気をつけはしましたが。
あれから話は飛んで6月。
花帆ちゃんもさやかちゃんも、スクールアイドルクラブの部員としてすっかり打ち解け、花帆ちゃんはオーバーワークの危険性と練習の大切さ。
さやかちゃんは誰の真似事でもない、自分自身の表現の大切さを綴理から近江町市場を通して学んだ。
―――そして、今月末に迫る撫子祭に備えて花帆ちゃんとさやかちゃんは部活動の紹介記事を書いているところだった。
――のだが、
花帆「100万人だよ、さやかちゃん!!」
さやか「はい? なんですか急に、100……」
花帆「100万人だよ! 100万人でライブするの! それが、あたしたちの目標!」
さやか「そ、れは……」
花帆「凄いと思わない!?」
さやか「確かに、100万人の観客を前にライブができたらとてつもなく凄いことですけど、そもそも100万人が入れる会場がないですよ。大きなスタジアムだって、10万もいかないんですから」
花帆「えっ!そうなの……?」
さやか「はい。満員電車みたいにぎゅっと押し込めても無理です」
花帆「ええ〜っ?!」
ショックを受ける花帆ちゃん。
さやか「まあ、目標を持つことはとても素晴らしいと思いますが……」
花帆「むー、だめかー」
するとさやかは咳払いし、
さやか「さて、大きな目標を持つこともいいですが、花帆さん。今日は先輩がたがいません」
花帆「え、あ、そっか! 今日だった! どうして来ないんだろうって思ってたや。ひょっとしたら、たぬきに襲われてるんじゃないかって……」
さやか「それだったら康太先輩が返り討ちにしそうな気がしますが……。とはいえ、わたしたちはわたしたちでやらなきゃいけないことがあるってことです」
花帆ちゃんは首を傾げる
花帆「えーっと……」
さやか「……まさかとは思いますが、忘れているとか?」
花帆「そ、そそそそんな事ないよ!? 今日は全体部活会議で部長の梢センパイはお休み! 綴理センパイは進路相談で先生とお話でお休み! 康太先輩も先生に呼ばれてる!」
さやか「聞いたんですけど、康太先輩、生徒会長と恋仲らしいですね。なんでも幼馴染らしくて」
花帆「え〜!? 幼馴染同士の恋!? お互い初恋とかだったら少女漫画みたいで憧れちゃうな〜」
花帆ちゃんはウキウキして野次馬根性丸出し。そんな花帆ちゃんをさやかちゃんはヤレヤレという目で見る。
さやか「それについては同感です……。でも、私たちは私たちでやることがありますからね。まあ話を戻すと、わたしたちはこれです」
さやかちゃんはいくつかの項目が書かれた用紙とコピー用紙を見せる。
そう今月末には蓮ノ空の3大文化祭の1つ、撫子祭がある。それに備えての準備をするのだ。
花帆「あっ、そっか。梢センパイが言ってた、新聞部からのお願い!」
さやか「はい。部活の紹介記事です。期日は特に設けられていませんが……撫子祭で張り出すという目的がある以上、早めに越したことはないかと」
花帆「1年生が書かなきゃいけないんだったね」
さやか「そうですね。絶対というわけではありませんが、撫子祭の新聞記事は新入生が執筆するのが伝統、ということですから。だから先輩たちも、わたしたちの記事を楽しみにしてると言ってくれたんですし。」
花帆「そっか、センパイたちのためにも頑張らないとだ!」
さやか「はい。先輩がたの名に恥じないように、です。わたしたちにとっての最初の文化祭でもありますしね。……とにかく!わたしが何を言いたいかというと、撫子祭は、既に始まっているということです!」
花帆「えーーっ!? どこで!? どこで!?」
さやか「もちろん、ここで!」
花帆「こ、ここで……!」
さやか「わたしたちの作る記事の出来が、直接撫子祭でのスクールアイドルクラブの評価を左右するってことです!」
花帆「た、確かに……!」
さやか「ということで、この部活紹介の記事。つまり私達から見た、このスクールアイドルクラブの魅力を書きましょう!」
花帆「まかせろー! まず、ライブが楽しいでしょ! 練習は大変だけど楽しいし! あと、スクールアイドルクラブのみんなと一緒にいるのが楽しい! あとは、応援してくれるみんなと一緒の時間を過ごせることも、そのあとに「終わったー!」って力が抜けるのも! 曲も綺麗で可愛くて楽しくて――」
さやか「ちょ、ちょっと待ってください。このままだと、見出しを並べるだけで終わってしまいます!」
花帆「うぇえ!? ほんとだ! 全然足りないよ!!」
さやか「わたしが大きさを決めたわけではないです。一応、そこそこ大きなサイズなんですけどね……」
花帆「それだけ蓮ノ空スクールアイドルクラブは魅力的ってことだよ!」
さやか「は、はい。それはもちろん。ただ……やっぱり小さな文字でぎっしり全部詰め込んでしまうと、皆さんに伝わりにくい記事になってしまうかと」
花帆「どうしたらいいのさやかちゃん……」
さやか「少し、内容を絞りましょうか。一応、クラスの皆さんにお話を聞いてきたのですが、やはり去年の実績を纏める方向の部活が多いみたいです。ですので、わたしたちも大倉庫に行って色々調べることを考えていました」
花帆「去年の実績かー。でもさ、さやかちゃん。他の部の子たちが、そういうことやってるんだよね?」
さやか「え?あ、はい。そうですね」
花帆「じゃあさじゃあさ、違うことやろうよ! 蓮ノ空スクールアイドルクラブにしかできない紹介記事が良いと思うんだ!」
さやか「それは……確かに、そうですね」
花帆「せっかく頼んでくれたセンパイたちにも、あたしたちがこの場所を大好きなんだって伝えたいし! きっと喜ぶよ!」
さやか「分かりました。では、この蓮ノ空スクールアイドルクラブにしかないもの……それでいて誰にでも分かる魅力的な点。それを探しましょうか」
花帆「ふっふっふ」
さやか「花帆さん?」
花帆「そんなの、探すまでもないよさやかくん」
さやか「さやかくん」
花帆「ずばり……センパイだよ! ます、梢センパイは、頼れる!!」
さやか「なるほど」
花帆「一緒にいると安心できて、ステージの上では梢センパイと一緒だからってだけで、すごく自由になった気持ちになれるんだ!」
さやか「ふんふん」
花帆「練習の時はちょっと怖いし、部長としてのまじめな感じはこう、あたしもちゃんとしなきゃー、って思うけど……。でもそれも、梢センパイが居れば大丈夫って思える理由だよね!」
さやか「なるほど……うん。良い感じだと思います」
花帆「ほんと!?」
さやか「はい、花帆さんは乙宗先輩のことが大好きなんですね」
花帆「えへへー。その気持ちを、みんなにも伝えないとね。じゃあ次はさやかちゃん、綴理センパイのことをどうぞ!!」
さやか「分かりました。といっても、乙宗先輩のように頼りがいがある人ではありませんからね」
花帆「け、けっこうバッサリと言うね……」
さやか「まあでも、それを補って余りある、綴理先輩のパフォーマンス力は、どうしたって他の誰にも真似ができないものです」
花帆「なるほど……」
さやか「誰が見ても一目で魅了されるステージ上の綴理先輩の姿は、確かに綴理先輩にとっては孤独だったのかもしれません。でも、今はわたしが居ますから、それは大丈夫にします。つまり、綴理先輩は本人の想う欠点が無くなり、最強です」
花帆「……あれ、ここまでだっけさやかちゃんって。で、でも! こ、梢センパイは部長だし、みんなを支えてくれてるし注目の的だよ!」
さやか「確かに、綴理先輩は部長ではありませんし、むしろ支えられてる立場ですが、スクールアイドルという一点のみで言えば、綴理先輩が部活の顔です」
さやか「でも、ふと思いましたが、先輩たち3人は、去年はどうされてたんでしょうね? 最近聞いた話ですが、康太先輩は1年生の頃はサッカー部だったらしくて。それが去年の春から忽然と高校サッカーから姿を消したと」
花帆「ええ!? ……そう言われると、私たちセンパイたちのことほとんど知らないよね?」
さやか「はい」
花帆・さやか「「少し調べて見ようか?」」
――そしてその後、花帆とさやかは3年生の教室にやってきた。
花帆「康太先輩は居るかな……」
――すると、
沙知「あれ、スクールアイドルクラブの」
さやか「あ、こんにちは」
花帆「大倉庫の妖精さん!」
沙知「おいおい(苦笑)誰が大倉庫の妖精だって? 康太に何か用かい?」
さやか「あ、はい。部活動の紹介記事の件で、康太先輩の事について聞きたかったんですが」
沙知「そっか。なら……雪人!」
雪人「ん?どうした大賀美」
沙知「後輩たちが康太のことについて知りたいんだってさ。親友のお前が適任だろうから話してやってくれないかい?」
雪人「ん、ああ……。けど、喋れないことは喋れないで良いか?」
花帆「あ、はい! ぜんぜんオッケーです」
さやか「お願いします」
雪人「じゃあ、屋上でも行くか」
―――その後、雪人から過去の情報を聞き、大倉庫に向かった2人。そこで梢と綴理、去年のスクールアイドルクラブのラブライブ出場辞退や、仲間との不和、仲間のケガなどの出来事を知り、暗い感情に陥った。
――しかし、まだ4人ではなにも成し遂げていないと二人は綴理と梢に直談判。撫子祭までの間4人での練習に励み去年のリベンジとして《DEEPNESS》を披露。
撫子祭は大成功で終わり、梢と綴理の不和も解消されたのだった。
康太(二人とも……ありがとう。俺も頑張らないとだな)
― つづく ―
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