俺と沙知の高校受験
俺達が中学3年生の秋、それぞれの高校受験を控えていた康太と沙知。
沙知は蓮ノ空への推薦が決まっており、康太は少し成績に今のままでは不安があるため部活を引退したあとは毎日学校の図書室で勉強していた。
康太「……………」カリカリカリカリ
ノートにペンを走らせる音が図書室の静かな空間に響く。
そこへ―――、
ガラッ!
沙知「失礼しまーす……あ、いた」
康太「ん?」
康太が振り返ると、扉のところから沙知がのぞき込んでいた。
康太「あ、沙知。どうした?」
沙知「んにゃ? 勉強捗ってるかな〜と」
康太「まあ、ぼちぼちだな……」
ノートに顔を戻す康太。
康太「ん〜……」
沙知「何か分からない所でもあるのかい?」
沙知が隣の席に腰を下ろす。
康太「ああ、ここなんだけど……」
沙知「どれどれ……あ〜、ここか。ここの単語はコレのこと言ってるだろ?コレのことを言ってるのは段落4だから、ここを読めば分かるよ?」
康太「あ、そっか……。やっぱり頭いいな……」
沙知「そうかい?」
康太「頑張らないとな……」カリカリ
再びペンを走らせる康太。
沙知「……なあ、なんでそんなに蓮ノ空に行きたいんだい? 康太だったらサッカー強い他の高校から引く手数多の気がするんだが……」
康太「………………」
康太の手が止まる。
康太「沙知ってさ、高校どこ行く?」
沙知「なんだい急に。アタシは蓮ノ空だよ。というか、そこ以外は家族が許してくれないよ………」
康太「だよな………」
沙知「ん? 何が言いたいんだい?」
康太「自分で考えろ」
沙知「……………」
沙知がむくれる。可愛いけど、俺が今それ言ったら沙知が責任感じるかもだからな。言うわけには行かないんだ。
康太(俺が沙知と同じ学校に行きたいし、何より沙知の力になるって、昔約束したからな……)
康太が思い出すのは幼稚園の頃。当時から沙知は周囲の大人たちから期待され、プレッシャーに押し潰されそうだった。
だから俺は沙知を助けると決めたんだ。
周りの大人は俺が沙知のそばに居るようになって、良い反応は無かったけどな。
でも、沙知の笑顔はその時から少しずつ増えていった気がしてた。
いつからか俺は、沙知のことを女の子として好きなんだと気づいたんだ。
そして、これから行くのは敵の本丸といって良い。高校、蓮ノ空学院。
間違いなく沙知はこれまでを遥かに凌ぐ勢いで特別扱いされたり、期待が伸し掛かる。
沙知が潰れてしまわないためにも、俺はそばにいたいと思う。俺に何ができるかは分からないけど、少しでも気持ちを吐き出せる相手になってやる必要がある。
康太「………………」カリカリカリカリ
そんな俺を見て、
沙知「康太、良ければアタシが勉強見てやろうか?」
康太「え?」
沙知「康太がなんで蓮ノ空に行きたいかは分からないけど、今度はアタシが力になってやろうじゃないか。どうだい?」
康太「……………」
康太(ここで断って、万が一落ちたら絶対後悔する。少しでも確率上げるためにも、打てる手段はすべて打つべきだな)
康太「……頼む」
沙知「オッケー。じゃあ、やろうか」
そして、その日から放課後は沙知といっしょに勉強し、いよいよ1月の蓮ノ空の入試の日がやって来た。
先生「では始め!」
一斉に答案を裏返す受験者。
康太(あ、ここ沙知とやったとこだ……)
康太は問題を解いていき、国語、数学、英語の受験3科目を終えて次は面接。問題なく終了した。
康太(あとは結果を待つだけだな……)
そして合格発表の日がやって来た。
康太「2248番……2248番……!」
沙知「頼む。あってくれ!」
2242、2245、2246……2248……、
康太「! あった!!」
沙知「やったじゃないか康太!」
沙知が嬉しいのかハグしてくる。
康太(ちょっ、沙知さん?! 胸当たってますよ!?)
康太「………」ギュ
俺は、沙知を抱きしめ返す。
康太「ありがと。沙知……」
そして手続きの書類を受け取り、家に戻った。
手続きは恙無く完了し、春から俺は沙知とともに蓮ノ空の生徒になったんだ。
― つづく ―
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