トガちゃんは元暗殺者   作:ぶらっきー

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#12 過去の時間

 

夢を見ました。それは過去に起きた、殺せんせとの最後の出来事、最後の戦い―――

 

 

 

 

~*~*~

 

 

 

 

「柳沢…」

「機は熟した。世界一残酷な死をプレゼントしよう」

「先生…僕ガ誰ダカ分カルヨネ…?」

「改めて生徒達にも紹介しようか。彼がそのタコから”死神”の名を奪った男だ。…そして、今日から彼が”殺せんせー”だ」

 

顔の皮膚はなく、体のほぼ全てが触手になった姿。一度暗殺に巻き込まれた際に見たことはありましたが、そのときとは全く違った風貌になってしまっていました。

 

「これが…こいつが…!」

「僕らを襲った、2代目死神…」

「前は顔だけだったのに、全身化け物になってんじゃねぇか!」

「そのタコと同じ改造を施しただけさ。違う点は…彼が自ら強く望んでこの改造を受けたことだ。不出来なイトナ、義妹とは訳が違う。想像できるだろうか?人間の時ですら1人で君達を圧倒した男が、比類なき触手と憎悪を得たその破壊力を」

「死ネ!!」

「逃げてっ!」

 

2代目死神が、殺せんせへ襲い掛かります。殺せんせと2代目死神の触手同士がぶつかり合い、暴風が巻き起こります。その風で私達は吹き飛ばされ、せんせも後ろへ後退ります。初速からマッハ2を出し最高速度は殺せんせの倍のマッハ40。せんせも苦戦を強いられていました。

 

「最大の違いはあのタコと違い、継続的運用を考慮に入れない触手設計。要するに彼はメンテナンスの必要がない使い捨てだ。寿命は3ヶ月もない代わりに、すさまじいエネルギーを引き出すように調整できた。死ぬときも爆発する危険はない仕組みだ。ハハハッ、安全で完璧な兵器だろう?」

「そうやって…そうやっていつも他人ばかり傷つけて自分は安全な場所から!!」

「そう思うかね?」

 

柳沢さんは懐から注射器を取り出し自分に打ち込みました。

 

「俺に死の覚悟がないと…そう思うのかね?」

 

注射器を打ち込んだ場所から体全体にかけて血管が浮かび上がりました。ですがその動きは血流とは違った動きで。

 

「命などもうどうでもいい…俺から全て奪ったお前さえ殺せれば…!!」

 

その正体は、触手でした。

 

「全身でなくとも要所に触手を少しづつ埋め込めば、短時間ではあるが人間の機能を保ったまま超人になれる。不測の事態に予備も用意してある。これだけあれば貴様など容易に殺せる!!」

 

一瞬で殺せんせの背後に移動したかと思えば、左目の眼帯から紫色の光が放たれました。その光は以前説明していた触手細胞が一時的に硬直してしまう光線で、動きを止めた隙に2代目死神が追い打ちをかけます。

 

「にゅ、にゅやぁ…」

「死ねモルモット!愛する生徒に一生傷が残るよう無様に!!」

「アアアア!!」

「なんのぉ!!」

「くっ、まだ死なないか…」

「皆さん、さっきの授業で言い忘れていたことがあります…。いかに巧みに正面戦闘を避けてきた殺し屋でも、人生の中では必ず数度、全力を尽くして戦わなければならないときがある。先生の場合…それは今です!」

 

そして再開される蹂躙にも見える戦闘。せんせが押されていますが徐々に攻撃を躱しはじめました。それに気づいた柳沢さんも光線を放ちますが、土を巻き上げることで光が届かないようにして対策します。

 

…私はこの戦闘が始まってからずっと考えていました。今の私達はただの足手まとい。戦闘に参加すればむしろせんせの邪魔になることは目に見えているため、ただ傍観することしかできません。ですが本当にそうなのでしょうか。私にできることは本当にないのでしょうか。考えるのを止めることはありません。常に考え続けるのです。考えることを辞めてしまえば、ここにいる意味がありません!!

 

「…注射器。やつの懐にまだ予備があると言った。…それを奪えれば、状況は変わる」

 

私はポケットからワイヤを出します。ビッチ先生にワイヤを用いた暗殺術や罠の張り方などを教わっていました。

 

「チャンスは1回のみ…。外せば次はない…。タイミングは――」

 

意識を自然に溶け込ませ気配を限界まで消しながらチャンスを待ちます。失敗は許されない、それなのに私はいつも以上に落ち着いていました。

 

「道を外れた生徒には、今から教師の私が責任をとります…。だが柳沢、君は出ていけ!ここは生徒が育つための場所だ。君に立ち入る資格はない!!」

「はあ…。まだ教師などを気取るかモルモット。ならば試してやろう。分からないか?我々がなぜこのタイミングを選んで来たのか」

「はっ!」

 

せんせと戦闘していた2代目死神が一瞬で生徒の背後に現れました。

 

 

――ドオォォンッ!

 

 

大きな衝撃が地面を伝ってきます。ですが私達にダメージはありませんでした。視界が晴れると大きく傷つき膝をついている殺せんせの姿がありました。殺せんせが攻撃を庇ったのです。

 

「っ、殺せんせー!!」

「教師の鏡だな、モルモット。自分1人なら逃げられるだろうこの攻撃を、生徒を守るために正面から受けるとはな。さあ2代目、次だ」

 

ここぞとばかりに攻撃を継続していく2代目死神。ボロボロになっていくせんせの姿に動揺して、気配遮断が解けそうになりますがギリギリで持ちこたえます。今ターゲットにバレたら意味がありません。今ターゲットの意識は完全に殺せんせに向いている。その瞬間を待ちます。

 

「ターゲットと生徒がいればこうなるのは当然の結果だ。不正解だったんだよ、今夜ここに入ってきたお前たちの選択はなぁ!!これでよく分かったろ?お前の最大の弱点はなぁ…!」

「僕等──」

「んなわけないでしょおお!!正解か不正解かの問題じゃない!彼らは、命懸けで私を救おうとし、障害を乗り越えてここに会いに来てくれた!!その過程が!その心が!教師にとって最も嬉しい贈り物だ!!全員が私の誇れる生徒なんです!!」

 

その時遠くから銃声が聞こえました。そこにはカエデちゃんがいました。カエデちゃんも私と同じようなことを考えていたみたいです。

 

「逃げて殺せんせー、時間稼ぐから。どっかに隠れて回復を!」

「茅野さん…!」

「私、ずっと後悔してた。私のせいで、みんなが真実を知っちゃったから。クラスの楽しい時間を奪っちゃったこと…。だから、せめて守らせて、せんせーの生徒として!!」

「ほお、さすがは元触手持ち。動体視力は残っていたか…。チッ、効果が切れてきたか。…背に腹は代えられん」

 

そう言って柳沢さんは懐から先ほどと同じ注射器を取り出して自身に打ち込もうとします。ようやくチャンスがきました。

 

「待ってましたよ、この時を」

「なに!?」

 

ワイヤーを柳沢さんの体に絡ませ身動きを取れなくさせます。触手の力もあって拘束はすぐに破られますが、一瞬でも動きを止めてしまえば勝機はこちらにありました。手に持っていた注射器を奪い取り”私に打ち込みました”。

 

 

 

ドクン!!

 

 

「~~~!!?」

 

体全体に広がる激痛に意識が飛びそうになります。しかしここで気絶しては意味がないと舌を噛んで無理やり意識を保ちます。体は熱いのに震えが止まらない。喉がカラカラになっています。

 

 

 

触手が聞いてきます。お前はどうなりたいかと――

 

 

 

「クハハハハッ!!馬鹿が!後先考えずに行動するからそうなる!!それはさっき俺が打ったものよりも強力なものだ!!意識を保ったのは大したものだが、細胞の活性化に体が追い付かずにすぐに自我を失い、ただの殺戮兵器に成り下がるだろうなぁ」

 

そんな言葉が遠くで聞こえています。ですがそんなことを気にかけていられません。

 

 

 

――私は、強くなりたい。私の大切な人達を守れるくらいの力が。私が今まで習得した技術だけじゃ足りない。見聞きしたもの、学んだもの全部使って、皆を守りたい!!

 

 

 

ドクン!!!

 

 

 

 

 

~*~*~

 

 

 

「そんな…」

「渡我さん…どうして…!きゃっ!?」

 

感傷に浸る余裕すら与えてはくれないみたい。触手はなくなっても副作用で身体能力が向上してた。そのおかげでマッハ40の触手の動きもなんとかついていけてる。でも相手は殺しのスペシャリスト、全方位を警戒してないとすぐに殺られる!

 

「いつまでそいつに手こずってんだ!さっさと殺せ!!」

「ぐっ!?」

 

途端に2代目死神の攻撃が増してきた。これ以上は捌き切れな――

 

「あっ…」

 

目の前に迫る触手、ナイフを持つ手は外側にある。どうやっても間に合わない。ああ、これで死んじゃうのかな。でも殺せんせーのために死ねるなら、私後悔ないかな。そうだよね、お姉ちゃん…。

 

 

ザシュッ――

 

 

…切られた音がしたのにいつまで経っても痛みが来ない。どうして?

 

 

「…守る、ッテ言ったンデす。大切ナ、人を…守れるヨう、に!!」

 

 

 

~*~*~

 

 

 

 

…体が熱い。正直意識を保ってるのもやっとです。ですがそれ以上に私の感覚に大きな変化がありました。今までに感じたことのないくらい研ぎ澄まされていて、”渚君が言っていた感情の波を感じることができます”。

 

「アアアア!!!」

「シッ!!」

 

迫りくる触手を”烏間先生やカルマ君がやっていた防御術”で避け、”磯貝君や前原君のようなナイフ術”を用いて触手を切り、”凜香ちゃんのような高機動射撃”で牽制してクラスメイトに近づかせないよう立ち回ります。

 

「ど、どうなっている…。何故貴様はそれだけ動ける!?何故自我を失っていない!!」

「私は、大切ナ人を、まモれるよう触手に願い、マシた。それ、ナノに、自我をうシなっテいたら、守れ、ナいです」

 

”ビッチ先生のワイヤー術”で2代目死神を拘束します。流石に暗殺のスペシャリストですのですぐに拘束を破られますが、その間に”2代目死神がやっていたクラップスタナー”をして一時的に感覚を麻痺させます。感情の波が見えるって結構便利ですね。どのタイミングが一番効果を発揮できるかよく分かります。死神さん、ずっと感情の波が荒ぶっていたので、拘束して意識を逸らさないとまともに決められなかったです。

 

「す、凄い…」

「2代目をいとも簡単に退けやがった…」

 

ですが、ここまでですね。これ以上は触手に自我を支配されかねないです。後はせんせに任せましょう。

 

「もウ、大丈夫でス?せんせ」

「ええ、もう充分時間は頂きました。後は先生に任せて下さい」

「ハい、お願いシマす…」

 

そして私の意識は暗転しました。

 

 

 

~*~*~

 

 

 

「…夢。いや回想って感じですね」

 

目を覚ますと外は暗くなっていました。時計を見ると11時を回ったところ。あのまま寝てしまったようです。

 

「一ヶ月も経ってないのに随分懐かしく感じますね」

 

あの後目が覚めた時には既に戦いは終わっていました。動けない2代目死神の代わりに柳沢さんが攻撃してきたそうなのですが、触手細胞の効力はほとんどなく容易に無力化。復帰してきた2代目死神に全ての色、感情、過去、命のエネルギーを混ぜ合わせて完成した純白のエネルギーを放ち、2代目死神は一足先に卒業していったそうです。その際に柳沢さんが抵抗しようと接近してしまい、エネルギーの衝撃で吹き飛ばされていっちゃったそうです。一命は取り留めましたけど、1人では何もできない程度には障害が残ったそうです。

 

そして私に投与された触手細胞を抜き取る作業を進めてたそうなのですが、触手細胞の活性化による浸食が進んでいて完全に細胞を抜き取ることはできなかったそうです。イトナ君やカエデちゃんのように外部から触手を埋め込むのではなく、内部に直接投与しているので、勝手が違ったみたいです。

副作用として、身体能力の向上だけでなく再生能力を得ました。再生能力に関しては殺せんせのように即回復ではなく、時間経過での再生です。ですが腕が折れても5分程度で治ってしまうくらいには異常な回復速度です。個性社会じゃなかったらとんでもないことになってましたね…。加えて感情の波の可視化など、暗殺技術も一度経験し実際に使用したものは使えるようになっていました。これはちょっと嬉しかったです。

 

「…今日はこのままお風呂に入って寝ちゃいますか」

 

食欲が湧かないのもあって、今日はお風呂に入って寝ちゃいました。

 

 




…いかがでしたでしょうか?

前回のビッチ先生の言葉の深掘りです。原作を改変して柳沢の持っていた注射器の効力をいじって、予備に自我がなくなってしまうほどの強力なものを用意。それをトガちゃんが投与しちゃうという流れにしてみました。元々能力があったのに、触手の力でさらに強化されちゃうというチートっぷりです。

ちなみにトガちゃんが体育祭に参加していたら…

・障害物競走・・・普通に走るのでトップ3人よりは遅れますが上位には入ってきます。
・騎馬戦・・・心操君が洗脳している所を目撃して懐柔。青山君と耳郎ちゃんの3人を騎馬としてスキルを駆使して上位4位以内に入ります。
・ガチバトルトーナメント・・・事前に申請していたサポートアイテムのシリンジ付き手袋と血液タンク、ワイヤーを使って、相手の血液を摂取して変身したり、ワイヤーで拘束したりと無双。決勝ではかっちゃんとの白熱したバトルを繰り広げ、最後の最後にクラップスタナーをお見舞いしかっちゃん気絶。トガちゃん優勝。

という感じに考えてたりしてました。今のところIFストーリーは書く予定はありませんが、気が向いたら書くかもです。

次回は職場体験編へ…。ステイン不在の中、何か起こるのか。それとも何も起こらないのか!?お楽しみに
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