「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、後もう1人の3人体制で見ることになった」
例の壁破壊事件から2日。警備の強化に加えて、校舎から離れるような授業は今日のように複数人の先生がついて行うことになりました。先生曰く、首謀者に関しての情報は未だに入ってきていないそうです。まあここまでのことをして簡単に捕まるとは思いませんし、地道に待つしかありませんね。
「ハーイ!何するんですか!」
「災害水難なんでもござれ、レスキュー訓練だ」
フリップに書かれた”RESCUE”の文字。…いつも思うんですが、そのフリップ毎回用意してるんです?まあそんなことは置いといて、レスキューとなればヒーローにとってとても重要な仕事の一つです。ヒーローといえば敵退治に目が行きがちですが、救助活動も立派なヒーロー活動です。
「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。なかには活動を制限されるコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。…以上、準備開始」
先生の言葉に続々と準備を始めます。皆さんワクワクした顔つきです。やはりヒーロー活動に関するものは何でもテンションが上がるものなんですかね?かく言う私もちょっと期待してます。中学時代に烏間先生からサバイバル訓練のついでに救助や簡易的な治療について教えてもらったことはありますが、より詳しい対処法を学べるといいなと思います。
「こういうタイプだったかクソ…」
「まあまあ、こういうときもあるって」
副委員長なのにフルスロットルでクラスをまとめようとしていたテンヤ君でしたが、思っていたものと違うタイプのバスだったようで見事に空回りしてました。しかし敷地内をバスで移動するとは、雄英も広いですねぇ。
「雄英ってやっぱり凄いですねぇ。ね、かっちゃん?」
「かっちゃん言うんじゃねぇツリ目金髪!」
「ま~だ言ってるんですか。いい加減諦めて下さい。というかトガです!名前くらいちゃんと呼んでください」
「テメェこそちゃんと名前で呼べや!!」
「え~カツキ君って言いづらいんですよね。かっちゃんでいいじゃないですか。むしろあなたの方が身体的特徴言ってるだけで文字数的に多くなってますし合理的じゃないです」
「こんのクソアマァ…!!」
「トガです!そんなに言うこと聞かせたいなら私に勝ってからにして下さい。勝てもしてないのにグチグチ言ってるのは負け犬の遠吠えですよ?」
「グッ…この…!…トガぁ!!」
「はいトガです。なんですかっちゃん」
「テメェは変わんねぇのかよ!」
「勝ってから言ってください」
隣はかっちゃんでしたのでとことん弄ってあげます。カルマ君直伝の話術がここまで刺さる人中々いませんよ。
「凄い、かっちゃんがここまで抑え込まれてるの初めて見た…」
「流石に完全敗北した渡我には何も言えないか」
「うっせぇぞテメェら!次はぶっ潰すわ!!」
その後も和気あいあいとしながらバスに揺られます。話題は個性の話になっていきました。
「私思ったことなんでも言っちゃうの。緑谷ちゃん」
「!な、なにかな蛙吹さん」
「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの個性、オールマイトに似てるわ」
「えっ!?そそそそ、そうかな!?いやでも僕のはえー」
「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトはケガしねぇぞ。似て非なるアレだぜ」
「そ、そうだよ!オールマイトの動きを参考にしてるから似てる感じになってるんじゃないかな!?」
「そうなのね」
――ダウト、ですね。
今の会話、梅雨ちゃんの質問に対して相当な感情の起伏がありました。個性が似ていることに対して喜んだり、否定したりするにしては波の振れ幅が異常です。ああいう時は大抵核心を突かれて誤魔化そうとしている状況でよく見られます。というかそんなことしなくてもあそこまで挙動不審になられたら嫌でも嘘だって分かりません?まあここで言及をするつもりはないですけど。
「しかし増強型のシンプルな個性はいいな!派手で出来ることが多い!俺の『硬化』は対人じゃ強ぇけどいかんせん地味なんだよなぁ」
「僕は切島君の個性も凄くカッコいいと思うよ。プロにも十分通用する個性だよ!」
「プロなー! しかしやっぱヒーローも人気商売みてぇなとこあるぜ!?」
「派手で強えってなったらやっぱ轟と爆豪だな」
「ケッ」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから、人気出なさそうね」
「んだとコラ! 出すわ!!」
「ホラ」
…かっちゃんはもう少し自制心を鍛えてください。そんなどこでも噛みついてたらいつかイタイ目見ますよ?
「お前らそろそろいい加減にしとけよ」
『はい!!』
こういう時の相澤先生は頼りになりますね。
~*~*~
「うお~すっげぇ!USJかよ!?」
水難事故や土砂災害、火事などあらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も…ウソの災害や事故ルーム!通称USJ!!」
(((USJだった!!)))
バスを降りてドームの中に入るとそこには様々な状況を再現した場所が広がっていました。広さも相まって某テーマパークみたいです。決して意識をしている、なんてことはないはずです。ないったらないです。
「待っていましたよ皆さん」
「スペースヒーロー13号だ! 災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」
「わ~! 私好きなの13号!」
宇宙服のようなコスチュームに身を包んだ13号の登場にイズク君とお茶子ちゃんが反応しています。好きなヒーローを見ている出久君とお茶子ちゃんとってもカァイイです。
13号先生と相澤先生で軽く会話をした後授業に入るようです。
「えー、始める前にお小言を1つ2つ…3つ…4つ…」
(((増える…)))
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その個性で、どんな災害からも人を救い上げるんですよね!」
「ええ…。しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう個性がいるでしょう。超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制する事で一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた個性を個々が持っている事を忘れないで下さい」
殺せんせも似たようなこと言っていました。強くなりすぎた力に酔い、弱い者の立場を考えなくなってしまう。一度それで保育施設を経営していた松方さんにケガを負わせてしまいました。同じ過ちを繰り返さないために、自分の力を過信せず己の行動を顧みて、正しいことに力や技術を使うように心がけています。個性もそうです。13号先生の言ったように正しいことに使わなければ敵に成り下がってしまうのです。改めて意識を向ける機会になりました。
「相澤先生の体力テストで自身の力が秘めてる可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では心機一転!人命の為に“個性”をどう活用するかを学んで行きましょう。君達の力は傷付ける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」
ご清聴ありがとうございましたと礼をして締めくくる13号先生。生徒皆で拍手を送ります。天哉君なんて涙を流しながら拍手してます。真面目ですねぇ…。
――ゾワッ
「!!」
「それじゃ初めに―――ん?」
急に襲ってきた悪寒。前にも感じたことがあるこの感覚は忘れることもない、”殺気”です。
「っ!?動くな!!」
気配の先には数日前に学校を襲った2人組と脳みそが露出したガタイの大きな人がワープホールから現れました。そしてその周辺にはたくさんの敵います。…随分と数が多いですね。警報もならないことから用意周到に計画されているとみます。
「何だよ! あいつら!」
「動くな! あいつらは敵だ!」
「敵!?ヒーローの学校に侵入するなんざ馬鹿だろ!!」
黒霧と呼ばれていた人がこちらに視線を向けてきます。
「13号に、イレイザーヘッドですか…先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいる筈なのてすが…」
「どこだよ。せっかくこんなに大衆引き連れてきたのに、オールマイト、平和の象徴がいないなんてさ…。子どもを殺せば来るのかな?」
「…律」
『はい!周辺の妨害装置に対してハッキングを開始します!!』
「終わったらすぐに本校舎に連絡入れて下さい」
『承りました!!』
律に指示を出してから、誰にも存在が気づかれないよう意識を周囲に溶け込ませます。相手にはワープ個性がいるのでいつ襲ってくるか分かりません。故に対策は取れるだけ取っておきます。
「響香ちゃん、かっちゃん。ちょっとチクッとしますけど我慢して下さい」
「え?」
「あ?」
「「いった!?」」
時間が惜しいので2人の返答を聞く前に血液を頂きます。かっちゃんには睨まれましたが、2人とも私の個性を理解しているのでそれ以上は何も言いません。
「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサーの対策も頭にある敵だ、電波系の個性が妨害している可能性もある。上鳴、お前も個性で連絡試せ」
「ウッス!」
「先生は!?1人で戦うんですか!?いくら個性を消すと言ってもあの数じゃ――」
「一芸だけじゃ、ヒーローは務まらん。頼んだぞ13号!」
チラッとサングラスに表示されている通知を見ると、律から『後2分でハッキングが完了します』とメッセージがありました。さすがりっちゃん、デキる女は違いますね。では私も出来ることをしましょうかね。と思っていたら進行方向に黒霧さんがワープしてきました。
「行かせませんよ。初めまして、我々は敵連合。僭越ながら…この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせていただいたのは、”平和の象徴”オールマイトに、息絶えていただきたいと思ってのことでして」
…ん?この人おかしくないですか?人間誰しも感情の起伏で波があります。なのにこの人、波の振れ幅が異常に少ない、というかほとんどないです。え、この人”生きてる人です”?
「私の役目はこれ」
「やばっ!」
気づいてすぐに動き出しますがわずかに遅く、切島君とかっちゃんが飛び出してしまいます。後ろで13号先生が個性を使おうとしていましたが、射程内に2人が入ってしまい使えません。
「危ない危ない…。そう、生徒といえど優秀な金の卵」
「駄目だ! どきなさい2人とも!」
「散らして、嬲り殺す」
感じる浮遊感。私の視界は闇に飲まれました。
いかがでしたでしょうか?
今更ではありますが、トガちゃんのコスチュームはお朋希様(Xアカウント:@nagatomo1565)のIFコスチュームをイメージしております。他のイラストも大変素晴らしいものばかりなので気になった方は是非。
次回は戦闘に入っていきます。原作と同様の部分は結構端折ってサクサク進めようかな…。