トガちゃんは元暗殺者   作:ぶらっきー

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#3 戦闘訓練の時間

 

波乱の入学を迎えた私たちA組メンバーですが、次の日には普通授業が早速始まりました。最初はプレゼントマイク先生の英語ですが、テンションが高いだけで内容はいたって平凡。昨日とのギャップで風邪ひきそうです。

 

(偏差値が高いだけあって難易度も高いですけど、生憎ここは中学の時に履修済みなんですよねぇ…)

 

ペラペラと教科書をめくりますが、どれも見たことがある単語や文法ばかり。椚ヶ丘も進学校なのでペースは速いなとは思ってましたがまさかここまでとは思ってもなく頬が引き攣ります。

 

(まあ、理解しているからと言ってサボるわけにはいきませんね。せっかく研いだ刃も、手入れをしなければすぐに錆びついてしまいますし)

 

そう思いながら授業はちゃんと聞いてノートに書きとっていきます。途中、文章を読むことがあったときは発音の良さをとても褒められました。ビッチ先生の授業ではLとRの発音が出来ないと、死活問題(公開ディープキスの刑)だったので必死に覚えてました。ビッチ先生は嫌いじゃないですけど、ちょっと強引です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前中の授業を無事終わらせ、お昼です。一度学んだものばかりだったので、危うく夢の世界に旅立ちそうでしたが何とか持ちこたえました。お昼はお弁当もありだと思っていましたが、用意する時間がなかったため断念して食堂に来ています。

 

「あ、渡我さん!よかったら一緒にお昼どう?」

「もちろんいいですよ。え~っと…麗日さん?」

「名前覚えててくれたんだ!改めて、麗日お茶子です!!」

「俺は飯田天哉だ!」

「み、緑谷、出久です!!」

「お茶子ちゃんにテンヤ君、イズク君ですね。よろしくお願いします」

 

食堂の入口でお茶子ちゃん達と合流して一緒にご飯を食べます。今日のお昼は生姜焼き定食です。ほかほかのご飯に生姜ダレのかかった豚肉が最高にあいます!気づいたらご飯がなくなっていました。誰ですか私のご飯盗ったのは!?え、私?そんなまさか…。

 

「それにしても午後の授業楽しみだね!!」

「さすがは最高峰。担当される教師の方々も素晴らしい方ばかりだ!」

「そうだね。そんな所に通えてるなんて夢みたいだ」

 

午後の授業はヒーロー基礎学。担当教員は、No.1ヒーローのオールマイト。一体どんな授業をしてくれるんでしょうかね。

 

 

 

~*~*~

 

 

 

「わーたーしーがー…普通にドアから来た!!」

「オールマイトだ!」

「すげぇ!本当に先生やってるんだな!」

「画風が違う」

 

興奮気味に発言する周りの人たちを横目に見ながら、私はオールマイトを観察します。服の上からでも分かる筋肉質の体。目に見えて強いと判断できますが、どうにも腑に落ちない部分があります。なんであなたは”常に力んでいるんでしょうか?”敵に対して技を放つときなどに一時的に力むのは分かるのですが、普段生活しているときですら体全体に力を入れているのが気になります。

力んでないといけない理由でもあるのでしょうか?例えば、筋骨隆々の姿を維持すため、とか?

 

「早速だが今日はコレ!戦闘訓練!!」

『おお!!』

「そしてそれに伴ってこちら!入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえたコスチューム!着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!」

 

オールマイトが指さした壁からコスチュームが入ったアタッシュケースが現れる。表に書いてある番号は出席番号ですかね?

 

コスチュームを制作する際、被服控除を用いて雄英高校お抱えのサポート会社に個性に伴ったコスチュームを依頼できるそうなのですが、私はイトナ君にコスチュームとサポートアイテムの制作を依頼していたので被服控除は使いませんでした。今日の朝コスチュームを手渡す際にミッドナイト先生から興味深げにどこで作ったのか聞かれましたが、コスチュームに使用してる素材は防衛省の非公開の特殊技術がふんだんに使われているので、公にすることはできません。なので、サポートアイテムはイトナ君の会社に、コスチュームはまた別の会社に頼んだと一部誤魔化しておきました。この素材は敵はおろか、ヒーローにすら教えることのできないトップシークレットなのです。それでもコスチュームに使わせてくれたのは素直に嬉しいですね。

風貌は変わりましたが、どこか懐かしい感覚を覚えるコスチュームを着てグラウンドβに向かいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「格好からはいることも大切なことだぜ、少年少女!!」

 

周りには個性に合わせた様々なコスチュームに身を包んだ子達がいます。顔が覆われていて誰か分からない人もいますが、顔と名前が一致しているので察することが出来ます。

 

「さあ、始めようか!有精卵共!!」

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」

「いいや、もう2歩先に踏み込む。敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪敵出現率は高いんだ。監禁、軟禁、裏商売、このヒーロー飽和社会!」

(確かにそうでしたね。むしろ、屋外で怪しい取引をみることなんて、どっかの推理マンガじゃあるまいし早々ありえませんね。)

 

今まで経験してきたことを思い出しながら、先生の話の続きを聞きます。

 

「小賢しい敵は屋内に潜む。君達にはこれから“ヴィラン組”と“ヒーロー組”に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!」

「基礎訓練もなしにですか!?」

「その基礎を知るための実践さ。ただし、今回はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ!」

 

説明を要約すると、核爆弾を所持している敵を相手に、ヒーロー側は時間内に捕縛するか、核爆弾そのものを回収する。ヴィラン側は時間まで持ちこたえるかヒーローを殲滅すれば勝ちになる訓練ですね。こういった訓練は去年1年間で嫌というほどやってきましたし実践してきました。後れを取るなど万が一もないはずです。

 

「先生!このクラスは21人ですが、余った1人はどのような裁定をするのでしょうか!!」

「くじ引きで”K”のくじを引いた人が、最後にパートナーと相手を指定して行うよ!」

「なるほど!承知しました!!」

「よし、じゃあ早速くじを引いてくれ!」

 

順番にくじを引いていきます。私の番が回ってきて、くじを引くとそこには”K”と書かれていました。私が最後になりましたね。さて、試合を見て誰が適任か”選別”しましょうかね。

 

 

 

~*~*~

 

 

 

最初に選ばれたのはAグループとDグループ。始まって早々爆豪君がイズク君に奇襲。ですがそれを読んでいたのかそれをいなし、お茶子ちゃんを先行させ、爆豪君を足止めをするも劣勢。その間にお茶子ちゃんは核のある部屋に辿り着きましたが、テンヤ君にバレて膠着状態に。敵側優勢のまま終わると思いきや、イズク君が自傷覚悟の天井に向けてパンチをして吹き飛ばし、瓦礫を利用したお茶子ちゃんがテンヤ君を退けて核爆弾に触れることで、ヒーロー側の勝利で終わりました。

その後先の訓練の講評に入りましたが、百ちゃんがほぼ全部言ってしまったので先生の出る幕がなくなってましたね。

 

(それにしても、あの爆豪君の私怨には目も当てられませんでしたね。プライドが高いのかなんなのか分かりませんが、ああいうタイプは好きになれません。しかも変に力を持ってしまっているが故に周りも止められない。それで自分が一番強いと認識してしまい傲慢に拍車がかかってしまう。負のスパイラルが出来上がってますね。読唇術で会話を探りましたけど、イズク君との確執は相当なものです。)

「これは手入れが必要ですね…。まったく、困ったかっちゃんです」

 

訓練はその後も恙なく進行していきます。目を見張ったのは轟君。開始早々障子君に索敵で相手の位置を割り出したらビル全体を氷結で凍らせて、相手の身動きを取れなくさせてから核爆弾を回収してしてしまいました。迅速な対応ではありますが、実践ではあまり褒められた対応ではないかと思いますね。実際先生にも指摘されてましたし。それに個性が強力なのは確かなのですが、使い方が大雑把。適当に打っていれば相手が捕まるので、出力の調整なんて二の次とか思ってそうです。宝の持ち腐れ感が否めません。

 

さて、次は最終戦。つまり私の出番です。

 

「さて渡我少女、誰を指名するかな?」

「ペアに耳郎ちゃん、相手に爆豪君と轟君を指名します」

「え、ウチ?」

「あぁ?」

「…」

「おいおい、強敵相手じゃねぇか!大丈夫なのかよ渡我!?」

「?問題ありませんよ。ヨユーです」

 

そういった瞬間、爆豪君と轟君の雰囲気が変わりました。まあ、わざと煽ってるのでむしろ変わってくれないと困ります。

 

「舐めたこと言ってくれんじゃねぇか、ア“ァ!?ぶっ殺してやんよ!!」

 

―ぶっ殺す、ねぇ。

 

殺すという言葉。言うだけは簡単です。けどあなた、本当に殺したこと、あるんですか?その言葉の重さを真の意味で理解できているんですか…?私にとってその言葉は、とても大事な言葉なのです。私に勇気をくれる言葉なのです。その言葉をあなたの薄っぺらい感情で顔に泥を塗るようなこと、しないでください。

 

「…殺せるといいですね?」

 

心から思ったことをそのまま口にして伝えます。親が自分の子供の願いを聞いて、「そうだね、そうなるといいね」と伝えるように、優しく、笑顔で。周りの人達は私の出す雰囲気に飲まれて、顔を青ざめていますね。あのオールマイトでさえ。さあ、無様な戦いはしないでくださいね?

 

 

 

~*~*~

 

 

 

「え、えっと…渡我?」

「はいトガです。なんでしょう?」

「その、なんでウチのこと指名したのかなって思って。あんま話したこともないし、戦闘面でも役に立たないんだけど」

「ああ、索敵要員が欲しかったからです。目視で常に警戒するにしても限界があるので、別視点からの情報があった方が動きやすいですしね。それに響香ちゃんの個性は後方支援向きですし、率先して前に出るんじゃなくて誰かのサポートに重きを置いた方がもっと伸びると思いますよ。もちろん戦闘もできるに越したことはありませんが」

「な、なるほど…。ちなみに渡我の個性はどんななの?昨日の個性把握テストの感じ的に身体強化系だと思うけど」

「いいえ、違います。私の個性は『変身』です。血液を摂取してその人に変身できます。テストでは個性使えませんでした」

「え!?じゃああの持久走の記録は…」

「実力ですよ?おっと、そろそろ時間ですね。基本的に私が動きますので、響香ちゃんはなるべく建物の外側で索敵を行ってください。敵に動きがあれば情報を逐一伝えてください。ちなみに今中の2人はどこにいるか分かりますか?」

「ちょっと待って…」

 

響香ちゃんに指示を出して索敵してもらいます。私の予想だとお互い別々の場所にいて、核自体は轟君の近くにあるんじゃないかと思います。2人の戦闘スタイルからすると火気厳禁の核爆弾が邪魔になりますけど、まだ轟君の方が爆弾の近くでもなんとか戦闘できると思いますし。

 

「…どっちがどっちか分からないけど、2階と4階のあたりから音がする」

「了解です。引き続き索敵をお願いしますね」

 

そう言って私は爆豪君達がいるビルには入らず、隣のビルに向かいます。幸い鍵は開いていたのでそのまま屋上へ向かいます。途中、ビル内部が見えそうなところから敵の視認ができるかも忘れずに。

 

「ん~ざっと2mちょっとってとこですか。なるべく音を立てずに侵入したいですし、被害も最小限に…」

 

インカムの通信をオンにして響香ちゃんに連絡を取ります。

 

「響香ちゃん聞こえますか?」

『うん、聞こえる。音の位置は変わってないよ』

「隣のビルから見えた限りだと、2階が爆豪君、4階が轟君です。爆弾の位置も視認できました」

『え、どこにあった!?』

「3階のフロアですね。ですが先に敵を排除してからの方が安全に確保できますので上から侵入していきます。引き続き索敵お願いします」

『りょ、了解!』

 

通信を終えて、軽く準備運動をします。今回のミッションは隠密。敵に気づかれないように侵入し捕縛。なお敵の個性は強力のため建物へ被害が出る恐れがある。そのため、侵入の際の被害を最小限としつつ、目標である核爆弾を確保せよ。って感じですかね。

 

「さて、行きます、か!!」

 

助走を始め、屋上の端のあたりで思い切り地面を蹴り、隣のビルに飛び移ります。ミッション開始です!!

 

 

 

~*~*~

 

 

 

コツッ―コツッ―コツッ―

 

3階に爆弾を設置し、爆豪と別れた俺は4階を歩いていた。基本的には下から登ってくるが、隣のビルからなら上の階からの侵入も危険だが不可能じゃねぇ。警戒しといて損はないし、もし順当に下の階から登ってくるのならば爆豪の戦闘音で気づく。隙はねぇはずだ。

 

(開始から約3分。今のところ動きはねぇ。…あいつ、あんだけ啖呵切っておいて随分と侵入にてこずってるのか?)

「…所詮、口だけか」

「そういうあなたは、ずいぶん隙だらけですね?」

「なっ!?」

 

急に背後からした声に驚き後ろを振り向くが、そこには誰もいない。だがすぐに臨戦態勢をとって―

 

「おやすみなさい」

 

俺の視界は暗転した。

 

 

 

~*~*~

 

 

 

訓練の様子を見ていた私と生徒達は渡我少女の動きに言葉が出なかった。

 

「え…え?今一体何が起きた?」

「あまりに流れるように事が進んで、いまいち何が起きていたか分からなかったわ」

 

蛙吹少女の言う通り、流れるように事が進んでいた。

 

「恐らく、音を立てずに轟少年に近づき、相手を牽制。動揺し振り向いた時に合わせて背後に回り気絶させた…と言ったところだろう。一連の流れをミスなくこなすには相当な鍛錬が必要だろうね」

「す、すげぇ!渡我ほんとに強ぇんだ!!」

「…」

 

私は渡我少女が去年1年間何をしてきたのかを知っている。だが、まさかここまでの練度とは思いもしなかった。驚く半面、これだけのことが出来てしまうまで、例の件に関わらざるを得なくなってしまっていたという己の無力さを痛感してしまう。私がそのことを聞かされたのは全てが終わった後だった。平和の象徴という肩書が邪魔をして、私がこの件に関わらないようにしていたそうだ。そのことを知ってどれほど後悔したことか…。しかし、今更後悔しても遅いのだ。前を向け、今すべきことはこの生徒達を立派なヒーローに育て上げることだ!!

 

 

 

~*~*~

 

 

 

「響香ちゃん」

「うわぁ!と、渡我!?いつの間に!!」

「おっと失礼。つい癖で…。それより、爆豪君は変わらず2階ですか?」

「えっと…うん、2階と3階を行ったり来たりしてたけど、今は2階にいる」

「分かりました。では響香ちゃんにミッションを与えます!」

「えっと…?」

「やることは簡単です。今から中に潜入します。その際に私が爆豪君を引き付けますので、響香ちゃんはそのまま核爆弾の確保に向かってください。ですが、部屋に何が仕掛けられているか分かりませんので、位置の確認のみ行い確保は私が来てから行います」

「な、なるほど…?」

「まあ、簡潔に言えば爆弾を見つけて下さい。後は私がやります」

「でもそれじゃあ渡我に負担が…」

「…始まる前にも言いましたが、響香ちゃんの個性は支援向きの個性です。自分の力量に見合わないことをすると必ず失敗します。今回は訓練ですが、これが実践だった場合最悪死に至る可能性だってあるんです。あなたにはそうなってほしくないのです。自分の出来ることを見誤らないでください」

「っ…。ごめん」

「ですがお気遣いは嬉しいです。成長すれば響香ちゃんも同じようなことが出来ると思いますから、今は我慢です。さ、時間もないですから行きましょう」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、爆豪君がいるであろう2階にやってきたのですが…

 

「…止まってる?」

「ですね」

「…いんのは分かってんだ。出てこい」

(作戦通り、このまま上に向かってください)

(りょ、了解!)

 

小声で響香ちゃんに指示を出して、少し大きめの足音を出しながら爆豪君に姿を見せます。

 

「ようやくお出ましかァ?随分時間がかかったみてぇだな?」

「そうですか?まあ、確かに回りくどいやり方をしてますしね」

「まあんなことはどうでもいい。俺はテメェをぶっ殺して勝つだけだ!!」

「…殺せるといいですね?」

 

またこの人は飽きもせず殺すなんて言葉使って…。ほんと、この人の頭は個性と一緒で爆発して色々吹っ飛んでるんですかね?

 

「おらぁ!!」

「っと、危ない危ない…」

 

敵を目の前に考え事なんて隙だらけにもほどがありますよね。流石に真面目にやらないと。

 

観察は既に終えています。基本性能は高いですが、まだ実戦経験が乏しくセンスでどうにかしている状況ですね。爆破を利用して縦横無尽に飛び回っていますが、左右の手から交互に爆破しているのでおおよその方向は簡単に割り出せます。なのでいくら陽動で揺さぶっても私にダメージは与えられませんよ?

 

「チッ!テメェ、なんで本気を出さねぇ!舐めてんのか!?」

「なんですかいきなり?」

「個性も使わず俺に勝とうなんて思ってねぇだろうな?」

「え、そのつもりですけど?そもそも今の状況じゃ私個性使えませんし」

「はぁ!?」

「私の個性は血液が必要です。ですが常にストックができるわけでもないので、今回はこのまま訓練してるだけですよ。もちろん、今後は個性も織り交ぜたいですけどね?」

「この…クソ舐めプつり目女がぁ!!」

「ひどい言われですね!?私はトガです!!名前くらいちゃんと覚えて下さいかっちゃん!!」

「かっちゃん言うなぁ!!」

 

そういってる間も爆破の攻撃は続きます。ここまでくると無傷ではいられず、少しずつダメージを受けます。まあこの程度なら全く問題ありませんけど。

 

「ここっ!!」

「なっ!?ガッ!!」

 

接近してきたタイミングを突いて懐に潜り込んで突き出していた腕を掴み、そのまま一本背負い。さっきの試合でも出久君がかっちゃん相手にやってましたね。

 

「まったく同じ戦法に引っかかるなんて、まだまだですね」

「クソがぁ!!」

 

まあキレ散らかしてらっしゃる。軽く煽るだけでここまで感情を表に出すなんて、色々まだまだですね。こんなんじゃ簡単に殺せますね。殺しませんけど。ですが手入れは必要ですね。

 

「気になったことがあります。あなたは口癖かのように死ねやら殺すやらほざいてますが…殺したこと、あるんですか?」

「!?」

 

 

~*~*~

 

 

 

「気になったことがあります。あなたは口癖かのように死ねやら殺すやらほざいてますが…殺したこと、あるんですか?」

「!?」

 

殺したことがあるか。その質問をした瞬間から女の纏う雰囲気が変わった。今までの観察しているようなものではなく、まるで獲物を見つけた野獣のようなもの。

 

「ふ~ん、その感じからして、殺したことはないようですね。そんなあなたに忠告しておきます」

 

目の前にいたはずの女が視界から消える。一瞬のことに動揺したがすぐに周囲を警戒する。

 

「私にとって殺すという言葉は非常に大切な言葉なのです」

 

声のする方向に目を向けるが、そこには誰もいない。

 

「その言葉を口癖のようにポンポン口に出すのは止めてほしいのです」

 

背後からの声に反応して攻撃を仕掛けるが、そこにはやはり誰もいない。クソッ、どうなってやがる!!

 

「それにあなたは実際に殺したことも、殺されかけたこともない様子。そんな人に軽い感じで言われるのは不愉快極まりないです」

「クソがぁ!!」

 

俺は全方位に爆破をして今の場所から離脱する。爆煙で視界は遮られるが元から相手を補足できていないから変わりゃしねぇ。

 

「全く、話は最後まで聞いてください」

「なっ!?グッ」

 

いつの間に背後のいたのか、そのままうつ伏せに組み伏せられた。爆破しようにも手を組むように拘束されて爆破できない。

 

「イレイザーの捕縛布を参考にしましたが結構使い勝手いいですね。今はただの包帯ですけど、ちょっと工夫すればもっと使い勝手がよくなりそうです。さて、出久君に負けたことにプライドがズタズタにされたでしょうが、私はその程度で終わらせるほど優しくありません。何をしても勝てないというくらいにあなたには挫折と恐怖を与えます。精々、簡単に死なないでください」

 

そういうと腰のあたりに鋭い痛みが走る。

 

「チウチウ」

 

たしかこいつの個性は血液を使うと言っていた。つまりは俺の血を使って何かするつもりだろう。だが身動きの取れない俺は何もできない。

 

「まあこんなもんでしょうかね」

 

腰の痛みがなくなりしばらくすると上にかかっていた重みがなくなった。これを好機とみて攻撃に転じようとしたが、目の前の光景に驚愕して動きを止めてしまった。

 

「…は?」

 

そこには、”もう一人の俺がいた”

 

 

 

~*~*~

 

 

 

手に入れた血液を使って早速爆豪君に変身しましたトガです。基本的な個性の使い方は見てのであとは実践あるのみですね。

 

「テメェ…猿真似たぁいい度胸じゃねぇか」

「いいからかかってこいや。テメェをぶっ潰して完全勝利するんだからよぉ!」

「っざけんなぁ!!」

「んな攻撃あたっかよ!!」

 

お互いに爆破の応酬。ですが私に彼の攻撃は届きません。既にあなたの攻撃スタイルは見切っていますので、それに私の攻撃を合わせてあげるだけです。

 

「クソがぁ…!!」

「ケッ、その程度で俺を倒すだぁ?身の程を弁えろや。…チッ、時間もねぇ。さっさと終わらせるか」

 

私は全範囲に爆破をしてかっちゃんの視界を爆煙で塞ぎます。煙の動きから相手の動きも予測できますが、今のかっちゃんは動揺してそんなことすらまともにできないでしょう。わざと爆破の音を立てながら蹴りや殴打でダメージを与えていきます。防御をしようとしているようですが、そんなお粗末な防御簡単に貫通します。

 

「俺、は…グッ、まだ…!!」

「タフな野郎だな。…テメェに足りないものは恐怖だ。今までも感じたことがないわけねぇとは思うが、そんな柔なもんじゃねぇ。死の恐怖。それがテメェのその傲慢な態度を改めさせるもんだ。今までは何とかなったかもしれねぇ、助けてもらえたかもしれねぇ。だが今回は違う。誰も助けはしねぇし、テメェにゃ何もできはしねぇ。どうだ、目の前に迫ってる死の恐怖は?今頃走馬灯でもみてんのか?」

 

煙の中で一瞬彼の表情が見えました。戦意は既に喪失して顔面蒼白、ガチガチと歯を鳴らしながら震えています。まあこれだけの殺意が充満した所にいればこうもなりますね。漏らしてないだけマシです。…さて終わらせますか。

 

「最後はテメェの大好きな言葉で締めてやらぁ。…死ねや」

「ガッ!?」

 

まるでナイフで首元を切りつけるように顎に拳を掠めます。そうすれば脳震盪を起こしてそのまま気絶します。…丁度変身も解除されましたね。

 

「さて、脅威はいなくなったので爆弾のところに行きますか」

 

響香ちゃんと合流して、部屋の安全を確認した後爆弾を回収しました。講評では、戦闘力の高さを称賛されましたが、ペアともっと協力をして敵を倒せるようにと注意を受けました。…まあ確かに今回響香ちゃんには索敵くらいしかさせてませんでしたしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、お疲れさん! 緑谷少年以外は大きな怪我もなし! しかし、真摯に取り組んだ!今回の訓練を糧にしてこれからの授業に取り組んでくれよ!!君達の学ぶことはたくさんあるのだからね。さて、私は緑谷少年に講評を伝えねばならないからね。皆は着替えて教室に~~~お戻り!!」

 

…そんな言葉を残して、オールマイト先生は目にも止まらぬ速さで去ってしまいました。今日の訓練はヒーローとしても暗殺者としてもよくないものだったかと思っています。いくらなんでも私情を持ち込みすぎました。暗殺者たるもの、私怨の感情に囚われては鋭い刃も通らなくなってしまいます。って違う違う…。

 

「はぁ…。そもそもヒーロー目指してるんでした」

「どうしたの渡我?」

「いえ、ちょっと考え事をしてただけです」

「それにしても最後の爆豪との戦い凄かったね!!あ、あたし芦戸三奈!」

「ありがとうございます。三奈ちゃんですね、よろしくです」

「ケロケロ。あそこまで爆豪ちゃんの動きを再現できるなんて凄いわ。私は蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで?」

「出久君との戦いを見て簡単な動きを模倣しただけですよ。よろしくです梅雨ちゃん」

「だけって、それがヤバいんじゃん!!一回見ただけであそこまで再現できるとか才能だよ!?」

「まあ…色々と鍛えましたからね」

「今までどんな鍛え方をしていたのか気になるわ」

「鍛えたというよりは周囲の環境的に自然と身についたものなので…」

「えっ…。ご、ごめん!デリケートなとこ踏み込んじゃって」

「気にしないでください。この技術がヒーロー活動の手助けになるならと思っていますから。こちらこそ空気を悪くしてしまってごめんなさい」

「ううん、全然!」

「なにかあったら相談して頂戴。力になるわ」

「ありがとうございます」

 

そんなこんなで色々ありましたけど、無事ヒーロー基礎学は終了しました。

 

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