私は艦娘または深海棲艦である。正体は未だ不明。 作:キノコ飼育委員
さて、どうやって上に行く?
まず間違いなくさっきの連中は待ち構えているだろう。
浮上した瞬間に先程の攻撃が来るのは明白だ。
あの一斉砲撃がいくら命中しようがまだまだ耐えられるが、わざわざ喰らうのは業腹だ。
……まてよ?
ここの構造はどうだった?
吹き抜けに小部屋がある、筒状の構造だ。
ならば……。
「おい尻尾、あの柱に噛みつけ。そして廊下に移動しろ」
「あん?浮上すンじゃ……オゥ、ガッティット」
フン、気づいたか。
厭らしく笑った尻尾が体を伸ばし、柱の一本に噛みつき、弧を描くように胴体を曲げる。
当然私の体は引っ張られ、廊下部分に到着。
そのまま尻尾が口を放し、水に纏わりつかれながらゆっくりと着地。
瞬間、私の周囲から一切の水が消えた。
いや、もちろん正確には消えていない。
ただ、体の動きを阻害していた浮力や水の抵抗がなくなったのだ。
お陰で地上と同じようにスタスタ歩くことができる。さっき浸水していた廊下を歩いた時も思ったが……あるべき力が存在しないというのは妙なものだな。
とにかく歩いて小部屋に入る。
何かあるかな?んー……水槽?
壁の一面を全部ガラスにして亀の飼育セットを入れたようなものがある。それ以外は何もない殺風景な部屋だ。
中には……トカゲ、いやイグアナか?
イグアナと鉱物を混ぜたような生き物がいる。
……いや、どことなくあの魚鉱物の面影がある。
まぁ、どうでもいいか。
トンッとその場でジャンプすれば、地面から足が離れるほど体に水の抵抗が、浮力が戻る。
そのまま天井に手をつき、ツルハシを突き刺し、指先を尖らせてこれも突き刺してしがみつく。
「やれ」
「オーケィ!どぅいいいいいいん!!」
尻尾が生やしたドリルを回転させ、天井をぶち抜く。
その穴へ潜り込めば、すなわち―――
「はい、
案の定上で待ち伏せて砲を構えていたヤツの後ろに出た。
ヤツ―――赤いレインコートにオルカヘッド、武装は、二連装砲三門に魚雷か。
ちっ、列車砲はどこだ?
「レ?!」
天井(いや床か?)をぶち抜いた音に振り向いたがもう遅い。
「タリホォオオオオ!!」
尻尾の砲台が全てソイツに照準を合わせ撃発、安心と信頼の超火力で木っ端微塵に変えた。
「よぅし仕切り直しだ、派手にいこう!」
私もツルハシを構え部屋から飛び出す。
「レ゛ェ゛ッ!!」
やっぱやめて引っ込む!
飛びずさって小部屋に後退した瞬間に入口が吹っ飛んだ。
……おい、今ちらっとミサイルが見えたぞ?列車砲といい、なんなんだか。
しかし対応が早いな。さっきの連中と同じように指揮官がいるな?
「どうしたもんかな?あまり攻撃は喰らいたくない、癪だからな」
「ドリルで迂回一択JK」
「その前にソナーだ。連中の位置が知りたい」
「さっきからやってるがまるで位置が掴めねェ。ステルス戦艦かもな」
「オーバーテクノロジー過ぎる……卑劣な」
まぁ戦争に卑怯もクソあるかよ。
……あぁそうだ。
「なぁおい、艦載機飛ばして探れないか?」
「ウゥーップス!その手があったか」
尻尾の甲板がパカパカパカッと開き中からあの艦載機が離陸していく。
ワラワラと次々離陸していく艦載機、合計130機くらいか?
「敵を見つけて攻撃させろ。そこにまとめて砲撃をぶち込む」
「任せろ」
艦載機が編隊を組んで入口から飛び出していく。
砲撃がしこたま撃ち込まれて数機落ちたが、すぐに散開して建物内に散る。
「……イエス!解析完了、データ出すぜ!」
「ククク、丸見えだな」
機銃射撃音に艦爆の爆裂音、それを撃墜するための対空砲火の音が部屋の外からよく聞こえる。
そしてその戦闘もよく『見える』。
この階層の反対側の部屋に一匹。
上の階層に三匹。
さらに上の階層に二匹、か。
列車砲は、一番上。
とりあえず下から順番に殺すか。
連中、艦載機の対応に追われているようだからな。
「それにしても……熱い、熱いぞ本当に…」
まぁいい、とにかく手始めに……ん?
踏み出した足がぬちゃりとした感触に滑りかける。
足を上げて確かめてみれば……コンクリが赤くなって溶け始めている。
ふと見上げれば天井も溶け始めている。
「レェェエエ!!」
おっとお客さんだ。
艦載機に追い立てられた一匹が飛び込んできた。反対側の部屋に居たヤツだ。
こちらをギンと睨み、形振り構わぬ特攻を仕掛けてくる。
「レェエエエエエ!!」
「はいご苦労さん」
「オツカレーッス」
オルカヘッドを尻尾が噛み潰し、私が本体にツルハシを叩き込む。
安定の即死コンボだな、って……うん?
ツルハシを頭に叩き込んだら、妙な感触がした。
ズボッと抜いて確かめれば、
「溶けている、だと?」
断面部が溶けた鉄のように赤熱している。
ツルハシを見ても特に変わったところは……いや、光っている?
コンッと床に当てると、ぬるっと刺さる。
死体にグッと押し当てれば、数秒せずに溶け始めた。
うーむ……謎仕様だ。私の身体が発熱しているのと関係があるのか?
発熱。
そう『発熱』だ。
何故私の身体はこんなに発熱している?
不快な気分ではない。むしろ快調だ。
いや、絶好調だ。
だがそれにしたって……
「あぁ、あぁあぁあぁあぁアァアァアァアァ……熱いなぁ」
全身が燃えるように熱い。
熱が、エネルギーが、私の全身を駆け巡り続けている。
それは、何とかして消費されようとエネルギーが躍起になっているかのようだ。
コートの前を開けようが、どうしようもないレベルで熱い。
下はビキニだけなんだ。少々恥ずかしいんだがな。
自然と身体が動いた。
その駆け巡る熱を、どう活用すればいいのかは身体が教えてくれた。
「尻尾……迂回作戦を変更」
「ワット?」
すなわち
「敵の統制は崩れている。よってこれより正面突破。敵を殲滅する!」
「オ、オウ!?」
全力で敵にぶつけて発散だよなァ!!
「さぁ!行くぞ!!」
熱で柔くなった天井を、尻尾で泥をかき分けるようにして大穴を開け階層を移動、すぐさま部屋から飛び出す!
ハハハ!航空戦力がないせいか、オルカ付きどもが盲撃ちでこちらの航空機を落とそうとしている。
まるで凶暴なイナゴの群れの中に叩き込まれたように、大慌てで転げまわっている!
嗤える!実に滑稽な光景だ!!
そしてもちろん意識はすべて『上』に向いている。
あぁそうだなその通り!!
「隙だらけなんだよォ!!」
各敵の周囲で航空機を数機自爆させ、それを目くらましに近場の一匹に後ろからツルハシを叩き込む。
先の潜水艦とは違い装甲が固い、背中に突き刺さったが引き裂くほどのことはできなかった。
ならそれをそのまま地面へ引き倒し、頭を踏み潰す!!
おっとオルカヘッドはまだ動けるのか!
そっちは尻尾がドリルで抉り殺した。
残り4!
っとここで同じ階層の二匹がこっちに気付いた。
航空機のダメージ無視でこちらに照準を合わせている。
「だが!」
「レェ!!」
砲撃が飛ぶ瞬間、こちらの航空機が10機単位で射線に割り込み盾になった。
さぁお返しだ!!
「撃てぇ!!」
超火力の砲弾が二体纏めて吹き飛ばす!
いや死んでないか!存外しぶといなァ!!
「よく耐えたな!」
だから前へ踏み込む!
「褒美だ!直接バラしてやろう!!」
大破状態のオルカ付きどもの一匹にツルハシを投げつける!
動けない本体に代わってオルカヘッドがそれを受けた。
もう一匹も砲撃を続行してくる。
だが忘れてないか?
周囲にはまだ私の艦載機がいるんだぞ?
砲撃を放つ寸前、二匹へ艦載機が次々と突っ込み自爆していく。
その衝撃で砲弾はバラけ、私に当たったのは一発のみ。
余裕でバリアで防ぐ。
ささっと近づきとどめを刺してツルハシを回収した。
残り2!
っと、ここでようやく上の二匹が状況を把握したようだな。
どうやら上の艦載機は全滅したようだ。
「レェ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!!!」
列車砲がこちらに砲台を向けた。
この暗い施設の空気が全て振動する砲声に、それに見合う巨大砲弾が飛んでくる。
艦載機を全てぶつけても止まらないだろうエネルギーの塊は、着弾と同時に二階廊下を吹き飛ばした。
まぁそこに私がいれば効果もあっただろうがな。
もちろんとっくに移動しているさ!
「レェ!」
「っと!ハハハハハいい反応だ!!」
躱すことも織り込み済み、その先に二匹目が砲撃を加えてきた。
バリアで防ぐがかなりの衝撃を感じた。
「あっちの主砲もかなりのモンだ!45センチ砲!!」
フハッ!思わずヒューッ♪と口笛が出た。
面白い、大艦巨砲主義二匹か!
なら……
「全艦載機発艦!まとめて叩き付けろ!!」
「
パカパカパカッと開いた甲板から即座に艦載機が飛び出し、出撃した端から全て敵へ突撃していく。
出撃済みだった残存艦載機も一緒にな!
「レ!!」
だがそれは予想に反して次々に撃ち落されていった
「ほぉ!貴様がミサイルか!!」
オルカヘッドの胴体部には開いたハッチが大量に存在していた。
そこからさらにミサイルが射出されてくる。
だが、無駄な足掻きだ!
「戦闘機なんだよこっちは!!」
こちらの艦載機が編隊を組み機銃の弾幕でそれを逆に撃ち落し、距離を詰める。
そして―――
「はいドーン」
280機分の特攻だ、痛いぞ?
怪物どもが悲鳴を上げているうちに距離を詰める!
廊下の真上、つまりは三階の床に尻尾で穴を開け階層を移動!!
「レェエエエ!!」
手近にいたミサイル艦が、最後とばかりにミサイルを放ってくるがもう遅い!
直撃喰らったが知ったことか!
前に出る!
前に出て殺す!!
「さぁ死ねぇ!!」
実に馴染んだ動作!ツルハシを、敵の頭に叩き込む!!
ミサイル艦のドタマをかち割り、まだ動いているオルカヘッドの顎を掴んで投げ飛ばす!
その死体へ巨大砲弾が直撃し爆砕された!
その程度では勢い止まらぬ砲弾が私に着弾し、尋常でない衝撃に身体が吹き飛ばされそうになり――――!!
「だが前へ!!」
そうだ!後退などない!!
ツルハシを床に突き刺し、尻尾が壁に噛みついて勢いを殺し、装甲とバリア任せにダメージを耐え切り、突っ込んだ!
もう列車砲は目の前だ!!
「これでチェックメイトだ!!」
待ちに待った瞬間だ!
敵を殺す瞬間だ!!
両手でツルハシを掴み全力でブチ降ろす!
だが―――
「ほぉ面白い!貴様もバリアが張れるのか!」
ツルハシは寸前で赤いガラスのようなものに阻まれた。
私と違い球状に展開するこれは、間違いなく私のそれと同類だろう。
ではどうする?!決まっている!!
「ならば、ならばならばならばァ!!無理矢理ぶち破るまでだよなァ!!」
真っ白に輝くツルハシを小賢しいバリアに振り下ろす。
弾かれようが構わずに何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!!
ハァハハ!見ろ!罅が入ったぞ!
「そらそらそらそらそらそらそらァ!!」
さぁ前へ!
一歩も引かずに前へ!
ツルハシを振り下ろし叩き付け打ち込んで粉砕する!
徐々に邪魔なバリアが剥がれていき、ヤツの顔がどんどん恐怖に歪んでいくのが見える!
列車砲を撃たないのか?撃てないよなァ!?
バリアがあったら攻撃できないよなァ!!
もちろんン?!自爆覚悟でバリアを解除、肉を切らせて骨を断つために撃つことも出来るだろうよ!
だが!その瞬間に待機している尻尾が全力の砲撃を横から『砲身へ』撃ち込む!
そうすれば攻撃自体無力化できる!
それがわかってるんだろう!
だったら、だったらもうお前は『詰み』だよなァ!死ぬっきゃないよなァ!!
あぁ楽しい!素晴らしい!
目の前に敵が!獲物がいて!
私がここに!力がここにィ!!
ハッハハハハハ!!
さぁ!さらに前へ!
前へ!
前へ!!
前へ!!!
―――――――――マ エ ヘ !
「―――イ!!オイ!!しっかりしろ!正気に戻れ!!」
頭にガヅンと衝撃。
「いたっ!何をする!?」
「もうやめろ!ソイツはとっくに死んでる!」
「は?」
顎で示されたモノを、“残骸”を見る。
そこにはグズグズに溶け、原型が無くなるまで穴だらけにされた列車砲があった。
身体を動かしていた熱は、狂奔は、既にどこかへ消えていた。
どうでもいい解説コーナー。
列車砲、こちら正式名称を『施設棲鬼』といい、本来は遠方からの砲撃と『どこまで砲を巨大にできるかの検証』を目的に建造された存在。
……今回特に書くことないですね。
何か質問がありましたら『ストーリー上で解説しないこと』に限り答えますので気軽にどうぞー。
……あと、艦これ衝撃の三話の内容を知ってる方は活動報告まで付き合ってもらおう!!ちょっと愚痴ろうぜ!!