「ふんふ〜ん♪」
ある日のこと、時之家の廊下をまだ幼いそらが鼻歌を歌いながら歩いていた。
「うん?」
普段鍵がかけられている物置の扉が、この日は少しだけ開いていた。中に入らないように言われていたが、好奇心に負けたそらは物置の扉をそっと開けて中に入る。
物置にはいくつかの棚が置かれており、そらは1つづつ棚を開けて中を見ていく。
「うーん?」
棚のなかには色んな物が入っていたが、幼いそらにはそのほとんどが何なのか分からず手に取ってはそのまま棚に戻していく。
いくつめかの棚を開けたとき、そらは女神の神器のクレヨンを見つける。
「クレヨンだあ!!」
そらはクレヨンをちょうど近くにあった紙の所に持っていき、床に置いてクレヨンで絵を描き始める。
そらが絵を描き始めてしばらくすると廊下の方からドタドタと足音が近づいてくる。
「そらおねえちゃ〜ん!!」
大声を上げてあずきが物置に入ってくる。
「あずきちゃん!遊びにきたの?」
「そうだよ!そらおねえちゃんは何してるの?」
「今ね、クレヨンでお絵かきしてたの。あずきもいっしょにお絵かきする?」
「お絵かきするー!」
あずきは紙を持ってそらの隣で絵を描き始める。無心で絵を描く2人だったが、絵を描き終わった2人が声を上げる。
「かけた〜!」
「あずきもかけたよ!」
2人はお互いに描き終えた絵を見せ合う。
「そらおねえちゃんは何をかいたの?」
「そらはね、そらと、そらのおともだちをかいたの!」
そらはあずきに自分の描いた絵を見せる。
「これがぬんぬんで、こっちがあん肝、それとそらザウルス!
あずきちゃんはなにをかいたの?」
そらはあずきの絵を覗き込む。あずきの絵にはピッケルと金槌を持った、ビーバーの様な尻尾をした生き物たちが建物を建てる姿が描かれていた。
「これはかいたくしゃさんだよ!」
「かいたくしゃさん?」
「そう、かいたくしゃさん!これ、おかあさんにみせてくる!」
あずきは突然立ち上がり、物置から出ていこうとする。
「まってあずきちゃん!ちゃんとおかた付けしていかないとダメだよ!」
「そうだった、さすがそらおねえちゃん!」
あずきが戻ってくると、2人はクレヨンを片付ける。そして、クレヨンを棚に戻した所で、華の声が2人を呼ぶ。
「そらー!あずきちゃーん!おやつの時間よー!」
華に呼ばれて、そらが物置きから飛び出していく。
「おやつたべるー!」
その後をあずきが慌てて追いかける。
「まってまってまってー!あずきもおやつたべるー!」
そらとあずきがいなくなり、物置に静寂が戻ってくる。
残された2人の絵は誰にも見つかることはなく、さつきがこの世界に来た後もどこかに残ったままになっているという。