そして、さつきはそらと共に旅に出ることを決意する。
「そろそろ戻ろっか」
星空を見あげていたそらとさつきはしばらくするとリビングに戻る。するとさつきの目にあるものが映る。
「あれってゲーム機?」
さつきの指差した物は、見たことがなかったがひと目でゲーム機だとわかる見た目をしていた。
「そうだよ。さつきちゃんもゲームやるの?」
「子供の頃からよくやってるよ」
「本当に!?じゃあ一緒に見て欲しいところがあるの!」
そういうとそらはゲームを起動する。内容としてはダンジョン内の仕掛けをアクションで解除していく謎解きゲームのようだった。
「ここの先に進むために鍵が欲しいんだけどね、中々見つからなくて、しかもここから出ることもできなくなっちゃって」
そらは現状を説明するためにダンジョン内の行ける場所を回る。
「一度マップ見せて」
「いいよ」
「この部屋、扉があるはずなのに、壁が邪魔して先に進めなくなってるね」
「そうなんだよね他に、ここに入れそうな場所も見つからないし、どうなってるんだろ?」
「そこの壁って壊せたりしない?」
「あ、それかも」
そう言うとそらは壁の前に立つと壁の前に爆弾を出す。ドカンと音を立てて爆発した爆弾は想像どうりに壁を破壊した。
「おお!!」
謎が解けたそらは新しい部屋へと進む。さつきと協力して次々謎を解いたそらはダンジョンのボスにたどり着く。
ボスもダンジョンの仕掛けと同じように特定のタイミングでアイテムを使って怯ませることで始めてダメージが入る、謎解き要素のあるシステムになっている。が、
「イヤー!!」
使うアイテムは合っているのだが、タイミングと距離感があっておらず、結果ゴリ押し気味にアイテムを連打して、苦戦している。
「そらさん落ち着いて、相手の動きをよく見て」
さつきの声で少しづつ冷静になると、戦い方のコツを掴んだのか最初の苦戦が嘘のようにスムーズにボスを倒す。
「ヤッター!!さつきちゃんのおかげでクリアできたよ!!ありがとう!!」
そう言うとそらはさつきに笑顔をむける。さつきはそらの笑顔に思わず引き込まれる。さつきは気恥ずかしくなって咄嗟に顔を背ける。気が付くと外はすでに明るくなっていた。
その時、突然家の中の警報が鳴り響く。
「何があったの!?」
「魔物が敷地内に入ってきたんだ」
さつきの問いにそらは答えると、バタバタと音を立てて慌てた様子の進一と華がリビングに入ってきた。
「そらとさつきさんは華と一緒にここに居なさい!僕はお隣さんと魔物を倒してくる。」
そう言うと進一はリビングを後にする。その手には剣が握られていた。さつきたちはリビングから外を見るとスライムらしき生き物が3匹いた。
「あれが魔物?」
「お父さんと叔父さんが来たよ。」
そらが指差した方を見ると剣を持った進一と、杖を持ったあずきの父親(そらの叔父)、がスライムに近づいていく。あずきの父親が杖から火球を放ちスライムを一匹だけ孤立させ進一がその一匹に狙いを付ける。進一はすぐには攻撃せず少しづつ近づく。
進一とスライムの距離が近くなるとスライムは突然大きくはね、進一に体当りする。進一は冷静に攻撃を躱し、すかさずスライムを斬りつける。
スライムはそのまま動かなくなり、水となって消えていく。その間にあずきの父親は残ったスライムを火球で一匹づつ倒していく。
スライムを倒し終わった2人は、すぐにスライムが侵入した原因を探るために辺りを見回っていく。
「他にも、魔物がいるの?」
二人を見送ったさつきの呟きに、華が答える。
「スライムは魔物の中でも特に弱い魔物で、外にはもっと強い魔物がたくさんいる。だからそらを一人で行かせるのに反対だったの。」
そう言うと、華は顔を手で覆って崩れ落ちる。
(本当に一人で行かせていいの?)
さつきは自問する。さつきの頭に先ほどのそらの笑顔が浮かんだ。さつきはそらの方を見る。そらは大丈夫だからと、華をなだめている。
(本当に怖くないの?)
さつきが悩んでいると、海がリビングに入ってくる。
「今進一から聞いたが、魔物は全て倒したそうだ。どうやら魔法障壁が一部弱まっていたらしい。今進一さんたちが直しているからそれは安心していい」
そこまで話すと海はそらの方を見る。
「そら、準備ができたから一度来てくれるか?」
「うん、わかった。」
海と共にリビングを出ようとすると、さつきが声を上げる。
「わたしもそらさんと一緒に行きます。」
「さつきちゃん、私は…」
「大丈夫なんて言わせないよ。昨日会ったばかりなのに私のために命をかけて助けようとしてくれる人を一人でなんて行かせられるわけないでしょ!!」
「さつきちゃん…ありがとう」
そらは笑顔を浮かべているがその頬には涙が伝っていた。
「覚悟はあるのかい?」
さつきは海の問いに答える。
「あります」
さつきは海と視線を交わす。
「わかった。一緒に来なさい。」
そう言うと海はそらとさつきを連れて部屋を出る。
*
パジャマのままだったさつきとそらは一度着替えてから家の裏側にある道場に来ていた。そらは上半分が黒、下半分と袖が白のパーカーを着て、頭には青いリボンの髪飾りをつけていた。
道場に入ると、海はさつきの方を見て口を開く。
「さすがに全く戦えない者を、そのままおくりだすわけにもいかないからな。最低限戦うことができるかどうかみさせてもらうよ」
そう言うと海は木刀をさつきに渡し、もう一本の木刀を構える。
「さあ、掛かってきなさい」
木刀を握るさつきの手は震えていたが覚悟を決めると、海に向かって振りかぶる。海はそれを軽く躱ながら、さつきに向かって木刀を薙ぎ払うように振るう。海はこの攻撃を寸止し、さつきに実力が足りていないと告げるつもりだった。だが、さつきは海が想定していた場所よりさらに後ろにいた。
さつきは自分の攻撃など当たるわけがないと分かっていた。だから、木刀を振り終わる頃にはその場から離れる、いわゆるヒットアンドアウェイをしていた。
さつきは海を捉えると、すぐにまた振りかぶる。動きは一撃目と大差なかったが、完全に虚を突かれた海は反応が遅れ、ギリギリのところで木刀で受け流す。
二人はお互いに距離をとると今度は海が振りかぶる。ほとんど同時にさつきは後ろに跳んでこれを躱す。が、さつきは着地に失敗しよろめいてしまう。慌てて立て直し、さつきは海の方をみるが、海は動かなかった。
「そこまで!」
海は叫ぶと構えを解く。
「動きはぎこちないうえ、無駄が多い。だが間合いの取り方や行動の選択には理解はあるようだった。さつきさんは、何かそういう経験が経験があるのかい?」
海はさつきの方に近づきながら訪ねる。
「剣道とかはしたことないけど、小さい頃はよく男の子たちとチャンバラしてて、間合いの取り方はたぶんゲームしてて学んでたんだと思います。」
「そうか。正直まだ少し頼りないが、それはそらも同じか。ゴリ押ししようとしない分、そらよりはマシかもしれんな。」
「うっ…」
海の言葉にそらは思わずうめき声を出すが、海は構わず続ける。
「さつきさん、そらをよろしく頼みます。」
海は右手を差し出すと、さつきはその手を握り返す。
「はい」
二人が手を離すと海はさつきに一つ質問をする。
「さつきさんは魔法は使えるかい?」
「私がいた世界では魔法はなかったので、使ったことは無いです。」
「なるほど。」
そう言うと海は木刀を片付け1冊の本をさつきに渡す。さつきは本を受け取る。
「何か不思議な力が体の中に流れるのを感じる。」
「まずは私に向かって撃ってみなさい。今感じている魔力を手に集めるように意識して。」
さつきはゲームでよく見る魔法の構えをとると、言われたように魔力の流れを手に集中する。ある程度魔力が集まると、魔力は火球となって海の方へ飛んでいく。火球が当たる直前、海は魔力による障壁を展開する。火球が魔力障壁に当たると、そのまま火球は消滅する。
「魔法は使えるみたいだね。その魔導書はそのまま持っていきなさい。それと渡すものは他にもあるから、こっちへ来なさい。」
海がそう言うと三人は海が準備したものの前に立つ。海はその中からポケットのようなものをさつきに手渡す。
「これは時之家に伝わる女神様の神器の1つでな、中は特別な空間に繋がっているから、色んな物を出し入れすることができる。これをさつきさんに」
海はポケットをさつきに渡し、続ける。
「次にこのクレヨンだが、このクレヨンも神器の1つで、描いたものを一時的に本物にする効果がある。本当はもっとあるはずだったんだか、昨日開けたら何故か減っていて、あまり無駄に使えなくなっていてな。さつきさんは絵をかけるか?」
「はい、絵を描くのは好きなので、そこそこ自信はあります。」
「なら、さつきさんとそらがそれぞれ使えそうな武器の絵を描いてくれるか?」
「そらさんは、描かないの?」
「わたしはあんまり絵は得意じゃないから」
「そらの絵はなんというか独特な絵でな、正確性が必要なこのクレヨンにはあまり向かんと言うか、私は好きだがな」
「あんまりフォローになって無いんだけど!!」
海の発言にツッコむそらを見て、さっきは笑いながら言う。
「そらさんの絵いつか見てみたいな」
「やめて、人に見せるものじゃないから!」
さつきは笑いながらクレヨンを受け取ると剣の絵を描いた。
「そらさんは、どんな武器を使いたい?」
「じゃあ、刀」
「刀!?」
自分と同じように、剣やもっと扱いやすい短剣などを選ぶと思っていたさつきは思わず聞き返と、海が答える。
「そらには小さい頃から剣道を教えていたから、剣よりは刀のほうが扱いやすいだろう。」
そのことばに納得したさつきは刀の絵を描き始める。その間に海は試し切り用の丸太を用意する。
さつきは絵を描き終わると刀の絵をそらに渡し、剣の絵を手にする。さつきはさっきの魔導書と同じように、魔力が高まるのを感じる。今度はその魔力を絵に集中すると、絵が本物の剣に変わる。
さつきはそらの方を見る。そらは少し苦戦しながら、絵を本物に変える。
「二人とも上手く出来たようだな。それじゃあこっちで試し切りをしてくれんか?」
そう促され、まずはさつきが試し切りをする。さつきが振った剣は丸太に引っ掛かる。
その様子を見ていた海が口を開く。
「ちゃんと本物のようだな」
剣がうまく抜けないさつきは、剣にもう一度魔力を込める。すると剣は絵に戻り床に落ちる。それを見たさつきはその絵を拾い上げる。
さつきが丸太から離れると今度はそらが試し切りをする。
「まずは強度を試さないとね」
そう言うと、そらは真剣な顔をでお手本の様な動きで丸太を切る。すると丸太は真っ二つに切れる。
「すごい」
今までの会話からは想像つかない動きに、さつきは思わず呟く。
「これで武器の方も大丈夫だな。最後にこれを」
海はそう言うとテントの絵を渡す。
「この絵もこのクレヨンで描いたもので、テントを立てた状態で出るようになってる。一度だしてみてくれ」
さつきは、絵をテントに変化させる。出てきたテントは海の言う通り、組み立てられた状態ででてくる。
さつきはテントを絵に戻すと先程もらったポケットに入れる。
「これで渡すものは渡したな。そのポケットにはお金も入っているから、後で確認しておいてくれ。後はさつきさんにホログラムと魔力について説明したほうがいいか。少し長くなるから私の家で、話そう。」
海がそう言うと三人は海の家へと移動すし、イスにつくと海が話し始める。
「ホログラムはこの世界に生きる物全てが持つ不思議な力なんだか、ほとんどの人には見ることができず、一部の人だけが見ることができる。だが、見ることができない者にはどれだけ科学が発達しても、どんな計測器を使っても観測できない。」
「海さんはホログラムの存在を信じているんですか?」
「どうも時之家で生まれた者は皆見えるようになるらしくてな、私だけじゃなく、そらとあずきもホログラムを見ることができる」
「そうなの?」
さつきはそらの方を見る。
「そうだよ」
そらは笑顔で答える。
海はまた話を続ける。
「ホログラムは実体を持たないが、確実に存在することからそう呼ばれておる。そして生きたホログラムを見る事ができる能力のことは"ホロライブ"と呼ばれておる。」
「ホロライブ…」
さつきの頭にはある光景が浮かぶ。この世界に来る前の最後の記憶。スマホに映し出された不思議な青い三角形のマークと共に映るロゴには"ホロライブ"と書かれていた。
さっきはスマホを取り出すと、そらにそのアプリを見せる。
「ホログラムってこんな感じ?」
「そう!そんな感じ!」
海はさらに話を続ける。
「そして魔力は魔法を使う時に消費する力のことで、ホログラムが源になってる。ホログラムと違って、魔力は観測することができ科学的に存在が証明されていて、魔力の力を活性化させ魔法を補助する為に作られた魔法具と、魔力を特定の魔法に変換する為に作られた魔導具がある。魔法具も魔導具も使う人の魔力の質によって個人差が大きすぎて、誰でも安定できる科学が発展してから、あまり見なくなったが」
海は一息つく。
「ひとまずそんなところか」
海の話が終わるとそらが口を開く。
「あのね、さつきちゃん。1つお願いがあるの。」
「何?」
「わたしの衣装の絵も描いてほしんだけど、描ける?」
「衣装って昨日のあの青い衣装のこと?いいけど旅に必要なものなの?」
「わからないけど、持っていった方が良いような気がするんだ。」
「わかったそらさんがそう言うなら」
そう言うとさつきはクレヨンを持ってそらの部屋に行く。
「ちょっと時間かかるから待っててね」
「ごめんねさつきちゃん」
さつきはそらの衣装を描き始める。
数時間後さつきは出来上がった絵をそらに見せる。
「そらさん、出来たよ」
「ありがとうさつきちゃん!」
そらは絵を受け取るとさっそく本物に変化させる。そこには壁にかけられた衣装と瓜二つの衣装があった。
「すごーい!本物そっくりだ!」
そらは笑顔になってさっきの絵を褒める。
(私の絵で誰かが笑顔になるのは何時ぶりだっけ)
さつきは少しの間、昔の記憶に浸る。
「わたしね、本当はすごく怖かった。」
少し暗い表情でそらは語る。
「一人で旅して、一人で知らない人と話して、一人で戦って。そんなこと本当に私にできるの?って。だからね、さつきちゃんが一緒に行くって言ってくれた時すごく嬉しかった!」
そらは、また笑顔になるとさつきの方をみる。
「ありがとう、さつきちゃん!」
さつきも、笑顔でそらに答える。
「こっちこそ、昨日会ったばかりのわたしを助けるために旅に出るって言ってくれてありがとう!」
そう言いながら、さつきは昨日会ったばかりなことに内心驚いていた。
そらと顔を合わせるさつきの視界の下の方に、白い物体が映る。みるとぬんぬんが自分がいることを主張するように跳びはねている。いつの間にそこにいたのか、あん肝も激しく主張している。
「ごめんね。そうだよね、あん肝とぬんぬんもいるよね」
「ねえそらさん。いつの間にかいなくなってたけどあん肝とぬんぬんって何何者なの?」
さつきの問いかけにそらたちは顔をかしげる。
「わかんないけどあん肝とぬんぬんはあん肝とぬんぬんだよ。」
帰ってきた答えにさつきは考えることをやめた。
「ふふ、ははは」
「あ、また笑ったー!」
(あん肝とぬんぬんはあん肝とぬんぬんでまだ見たことないけど、そらザウルスと共にそらの友達で、それで良いのかもしれない)
そらはまた頬を膨らませている。さつきはそんなそらを見てさらに笑う。
*
翌日旅に出るそらとさつきをそらの家族が見送っていた。
「そら、本当に大丈夫?忘れ物はない?」
「さつきちゃんと確認したから大丈夫だよ」
心配する華の質問攻めにそらが答えていると、隣に住むあずきの両親がやって来る。
「そらちゃん、あずきのことまで任せっきりになって本当にごめんね」
「大丈夫です。あずきもちゃんと助けますから、心配しないで下さい」
「ありがとう。そらちゃんもちゃんと帰ってくるんだよ。」
代わる代わる掛けられる言葉にそらが応えていると、二人の人影がやって来る。
「そら!」
「えーちゃん!」
高校からの友人で、今はそらたち三人のマネージャーをしているえーちゃん、えーちゃんの後輩で新人マネージャー(2年目)の春先のどか、が顔を出す。
「どうしてここに?」
「すいせいさんから話を聞いたんだよ。そらが戻ってきたって。だからみんなで急いできたんだよ!」
「そっか、えーちゃん来てくれてありがとう。すいちゃんにもありがとうって伝えておいて。」
「そらさん!私もっとそらさん達の歌聴きたいです。だから絶対に帰ってきて下さい!」
「うん、大丈夫。また歌を聴かせてあげるから」
えーちゃん、ののどかの言葉にそらは答えるとさつきを振り返る。
「そろそろ行こっか」
「そうだね」
歩みだそうとしたそらとさつきを進一が引き止める。
「そら」
「お父さん、どうしたの?」
「これを」
進一はゼンマイ式の小さなオルゴールをそらに手渡す。
「まだ約束は果たしてなかったからね。それじゃあ、行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます!」
そらはそう言うと今度こそさつきとともに歩き出す。
歩き出したそらの頭には青いリボンが揺れていた。
ここまで読んで頂き誠にありがとうございます。
最初は自分の中にある"ホロライブのゲームが出たら"という、3年間の妄想を小説として供養する為に投稿したので、思っていた何倍もの人が見てくれていて、ホロライブのコンテンツの大きさを改めて実感しています。長いお付き合いになると思いますが、これからも読んでくれると嬉しいです。