シャムロックグリーンとの初恋   作:松兄

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俺と沙知の大学生活の夏休み

 

 

 蓮ノ空の卒業から数カ月後。大学に入って、初めて迎える夏休み。

 俺と沙知は、夏休みが始まった時辺りに約束していた海に行こうと、夏の日差し照りつけるある日、徳光海水浴場に向かった。

 

 今日は快晴。見上げるような青空と、どこまでも続く水平線。

 

沙知「海だー!」

 

康太「待ってろ。今場所作るから」

 

 ビーチにレジャーシートを敷き、荷物を置く。すると沙知はサンダルを脱ぎ、シートに腰掛けた。

 

沙知「海なんて、久しぶりだねぃ……!」

 

 康太の横に座り、コチラに振り向いた沙知の姿に、康太は思わず息を呑んだ。

 

 その日、沙知が選んだ水着は、大胆な白と黒のボーダー柄のホルターネック。

 沙知の明るい草木のような緑色の髪は、海風になびかないよう高めのツインテールに纏められ、黒色と黄色の、2つのヘアピンがそれぞれアクセントになっている。

 

 そしてその大胆な水着からは、沙知の『低身長』✕『巨乳』の、魅力的なプロポーション(トランジスタグラマー)がはっきりと見て取れる。

 真夏の太陽の下、陶器のように白く美しい肌が眩しかった。

 

 デニムのショートパンツを合わせたその姿は、 健康的なセクシーさと、沙知らしい快活さが同居していて、男心を刺激する。

 

沙知「……何、見とれてるのかい?」ニヤニヤ

 

 沙知が、少しいたずらっぽく、でもほんのり頬を赤く染め、少し照れたように笑う。その瞳は琥珀色に輝いていた。

 

康太「あ、いや……やっぱりすごく似合ってると思って」

 

沙知「ふふ、ありがと。でも、康太身体すごいな。鍛えてるのかい?」

 

康太「ああ。まあ、スポーツインストラクター目指す大学だからな。自然とそういう身体作るためのトレーニングを授業としてやるんだよ。身体作り教えるのに自分の身体が脂肪まみれじゃあ説得力皆無だからな」

 

沙知「あはは。たしかにねぃ」

 

 沙知は優しく微笑むと、立ち上がり俺の前に立ち、

 

沙知「じゃあ、まずは写真撮ろうか!」

 

 沙知は砂浜に立つと、眩しそうに目を細め、俺のスマホのカメラに向かって思い切りの笑顔を向ける。

 

 そして、少し前かがみになり、左手で元気いっぱいにピースサインを作り、右手は自分の膝についた。

 

康太(っ!)

 

 ヤベ。谷間が………///

 

 

カシャッ!

 

 

 写真を撮った康太。沙知が駆け寄ってくる。

 

沙知「どう? ちゃんと撮れたかい?」

 

康太「おう。最高に可愛く撮れたよ……///」

 

沙知「? どうしたんだい?」

 

 沙知の不思議そうな顔。

 

康太「その、さっき写真撮った時、谷間が……」

 

沙知「っ! ………エッチ////」

 

 撃沈した康太だった。

 

沙知「ちょっとスマホ見せて?」

 

康太「ん、ああ……」

 

 康太がスマホの画面を見せると、沙知は「わあ、 綺麗に撮れてるねぃ」と大喜び。すると、

 

沙知「じゃあ、次はあたしの番だね! はい、撮るよ〜?」

 

 沙知は俺にスマホのカメラを向けた。

 

康太「え、俺も撮るの?別にいいよ、俺のピン写真なんて……」

 

沙知「何言ってるの、せっかくのデートなんだから、残さなきゃ損でしょ! ほらほら、ちゃんとポーズとって! 最高の笑顔でね!」

 

 砂浜に座った康太は、少し照れくさくて、思わず頭を掻いた。

 

 真夏の太陽の下、引き締まった体にじわっと汗が浮かぶ。

 

 カメラの向こうで、沙知は片目を瞑りながら真剣にアングルを調整している。

 

沙知「あ、今の感じすごくいい! そのまま動かないで!」

 

 沙知の熱意に押され、俺も腹をくくって、沙知がさっきしてくれたのと同じように、左手で思い切りのピースサインを作った。

 そして、カメラの向こうにいる大好きな彼女に向けて、照れ隠しも混ぜながら満面の笑みを浮かべた。

 

 

カシャ

 

 

 爽快なシャッター音が響く。

 

沙知「うん、すっごく格好よく撮れたよ」

 

 沙知が満足げにスマホを掲げ、嬉しそうに康太の元へ駆け寄る。

 

 沙知のスマホの画面に映っていたのは、1枚の康太の写真。

 

 背景にはどこまでも青い海と空が広がり、太陽の光が降り注ぐ中、我ながらちょっと照れて赤くなりつつも、心底楽しそうに笑っている康太の姿だった。

 

沙知「この写真、あたしの宝物にするよ」

 

 そう言って、自分のスマホに嬉しそうに画像を保存する沙知。

 

 お互いのスマホの中に、お互いが撮った、世界で一番大好きな人の笑顔が保存された。

 

沙知「よしっ、写真もバッチリだし、今度こそ海に入ろうか! 競争だよ!」

 

 沙知はスマホをシートに置き去りにすると、今度こそ白い泡の立つ波打ち際へと全力で走っていった。

 

 波打ち際で水をかけ合ったり、彼女の手を引いて少し深いところまで行ってみたり。

 

沙知「康太! こっち!」

 

康太「おう!」

 

 沙知の楽しそうな笑い声が、波の音に混ざって響く。

 

 彼女が波に足をすくわれそうになり、俺が慌てて支えた時の、その沙知の身体の柔らかな感触と、一瞬近づいた顔。

 お互いの心臓の音が聞こえそうなほどで、真夏の太陽よりも熱いものを感じた。

 

 

 さて、海から上がってきて体が少し冷えた頃、ちょうどお腹の虫が鳴った。

 

康太「そろそろ昼ご飯にするか。あそこの海の家、 焼きそばとかラーメンとか美味しそうな匂いしてるし、行ってみようぜ?」

 

 康太がそう提案する。すると沙知は「ふふっ」と不敵な笑みを浮かべた。

 

 康太が「な、なんだ?」と、身構えると、さっき海で元気に泳いでいた時のまま、少し濡れた黄緑色のツインテールを揺らしながら、沙知が持ってきていた大きなクーラーボックスを引き寄せる。

 

沙知「ふっふーん、甘いねぃ! 実はね……じゃじゃーん! お弁当作ってきたんだよね!」

 

康太「えっ、マジで!?」

 

 手際よく広げられたのは、大きめのタッパー。蓋を開けた瞬間、色鮮やかなおかずが目に飛び込んできた。

 

 綺麗に形が整えられたおにぎりに、ジューシーそうな唐揚げ、沙知らしい綺麗な黄色い卵焼き、そして彩りのブロッコリーやミニトマト。

 

康太「すごいいい匂い……! 朝早くから作ってくれたの?」

 

沙知「そうだよ? 朝ちょっと早起きして、屋敷の料理人に教えてもらいながら頑張ったよ。ほら、海で泳いだらお腹空くでしょ? はい、召し上がれ!」

 

 嬉しそうに胸を張る沙知に、俺のテンションは一気に最高潮になった。

 海の家のメニューも魅力的だけど、大好きな彼女(沙知)が自分のために早起きして作ってくれたお弁当なんて、どんな高級料理よりも価値がある。

 

康太「ありがとう、めちゃくちゃ嬉しい! 早速いただくわ」

 

 割り箸を割り、まずは大好きな唐揚げを一口。

 

康太「……っ、うまっ!! 外側がサクサクで、中がすごくジューシー。味もしっかり下味の醤油ベースのタレが肉に染みてて最高!」

 

沙知「本当!? よかったぁ、ちょっと味付け濃いめにしておいたんだ、汗かくからねぃ」

 

 康太が勢いよくバクバクと食べ進める姿を見て、 沙知は本当に嬉しそうに、はじけるような笑顔を浮かべている。

 

康太「この卵焼きも絶妙。ちょっと甘めのやつだ、俺の好みにドンピシャなんだけど」

 

沙知「あはは、康太のお母さんに事前リサーチ済みだよ! 美味しそうに食べてくれる顔が見たくて、コレは頑張った甲斐があったな」

 

 沙知は自分の分のおにぎりを小さく口に運びながら、俺が「美味い、美味い」とタッパーを次々と空にしていく様子を、愛おしそうに見つめていた。

 

 お腹も心も、これ以上ないくらいに満たされる。

 

 青い海と空の下、大好きな彼女の手作り弁当を食べる夏休み。俺は今、世界で一番幸せな男に違いないと確信していた。

 

康太「ごちそうさまでした!」

 

沙知「お粗末さまでした。じゃあ、少し休んだらまた泳ぐかい?」

 

康太「おう!」

 

 

 波の音を聴きながらテントの影でゆっくり休んでいると、砂浜の向こうから見覚えのある二人が歩いてくるのが見えた。

 

雪人「――あれ? もしかして、康太と大賀美?」

 

 声をかけてきたのは、高校時代の友人である雪人だった。その後ろからは、相変わらず大人っぽくて綺麗な美琴先輩が、にこやかに、しかし嬉しそうに手を振っている。

 

康太「えっ、雪人!? 美琴先輩!?」

 

沙知「わあ、お久しぶりです! 雪人と先輩も海に来てたんですね!」

 

 沙知も驚いてツインテールを揺らしながら立ち上がった。まさか高校時代の親しいメンバーに、自分たちの先輩に遭遇するなんて思ってもみなかった。

 康太と沙知はすぐにレジャーシートを広げて、4人で座り込んだ。

 

 久しぶりの再会に、一瞬で高校時代の空気が戻ってくる。

 

康太「雪人、こっち帰ってきてたのか?」

 

雪人「ああ、一昨日な。流石に夏休みに彼女をほったらかしにはしないって」

 

美琴「アタシの彼氏は嬉しいこと言ってくれるね♡ でも、2人も相変わらず仲良さそうだね。神城はちゃんと約束を守ったみたいだし、あの時の沙知ちゃんへの暴力も、もうそろそろ許してあげようかな〜」

 

康太「あのときはほんとすみませんでした……」

 

 即効土下座する康太。

 

沙知「先輩、康太をあんまり虐めないであげてくださいよ…」

 

美琴「ゴメンゴメン」

 

 美琴先輩が、康太と沙知を見て、少しからかうように微笑む。

 

沙知「先輩たちこそ、全然変わらないっていうか、 めちゃくちゃお似合いのカップルじゃないですか!」

 

 沙知がちょっと照れながらも、嬉しそうに言い返した。それからは、お互いの大学生活の近況報告や、高校時代のバカバカしくも愛おしい思い出話で大盛り上がりした。

 雪人の相変わらずなマイペースぶりにみんなで突っ込みを入れたり、美琴先輩の優しい笑顔に癒されたり。

 真夏の太陽の下、4人の笑い声が絶え間なく響き、話の花が次から次へと咲いていく。時間はあっという間に過ぎていった。

 

 

 すると―――、

 

雪人「あ、もうこんな時間か。俺たち、そろそろ向こうの海の家の方に行ってみようと思ってたんだ」

 

 雪人が時計を見ながら立ち上がった。

 

美琴「そっか、残念。でも沙知に会えて本当に嬉しかった!」

 

雪人「うん、また地元に帰ってきた時とか、みんなで集まろうな。康太、大賀美、デート楽しめよ」

 

美琴「バイバーイ!」

 

 美琴先輩がウインクをしながら手を振る。

 

沙知「はい! 先輩も雪人も良い休日を!」

 

康太「またな、雪人!」

 

 お互いに手を振り返し、それぞれのデートに戻るために二人の背中を見送った。

 

 彼らの姿が人混みに消えていくと、康太と沙知は自然と顔を見合わせた。なんだか、胸の奥が温かい。

 

康太「……なんか、不思議だな。ピンポイントで雪人たちに会えるなんて」

 

 康太がしみじみと言うと、沙知は嬉しそうに俺の腕にそっと手を絡めてきた。

 

沙知「うん、本当に会えてよかった! 高校の時の友達や先輩に、こうやって私たちの仲良いところを見せられたのも、なんだかちょっと誇らしいねぃ」

 

康太「みんなそれぞれ頑張ってるんだなって思ったら、俺ももっと大学生活も、……沙知との時間も、大事にしたいなって思った」

 

沙知「そうだね。あたしも同じこと考えてた」

 

 思いがけない友人たちとの再会は、俺たちの夏の思い出をさらに鮮やかに、そして二人の絆をいっそう深いものにしてくれた。

 

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 そして夕暮れ時。オレンジ色に染まったビーチで、俺たちは並んで座り、波の音を聞いていた。

  さっきまでの賑やかさが嘘のように、穏やかな時間が流れる。

 

沙知「……楽しかったねぃ」

 

 沙知が俺の肩に頭を乗せ、静かにつぶやいた。 彼女の濡れた髪からは、海の匂いがした。 俺は彼女の肩を抱き寄せた。

 

康太「うん、最高の夏休みだ」

 

 彼女の、とびきりの笑顔。それは、これからも二人で重ねていく、数えきれない思い出の、大切な思い出の一枚になった。




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