遂に現れた鷹岡。2人の間にいったい何があったのでしょうか…
「…何故あなたがここにいるんですか?鷹岡先生」
「あぁ?なんだ、渡我じゃないかぁ…。会いたかったぜぇ?今度こそ…今度こそお前を殺してやるからなぁ!!」
…出来れば2度と会いたくなかった人です。正直あの時の出来事は思い出したくもない程に嫌悪する出来事でした。
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あれは去年の夏休み。A組と期末試験を争い勝利した報酬として南の島でのバカンス旅行、ではなく殺せんせの暗殺旅行をしていた時です。未知のウイルスによって多くの生徒が高熱や嘔吐を訴えました。それをもたらした元凶はワクチンを渡す代わりに殺せんせを要求してきました。その時の殺せんせは完全防御態勢になっていて身動きが取れない状況。それを分かっているようで、最も背の小さい男女1人ずつに、私たちがいるホテルから上の崖に立っているホテルまで持ってこさせろと言ってきました。
そのホテルは、ヤクザや良い噂の聞かない芸能人の溜まり場のような場所らしく、とても危険なばしょでした。ですが、私達はそれを恐れず、今まで先生達に教わってきた技術を用いて殺し屋さんを退き、元凶たる黒幕までたどり着いたのです。
「かゆい...思い出すとかゆくなる。でも、そのせいかな。いつも傷口に空気が触れるから...感覚が鋭敏になってるんだ」
「…連絡がつかなくなったのは、3人の殺し屋の他にもう1人いた。防衛省の機密費と共に姿を消した内部の人間…どういうつもりだ!鷹岡明ぁ!!」
最上階で待ち構えていたのは、過去に体育教師として暗殺教室に配属されていた鷹岡先生でした。先生は暴力による恐怖で教室を支配しようとしたところ渚君に敗北し、理事長先生に解雇され防衛省に戻されたと聞いています。まさかこんな所で再会するなんて思いもしませんでした。
「悪い子達だ…恩師に会うのに裏口から来る。父ちゃんはそんな子に教えたつもりはないぞぉ?」
「誰が父ちゃんだ!テメェに教わったことなんてなんもねぇ!!」
「そんな口の利き方をしていいのかぁ?今お前達のクラスメイトの命は俺が握ってると言っても過言じゃないんだぜぇ?…仕方ない。夏休みの補習をしてやろう。屋上へ行こうか。愛する生徒に歓迎の用意がしてあるんだ。ついて来てくれるよなぁ?」
…酷く狂気に歪んだ笑顔です。カアイイ笑顔は好きですけど、醜い笑顔は嫌いです。今すぐにでも奇襲を仕掛けたいところですが、ここは大人しく指示に従ってチャンスを待ちましょう。
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「防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒達をウイルスで脅すこの凶行...!血迷ったか!!」
「おいおい!俺は至極まともだぜ!これは地球が救える計画なんだ。大人しく2人にその賞金首を持って来させりゃ、俺の暗殺計画はスムーズに仕上がったのになぁ…?茅野とか言ったか?さっきの部屋のバスタブに対先生弾がたっぷり入れてあった。そこに賞金首を抱いて入ってもらい、その上からセメントで生き埋めにする。対先生弾に触れずに元の姿に戻るには、生徒ごと爆裂しなきゃいけない寸法さぁ…。生徒思いの殺せんせーはそんな酷いことしないだろぉ?大人しく溶かされてくれると思ってなぁ!?」
「なんて非道な…」
「悪魔だ…」
「そんな真似、許されると思っているのですか…?」
殺せんせも赤黒い顔になって反発していますが、鷹岡先生はどこ吹く風とむしろ笑みを深めます。
「そんな真似許されるかぁ?今のテメェに何ができるって言うんだぁ!?何もできねぇからこんな状況になってんだろうが!!…これでも人道的な方さ。お前が俺にした、非人道的な仕打ちに比べりゃな...!屈辱の目線と!騙し討ちで突きつけられたナイフが!頭ん中チラつく度にかゆくなって夜も眠れなくてよぉ…?落とした評価は結果で返す。受けた屈辱はそれ以上の屈辱で返す!潮田渚ぁ!俺の未来を汚したお前は絶対に許さん!!」
「背の低い生徒を要求したのは、初めから渚を狙って…」
「へぇ、つまり渚君はあんたの恨み晴らすために呼ばれたわけね。その体格差で本気で勝って嬉しいわけ?俺ならもうちょっと楽しませてあげるけど?」
「イカレやがって…。テメェのルールの中でテメェが負けただけだろうが!あの時テメェが勝ってようが負けてようが、テメェのこと大っ嫌いだから安心しろや!!」
「雑魚共の意見なんて聞いてねぇんだよ!!俺の指先で雑魚が半分減るって事忘れんなぁ!!!」
よっぽど激昂しているのか、肩で息をしていました。ここまで感情があらぶっていると本当に何をしでかすか分かりません。普通ならそっとしておくのが最適解ですが、今回はそうも言ってられません。何とかしたいですが、私達がいる所とヘリポートで距離があり、周囲に遮蔽物もないため容易に接近ができません。お得意の視線誘導も先ほど感覚が研ぎ澄まされているという発言から効果は薄いでしょう。
「…おいチビ。お前1人で登ってこい。この上のヘリポートまで」
「渚、ダメだよ。行ったら…!」
「…行きたくないけど、行くよ。あれだけ興奮してたら何するかわからない。話を合わせて冷静にさせて、治療薬を壊さないよう渡してもらうよ。それに早く解決しないとホテルで待ってる皆も危険だ」
「渚君…本当にいいのか」
「向こうが指定してきてる時点でこっちに選択肢はありません。やれるだけやってみます」
「…渚君、こんな時に申し訳ないですがお願いがあります」
「渡我さん?なにかな」
渚君は私のお願いを聞いてから、鷹岡先生の所へ向かいました。私にだってできることはあります。それはとても危険な橋ですが、上手くいけば現状を打破できるはずです。
それからの展開ははらわたが煮えくり返るかのような展開でした。渚君に土下座をさせ鬱憤を晴らし、以前のリベンジマッチと称してナイフを渚君に持たせ、決闘をたたきつけました。渚君は話し合いの解決を望んでいたため躊躇していましたが、ワクチンの入っているケースを爆破し、渚君の怒りを誘いました。幸い数本はまだ鷹岡先生が持っていましたが、それでも渚君は止まりません。寺坂君がスタンガンを投げ渡し諭すことで多少落ち着かせられましたが、鷹岡先生と渚君の決闘は始まってしまいました。以前のような油断も一切なく、渚君が一方的に痛めつけられます。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「へばるなよぉ渚ぁ?さぁて、俺もそろそろこれを使うかぁ〜?」
「…やるしか、ないかな」
「あぁ?」
渚君は地面に向かって何かを投げつけます。するとそこから煙が噴射されました。渚君が投げたのは私がさっき渡した煙幕です。
「煙幕だぁ?んな小細工したとこで俺には敵わないんだよぉ!!」
感覚を頼りに煙幕内へ突っ込んでいきますが、そこには誰もいません。
「こっちですよ」
「…は?」
声のした方へ視線を向けると、
「どうなってやがる…なんで渚が2人いんだ…」
「簡単なことですよ。これが僕の個性です」
「普段は周りの人にも混乱させちゃうから使ってないですけど、今ならなんのしがらみもなく使える…」
渚君の個性…なんてことはなく、私が変身してさも渚君が分身したように見せているハッタリです。ですが、鷹岡先生に私の個性は見せたことがなく、防衛省にも個性の情報までは出回っていないということを以前烏間先生から聞いていたので、この作戦が通用するというわけです。まあもし個性の情報が洩れていたとしても状況は変わってないかもですけど。
「僕が引き付けるから」
「僕が決める。じゃあ…」
「「行きます!」」
渚君はナイフ、私は警棒を装備して鷹岡先生に仕掛けていきます。流石は元軍人ということだけあり2人がかりでも簡単には崩せません。
「舐め、るなぁ!!」
「ぐぅ!?」
「うわっ!?」
「手数が増えたからなんだぁ!?それでも俺の優位は変わんねぇんだよぉ!!」
「…それはどうでしょう?」
「あぁ!?」
「駄目じゃないですか、こういうものはちゃんと懐に入れておかないと」
そうして見せるのは、先ほど見せびらかしていた残りのワクチンです。先ほどの攻防の隙にポケットから抜き取りました。鷹岡先生も盗まれていることには気づいていなかったようで驚愕に顔を歪めます。丁度効果が切れて変身が解除されました。
「な、テメェ…!!」
「活かせるものはとことん活かしますよ。情報だって手段だって。だってそれが私達の学び舎、暗殺教室ですから」
「渡我被身子ぉ!!!!」
鬼気迫る顔で私に向かってこようとしていた所、渚君が間に入ったことで動きが止まりました。それどころか、渚君の浮かべていた笑顔に恐怖して怯えているようにも感じました。
ロヴロ先生に教わった必殺技の条件、1つ、武器を2本持っている事。2つ、敵が手練である事。3つ、敵が殺される恐怖を知っている事。その条件が全て揃っているこの状況で渚君が失敗するはずもなく、鷹岡先生に必殺『猫だまし』が刺さり、スタンガンで意識を刈り取りました。
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「あの後、精神的に再起不能になっていたと聞いてましたけど、その情報は間違いだったみたいですね」
「ああ、確かに少し前まで再起不能な状態だった。生きてるのか死んでるのかすら曖昧だったレベルだ…。だが先生は俺を見捨てずに手助けをしてくれた。その結果、俺は生まれ変わったんだ!!」
そう言って鷹岡先生の首元から現れたのは―――触手でした。
「…は」
「これだ!この力だ!!これで俺は無敵の存在になったんだ!!」
「…ふざけないで下さい。あなた如きにそれが扱えるわけがないじゃないですか。これ以上私を怒らせないでください…」
「触手だけじゃねぇ!!先生は俺に個性も与えて下さった!!『筋力増強』に『超感覚』、『刃物』の個性だ!!普通はこれだけの個性を入れられたら心身と共にぶっ壊れておかしくなっちまうらしいが、触手細胞のおかげでそういったものもノーリスクで行えた!俺は選ばれたんだ!!この力であの時出来なかった雪辱を果たす。まずは渡我、お前をぶっ殺してやるよぉ!!」
先端を刃物のように鋭くさせた触手が私を襲います。咄嗟にバックステップをすることで避けることができましたが、地面が深く抉れていました。筋力増強と刃物の個性が触手にも作用しているようですね。そして何より、触手細胞が敵の手に渡ってしまっているということ自体が最も厄介なことですね。下手に悪用されると手が付けられませんし、機密情報が外部に漏れ出てしまう、というか漏れてしまってますから不味いことこの上ありません。…今は目の前のことに集中しましょう。
「…まさかお守りとして持っていたものが役に立つなんて、人生何があるか分かりませんね」
私は持っていたショルダーポーチから2本のナイフを取り出します。そのナイフは対殺せんせー用ナイフ。この状況において最も有効的な武器です。
「おらぁ!!」
「シッ!」
身体強化も併せて使用し、視覚と筋力を強化します。それによって触手のスピードに食らいついていきます。が、食らいつけるだけで攻勢に出ることはできません。
「おらおらどうしたぁ!?守ってるだけじゃ俺は止まらねぇぞぉ!!」
「…うるさいですねぇ!」
口だけは強気ですが、実際はやはり苦しい状況です。刃物の個性のおかげで先端部にナイフを当てるとこちらのナイフが裂かれてしまいます。まるで触手でナイフを振り回している状況です。それに加え、恐らく殺せんせと同じマッハ20の速度で触手を振り回しているので、その対処で手一杯。劣勢でしかありませんね。
(強化のおかげで被弾はしていませんが、それも時間の問題。私の中にも触手細胞が残っているとはいえ、今の鷹岡先生に比べれば劣っている。せめてもう一手あれば…)
その時マンダレイのテレパスが聞こえてきました。
『A組B組総員、プロヒーローイレイザーヘッドの名に於いて戦闘を許可する!加えて敵の狙いの一つ判明!狙いは生徒のかっちゃん、渡我さん!!かっちゃんと渡我さんはなるべく戦闘は避けて!単独では動かないこと!!分かった!?かっちゃん、渡我さん!?』
「えっ…」
かっちゃんが敵に狙われてる…?それに私もって…。
「隙しかねぇぞぉ!?」
「しまっ――」
私が動揺した隙を見逃さず、触手の刃が私の胸を貫きました。
…いかがでしたでしょうか?
鷹岡に胸を貫かれ絶体絶命のトガちゃん…。一体どうなってしまうのか…!?
次回をお楽しみに。