「…なんです、あれ?」
入学して3日が経ちました。いつものように学校へ向かうと正門前にたくさんの人でごった返していました。
『恐らく、昨日のオールマイトに関するニュースに関してマスコミが押し寄せているのではないでしょうか?』
「りっちゃん!おはようございます」
『おはようございますヒミちゃん!』
「そういえば昨日そんなニュースを見ましたね」
『公表したはいいものの、事態の収束には時間がかかりそうですね。ちなみに今日オールマイト先生は非番なので学校にはいらっしゃらないです』
「そうなんですね…。はぁ、朝からめんどくさいのです」
私は少し集中してマスコミの皆さんを観察します。…どの人も特ダネを持って帰ろうと興奮しているので波の波長が大きいですね。意識を切り替えて、今度は意識の流れを視ます。どんな人間であろうと視界全ての情報を完璧に把握できる人は早々いません。意識を向けているポイントが必ず存在します。
(今は多くの人間がインタビューしている人間に意識を向けている。それ以外の人間も意識そのものはそこかカメラなどの機材に向かっている。…あとは簡単ですね)
私は先ほどと何ら変わらない雰囲気でマスコミのいる集団に近づいていきます。他の生徒がマスコミに捕まっている中”まるで存在していないかのように”するりと集団を抜けて正門を潜りました。これぞステイン先生との鍛錬の賜物、自分を周囲に同化させて相手の探知を搔い潜るスキルです!あ、丁度相澤先生が向かってきていたので挨拶しましょう。
「おはようございます、相澤先生」
「!?あ、ああ。おはよう」
おっと、同化を切り忘れてました。まあ相澤先生の驚いた顔を見れたので良しとしましょう。悪用は厳禁ですがね。
「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績は見させてもらった。爆豪、もうあんなガキみたいなことすんな。能力あんだから」
「…ッス」
「で、緑谷はまた腕ぶっ壊して一件落着か」
「っ!!」
「個性の制御、いつまでも”できないから仕方ない”は通させねぇぞ。それさえクリアすればやれることは多い。焦れよ緑谷」
「はい!!」
「そして渡我」
「え、私?」
私何かしましたっけ?変なことした記憶はありませんが…。
「戦闘技術は大したもんだがやりすぎだ。それに相手を煽りすぎるな。逆上されて取り返しのつかないことになりかねん」
「ああそういう…。あれはわざと大げさにやっただけでいつもあんなにやるわけじゃないです。引き際は分かってるつもりです」
「…ならいい。さて、講評はここまでにして、HRの本題だ。急で悪いが、今からお前らに――学級委員長を決めてもらう」
『学校っぽいの来た~!!!!』
盛り上がったかと思えば大半の人が立候補していきます。え、皆さんそんなに委員長やりたいのです?私は悠馬君の働きを見ていますので私が向かないことは分かっています。う~ん、集団の長としてクラスを引っ張っていく立場がヒーロー活動に活きる…のかもしれませんけど、やっぱり私には合わないですね。こそこそ相手の裏取りしてる方がよっぽど性に合います。
結局そびえたった手を挙げながらもテンヤ君が提案で全員で投票することになりました。正直私がならなければ誰でもいいと思っていたので白紙で提出しました。結果は…
「…え?」
なぜか私に3票入ってました。次いで百ちゃんが2票後の人は1票ずつ、まあほとんど自分で入れたものでしょうね。
「投票の結果、渡我君になった!」
「え、やです。お断りします」
『え~!?』
「ど、どうしてですの?」
「テンヤ君の言っていた多を牽引する能力なんてもの、私は持っていません。出来ても少数精鋭に役割をあげれるくらいです。だから入れてくれた方には申し訳ありませんが、私は委員長にはなりません」
「そ、そうなると次に多いのは八百万君になるが…」
「よろしいのですか渡我さん…?」
「全然いいのです。頑張ってくださいね、百ちゃん」
「分かりましたわ!」
その後副委員長をどうするか話されましたが、投票の進行をしていた天哉君がそのまま任命されました。これで一件落着ですね。
~*~*~
午前の授業を終えお昼になりました。昼食を食べ終えイズク君たちと談笑しているとスマホが鳴りました。表示されている名前を見ると烏間先生からです。
「すいません、電話出てくるので先行きます」
「は~い」
急いで食堂を出て電話に出ます。
「はいトガです。どうされました?」
『すまない、忙しかったか?』
「いえいえ、今お昼休憩なので大丈夫ですよ」
『そうか、なら休憩時間を無駄にしないためにも手短に済ませる。例の装備だが無事に試験をクリアして製品化できた。時間があるときに渡したいんだ。丁度今日雄英高校に用があるんだが時間はあるか?』
「大丈夫ですよ。私も早く見てみたいですし」
『分かった。ではその予定で。それと、昨日言われた捕縛布に関しても糸成君から試作品を預かっている。それも一緒に持っていく』
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
烏間先生との通話はそれで終わりました。昨日の戦闘訓練で捕縛布の有用性に気付いてイトナ君に相談しましたが、まさか1日も経たずに仕上げてくるとは思いもしませんでした。流石はイトナ君です!それにしても烏間先生、学校に何の用なのでしょう…?
そう思ったのも束の間、辺りに警報が鳴り響きました。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい。繰り返します――』
「…りっちゃん、状況は?」
『セキュリティを確認します…。防犯カメラの映像からしてマスコミの皆さんが校内に侵入してきたようです』
「マスコミですか…」
なんと傍迷惑な。これだからマスゴミなんて言われるんですよ…。
『けどおかしいですね』
「なにかあったのです?」
『防犯カメラの映像からして雄英バリアが破壊されています。こんなことマスコミに可能なのでしょうか…?』
「つまり手引きした別の首謀者がいると?」
『恐らく騒ぎに乗じて校内に侵入している可能性も…いました!職員室隣の印刷室です!!』
「最短距離は!?」
『目の前の窓から真下の職員玄関です!』
「了解です!!」
迷うこともせずに目の前にある窓から飛び降ります。3階ということもあってか私の奇行に後ろから悲鳴も聞こえますが構っている余裕はありません。ベランダの手すりを利用しながら下に降りていき職員玄関の屋根に着地して校内に入ります。すぐ右手の印刷室、ここに侵入者がいるようです。扉が開いていたので音を立てずに中に入ります。察してくれたのか、りっちゃんがカメラ録画を起動してくれています。
「見つかったか?」
「もう少しお待ちください…」
「チッ、これだけの紙の束から見つけることになるなんてな。いっそ全部崩壊で塵にしてやりたい」
「そんなことをしては目的のものまで塵になってしまいます」
「分かってるよ」
「…!ありました、恐らくこれかと」
「よし、長居してると感づかれる。さっさとズラかるぞ、黒霧」
「分かりました、死柄木弔」
白髪の体のいたるところに手の模型をはめた男が死柄木弔。バーテンダーの格好をして、体が黒い靄で覆われているのが黒霧。雰囲気からして本名ではないと思われますが、背丈と姿をカメラに抑えられているので、警察の捜査の助けにはなりそうですね。2人は近くに突然発生した黒い靄に入っていくとそのまま姿を消しました。
「…カメラには撮れてますか?」
『バッチリです。現在犯罪者リストから該当する者がいないか確認中です』
「引き続きお願いします。さて、一体何を探してたんでしょう?」
2人が何かを探していた場所を見ると、各学年のカリキュラムが置かれていました。
「カリキュラム?学校の時間割を知ってどうするつもりでしょう?」
「おい、そこでなにしてる?」
入口に目を向けると相澤先生がいました。この件を伝えねばと思ってたので丁度いいですね。
「先生、侵入者がいたのです」
「んなことは分かってる。さっきの警報はマスコミ――」
「だけじゃありませんでしたよ?」
「…は?」
私は先ほど撮影した映像を相澤先生に見せます。最初は懐疑的な目でしたが、映像を見ているうちにみるみる真剣な眼差しに変わっていきました。
「…言いたいことはたくさんあるがとりあえず置いておく。映像を他の教師にも共有しておきたい。事情を聴きたいから職員室に向かうぞ。次の授業は遅れると担当教師に伝えておく」
「分かりました」
職員室に移動して事情聴取を受けます。りっちゃんのことを話すわけにいかないので、なんで気づけたかを上手いこと誤魔化すのは大変でしたけど何とかなって良かったです。教室に戻ると、皆私を心配してくれていました。なぜここまで心配してるのか頭に?マークを浮かべていると、どうやら窓から金髪お団子の1年が飛び降りたという噂が広がっていたようで、特徴と授業に遅れてきたのも考慮して私しかいないとなっていたようです。そういえば元々4階にいたんでしたね…。ちなみに先生の間でも噂は広がってたようで、しっかり相澤先生にお叱りを受けています。まあ反省も後悔もしませんけど。
~*~*~
『1年A組渡我被身子さん、至急職員室にお越しください――』
「え、渡我!?…何したの?」
「多分飛び降りた話じゃないの~?」
「さあ、どうでしょうね。とりあえず行ってきます」
放課後、帰りの支度をしていると呼び出しの放送が。呼び出しに従って職員室に向かうと相澤先生、オールマイト先生と共にそのまま校長室に案内されました。
「やあ!待っていたよ、渡我被身子さん」
「校長先生に烏間先生!?それに…どちら様です?」
「ははは。初めまして、僕は塚内。刑事をしている。今日起きた件に関して調査に来ていたんだ」
「そうなんですね。失礼しました」
「気にしないで大丈夫だよ。こちらとしても捜査に多大な貢献をしてもらっているしね。君の勇気に感謝してもしきれない」
「いえいえ、出来ることをしただけなので」
「早速なんだけど、今回の件に関して改めて話を聞かせてもらえるかい?」
「分かりました」
私は当時の状況を伝えました。写真ではなく動画を撮影したことで、姿だけでなく声紋からも調べることが出来るととても感謝されました。その後は校内のセキュリティを確認したいとオールマイト先生と一緒に部屋を出ていきました。
「さて、君を呼んだのは今日の件ともう一つあるのさ」
「ここに烏間先生がいるのと関係があるんですね」
「そうだ。先にまず依頼されていたものと糸成君から預かったものだ」
「え、ここで渡していいんですか…?」
「安心していいのさ。ここにいる者は皆去年君たち3年E組が何をしていたのか知っているのさ」
「え!?ということは相澤先生も…」
「ああ。一度奴ともことを構えている」
「そうだったんですね…。そういうことであればありがたく頂戴します」
「ちなみにどんなものか聞いてもいいかい?」
「はい。E組のことを知っているのであればりっちゃん、”自律式固定砲台”さんに関してもご存じですかね」
「もちろんさ。AIを組み込んだ自立式の兵器と聞いているよ」
「そのAIですが、解体された後もプログラムとして残り続けています。今も防衛省にマザーがあって元E組メンバーのスマホに遊びに来たりしていますからね」
「ということは君のところにも?」
「ええ。昼間の件はりっちゃんのサポートもありました。まあハッキングかけたりしてるんで褒められたものではないですけど…」
「なんと!雄英のセキュリティをかいくぐれるものがいるなんてね…。だがそのおかげで助かったのもまた事実さ」
「話を戻すと今回頼んだのはりっちゃんのサポートをもっと受けやすくするためのアイテムです。インカムでりっちゃんと情報を共有、サングラス型の液晶に指示や情報を表示してもらって動けるようにしています。イトナ君に頼んだのは相澤先生の捕縛布を基にした包帯ですね。治療に対してだけでなく、敵の捕縛や追跡にも使えたらと思いまして」
「なるほど、面白いサポートアイテムだね。今回の話はそれに関してのことなのさ」
「サポートアイテムに関して…ですか?」
校長先生から話されたのは、私のコスチュームやサポートアイテムを製作したイトナ君、拓哉君、大成君の3人を雄英高校に転入させたいとのことでした。彼らの技術力を世間の荒波に埋もれさせてしまうのは勿体ないとのこと。本人達は自分達の目標の糧になればと既に了承しているらしいです。3人とも家業を継ぐつもりで進路を決めていましたし、より専門的なことを学べると喜んでいたそうです。
「形式上ではあるけど転入試験等の手続きを踏んでからの転校になる。時期的には2学期からになると思うよ。同じクラスメイトだったというのもあって先に渡我さんには伝えておこうと思った次第さ。まだ展開はしてないから他言無用で頼むよ」
「分かりました」
「それに合わせて防衛省との関わりも増えていくのさ」
「ああ。元E組生徒達は機密事項の観点からしばらくの間監視がつくということは前に話したと思う。それに加えてヒーロー科の渡我さんには敵との接触を考慮して監視を強化していた。それが今回糸成君達の転校もあって校長と協議しようと話していたんだ」
「ああ、そういうことだったんですね」
「今日君に話すことは以上だよ。特になければ退室してもらって大丈夫。時間を取らせて悪かったね」
「では失礼します」
校長室を後にした私は教室に荷物を取りに行ってそのまま帰宅しました。まさかイトナ君達が雄英に来るとは思わなかったので、これからがとても楽しみになりました。さ、今日の晩御飯はどうしましょうかねぇ~。
…いかがでしたでしょうか?
今回はトムラ君達敵連合との邂逅(一方的)としました。
ついでにイトナ君達も雄英にいれてみたり…。
はい、結構無理があると思ってます。が、物語の進行的に同じ学校にいてもらった方が何かと都合がいいと思いまして。だってコスチュームとか改良する度に東京に行かせるの大変過ぎんか!?と思いこのような展開にしました。流石にすぐ転校なんてできるか…?って思いあってないような理性を働かせてせめて2学期からにしました。まあ変わらず無理あるやろと思ってます。なんとかして根津校長。
次回はUSJ編に入っていきます。
高評価、誤字報告ありがとうございます!引き続き応援よろしくお願いします!!