そらの旅のきせき   作:暁丸

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目的地を目指し、森を進むさつきとそらはそれぞれの夢について語り合う。


第4話「2人の夢」

 さつきとそらは最初の目的地を目指し、森の中を目指す。

「この道を真っ直ぐ歩いていけばいいんだよね」

さつきは、この日の朝そらの家から出る前に海から言われたことをそらと確認する。

「この道の先に町があって、そこから姫森王国に向かうんだよね。で、その町は騎士団が守っててこの森も含めて見回りをしてるから強い魔物に合う確率は低いんだっけ」 

 さつきの言葉にそらは頷く。

「そうだね。だから町に着くまでは比較的安全なはずだけど」

 そういうそらの言葉を遮るように茂みからスライムが現れる。

「さっそく出てきたね」

 2人はそれぞれの武器の絵を取り出し、魔力を込める。すぐに剣に変え、魔導書を取り出したさつきに遅れて、そらも刀を手にする。

 そらは素早くスライムに近付くとその勢いのまま刀を振り下ろす。そらの刀はスライムを切り裂き、スライムはそのまま生滅する。

「やった!」

 そらが喜ぶのもつかの間、近くの茂みからもう一匹のスライムが飛び出す。

「そらさん!」

 さつきはすぐに火球をスライムに放つ。火球はスライムには当たらなかったが、スライムの動きを封じ、その隙に近づいたさつきが剣でスライムを倒す。

「そらさん、大丈夫?」

「ありがとう。大丈夫だよ」

「また出てくるかもしれないから、気をつけていこう」

 そういうとそらとさつきはまた道を歩き始める。道中何度かスライムと戦いながら歩き続ると、テントを張れそうなちょっとした広場に出る。

「今日はここらへんで休もう」

さつきはそう言うとテントを出し、簡易結界装置の入った箱を取り出し説明書を読む。

「装置の上部のスイッチを押すと、周りの魔力を使って魔物だけに効果のある魔法障壁を展開するのか」

従ってスイッチを入れて地面に置く。一瞬魔力が青く光った後何もなかったかのように光は消える。

「これでいいんだよね?」

 さつきはそう言いながら、魔力が光ったあたりに手をかざすとわずかにわずかな魔力を感じた。

さつきは結界から手を離すと、テントを準備する間に食事の準備を進めていたそらの方に行く。

「そっちはどう?」

「今から温めるところ」

 そらの前には小さいテーブルがありその上にはガスコンロと水の入った鍋が置かれている。さつきはそらの隣に座りながら声をかける。

「水と食べ物いっぱい準備してくれてよかったね」

「そうだね。わたし料理できないから、レトルト食品があって助かったよ」

 そう言いながらそらは沸騰したお湯にレトルト食品を入れていく。

「ねえ、そらさん。魔力ってそこら辺にあるものなの?」

「魔力は生き物から少しづつ放出されて漂っているんだって。その魔力が集まって魔物になってるみたい」

「じゃあ魔物は魔力の塊ってこと?」

「そうみたい。だから魔物はホログラムを持っていないんだよ」

 そこまで話すとそらは思い出したように話題を変える。

「そういえばさつきちゃんはまだ学生さんなんだっけ?」

「そう、大学生だよ」

「将来の夢って何かあるの?」

「将来の夢か」

 さつきは少し考え込む。

「今は特に無いかな」

「そうなの?絵が上手だったからイラストレーターとかになりたいのかと思ってた」

「イラストレーターか、昔の私だったらそう言ってたのかな?」

「今はなれない理由があるの?」

「絵を描くのは好きなんだけど、私より上手い人が多いから仕事にしていくのはちょっと厳しいかなと思って」

「確かにある程度実力は大事だと思うけど、本当に大事なのは誰かに必要とされることじゃないかってわたしは思うよ。っとそろそろいいんじゃないかな」

 そらは鍋から袋を取り出すとレトルト食品を盛り付けていく。

(誰かと必要とされる、か…)

 さつきは昔のことを思い出しながらそらから食事を受け取ると頂きますと手を合わせる。食事を食べながらそらに質問する。

「そらさんはアイドルを目指したきっかけって何かあるの?」

「きっかけはね。昔あずきと一緒にお父さんにアイドルのライブに連れってもらったんだよね。"ユメゾラアリーナ"っていう大きな会場一杯にお客さんがいて、その場にいたみんなが1つになって盛り上がってるのを見て、わたしもこんなライブしてみたい!!って思ったのがきっかけかな。で、お父さんにアイドルになりたいって言ったらあずきも同じこと思ってたみたいで、あずきもアイドルになる!!って言ってたんだよね」

 そらは楽しそうに、食い気味に話をする。

 「で、その次の私の誕生日の日にお父さんにオルゴールをもらったんだよね。"2人がデビューしたらこの曲をプレゼントするよ"って」

「それが今朝話してた約束?そらさんのお父さんって音楽関係者なの?」

「そう!お父さん作曲家なんだよ!それでこのオルゴールなんだけど」

 そういいながらそらはオルゴールを取り出し、蓋を開けるとネジを回し始める。そらが手を離すとオルゴールはゆっくりと回り始め、テン テン テン テテン テテテテンと音色を奏でる。

「どお、すごく良くない!?」

「うん、なんか聞いてると少し元気になるような気がする」 

「でしょ!わたしもよく、これ聞いて元気もらってるんだ!」

 そう語る空の目はキラキラと輝くようにさつきは見えた。

「ユメゾラアリーナか、そこで歌うのがそらさんの夢なの?」

「そうだね、ユメゾラアリーナで歌うのは今でもわたしの大きな目標だし、叶えたい夢だよ。だけど、今の一番の夢は…」

 そう言うそらは、少しだけ言葉が詰まらせながら続ける。

「この曲を3人で歌いたい。あずきと、すいちゃんと、3人で」

 そらは一瞬だけ暗い笑顔をでオルゴールを見るが、すぐにまた笑顔になってさっきの方をみる。

「さ、早く食べちゃお」

「うん、そうだね」

 さつきは残ったご飯を食べながら、オルゴールの蓋に紙が付いている事に気づく。そこには《Shiny Smily Story》と書かれていた。ご飯を食べ終わり、片付けが終わる頃にはすっかり日が暮れていたので、2人はそのまま寝ることにした。 

「じゃあさつきちゃん、おやすみ」

「うん、そらさんもおやすみ」

 初めてのことばかりで疲労がたまっていた2人は、すぐに夢の中へ落ちる。

 さつきは昔の記憶を夢としてみていた。絵を描くことが好きになったときのことを。当時幼稚園生だったさつきは自分で描いた家族の絵を両親に見せる。

「お父さんお母さん、みてみて!家族の絵を描いたんだよ!こっちがお父さんで、こっちがお母さん!これが私だよ!」

「すごい、上手な絵ね」

「ほんとに?私の絵上手?」

「ああ、とても上手だよ。将来は画家かな?」

「がかって絵描きさんのことだよね?ほんとに私がかになれる?」

「ああ、頑張って練習すればきっとなれるよ」

 この時の会話を信じさつきは絵を描き続けた。小学校ではコンクールで受賞を重ね中学でも美術部で成績を残していった。だが、高校に上がると周りの実力も上がってきて、さつきの絵は次第に評価されなくなっていく。そんな中進路を決める時期が迫ったある日の事。

「さつき本当にいいの?」

「うん、この大学でいい」

「あんなに絵を頑張って描いてたじゃない。あなたの成績なら美術大学も行けるでしょ?諦めていいの?」

「別に絵を描くことが全てじゃないでしょ。これ以上続けて絵が嫌いになるくらいなら趣味で続けられればそれで良い」

ここで夢は途切れ、さつきは目を覚ます。

「夢か」

 目を覚ましたさつきは昨日そらに言われたことを少し思い出す。

「大事なのは誰かに必要とされることか。」

 さつきはしばらくすると寝袋から出る。隣をみるとそらはもうすでに起きているのか寝袋は空になっていた。さつきはテントを開け外に出る。

「そらさん、おはよう」

「あ、さつきちゃんおはよう。先に起きたから朝ごはん準備しておいたよ。」

「ありがとう、そらさん」

 さつきはそらから皿を受け取ると朝食を食べ始める。

「そういえば、そらさんは魔法ってどんなのが使えるの?」

 そう聞かれたそらは痛い所を突かれたような表情で答える。

「わたし魔法使えないんだ」

「そうなの?」

「なんかね、魔力はちゃんと持ってるんだけど、それをうまく放出することができなくて、魔導具を使っても魔力がうまくまとまらないんだ。だから刀も出すのが少し遅いんだよね」

 そらが答えると、さつきはブツブツとしゃべりだす。

「そうか、じゃあ取り敢えずは昨日やったみたいにそらさんが前衛で私が後衛が良いか」

「さつきちゃん?大丈夫?」

「え?ああ、大丈夫。魔物が出てきたときにどう戦うのがいいか考えてただけだから」

そう言うとさつきは朝食の残りを食べ始める。

 2人は朝食を終えるとテントを片付け、また森の中を歩き始める。

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