いつもの平日。季節ももうすぐ夏が近づいてきた今日この頃、学生である私達はある壁にぶつかっていました。
――そう、期末テストです。
「全く勉強してねー!体育祭やら職場体験やらで、全く勉強してねー!」(上鳴電気(21/21))
「普通にやばいよね!?」(芦戸三奈(20/21))
「確かに行事続きではあったが……」(常闇踏影(15/21))
「中間はまぁ、入学したてで範囲狭いし特に苦労なかったんだけどな~。行事が重なったのもあるけどやっぱ、期末は中間と違って__」(砂藤力道(13/21))
「演習試験もあるのが辛いとこだよな」(峰田実(10/21))
雄英高校では椚ヶ丘と同じようにテストの順位が公表されます。それによって危機感だったり対抗心を煽ったりして勉学に励まさせるようなことらしいです。中学時代とはちょっと違った目的なのもあって気が緩みがちですが、それで点数まで落とすわけにはいかないのでしっかり勉強はしています。
「あんたは同族だと思ってたのに~!!」
「お前みたいな奴はバカで初めて愛嬌が出るんだろが!!どこに需要あんだよ!?」
「”世界”かな?」
「「ムカ~!!」」
夏休み中に林間合宿が予定されていますが、赤点を取ると夏休み期間中補講があり、参加できなくなってしまいます。故に中間テストで下位の人は焦っているわけです。ですがそんな彼らにも救いの手を差し伸べてくれる人もいるわけで。
「芦戸さん、上鳴くん!が、頑張ろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん、ね?」(緑谷出久(6/21))
「うむ!」(飯田天哉(4/21))
「普通に授業受けてりゃ赤点はねえだろ」(轟焦凍(7/21))
「言葉には気をつけろ!!」
…体育祭を経て、轟君の天然っぷりが増してる気がします。毒牙を抜かれたというか、丸くなったというか…。あの刺々しい雰囲気がなくなったのはいい傾向ですね。さすがイズク君です。
「座学なら私、お力添え出来るかもしれません」(八百万百(2/21))
「ヤオモモ~!!」
「…演習の方はからっきしでしょうけど」
…ん~、百ちゃんは逆に体育祭が終わってから自己肯定感が著しく下がってますね。やはり常闇君に何もできずに敗北したのを大分引きずってるみたいです。ですがああいったタイプのスランプはきっかけ一つで結構簡単に立ち直れたりするので、私から何かすることはありません。周りの人の支えもあって最悪の状態には陥ってないみたいですしね。今も頼られてプリプリしてます。カアイイですねぇ。
「――ということから、答えはこうなるわけです。分かりました?」
「おう!分からなかったのが噓みたいにするする解けたぜ!!」(切島鋭児郎(16/21))
「ケッ」(爆豪勝己(4/21))
「かっちゃん、頼られなかったからって不貞腐れないで下さい。こればっかりは人徳の差です。さっさとその言動を改めて下さい」(渡我被身子(1/21))
「ウッセェ!不貞腐れてねぇわ!!」
「ここ、間違ってますよ」
「クソがぁ!!」
そういえば、転校してくる3人はどうなったんでしょう?後で連絡してみましょうか。
~*~*~
『ああ、あれか。俺以外は落ちた』
「は?落ち…え?」
『偏差値が椚ヶ丘並みの高校だ。今通ってる学校の偏差値から考えても普通にやって受かるレベルじゃなかったみたいだな。多少融通は利かせてくれていたみたいだが、それでも限度はある』
イトナ君に聞かされたのはまさかの結果でした。校長先生のスカウトですし、編入試験なんて飾りみたいなものだと思ってました。そこは贔屓せずにちゃんとやるんですね…。
「逆によくイトナ君は受かりましたね…。成績的には2人とさほど変わりませんでしたよね?」
『テストが終わっても、今までの分を取り戻すんだって殺せんせーの補講を受けさせられてたからな。その時に難関校の過去問も受けさせられた』
「なるほどですね…」
『2人もさほど落ち込んだりはしてなかった。チャンスもらえただけ良かったし、今の学校でも自分のやりたいことはできると言っていた』
「それなら良かったです」
『ああ。とりあえず2学期からは試作品のテストにも付き合ってもらうからな』
「お手柔らかにお願いしますね…?」
~*~*~
それぞれテスト勉強をして迎えた当日。筆記は問題なく解くことができました。内容としても中学時代に習ったことの復習といった感じでしたのであっさり終わってしまいました。やっぱり椚ヶ丘のテストは異常だったということがよく分かります。
そして今日は演習試験です。B組からの情報としてはロボットとの戦闘とのことでしたが、どう見ても先生の人数多すぎません?説明が始まると、上鳴君や三奈ちゃんの顔色がみるみる悪くなっていきます。それもそのはず。今年はロボット戦闘ではなく、先生達が仮想敵として立ちはだかるそうです。2人1組で1人の先生と対峙し、制限時間内に脱出ゲートをくぐるか、先生にカフスをつけるかのどちらかを達成することで合格らしいです。また、ハンデとして先生達は自分の体重の半分の重さの超圧縮重りを取付けるそうです。
「それじゃあ演習試験を始めていく。この試験でももちろん赤点はある。林間合宿行きたけりゃみっともねぇヘマはするなよ。それじゃあ組合わせを発表する」
組合せは以下の通りです。
青山 優雅、麗日 お茶子 相手:13号
芦戸 三奈、上鳴 電気 相手:根津
蛙吹 梅雨、常闇 踏陰 相手:エクトプラズム
飯田 天哉、尾白 猿夫 相手:パワローダー
切島 鋭児郎、砂藤 力道 相手:セメントス
口田 甲司、耳郎 響香 相手:プレゼント・マイク
障子 目蔵、葉隠 透 相手:スナイプ
瀬呂 範太、峰田 実 相手:ミッドナイト
轟 焦凍、八百万 百 相手:イレイザー・ヘッド
爆豪 勝己、緑谷 出久 相手:オールマイト
渡我 被身子 相手:根津、ミッドナイト
「え!?どうしてヒミコちゃんだけ1人で2人相手なんですか!!」
「渡我の実力を評価してのことだ。達成条件も敵のどちらかにカフスをつけることができれば達成となる」
まさかの私だけ1人で2人の先生を相手取ることになるなんて…。しかも頭脳戦においてはまともに戦うのは難しい根津校長に、眠り香で近接最強格に君臨するミッドナイト先生。攻略するのも一苦労です。
「それと渡我。お前には事前に2人の生徒を選んでもらう。その2人の血液を渡すから、試験中にどちらの個性も使うこと、そして試験時間の半分以上使用することを条件とする」
「どうしてです?実戦を考えれば血液がない方が多いんですから、あまり合理的には思いませんが」
「普段のお前の動きは個性使用の頻度が少ない。評価の対象として、個性を使用した状況も判断しておきたいんだ。人数的ハンデもあるから、お前の試験時間は50分と長めに設定してあるし、2人のうちどちらかにカフスを付ければ条件達成とする。すまないが協力してくれ。一通りの試験が終わってからお前の試験を行う。それまでにどいつから血を提供してもらうか考えておけ」
「なるほど。分かりました」
さて、現時点で一番使用しているのはかっちゃんです。次いで響香ちゃんですけど、響香ちゃんに関しては保険で血をもらってるだけで実際に使ったのは数える程度。しかも索敵に使うだけで長時間使うことはありませんでした。そう考えると、私個性全然使ってませんね。それは確かに評価しずらいですね…。
「とりあえず様子を見て判断しましょうか…」
~*~*~
一通りの試験が終了しました。結果は、三奈ちゃん上鳴君ペア、切島君砂藤ペアが時間オーバーで失格でそれ以外は条件をクリアしました。けど瀬呂君はミッドナイト先生の個性で寝てただけなんで恐らく赤点扱いかもですね。
さ、皆さんの講評は置いといて、私の番です。
「渡我、誰を選ぶんだ?」
「今回は三奈ちゃんと轟君にしようと思います」
「分かった。10分後に移動するからそれまでに準備しとけ」
「分かりました」
早速2人に血をもらいにいきます。今回三奈ちゃんと轟君を選んだのには2つ理由があります。1つ目は戦闘に関するレンジが広いこと。2つ目が攻守共に優れている個性ということです。
今回の相手となるミッドナイト先生の個性『眠り香』は効力の範囲が広く、風向きによっては試験開始すぐにアウトになる可能性もあり得ます。それに加えて根津校長もいるんですから、難易度ルナティックです。故に攻守の切り替えが容易、かつ相手の妨害もできる2人の個性が必要と判断しました。
「三奈ちゃん、轟君。個性使用のために血液を分けてもらいたいんですがいいですか?」
「全然いいよ~!」
「ああ、構わねぇ」
「個性を使うにあたっての注意点とかあれば教えてください」
「ん~とね~、アタシの酸は濃度が強過ぎると自分も溶かしちゃうってことと、使いすぎると脱水状態になっちゃうから気を付けてね」
「俺のも、片方の力を使いすぎると身体能力や判断力が下がる」
「了解しました」
「アタシの分まで頑張ってね!あのネズミ校長をコテンパンにしてあげて!!」
「ほ、ほどほどに頑張りますね…」
充分な血液を確保してミッドナイト先生達と共に試験会場に移動します。会場はビル群に覆われた土地を模した場所でした。ビル群ということは風の流れには要注意ですね。
『それじゃ始めるよ。試験開始!!』
開始の合図とともに移動を開始します。私の付けているマスクは口元を隠すだけでなく、ガスマスクの効果もあります。これで眠り香が風と共にやってきても吸引することはある程度防げます。案の定、先生達がいるであろうゴール方向から風が吹き抜けてきてますし、私が予想していた策を講じているようです。まあ根津校長のことですから私が対策していることは織り込み済みだと思いますが。
「…取るにしても校長先生を墜とさないと意味ないかもですね」
例えミッドナイト先生を行動不能にしても、空間に残っている眠り香を利用されてしまえば状況は変わりません。それなら先に校長先生を行動不能にできれば勝機はあります。とはいえ、カフスをつけてしまえばその時点で終わりなんですけどね。
「でも、そんな中途半端なことしたくないんですよね」
やるなら全力で、悔いのない暗殺を。ですよね?せんせ。
~*~*~
さて、とりあえず近くのビルの屋上に来ました。ここなら風の影響も少ないですし、見晴らしもいいので敵の動きの予想もしやすいです。それに、こっちには高性能AIもついてますから。
「律、先生達がいそうなポイントは分かりますか?」
『はい!予測地点を表示します』
「…なるほど、どのポイントもゴールに向かうには1度は通らないといけない所ばかりですね」
『そうですね…。避けようにも香りという見えないものがどこに漂っているか分からない状況ですから、無暗に動くのは避けた方が良さそうです』
「ですね。でも今回は個性の縛りもあるので、ちょっと無茶させてもらいます」
まずは三奈ちゃんに変身して近くまで接近します。酸を足裏に纏わせて、ローラースケートの要領で移動します。似たようなもので轟君の個性でも足から氷をだして、炎の推進力で移動するのも考えましたが、今はどちらかというと隠密を優先したいので三奈ちゃんの個性を採用しています。戦闘になったら妨害にもなるので轟君の方も採用するかもです。
ゴールに近づいていくと一段と吹く風が強くなっていきます。遮蔽物を盾にしながら様子を見ると、送風機の前にミッドナイト先生が立って眠り香を風に乗せていました。やっぱり風に眠り香を混ぜてましたか。ここまで接近しているとマスクでも完全には防げないので一旦距離を取ります。
「予想通りの展開ですね」
『どうしますか?』
「手っ取り早く送風機を氷結で使えなくすれば風は止まります。あとは膨冷熱波で周囲に漂ってるであろう眠り香を吹き飛ばせば基本的には問題ないです。後は校長先生がどこまでこっちの策を読んでいるか、ですかね。制圧が難しいのであればミッドナイト先生を拘束してカフスを着けて終わりにしちゃいますかね」
『分かりました。念のため、周囲を警戒しておきます』
「お願いしますね」
話は変わりますが、個性を鍛えていて分かったことがありました。
変身が解けていない状態で別の人に変身しようとすると、上書きする形で変身します。その際、元々変身していた人の上に被さるように変身するようになるのですが、たまに上書きした人の個性とその前の人の個性がどちらも使えることがありしました。調べたところ、血液の摂取量が均等だと2人の個性が使えるようでした。しかし、対象の2人の血液を混ぜて一緒に飲むと、そもそも変身自体できませんでした。恐らく、変身するのに血液が利用されているので、それが混ざったものになってしまうとお互いが形成を阻害して形成元が定まらなくて変身できないのではという結論に至りました。
故に2人の個性を同時に使用する条件は、1人目の人の血液を摂取し、時間を空けて2人目の血液を摂取する。その時に体内にある2人の血液の量が同じであること。中々に厳しい条件ですが、その分できた時の効果は絶大です。私はこの現象に”デュアルフォーム”と名付けました。
なんでこんな話をしたかと言えば、今デュアルフォームに挑戦しようとしているからです。失敗すれば普段通り、轟君の姿になって三奈ちゃんの個性は使えなくなります。成功率を上げたいところではありますが、体内でどの程度血液が消費されるかが不明瞭なのでこればっかりは長年個性を使ってきた経験値からの予測で行うしかありません。
チウチウ――
さあ、正念場です。
~*~*~
試験が始まって15分くらい経ったかしら。まだ渡我さんの姿は見ていない。私は校長から指示された通り、コスチュームを一部切って送風機の前に立って風に当たってるだけ。確かにこうすれば眠り香が周辺に撒かれるから、一度吸ってしまえばその時点でアウトなんだけど、未だに終了のアナウンスはない。ということはうまくこの風を避けてるんでしょうね。
「校長、私はまだ動かない方が良さそうですか?」
『そうだね。君の個性を最大限活かすなら今のままが最も効率的だ。それに彼女もすぐ近くには来ているはずさ』
「え?」
その直後、背後に大規模な氷結が形成された。その影響で送風機が使い物にならなくなってしまった。
「これは轟君の…。っ!!」
「チッ、ダメだったか…」
「さすがに今のはヒヤッとしたわ。…そのマスクでここまで接近しても眠りにつかなかったわけね。でも、この近距離じゃただじゃ済まないわよ!」
鞭捌きで拘束しようとしたけど、地面を滑るような動きでヒョイヒョイ避けられる。…え?地面を滑る?
「な!なにそれ!?」
「個性の応用。半冷半燃と酸を同時に使える状態だ」
まさか足から酸を出してスケートみたいに動き回ってる。時々炎を出してスピードを出したり方向転換をして翻弄してくる。でも時間をかければかけるほど私の個性は強くなるわよ!
「送風機が無くても私の個性は周囲に漂うだけで脅威になる。そろそろそのマスクでも防げないんじゃないかしら?」
「分かってる。だから周囲を凍らせたんだ」
「…まさか!?」
膨冷熱波――
瞬間、辺り一帯にとてつもない熱波が広がった。私もそれに巻き込まれて飛ばされそうになったけど、咄嗟にサポートアイテムの鞭を近くの柱に括り付けることでどうにか吹き飛ばされるのを防いだわ。でもそれは悪手だったみたい。すぐに体全体を氷結で拘束されてしまった。個性は絶大な強さを持っているけど、攻略されちゃえば私はただの一般女性と何ら変わらない。
「全く、最近の子は容赦ないわね…」
「そうでもしなきゃ、勝てねぇからな」
「…ずっと気になってたんだけど、変身してるとき口調まで真似てるのはどうして?」
「本人のイメージを崩さないためです。この格好で女性のような振る舞いをしていたら変じゃないですか。それに相手に誤認させて混乱させたり、意表を突いたりもできるんで性格もなるべく真似るようにしてます」
「なるほどね。けどいいのかしら?拘束はされてるけど、カフスはつけられてないから試験は終わらないわよ?」
「構いません。このまま校長も捕まえます」
「え?でも校長の居場所は分からないでしょ?」
「…こっちには心強い味方がいるんで」
そう言って渡我さんは走って行ってしまった。…あまり時間はかけないでね?私凍えちゃうから。
「ヘックション!!」
試験終了のアナウンスはそれから数分後のことだったわ。
~*~*~
なんとか根津校長も見つけて拘束してカフスを付けることで試験は終了しました。デュアルフォームが成功したことで校長先生の意表を突くことができたのが一番の勝因ですね。
「トガ~!!」
「ちゃんと勝ちましたよ」
「ありがと~!これでアタシの鬱憤も晴れたよ!!」
「そ、それは良かったです…?」
「渡我」
「あ、轟君。血ありがとうございました。おかげで条件達成できました」
「俺も、渡我の動きから自分の個性の活用方法を見出せた。また色々教えてくれ」
「良いですよ。轟君さえよければ特訓とかも付き合いますし」
「助かる」
その後相澤先生の軽い講評を受けて今日は解散となりました。さて、条件は達成したので試験的には問題ないかと思いますが、結果はどうなったでしょうかね?
~*~*~
ある一室に2人の男がいた。
「…覚悟はいいか?」
「ええ、私はあなたの指示に従いますよ。死柄木弔」
「悪いな、こんなことに巻き込んで」
「良いのですよ。それであなたが報われるというのであれば」
それ以降2人は言葉を交えることなく、部屋を去っていった…。
いかがでしたでしょうか?
まず最初に謝るべきは転校組ですね。正直に言いますと、経営科との絡みがほぼない、更には暗殺教室でもそれほどスポットの当たっていないがされていない村松君と吉田君を物語に登場させていくのが難しいと判断し、こういった形になってしましました…。楽しみにしていた方には大変申し訳ありません。自分の文才力のなさを恨みます…。
ですが転校しないだけで、物語には登場させますのでご安心ください!!他のE組メンバーも出演させる予定です。
次に演習試験ですが、結局単独で行うようにしました。理由として、話に出ているようにトガちゃんの個性を使った戦闘をもっと見せたいというのがあります。それに描写ではかっちゃんばっかだったので他の人の個性も使わせたいという狙いで今回のような条件を設けました。実際個性関係なしに色々できてしますので、先生達も評価に困るんじゃないかなと思ったので…。
更にはトガちゃんの個性の応用でできたデュアルフォーム!内容に関してはがっつり独自解釈による設定です。なんか変じゃね?と思っても暖かい目で見守って下さると幸いです…。
そして最後、遂にあの男が動き出しました。一体これからどうなっていくのか…。
お楽しみに。