トガちゃんは元暗殺者   作:ぶらっきー

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#15 職場体験の時間(2)

 

職場体験も折り返し。今日は午前中は近隣のパトロール、午後からイベントの関係で東京に向かい会場警備をして、夕方はそのまま会場周辺でパトロールの予定です。

 

テンコ君とのティータイムに関してはしっかりバレていて、何を話したのかめちゃくちゃ詰められました。連絡先も渡してあるので、話していた時の様子から判断してしばらく泳がすとのことです。まあテンコ君自身被害者の1人ですし、彼の行動の結果によっては”先生”のしっぽを掴めるかもしれないとのことです。

 

「おっと。ちゃあんと前を見て歩かないと危ないですよ~?」

「「は~い!」」

「いいお返事です。気を付けて帰ってくださいね」

「マスカレイド、そろそろ戻るぞ」

「了解です」

 

パトロールは基本的にステイン先生と行動します。ステイン先生、私達に授業をする傍らヒーロー免許取得の勉強もしていたそうで、去年の秋頃に免許を取得してたんだそうです。経験値バリバリの新人というちょっと不思議な感じになってます。

 

「死柄木からの連絡は」

「まだありませんね。まあ流石にすぐに連絡が来るとは思えません」

「ハァ…それもそうか」

「なにかあれば、とは言いましたけど早々なにかできるとは――」

「伏せろ!!」

 

突然ステイン先生が叫びます。それに本能的に反応して奇襲を躱します。

 

「え…脳無?」

「ココの世の、すすスべての人間、は、ももモモルモット、ナンだ!!」

「ぼさっとするな!!ヒーローステインの名においてマスカレイドの個性使用を許可する!やつを止めるぞ!!」

「はい!!」

 

すぐに意識を戦闘に切替えて脳無と対峙します。あれ、どこかで見覚えがあるような…?

 

「死ネ、もも、モルもっト!!」

「そんな大振り当たるか」

 

攻撃を躱しながら相手を観察します。相手の攻撃が単調なので意識を割くことが出来ます。見覚えがあるという違和感から遡ります。なんで見覚えがあると思った?容姿、声、発言、行動エトセトラ…。

 

『死ねモルモット!!』

『死ネ、もも、モルもっト!!』

 

…いました。過去に同じ発言をしていた人物が。

 

「ステイン!この脳無、行方不明の柳沢誇太郎の可能性が高いです!!」

「なに!?ハァ…ならば捕らえる必要があるな」

「そそ、そんナ、かか簡単ニ、いイいくとオおお思うなよヨ?」

「どうだかな」

 

瞬時に接近したステインは持っていた得物で脳無に傷をつけます。USJの時の脳無と同じく超再生の個性を持っているのか、傷はすぐに治りますが、目的はそこじゃありません。ステインの個性『凝血』は、相手の血液を摂取することで、相手の身体の自由を奪う個性です。私と同じく血液が確保できないと意味がない個性ですが、発動してしまえば動きを封じることが出来るテクニカルな個性です。

 

「終わりだ。…グハッ!?な、なんだ…!?」

「ステイン!?」

 

血液を摂取し、動きを封じた途端ステインが苦しみだしました。いったい何が…!?

 

「むダだ。オ、オレの血はど、ドど毒ででででキテる。すぐニ毒ガが、まマ回っててテ、死ぬ」

「なる、ほどな…」

「ステイン!すぐにこれを飲んでください!!」

 

すぐにステインに解毒薬を飲ませます。この解毒薬は愛美ちゃん特製のものです。毒薬を作るのなら、合わせて解毒薬も作れるのでは?という発想から生まれたもので、この薬は大半の毒は時間経過で解毒できる優れものです。実際少しだけですが、ステインの様子も落ち着いたみたいです。

 

「ハァ…こいつは、俺達にとって、天敵の、ようだな…」

「みたいですね…」

 

ステインは血液接種によっての捕縛、私は変身と血液を接種することで効果を発揮する個性なので、血液が接種できなければ地力での戦闘をせざるを得ません。普段から血液を確保できない際の訓練はしていますが、脳無相手にどこまで通用するかといえば正直望み薄です。

 

『報告です!現在HNで近くのヒーローに救援を要請しました!ベストジーニストが5分以内に到着します』

「了解です。なら、それまで耐えればいいですね」

 

私はナイフと拳銃を装備して脳無の前に立ちます。拳銃には対先生用BB弾、ではなく麻酔針が入っています。

 

「ステイン先生、”全力”でもいいですか?」

「…応援が来るまでだ」

「了解!!」

 

 

 

~*~*~

 

 

 

 

意識を切り替え深く集中します。触手細胞の副作用で身体能力の向上の恩恵がありましたが、その派生として技術の模倣が可能となりました。ですが、高等技術になればなるほど身体的な消耗も激しく、再生能力でも賄いきれない状態になってしまいます。それ故に全力を出すのに時間制限があるのです。現状、長くて15分。それ以上は徐々に体に傷が増えていき、最終的には形状を保てずに崩壊してしまいます。再生能力のおかげで時間経過で元には戻りますが相当な時間がかかりますし、そもそもそんな光景をおいそれと人様にお見せできるようなものじゃありません。

 

今回主に使うのは視覚強化。文字通り視覚を強化して、入ってくる情報を詳細に感知できるようにします。手に入った情報から相手の動きを読んで牽制や回避を行えるようになります。

 

「死ねえエエえ!!」

「シッ!!」

 

脳無といえど、マッハ20に及ぶスピードはないので簡単に避けることが出来ます。どんなに力が強くても、当たらなければ問題ありませんから。ですが当たっていなくても技術模倣で消耗はしていきます。時々麻酔銃を撃っても効いてる素振りがありませんし、血液の毒もあって、そういったものに耐性をつけているのかもしれません。

 

「くっ…。律!」

『後2分です!!』

「ナぜだ!なナなゼあ、ああ当タラなイ!!」

 

苛立って無暗やたらと拳を打ってきますが全て避けます。ですが、そろそろ限界を超えてきそうです。15分という制限もあくまで身体強化の限界であって、今回のような視覚強化は目と脳の局所的な強化になるとその分負荷のかかり具合にも違いがあります。もって後1分。それ以上は何かしらの弊害が出てきそうです。

 

「…やるしかないですかね」

「こコロ、殺ス!!」

「くたばれやぁ!!」

「…はい?」

 

え、なんでここにかっちゃんいるんです?…あ、かっちゃんの職場体験先ベストジーニストのとこでしたね。

 

「状況は!」

「…あ!脳無の個性は超再生に加えて血液に毒成分が含まれてます!」

「チッ!USJん時とまた違うやつか…。血は!」

「え?」

「俺の血はいんのかって聞いてんだ!!」

「くれるのなら欲しいですけど…」

「欲しいなら戦闘しながら摂れや!」

「難しいこと言いますね!?てかあなた個性の使用許可得てるんです!?」

「当たり前だろうが!!」

 

正直限界ギリギリでしたが、かっちゃん、ダイナマイトが来てくれたおかげで攻撃が分散するので楽になりました。シリンジをダイナマイトに刺して血液をもらいます。爆破の個性ならば空中機動も可能なので戦術の幅が広がります。必要量をもらって早速変身します。

 

「さて、しっかりついて来いよ?」

「ハンッ!誰に物言ってやがる!!」

 

そこから始まるのは爆破のラッシュ。隙を一切与えず絶えず爆破を当て続け、相手に何もさせません。時々脳無が攻撃してきますが、爆破で避けたり軌道を逸らしたりして最低限のダメージに抑えます。

 

「右!!」

「分かってらぁ!!」

「こ、これは…一体どうなっている」

 

脳無を食い止めている間にベストジーニストが現着したようですが、気にせず2人でラッシュを続けます。今下手に攻撃を引き継がせようとすると隙を突かれる可能性があります。閃光弾(スタングレネード)で視界を奪うこともできますが、味方も同時に視界を奪ってしまうので悪手になります。ダイナマイトもそれを考えているのか攻撃の手を緩めませんし、ベストジーニストも何も言わず見ています。

 

「大技で仕留めろ!そこから私が拘束する!!」

「いくぞゴラァ!!」

「「榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」」

 

 

DGOOOOM!!

 

 

 

 

 

 

~*~*~

 

 

 

「…被害も最小限にしつつ敵捕縛に尽力したということは評価されることだ。一応よくやったと言っておこう。だが君達はヒーロー免許もまだ持っていない学生だ。今回は許可があったとはいえ、一歩間違えれば違法デニムとなることを肝に銘じておきなさい」

「わあってる…」

「はい」

「…反省はしているようだな。ならば私から言うことはもうない。今日はゆっくり休みなさい」

 

脳無を捕縛した後、戦闘で外傷が多かったので大事をとって病院に運ばれました。ステイン先生は解毒薬がしっかり効いていたようで命に別状はないそうで、何も問題なければ3日後には退院できるらしいです。私は技術模倣を使って限界を超える動きをしていた結果足にヒビ、榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)を打った衝撃で腕が折れてたそうで、入院することになりました。まあ再生能力でもうほとんど治ってるんですが、色々問題になるので内緒にしときましょう。かっちゃんは外傷はありましたが大したケガではなかったので簡単に治療して終わりです。

 

「やっぱり、必殺技は厳しかったみたいですね」

「ケッ、ノーリスクでポンポン撃てるもんじゃねぇんだよあれは」

「ですね。ですがもう少し効率は上げておかないといけません。短期決戦なら問題ないですけど、長期戦になればなるほど苦戦しそうです。一見長期戦になればなるほど汗腺が開いて爆破はしやすくなりますけど、体に熱が籠るので身体能力は低下していきます。それに汗腺も爆破によるダメージが蓄積されていくんですからいつか限界が来ますよ」

「…わあってる」

「とりあえずしばらくの目標は爆煙の調整ですね。今日も思いましたが、視界が遮られて隙を与える場面が結構ありましたよ?」

「んなこと簡単に出来たら苦労してねぇよ」

「まずは出力の調整から始めたらどうです?閃光弾(スタングレネード)なんて応用技できるくらいなんですから、煙が出ない出力量と火力もすぐ分かると思いますし。取っ掛かりが出来ちゃえばすぐですよ」

「…考えとく」

「そうして下さい。…そろそろ面会時間も終わりますし、今日はこれで」

「ああ…邪魔したな」

 

かっちゃんは特に何も言わず部屋を後にしました。…時々静かになるんですけどなんでなんでしょう?今回は特に大きなミスはなかったと思いますし、ベストジーニストにもお褒めの言葉をもらってました。私からのアドバイスをあんなに素直に受け取られるのも今までの感じからすると違和感しかないんですよね。まあ成長といえば成長、なんですかね?

 

「…意外と暴言も直るかもですね」

 

ま、いつになることやらですけど。

 

 





いかがでしたでしょうか?

書いてて思うのですが、トガちゃんとかっちゃん絡み多すぎね…?そろそろ轟君との絡みもほしい!というか全然轟君出てきてない!!書け!!書くの俺やんけ!?って感じの脳内になってます。このままだとかっちゃん成長物語になっちゃう~…

ってなわけで、次回は駆け足で進みます。お楽しみに~
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