「…ワープされましたか。どこでしょうここ」
暗闇から抜け出すとそこは建物の中でした。周囲の雰囲気からして倒壊したビルの中、ということはいわゆる倒壊ゾーンですかね。
他にワープしてきた人はいないようですし、恐らくここには私だけワープされたみたいです。
「お、来た来た!」
「ヒャッハー!女だぁ!!」
周囲には敵がわんさかいます。パッと見ただけでも20人くらいでしょうか?他にも隠れている敵がいないか確認しないとですね。
「オイオイ、こんなんじゃ俺たちが一方的にリンチしてるみたいになっちまうじゃねぇかよ!」
「ギャハハハ!言えてるなぁ!!」
響香ちゃんの血を少し飲んで音で探る?相手は恐らく私の個性を知らないはずだから情報を与えてしまうのは却下。となると実力で倒していくしかありませんか。
「ビビッて声も出ねぇか!」
「そりゃそうだ!こんだけの敵に1人で囲まれたら俺でも泣いちまうね!」
「ヒーロー科のお嬢ちゃんには刺激が強すぎちまうな!!」
メンドくさいですし、時間もかかるしで採算度外視ですけど、一番確実性がありますしね。多対戦闘はステイン先生や烏間先生からも教えてもらってますし、イトナ君に作ってもらった捕縛布もどきを実践するいい機会です。この人達にはいい踏み台になってもらいましょう。
「生徒は殺せとしか指示は受けてねぇし、程よく痛めつけて楽しんでからあの世に送ってやるかぁ」
「それもそうだ。簡単に壊れてくれるなよぉ?」
さて、いい加減この下種な会話も聞きたくないので動きますかね。とりあえず片っ端から返り討ちにしていけば――
「お前に恨みはねぇが、”殺すぞ”」
「…へぇ?」
…殺す。…殺す、ねぇ?
「まともに殺したことも、ないくせに…」
「な、なんだと!!」
「テメェ調子乗ってんじゃねぇぞ!?」
顔を覆っていたマスクとフードを外して顔を晒します。途端にその場の空気が一変します。あれだけ調子に乗っていた敵の皆さんが呆然としています。私が放っているのは殺気。しかも絶対に殺すという思いを乗せた濃密な殺気です。
「なんだ、皆さん大したことないですね。この程度の殺気にあてられちゃうなんて。これくらいの殺気なら暗殺者は誰だって出してきますよ?そんなチンピラみたいな人が殺す?殺す覚悟も、殺される覚悟もないようなあなた達が使っていい言葉じゃないですよ?」
「テ、テメェ、黙って聞いてれば!!」
「黙って聞いてればって、恐怖でまともに喋れないだけじゃないですか。自分静観してただけですってカッコつけないでください。カッコ悪いです」
そうして私は特に体勢も整えないまま近くの敵に手招きします。御託はいいからかかってこいや!です。
「う、うわああああ!!」
怯えながらも突っ込んできたのは素直に褒めてあげましょう。ですがその攻撃が当たる前に意識を落とします。一度動き出せば後は芋づる式に雪崩れ込んできます。それを丁寧に倒していけばあら不思議。数分後には皆さんお休みしてるではありませんか。
「な、何なんだお前…!!」
「何なんだと言われましても、どこにでもいる女子高生ですけど、強いて言えば――」
――あなたを倒す
~*~*~
「律、状況は」
『周辺装置のハッキングは完了しています。現在本校舎にて警報発令のシークエンスに移っていますが、それも後2分程で終了します』
「他の皆さんはどうです?」
『現在被身子さんと同様に生徒の半数がUSJ内にワープされていますが、2~3人でまとまっていましたので各々対応しています。入り口付近に13号と生徒が複数おり、飯田さんが本校舎に向かっています』
「…負傷者は」
『緑谷さんが個性の使用によって中傷。13号が敵の妨害でブラックホールを背中に受け重傷。イレイザーヘッドが中央広場にて敵と戦闘中肘を個性によって壊され中傷です。それ以外の大きなケガ人はいません』
「分かりました。律は引き続き警戒を。私はイレイザーのところへ向かいます」
『了解しました。お気をつけて』
律との通信を終えて外していたフードとマスクを着けなおし近くの窓から外を観察します。中央広場の位置を確認した後、かっちゃんの血液が入ったタンクを見ます。
「これだけあれば中央広場まではもちますかね。爆発音が敵にバレないようにしないとですね」
早速血液をチウチウしてかっちゃんに変身、爆破の個性を使って中央広場に飛んでいきます。やっぱり空中移動ができる個性は便利でいいですね。色々ショートカット出来ますし。それにこの爆破の個性は汗が溜まれば溜まるほど威力も上がるんで加速もしやすいです。改善点としては爆破の際の煙をどうにかしたいですね。これって多分不完全燃焼起こしてますよね?それが調整できれば自ずと攻撃の幅が広がると思いますね。どこかのタイミングでかっちゃんに共有しておきましょう。彼ならすぐにものにできる筈です。
「っと、そろそろですね」
各ゾーンは壁を隔てているのでそこまでをかっちゃんの個性で移動して、以降は徒歩で移動します。そうすれば敵には戦闘音と誤魔化せますし、徒歩移動なので近づいても気づかれにくいです。後、かっちゃんが先に中央広場に来ている可能性もあるので味方側にも混乱を与えないという配慮もあります。
『お待たせしました!本校舎の警報を作動させました。以降は被身子さんのバックアップに回ります!』
「ありがとうございます」
出入口を抜けて中央広場に入ります。見えてきたのは先日現れた敵2人とイレイザーヘッドを押さえつける脳が露出している敵でした。
「律、あの脳みそ露出してる敵の情報はありますか?」
『はい、あの敵は”脳無”と呼称されています。個性はショック吸収。見た目の通り相当なパワーを有しています。接近戦は避けることをお勧めします』
「なるほど。とりあえずは隙を伺って意識を逸らしてイレイザーを救出します。サポートお願いします」
気配を消しながら近づいていきます。トムラ君が癇癪を起こしたのか首のあたりを掻き毟ってます。うわぁ痛そう…。
「けどせめて…平和の象徴の矜持をへし折って帰ろうか!!」
「やばっ!?」
梅雨ちゃんに向かって走り出すトムラ君。恐らく梅雨ちゃんを個性で塵にするつもりです。そんなこと私がさせません!!
「シッ!!」
「なっ!?お前どこから湧いてきた!!」
死角からトムラ君に接近した私は装備として持っていたナイフで切りつけます。射撃は程々でしたが、ナイフ術に関して言えばE組トップの成績を持っていますからそう簡単に遅れは取りません。
「チッ!ちょこまかと!!グッ!?」
(ついでです。あなたの血、もらっておきます。チャンスがあれば黒霧さんのももらっておきましょう)
シリンジを突き刺し血液を採取します。すぐに外されちゃいましたが、DNA鑑定を行うには十分でしょう。しかし腐っても敵、手強いですね。
「おい脳無!こいつを殺せ!!」
指示を受けた脳無がイレイザーを放置して私の方に突っ込んできます。パッと見ただけでも勝てる気は全くしません。普通にワンパンされますねこれ。
(攻撃は意味ないですし防御も貫通される可能性大。捌くにしても元々の力が強そうなので上手く捌けなそうです。そうなると避けるしかないですね。にしてもその図体でその速さ異常すぎません!?てゆうか”あなた本当に生きてます”!?)
この脳無とかいう敵、さっきから感情の波が一切感じられないんですよね。人間どんな状態でも感情の波があるはずなんです。それなのにこの敵は全くそれがありません。死んでいるといわれても不思議じゃないんです。ホラーは好きですけど、キョンシーみたいな生ける死人みたいなのは倫理的に好きくないです。そう考えると黒霧さんも基本的に感情の波がないかもです。
と、そんなことを思いながら脳無の対処をしようとしていると背後から大きな爆発音がしました。その音で脳無も止まりました。
「もう大丈夫、私が来た」
「ああ…コンティニューだ」
いつも笑顔でやってくるオールマイトですが、今は全く笑っていません。一瞬で近くの敵を吹き飛ばし広場にやってくると、私やイレイザーを回収して出久君達のところに運んでくれました。
「皆入口へ逃げるんだ!相澤くんを頼んだぞ!意識がない、早く!」
そう言ってすぐに脳無との戦闘に入っていきました。ですが今の状況的にイレイザーを移動させるのは悪手です。下手に動かしてケガが悪化する恐れがあります。
「先生はここで手当てします。イズク君は先生をあそこの岩の影まで運んで下さい」
「で、でもここで手当てするよりオールマイトが言ってたように入口まで移動した方が――」
「ダメです。先生のダメージが大きすぎます。応急でも手当てをしないと危ない状況です。先生を殺したくないなら早く移動して下さい」
「わ、分かった!」
ちょっと言葉はきついですが事実を述べます。腕もそうですが特に頭のケガが重そうです。恐らく骨まで達しているでしょうし、下手すれば今後のヒーロー人生に影響が出る可能性は大いにあり得るでしょう。ともかくこれ以上のダメージが出ないように処置します。
『サポートします!近くに木の枝があるのでそれを使って腕を固定して下さい』
「イズク君、そこに落ちてる木の枝を下さい!」
「は、はい!」
添え木を包帯で固定しギプスの代わりにします。続いて装備品の救急セットを広げます。中にある止血剤をイレイザーに飲ませます。血液が集まらないように頭を心臓より高くしておきます。
(ケガ人に対してこんなことをするのはアウトなんですが、事態は一刻を争うので許して下さいね)
治療をしながら、イレイザーの血液も採取しておきます。彼の個性は今の社会ではとても重要なものです。あって損はありません。
「す、スゲぇ…」
「手際がいいなんてものじゃないわ…」
『これで一先ずは大丈夫です。お疲れさまでした』
「さ、まだ戦闘は終わってないです。気を引き締めますよ」
いかがでしたでしょうか?
一瞬このタイミングでデク君テコ入れしてもいいかなと考えましたが、ちょっと無理があるなぁと断念。けどどっかで強化は入ります。多分きっとメイビー…。
次回位にはUSJ編を終わらせて体育祭に向けていきたいですねぇ…(プロットも何もないので行き当たりばったりです)
感想もありがとうございます!返信等はしていませんが全て見させてもらっております。
ランキングにも掲載されていたようで…。引き続きよろしくお願いいたします!!