職場体験も終わり、いつもの学校生活が戻ってきました。
退院してからのスケジュールは、ステイン先生がまだ退院できていないので、主に事務的なことと訓練に明け暮れていました。最終日なんて今回の総決算とか言って一日烏間先生に訓練されていたので、帰る頃には疲れ果てて屍みたいになってました。
そんなこんなで迎えた学校ですが、教室では各々職場体験でやったことに対して話し合っていました。イベント警備や密入国者の取り締まり、事務作業やCM出演、戦闘訓練と様々なことをやっていたみたいです。皆さん実のあるものになったようですね。え、私ですか?E組にいた時とほとんど変わらない、むしろちょっと悪化したまでありますかね…。経験値にはなったのであれですケド。
「ハイ私が来た。ってな感じでやっていくわけだけどもね、ハイ。ヒーロー基礎学ね!久しぶりだ少年少女!元気か!」
「ヌルっと始まったな…」
「ネタ切れかしら」
「そんなわけないだろう!?私のレパートリーは無限大、じゃなくて今回のヒーロー基礎学だが、職場体験直後ってことで今回は遊びの要素を含めた救助訓練レースを行うことにする!」
「救助訓練ならUSJでやるべきではないのですか?」
「あそこは災害時の訓練になるからな。私はなんて言ったかな?そう!レース!!ここは運動場γ!複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集工業地帯!4組に分かれて1組ずつ訓練を行うぜ!」
複雑な地形の工業地帯。その中を駆け抜けて、どこかに隠れているオールマイト先生を探す救助レースですか。フリーランニングと同じ要領でいけそうです。しかし訓練で思いっきり体を動かせるのはいいですね。懐かしい気分になって自然と口角が上がっちゃいます。
「私がどこかで救難信号を出したら街外から一斉スタート。誰が一番に私を助けに来てくれるかの競争だ。モチロン、建物の被害は最小限にな!!」
「指さすなよ…」
そんなことを言っても実績があるんだからしょうがないでしょう。本人も分かってるようで抗議の声も弱かったですし。あ、でもオールマイト先生だったからってのもあるかもです。意外と好きみたいですし。
早速始まった救助レース。1組目はテンヤ君、イズク君、三奈ちゃん、尾白君、瀬呂君です。他の人は待機所でスクリーンで観戦します。今は皆さんで誰が1位になるか予想してます。
「ん~機動力で考えるなら瀬呂君が1番だよね」
「けど体育祭の時の緑谷の動きも凄かったよね」
「直線的な速さは飯田君が圧倒的ね」
「三奈ちゃんと尾白君も動きは軽やかで速いし、皆可能性があるね!」
「渡我さんはどう思われますか?」
「そうですね…」
皆さんが言っているように、直線的な速さならテンヤ君の右に出る者はいません。ですがこの入り組んだ地形では中々トップスピードになるのは難しいでしょう。三奈ちゃんも溶液を使って滑走は出来ますがテンヤ君と同様複雑な地形に対応が難しい。尾白君は尻尾のバネを活かしての機動力は凄いですが、リーチが短いので瀬呂君やイズク君には劣ります。残った2人は機動力はあり、その場での柔軟な対応が可能。それにイズク君はフリーランニングの経験もあるので経験値でいえばイズク君に軍配が上がると思います。でもイズク君、変なところで抜けてるからなぁ…。
「…まあ、無難に瀬呂ですかね」
あ、イズク君が足を滑らせて落ちていきました。
~*~*~
さて3組目でようやく私の出番です。もう早くやりたくてウズウズしてました!!だってこんなに入り組んだ工場地帯を好きなように駆け回れるんですよ!?楽しみじゃないわけないじゃないですか!!あ、ちなみにメンバーはかっちゃん、百ちゃん、透ちゃん、常闇君です。
「トガ」
「ん?どうしましたかっちゃん」
「俺と勝負しろ」
「いいですよ?」
「俺が勝ったら暫く俺に付き合え」
「私が勝ったら?」
「…テメェの言うこと、何でも1つ聞いてやる」
「分かりました」
そう言って私達はスタートラインに立ちます。他の人もスタートラインに…あれ?なんか皆さん顔赤くしてません?
「どうしました皆さん?」
「いやいやいや!!こんなナチュラルに告白現場目撃しちゃって頭追いつかないって!?」
「こ、これが告白…!まさか実際にお目にかかれるなんて…」
「む、むぅ…」
「…え?え!?そういうことだったんですかかっちゃん!?」
「んなわけぇだろうがぁ!!んなこといいからさっさと並べやぁ!!!」
…い、色々ありましたけど、とりあえずスタートラインに並びます。ステイン先生から技術模倣に体を慣らすために、少しずつ使用頻度を増やしていったらどうだとアドバイスをもらったので早速挑戦してみます。
「スタートォ!!!」
合図と共に一斉に走り出します。が、私はすぐには走り出さず周囲の地形を観察します。元々フリーランニングは得意でしたが、副作用の影響で今までできなかった動きもできるようになっているので、普段なら避けてしまうようなルートでも今の私なら問題なく行けます。今行っているのはできなかったことに対しての誤差の修正をしていました。
「…これなら行けそうですね。さ、遅れた分を取り返しましょうか。律!」
『お任せください!最短距離のルートを算出しています』
勢いよく走りだして助走をつけたら、少し上のあたりに伸びているパイプにジャンプしながら掴んで振り子の要領で前に飛びます。煙突に着地したらすぐにジャンプし周囲に張り巡らされたパイプや配管を足場に縦横無尽に飛んでいきます。
「え!?なに!?」
「なっ!?」
『ハヤ過ギンダロ!?』
あっという間に透ちゃんと常闇君を抜いてかっちゃんを視界に収めます。職場体験前と比べてスピードが上がっていますね。煙も少ないですし、私がアドバイスしてからなにか掴んだみたいですね。
「それでも負けませんけどね!」
「来やがったか!!」
足場を飛び移る私に対して、空中を飛び続けられるかっちゃんとでは最短距離を進み続けられるかっちゃんに軍配が上がります。ならばそのアドバンテージを成るべくなくせば私にもチャンスはあります。
「ようやく実践投入できますね!」
「っ!その動きは…!!」
以前イトナ君に作ってもらっていた相澤先生の捕縛布と同じ材質の包帯を用いた空中移動です。基本的な動きは先ほど瀬呂君が見せてくれましたから、再現は容易に行えます。これによって差が一気に縮まりました。
「チッ!!」
「そうきましたか…」
オールマイト先生を視認しましたが、その前には大量の配管やパイプが通っていました。配管内をガスが通っている可能性もあるので、下手に破壊しようものならかっちゃんの爆破が引火して大爆発を起こすので強行突破は厳禁。このまま通り抜けるのは難しく迂回をせざるを得ません。実際かっちゃんはすでに迂回をすべく高度を上げています。
「…律」
『照合します!…このポイントであればギリギリ抜けれます!!』
「りょう、かい!!」
サングラス型の液晶に表示されたポイント目がけて飛んでいきます。確かに狭いですけど通れなくはないですが、少しでも位置がズレたりすると引っかかって上手く抜けれなそうです。ですが、こういった狭い場所を迅速に抜ける訓練をしたこともあるので意外とすんなり突破することができました。そのままオールマイト先生の前に着地します。その後すぐにかっちゃんが到着しました。
「1位は渡我少女だ!!」
「チッ…」
「最後の配管群の切り抜け方が勝敗を分けたな。スタート直後にすぐ走りださなかったのには何か理由があるのかな?」
「はい。成長によって体の動かし方が変わったので、ルートの選び方の精査していました。実力に見合わない動きだったり、逆に無駄な動きをしてしまったりしないように、一度周囲の確認をして問題ないかを確認してから動き出しました」
「なるほど。それであの速度を出す事ができていたんだな」
「最後は賭けみたいな部分もありましたけどね」
「それでもあの一瞬でそこまで判断できたことは素晴らしい!爆豪少年も、周囲への被害を最小限にする動きは褒められるべきポイントだったぜ!」
「ウッス…」
「さて、授業の話はここまでにして、葉隠少女と常闇少年が来る前に話しておきたいことがある。緑谷少年のことだ」
「!」
「イズク君の?」
「ああ。これからのことを考えると君達にも事情を話しておいた方が良いと判断した。彼にも話しておくから、放課後少し時間をくれないか?」
「分かりました」
「ああ」
その後少しして常闇君、透ちゃんの順でゴールに着きました。着いた途端透ちゃんから怒涛の勢いで追い抜かしたときのことを質問攻めにされましたがなんとか切り抜け皆さんのところに戻りました。また質問攻めにあったのは言うまでもないですね…。
~*~*~
放課後かっちゃんと一緒に指定された仮眠室に向かうとイズク君とひょろがりの人がいました。あれ、あのスーツって確か…。
「え!?かっちゃんに渡我さん!?どどど、どうしてここに」
「どうしてと言われましても…」
「私が呼んだんだ。緑谷少年、そして私に関してのことを伝えるために」
「…てことは、あんたがオールマイトか」
「…そうだ。私の話を聞いてくれるかい?」
そうして語られたのは、オールマイトの体の話、イズク君に受け継がれた個性、そして闇の魔王オール・フォー・ワンの存在です。以前授業の終わりに焦っていたり、力んでると思ったのは、オールマイトの活動限界に由来していたみたいですね。
「そして奴は渡我少女、君を狙っている可能性が極めて高い」
「え、どうして渡我さんを…」
「…話してくれないか渡我少女。烏間君の許可は得ているよ」
「…烏間先生が許可を出しているのならいいでしょう。今からお話しすることはオールマイトのこと以上の機密事項です。もし漏らすようなことがあれば相応の処分が下りますのでそのつもりで」
前置きはほどほどに、私がE組メンバーと去年1年間体験したこと、殺せんせとの思い出、最後の戦い、それによって自身に残った副作用、そして別れ。全て話しました。
「…いつの日かかっちゃんには話しましたが、私にとって”殺す”という言葉はとても大切な言葉なのです。それは
「…まさかあの事件の裏にこんなことがあったなんて」
「テメェの技術も、そいつを殺すために磨いてきたんだな…」
「ええ。ヒーローは相手を殺すなんてことはご法度でしょう。ですが私達は殺すことを目的に鍛えてきました。それは相手を殺すという覚悟と同時に、相手に殺されるかもしれないという覚悟も持っていないと暗殺者として成り立ちません。そこはヒーローにも通ずるものはあると思います」
「確かにそうだね。私達ヒーローは常に危険と隣り合わせだ。それは敵との戦闘だけではない。災害救助では2次災害に巻き込まれるかもしれない。セミナーや講演会では、自分の言葉一つで聞いている者の人生を破滅させてしまうかもしれない。だが私達は多くの市民を救うために活動していかなければならない。ヒーローには多くの責任が伴うんだ。それを渡我少女はよく知っているようだ」
「覚悟と…」
「責任…」
オールマイトのおかげもあってか、私の言葉は2人にしっかりと響いているみたいですね。相反する考え方の2人ですが、芯となるものは同じですから、今後の動きにどんな変化があるか楽しみですね。
いかがでしたでしょうか?
轟君との絡みを書くと言ったな。あれは嘘だ…というわけではなく、展開的に轟君を差し込むことが出来ませんでした…。次回!次回こそは!!
ってなわけで次回ですが、期末試験です。21人クラスなので、どこかのグループに入れようか単独でやらせるか結構悩んでます…
一体どうするのか!お楽しみに…。