「わかってます、わかってますよ!でも仕方ないでしょう?ここの存在を人間たちに知られるわけにはいかないんですから」
「だからって……はぁーあ、せっかくエリートになれたのに。もうすぐフラグシップに改装できたのに。死ぬなら戦場に散りたかった」
「愚痴愚痴言わない!それに、慎重を期せば大丈夫です!」
「そっすねー。慎重を期して私らも捨て石にしてるんすよねー姫様は。まったく鬼まで連れてきてるくせに、その戦力は飾りなんすかね」
サイコロ状になった空母、蜂の巣状態の駆逐艦、バラバラに吹っ飛んだ戦艦。
みんな自分たちより先に踏み込んだ者たちのなれの果てだ。
その死体から目を逸らして彼女たちもここまでやってきたのだ。
同型艦の死体だけでも結構なショックだったが、自分らよりも強かった艦隊が全滅しているのも堪えた。
そして少しでも油断すれば彼女たちも同じ目に合うのだ。
それほどまでに『ここ』は危険な場所なのだ。
例えばなんでも焼き切る光線の網。
例えば装甲を蜂の巣にする自動機銃。
例えばかけられると装甲内部に浸透、数秒で大爆発を起こす粘液。
そんな悪夢のような罠の数々。
それだけではない。
見たこともない化け物が施設のあちこちを徘徊し、縄張りに入る者を片端から襲っているのだ。
深海のモノのようだが、言葉は通じず、さらには非常に凶暴。
『足の生えた駆逐艦?』と油断した艦隊が、モノの数分で壊滅したパターンもある。
いくら陸上で力が弱まっているとはいえ、ここまで凄惨な結果を招くとは。
だからと言ってここを放置することもできない。
『ここ』を人間に発見されるわけにはいかないのだ。
それゆえ彼女らは、大艦隊を組んでの攻略に臨んでいるのだ。
しかしそれでも無茶なのではと自分でも思うほどに鬼畜仕様の施設で、愚痴を言いたいのを我慢していたルーシーは声を荒げた。
「もう!いい加減に黙り……ッ!」
その時だ。
「下がってください」
チ級が砲を構えて前を睨む。
その先には扉が一つ。
その先から、ソナーが放たれてきた。
広い海原の世界で、周囲を索敵するために使用されるそれが、自分たちでない何者かによって放たれてきた。
つまり、あの扉の向こうには『何か』がいるということだ。
「……出てくる気は、なさそうですね」
「こちらから仕掛けますか?」
「陸戦用意。敵と仮定して行動します。警告は一度。答えぬなら攻撃します」
「了解。ヲ級、ルーシー様の前に出ろ。あと偵察機だ」
「ヲ」
ヲ級が戦艦の前に出、杖を扉に向ける。
頭のUFOから静かに発艦した偵察機が、僅かな駆動音を残して駆逐艦の開いた扉の中に入る。
その偵察機を通して、空母ヲ級は周囲を確認する。
部屋の中は……無人だ。
どうやら居住区のようで、キッチンや机、寝室が見える。
ここも例に漏れず荒れており、コンクリ瓦礫が部屋のすみにあった。
別の入り口らしきところは破壊されており、誰も見当たらない。
しかしひとつ閉まったままの扉がある。何かがいるとしたらそこしかない。
という内容を、彼女は上司に伝えた。
「突入してそこを包囲します」
決断は一瞬。
彼女たちはすぐさま突入し、その扉を囲んだ。
「扉の中に居るものに警告します。三つ数える間に出てきなさい。我々は深海の者。陸の者でないならば攻撃はしません」
返答は……ない。
「ひとつ……ふたつ……みっつ!
駆逐艦三隻空母雷巡戦艦各一隻の一斉射が扉の中目掛けて撃ち込まれた。
攻撃は扉だけでなく部屋の続いてそうな壁にも撃ち込まれ、隠れているものを蹂躙していく。
「やめッ!」
旗艦の号令で攻撃が終了した。
硝煙と黒煙、粉砕されたコンクリ粉のミックスが部屋の中にもうもうと舞う。
「……」
「……」
しばしの静寂。やがてそれが晴れると―――
「……何も、いない?」
そこには粉砕されたバスタブや鏡の破片はあれど、ソナーを発信してきた存在はなかった。
「……向こうに逃げたんすかね?」
「だったら、肩透かしで済むわけですが。とにかく何かいたのは確実。ここからは一層慎重に―――」
その時だ。
ルーシーが、自分の後ろでカラン、と小さな石が転がるような音がしたのを聞いたのは。
彼女がすぐさま旋回したとき、既に『コンクリ瓦礫』が飛びかかってきていた。
・・・・・・・・・・
“偽装網”
船を敵偵察機の目から隠すために使用する、蔓草を絡めた網だ。
これで船を覆うと、遠目には船が島に見えるようになる。
これと同じことを私はしたのだ。
詳しい説明はまた後で。今はこちらを片づけたい。
一番近くにいた長髪の戦艦を仕留める。“仕留める”といっても今回は生け捕りが目的だ。
「そらっ!」
まずは尻尾からだ。横殴りに振り回し、戦艦を連中の中にかっ飛ばす。
ベキベキと愉快な音とともにボールのように戦艦が飛んだ。
それが慌てて反転しつつあった雷巡にぶつかる。
雷巡がそれを受け止め動けなくなったところに
「沈めェ!」
私がツルハシを叩き込む。変な仮面もろとも雷巡の頭を粉砕した。
その時には既に尻尾が連中の残りに照準を済ましている。
「ィイイイハァアアアアア!!!!」
尻尾が三連装砲二門の斉射を空母に、副砲である三連装砲二門を駆逐どもに浴びせた。
腹に響く轟音、砲口から一瞬光が炸裂し、破壊が一直線に飛ぶ。
哀れな標的たちは粉砕され、余波で部屋の壁が大いに崩れる。窓にも罅が入った。
「馬鹿が。やり過ぎだ」
「ンギモッヂィイイイ!!殺戮サイコー!!」
そう叫び、尻尾はその体で立ち上がろうとしていた戦艦を再び地面に叩きつけ、何度も叩きのめした。
「やめろ、死ぬだろうが」
「ぱーどぅん?聞こえねえなァシャハハハハ!!」
チッ、屑が。
暴走してるな。
仕方ないので打ち付けるために尻尾が体を持ち上げ、振り下ろす瞬間にツルハシを挟む。
結果、ちょっと刺さった。
「やめろと言っている」
「イッテェ!?何しやがるサノバビッチ!俺の素敵ボディに傷ができたぞボケ!」
「私だって痛いんだ我慢しろ。大事な手がかりだ。遊びで殺すな」
そう言いつつ、偽装網状態を解く。
私のコートがコンクリ偽装から元の真っ白な状態に戻る。
どうやらこのコート、タコやカメレオンのように色を変えられるようなのだ。
何故気づいたか?
先ほど『隠れたい』と思った時に、こう、頭の中に自然と使い方が浮かんできたのだ。
これ幸いと使ったのだが……本当に私は何なのだろうな?
と、この辺りで戦艦が意識を取り戻したのか身動ぎしたので、とりあえず喉に武器を突きつけておく。
「ホールドアップだ、お嬢さん」
……突きつけるのがツルハシとは締まらないがな。
「……」
「よーしいい子だ動くなよォ!いい子にしてりゃ楽しませてやるベェ!?」
「口を閉じてろゲスが……」
舌舐めずりしながらハァハァしているクズを殴り付ける。
「―――」
「うん?」
「キサマハ…ナンダ……」
……この『声』を何と表現しようか。
水中で、口の中に水が入ろうが構わず喋り続けているかのような不明瞭な音だろうか。
オノマトペで表せばゴボゴボガバガバ。
言語を喋っているということはわかるが内容はサッパリだ。
肺に水でも詰まってるのか?
とりあえず鳩尾の辺りから拳を入れて肺を突き上げてみる。
……結構力を抜いてやったんだがな……何かスゴい音がしたぞ。
『ゴバッハァ!!?』
おぉおぉ出た出た……血が。
いや水が出るとは思ってなかったが……スマン、少し期待してた。
しかし優しく圧迫しただけのつもりがトンだ結果になったな。まるで拷問じゃないか。
「まいったな……生きてるか?」
「あー死んじまったね!こりゃ完璧に死んでるぜ大変だ!今すぐ俺の口の中に入れねェと手遅れになっちまう!」
「死んでる時点で手遅れだろうが。それにまだ辛うじて生きてる」
「この!化け物が……!」
なんだ、普通に話ができるじゃないか……『さっきよりかは』だが。
さっきが水中なら今は悲鳴だ。
キンキンとした超音波のような声に混じってまとまな言葉が聞こえる。
「ふむ?なんだ喋れるじゃないか」
「みんなは……ダメですか」
「……おい?」
話しかけてる人を真っ向から無視か。
いい度胸だ私は寛容な人間だが無礼な輩には容赦せんぞ。
「何が目的で捕まえたか知りませんが、油断しましたね!」
「ゴッフォ?!」
…………。
あー、変な声が出た。
「シャハハハハハハ!!シャハハハハハハハ!!『ゴッフォ』?!『ゴッフォ』てお前!シャハハハハ!!バッカでぇ!シャハハハ!!」
「な、え?!」
何が起きたか、三行で説明しよう。
コイツの肩の飾り筒が前に(つまり私に)向く。
実は飾りではなく副砲だったらしく、その攻撃が私に直撃。
……二行で済んだな。
大してダメージもなかったが、頭の傷に衝撃が響いてひっっっじょうに痛かった。
「けふっ……頭がリアルに煤で真っ黒になったよ。うん、後悔しろ」
ツルハシをコイツの肩にぶち込んで床に縫い付ける。尻尾でもう片方の肩を抑えさせる。
そして振りかぶっての左パンチ。
目標は私と同じく頭だ。
「食らったのは四発。私は公平な人間だ返すのも四発だけだ。耐えれば解放してやる、頑張れ」
重い金属の衝突音。短い苦悶の声。
まだ生きてるな。加減したから当然か。
続けて右パンチ。また金属音。
「おーい、意識は残っているか?」
ピタピタと頬を叩いてみるが返事はない。
白目向いてビクビク痙攣しているからまだ生きていると思うが。
さて、少し力を込めての左パンチ。
同様に重い金属音。しかし今回は破砕音が混じった。
見れば額が大きく割れている。
ではトドメだ。
渾身の右が、戦艦の頭ごと床を砕いた。
頭を失くした体は、何故か止まることなく未だ痙攣を続けており滑稽だ。
「ふむ、少しだけ気が晴れた」
特にこの、頭をぶちのめされてガクガク痙攣しているのは最高に嗤えるというか、何というか……こう、ぞくぞくする。
「シャハハハ!サディストのクソッタレだなお前は!サイコーにクールだぜ!」
「お前と一緒にするな、私はまともだ。さて、これからどうするか」
「とりまメシだろ!」
そう言って尻尾はそこらに散らばる死体を喰い始めた。
「私はいい。勝手にやってろ」
「お前の分ねェから!!」
また尻尾が汚らしく食い散らかすのを視界から追い出し、ちょっと思考を回すことにする。
一体全体どうしてこうなった?
文明人らしく対話によって情報を得ようとしたのに、どうしてか攻撃された。
うーむ、世紀末。
いや第一印象が悪かった、のか?
まぁいい。
とにかくだ、この部屋に来るまで階段らしきものはなかった。
で、最初に出会った連中はこの階より下にいた。
そしてこいつらは向こうから来た。
つまり結論。
こっち側の扉が外への道。
我々が来たのが奥への道。
そして私は探索するときは隅々まで行ってアイテム回収もする派だ。
よし、戻ろう!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
名を忘れた怪物が、迷宮深くへの移動を決意した頃。
その迷宮が存在する『島』に、美しい夕暮れが訪れつつあった。
迷宮の入り口はその『島』の海岸線近くにある森の中に、カモフラージュされていた。
そして現在。
その入り口がある森の前には多くの『船』が停泊している。
『船』、世に『深海棲艦』と呼ばれる船団である。
そこにはその周辺を埋め尽くすほどの戦力が集中しており、それぞれが灯す鬼火が海面に反射して煌めいている。
魚と鉱物を混ぜたような生物である『駆逐艦』は、今は艦船サイズの巨大魚となっている。
頭にUFOを乗せた少女であった『空母』は、立派な空母として飛行甲板を広げている。
それだけではない。
軽巡、雷巡、重巡、軽母、戦艦、潜水艦、輸送艦、あらゆる艦種を含んだ大艦隊だ。
まるでこれからどこかを攻め落とさんとしているかのような大艦隊はしかし、この小さな小さな小島、『クリスマス島』から動こうとしない。
そのうえ艦隊の大半は外に向いており、まるでこの島を守っているかのようだ。
と、そんな大艦隊のいる海岸で、一人の女が静かに夕日を眺めていた。
美しい女だ。
幽鬼めいた白い肌、腰下まで流れていく闇のような髪、その豊満な身に纏うはネグリジェに似た漆黒のワンピース一枚。
惜しげもなく晒された、きめ細やかな肌を持つ長い足には黒のヒールを履いている。
女の瞳は血のように紅く、額からは鬼のような二本の角が生えていた。
そんな彼女は砂浜にあって、地を踏むことなどなく、傍に控える巨躯の組んだ手の上にゆったりと足を延ばして座っていた。
巨躯―――両肩に16inch三連装砲を備え、頭の代わりに船首が(それも真っ白でステキな”歯”がある!)生えたかのような大男は、その女に喉を擽られ機嫌が良さそうだ。
と、名状しがたい獣の鳴き声がした。
見れば、彼女たちの足元に控える、直径一メートルほどの球体が吠えていた。
その方向を見れば、こちらに向けて駆けてくる空母ヲ級の姿が。
そのヲ級、フラグシップヲ級改、個体名は『ヲパール』。
フラグシップとなってもその無表情は相変わらずだが、どこか他のヲ級よりも怜悧さ……とでも言おう か、そんな理知的ながら冷たいものを感じる。
ヲパールは女、戦艦棲姫、個体名『サリー・オクラホマ』の前に跪く。
「姫様、第三階層までの攻略が完了しました。しかし探索に出た艦隊のうち、さらに二個艦隊の壊滅を確認しました」
「……さらに四個艦隊を投入。残りの階層の攻略を急がせなさい」
「ハッ!」
「それと、第三階層で手に入ったモノは?特に記録類は?」
「こちらです」
そういって、ヲパールは恭しく目録と『雑記』と書かれた記録媒体を差しだした。
「ごくろうさま。下がっていいわ」
サリーは目録を流し読みながら、渡された『雑記』をそのまま大男の口に入れる。
しばらくして、彼女の脳内にひとつの鮮明な『映像』が流れ始めた。
それは、どこかの狭い部屋の映像。
映る範囲には一枚の黒板程度しか存在せず、その黒板の前には一人の女が立っている。
女は黒板に高速で何かを書き込みつつ、話し続けていた。
『我々深海のモノが陸に上がり、サルどもに戦いを挑むというのは、サメが陸上でトラに戦いを挑むようなもの。いささか無理がある。現在でさえ艦娘が存在するのだ、このうえ戦車娘など出てこられては困る。まぁそうなったらこちら側にも深海戦車か、はたまた山奥戦車が出てくるのだろうが』
その声は理性的で、声にすら知性が滲み出ているような気がするほど理知的だった。
だが同時に、どこか後ろ向きな、張り詰めた何かも一緒に感じさせる。
『ゆえに戦略的価値のある拠点を孤島または海岸に構え、そこから全世界に進出。ゆくゆくは海岸線すべてを掌握し、サルどもを完全に海から遮断する。これが我々の理想的結末だ』
絶え間なく続く、チョークで黒板を叩く音と言葉の海流。
『サルどもは陸に閉じ込められるが脅かされることはなく、我々も連中にトドメはさせないが海を脅かされることがない。両者の確執は、そうだな……二百年程度でサル側の当事者が全滅、なぁなぁで和平。共生の道へ。未来への懸け橋ENDが最高だろう。うん、我らとて海を支配するのが目的ではないのだからな』
朗々と紡がれる知性の調はしかし、突如として響くチョークを握り潰す音とともに終わる。
『出来るわけねぇだろうがクソチクショウガァアあああああ!!クソ!クソ!クソクソクソクソがぁあああああああ!!』
突然女は怨嗟の漲る金切声を発し、黒板を殴り砕いた。
その振動で映像が跳ね、世界が90度左に倒れる。
一撃でガラガラ崩れる黒板をさらに殴り、殴り、壁にも爪を立て、瓦礫を口に含んで噛み砕き、狂態を晒して暴れまわる女の姿を淡々と映し続ける。
『ガァァアアア頭が痛てぇええええ!!クッソザルどもが!私の頭脳に!貴様らが絶滅しても生まれないような天才的頭脳にぃい!!』
『艦娘のキチガイども!深海のボケナスども!地上のクソザルども!どいつもこいつもバカばっっかりだ!こんなバカの極み愚者の極み愚劣の極みにいつまでかかずらわっているんだ!!馬鹿どもが!』
『あぁ忌々しい三式弾!あれさえなければ!あれさえなければ私も愚者でいられたのに!何も知らずにいられたというのにぃ!!』
いつまでも続くと思われたその暴走は、始まりと同じく唐突に止まった。
スッと立ち会がり、知性の戻った声で何事もなかったように続けた。
『……ふぅ。とにかく、戦争当初はそれが成功していた。連中の兵器は外洋艦装状態の我らには効かず、我らの武器は連中に非常に効果的。核も平気。衛星にも我らは映らない。圧倒的な戦果でサルどもを陸に閉じ込めた……が、ここで艦娘登場。巻き返されてる、今ここ。私も三式弾撃ち込まれて以来頭の中に破片が入ったままだ』
『陸上に拠点を設ければ、連中もそこ目がけて攻めてくる。しかし、拠点を得られなければ我々の補給線が伸びる。特に我らの祖国がどこかバレるのは本当に困る。浮上を見られては致命的だ』
『ではどうするか?簡単な話だ、より強力な武装、便利な装備、艦種の開発だろう』
『まぁそういったことは私の論文を読めばわかるだろうが、艦種に関してはおいおい出てくるだろうし、武器、装備は私が開発している。それはも――――私は、狂っているのか』
突然、女は話を変え、全く別のことを語りだした。
その表情は、俯いているために見ることができない。
『一大拠点と同じ能力。無尽蔵のエネルギー。決戦に勝てる戦闘力。全てをそろえた全く新しい艦。理論上は可能だ。だがそれには、外道を大きく超えた……今更だな』
女は顔を上げ、映像を手に取る。
世界が大きく揺れ明瞭な映像にならない。
『超兵器。呪わしい『奴ら』に一切頼らぬ、禁忌の兵器を造り出さねば』
そこで映像は終わっていた。
サリーはしばらく、沈みきった夕暮れの僅かな残滓を見つめていた。
その横顔は、どこか悲しみを浮かべているようだった。
この小説では艦娘、深海ともに『通常モード』『陸上艤装』『外洋艤装』の三形態があるという設定でお送りします。
陸上艤装はスタンドみたいに武器が出たり消えたりします。
『陸上艤装モード』はみなさんのよく知るあの立ち絵ですね。水の上にも立てます。
『外洋艤装モード』はアルペジオ状態です。つまり実際の軍艦状態です。
強さは『通常』<『陸上艤装』<『外洋艤装』ですがエネルギー消費量も爆発的に増加します。
普通の艦船と違い「エンジン止める」=「心臓止める」ですから。
『陸上艤装』では銃弾程度は跳ね返します。
戦車砲の直撃食らえば死にます。
しかし『外洋艤装』は通常兵器の全てを無効化します。
たとえタンカーが体当たりしても不思議な力でびくともしません。
なお、これらは全て『独自設定』であり、実際の公式とは一切の関係はありません!
マッチョな提督、面白かったですね!無事完結されました(ステマ)
あと独自設定ついでに。
深海棲艦の知能レベルは
無印→ロボット、事前に組み込まれた本能、または与えられた命令をこなす。一文字で鳴く。
エリート→作戦行動をこなせる。カタカナで喋る。
フラグ→戦術的思考が可能。滑らかに喋る
鬼、姫→戦略的思考が可能。ただしその能力はまちまち。
です。
各階級ともにレベルによって能力に上下があり、今回ならチ級はかなりフラグに近づいていました。
なお、名前があるのはフラグ以上からです。
ちなみに主人公にとって彼女たちは鶏肉パックや牛肉パックと大して変わりません。なので対等に話す気は最初からゼロです。
ついでに主人公は深海、艦娘関わらず非常に好戦的です。無自覚に。
故に情報を“得る”のではなく“奪う”つもりでいました。
いやぁ、理不尽な人間って怖いですねェ。