では、どうぞ!
あれから月日は過ぎ、2月に慈と瑠璃乃の喧嘩からシャッフルユニットの企画があった。無事に2人は仲直りしたが、絆はより強固になったようだ。
……さて、今は3月の中旬。俺と沙知。3年生の卒業が間近に迫っていた。
俺と沙知は今、校門から校舎までの一本道で満開に咲く桜を見上げていた。
沙知「ふっ……四度目の桜だねえ」
康太「………ああ」
沙知「一度目、二度目、三度目……………会う度にキミはあまり変わっていないのに、どうしてだろうね。あたしたちはキミに抱く気持ちが変わる」
沙知は寂しそうな表情を浮かべて、桜の木に語りかける。
沙知「今年のあたしたちは、キミに聞きたいことがあるんだ。毎年みんなを見ているキミにさ。……あたしと康太は、今までの先輩方から受け継いできたものを……台無しにしなかっただろうか」
康太(沙知……)
沙知「……あたしも康太も、ちょっと、自信がないんだよね」
康太「……………」スッ
康太は、そっと沙知の側に近寄り沙知の手を握る。
沙知「康太……?」
俺は黙って、沙知の手を握っていると、沙知は次第に目に涙を浮かべて、俺に身体を寄せてきた。
康太(本当に……この小さい身体で、俺達のために…頑張ってくれたんだよな………)
沙知(…………///)
その頃――、スクールアイドルクラブの部室では、
部室では梢と綴理、慈の2年生の3人が集まっており、梢は目の前に紙を広げていた。
梢「ん〜〜……ふう、綴理、慈、ちょっといいかしら?」
慈「どしたー?」
慈と綴理が梢の方を見る。
梢「ちょっとふたりに話しておきたいことがあって。3月末の……蓮華祭のことなのだけれど」
慈「2年だけってこと? 康太先輩は良いの?」
綴理「1年生に、サプライズ?」
梢「それはまた別の機会にね? そうじゃなくて……」
梢は一旦話を仕切り直す。
梢「康太先輩と沙知先輩が、卒業するでしょう?」
綴理「………………」
慈「おっけー、理解した。そうだね。三年生にとっては蓮華祭が、うちの生徒で居られる最後の日だもんね。康太先輩には言えないね」
梢「そう。…………だから、蓮華祭で、先輩たちに何かを返したい。とはいえ、具体的な案があるわけではないのだけれど」
梢がそう言うと、2人とも「そうだね」と、賛成の意を示す。
慈「まぁこればっかりは、私たち二年生が考えるべき問題だよね。んー……なんかプレゼントでも作る?」
綴理「ふたりのこと見てたら、ちょっと思いついたよ」
慈&梢「「!」」
慈「なんだよもー、やるじゃんつづりー」
梢「聞かせてもらえる?」
綴理「ん。…………曲をね、作るんだ。新しい曲」
慈「新曲……私たちを見て思いついたってなに?」
慈が綴理に聞くと、綴理は思ったことを話す。
綴理「去年の部室はいつも、こずがそこに居て、めぐが転がってて、それからさちとこーたが入ってきてたなーって、思ったらさ。いつだったっけ……入ってきたさちが言ってたことを思い出したんだ」
綴理「歌は、こず。ダンスは、ボク。言葉は、めぐ。だって。そして……さちが知ってるボクたちより、今のボクたちはすごいことができるはずだと思う。どうかな?」
綴理の意見を聞いたふたりは、
慈「ふっ……やってやろうじゃん!」
梢「それぞれ責任があって、それだけにやりがいもある……ええ、それでいきましょう」
2年生たちの意思は一つに固まった。
慈「私たちから、先輩たちに贈る曲……あの余裕たっぷりなちっちゃいのと康太先輩を、感動の涙でベチャベチャに泣かしてやるんだから!」
それから数日後、
康太「? 梢は実家に帰るのか? 花帆も行くのか………」
梢「はい。届けの通り明後日には帰ってきます」
花帆「行ってきます!」
康太「行ってらっしゃい。え〜と、綴理とさやかちゃんもお出かけ?」
さやか「はい。少し街に散歩に」
綴理「夕飯までには帰るよ」
康太「気を付けてな?」
そして行ってしまう2人。
康太「ん? 慈と瑠璃乃も?」
瑠璃乃「はい。ちょっと映画館行ってきます」
慈「康太先輩は待っててくださいね」
康太「??」
そして2人も行ってしまう。
康太(スクールアイドルクラブが全員蓮ノ空を空ける……何かやってんのかな?)
そして3日後、みんながまた揃い蓮華祭に向けての練習。練習時間も終わり、俺は片付けをして、
康太「気をつけて帰れよ?」
先に帰った。
梢「さてと、じゃあ合わせるわよ?」
綴理「おー」
慈「よっしゃ!」
そして作った曲、歌詞、歌を合わせると、まるで示し合わせていたかのようにパズルのピースがピタリとはまるような一体感。
梢「えっと、軽く合わせただけよね?」
慈「凄いって! 私たち出来過ぎ!」
綴理「うん! 凄い!」
そして、その日は完全下校時刻も近づいていたため帰った3人。
翌日早朝、
梢「それでは、練習を始めます!」
瑠璃乃「はいは〜い!」
さやか「本日もよろしくお願いします」
綴理「ん」
花帆「今日も頑張るぞー!」
慈「やろやろ!」
康太「うし!」
――すると、
ガチャ
扉が開き、沙知が入って来た。
梢「沙知先輩? 何か……」
沙知「あ〜いや、ちょっと部室を見納めにね」
さやか「それでしたら、鍵をお渡ししましょうか?」
さやかがそう言うと、
沙知「いや、スクールアイドルの君たちが居るのを見納めに来たんだよねぃ」
スクールアイドルクラブ『………………』
沙知「じゃああたしは行くよ。ありがとね」
康太「………じゃあ、練習始めるぞ!」
そして朝練を終えて授業も終わり放課後、梢、綴理、慈の3人は今日の朝のことについて話していた。
慈「…………………昼間、沙知先輩来たじゃん?」
梢「そうね。この部室を見納め……だったわね」
慈「やっぱり、いつも明るい沙知先輩でも卒業前はしんみりするのかな」
梢「それは、そうでしょう。3年間を過ごした学び舎を離れることになるのだもの。 私だって、その時になったらどう思うか分からないわ。……ただ」
綴理「…………それだけじゃない気が、した?」
慈・梢「「!!」」
梢「……………綴理も、そう思ったの?」
綴理「分かんない。こずの言う通りかもしれないし。ただ………留年したくは、なさそうだった」
梢「ふふっ。留年したくはないでしょう。でも、そうね。この学校に対する未練というより、私は沙知先輩のあの目に……なんというか、後悔のようなものを感じた気がするの」
綴理「後悔……さちが………」
慈「ま、2人もそんな風に思ったんだったら、話が早いや」
綴理「めぐ?」
慈「理由はわかんないけど、シンプルにさ。残り短い学校生活、沙知先輩にあんな顔で過ごさせるの、なんか腹立つなーと思ったの。私はね。せっかく沙知先輩と康太先輩のためにー!ってこっちがやってる時だからかな、余計に」
綴理「そうだね。ボクもそう思う。じゃあ、行く?」
慈「そうだね。行こうか」
綴理と慈が席から立ち上がる。
梢「そうね。行きましょうか。最後くらい、良い後輩でいたいものね」
そして、沙知先輩を生徒会室に呼び出して、3人で生徒会室に向かった。
〜 生徒会室 〜
生徒会室には康太と沙知が待っていた。
沙知「突然こんなとこ呼び出すからびっくりしたよ。もうあたしは生徒会長じゃあないんだからね? 鍵は借りられたけども」
梢「すみません。ここが1番、落ち着いて話せるかと思ったので……」
沙知「ふむ? ……なんというか、この5人というのも、久しぶりな感じがするねい。綴理の好きなお菓子も……まだあったかなぁ」
沙知はそう言うと戸棚の前に歩いていく。
綴理「ありがと」
梢「少しは遠慮というものをね………」
沙知「まあまあ、良いじゃないか。えっと、この戸棚の奥にしまってあったから………」
沙知は背伸びして手を伸ばすが、まったく届いていない。
康太「あー俺が取るよ。無理すんな。沙知ちっちゃいんだから」
沙知「ちっちゃいゆーな!」
すると、その様子を見ていた綴理が、
綴理「昔、こずがさ」
梢「?」
綴理「ああやって高いところに手を伸ばしてたさちの両脇をさ。後ろからがばっと持ち上げてさ」
康太「あー………あったな」
綴理「さち、あの日は何も言わずに、日が沈むまで窓の外を眺めていたね」
梢「良かれと思ってやったのよ、私は…………!」
戸棚の上に手を伸ばす沙知に、めぐが話しかける。
慈「……………あのさ、沙知先輩、康太先輩も」
沙知「ん、しょ、くんのっ……………。ん?」
康太「ん?」
慈「なんか、卒業以外でセンチになってることないですか? わりとそんな感じがして、私たちみんなで来たんですよ。けっこう、頼りになる後輩でしょ、私たち」
すると、俺と沙知は顔を見合わせて「ハァ……」とため息を吐き、
沙知「そうだね。ふー……いやぁ、自分が情けないね、あたしは相変わらず。そんなに分かりやすかったか」
康太「そうか………」
綴理「こずもさちも、分かりにくいけど、付き合いも長いので」
綴理がエヘンと胸を張る。
梢「私のことは今はいいのよ……沙知先輩、康太先輩、何かあるなら話してもらえませんか。私たちはただ、卒業までの時間を、先輩たちにそんな顔で過ごしてほしくないだけなんです」
すると、沙知は観念したのか話し始める。
沙知「…………そう、だねい。キミたちにとって、後輩はどんな子たちだい?」
梢「…………どんな、ですか。一言で言い表すのは、とても難しいのですが……」
綴理「スクールアイドル、とか……?」
慈「なんか……全部。みたいな」
沙知「今はそれで十分さ。改めて、大切な出会いだったみたいだね。あたしも、自分のことのように誇らしい」
沙知「キミたちが、一年生との出会いを嬉しく思っているように……あたしと康太にとっても、キミたち新入生は……救い、だったんだ」
康太「うん」
慈「あの問題児どもが?」
康太「自覚あったのか……」
綴理「ね」
すると、沙知はクスッと笑い、
沙知「あはは、そうとも。三年生の先輩たちが卒業して……あたしと康太はこの部活に残された。マネージャー以外の新入生が誰も入って来なければ、ここの活動部員はあたしだけ。………つまり、廃部が間近に迫っていたんだ」
梢「っ…………」
沙知「三年生の先輩たちは、あたしにとっては恩人でね。理事長の孫娘として、言われた通りのことしかしてこなかったあたしを……このスクールアイドルの道に引き込んでくれた大切な人たちだ」
沙知「だから、本当に怖かったんだ。もしも誰も入って来なかったら、誰もスクールアイドルクラブに興味を持ってくれなかったら――。これまで先輩たちが積み上げてきた、重ねてきた歴史を。あたしが潰すことになるって」
綴理「そうならなくて良かった」
沙知「そうだね。最高の後輩に恵まれたおかげだ」
沙知と康太は言葉を続ける。
康太「俺たちは、先輩に恵まれた。後輩にも、本当に恵まれた。でも、だからだな。その間を繋いでいた俺たちは、先輩に恵まれた分を、後輩に返せた自信がない。こうして、お前らにこんなことを言ってしまってるんだから、余計にな」
慈「…………………」
康太「思えば、多くつまずいた。後輩を傷つけてばかりだったし……助けてもらってばかりだった。だから、だから俺達はせめて――」
すると、綴理が康太の言葉を切って俺達に、
綴理「こず。めぐ」
沙知「っ?」
康太「?」
綴理「わがまま言ってもいいかな」
慈「いいよ」
梢「ものによる。と言いたいところだけれど。きっと、考えていることは同じだから、構わないわ」
沙知「キミたち、何を」
綴理「聞いて、さち。こーた。さちとこーたにしか届かない、150点」
2年生は、ここで俺達に秘密で作った、先輩に贈る歌を歌うことにした。
綴理「〜♪」
歌っている方も…聞いている方も、お互いとの思い出が脳裏に蘇ってくる。
慈「〜♪」
沙知、康太から受けた恩、言葉を、支えられて来たこと、全ての感謝を歌に込めて歌う。
梢「〜♪」
自分たちは、先輩たちが大好きだと、誰がなんと言おうと、最高の先輩だったんだと……そう、伝えた。
沙知「っ………」
綴理「ごめんね。さちと康太に、貰ったものは後輩に返せばいいって言われてたけど……………どうしても、2人にも返したかった」
梢「これが、私たちの気持ちです」
慈「――ねえ、沙知先輩、康太先輩。私たちがここに居るのは、あなたたちが居たからだよ」
沙知「うっ…………くっ、あ…」
康太「っ!……」ポロポロ
沙知と俺の両の目から、涙がボロボロとこぼれる。こぼれ落ちる大きな水滴が、俺たちの手に落ちる。
梢・綴理・慈「「「以上、第102期蓮ノ空学院スクールアイドルクラブでした!」」」
― つづく ―
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