警報が校舎内に鳴り響き、直後に駆け込んできた飯田少年にあらましを聞いた。すぐにUSJに向かって見た光景は悲惨なものだった。
(全く己に腹が立つ…!子供らがどれだけ怖かったか!後輩らがどれだけ頑張ったか!!)
しかし、だからこそ胸を張って言わねばならんのだ。そうあの言葉を!!
「もう大丈夫、私が来た!!」
一瞬で状況を把握し、最も危険と判断した中央広場に向かう。相澤君と生徒たちを救出しすぐに逃げるように指示を出す。
「皆入口へ!相澤くんを頼んだぞ!意識がない、早く!」
それを伝えて直ぐに戦線に戻る。敵は少しの猶予も与えてはくれないのだから!
「やれ脳無」
「そう簡単にやられるわけにはいかないな!カロライナ・スマアアアッシュ!!」
必殺技を脳無に打ち込む。しかし、脳無は何事もなかったかのように私に攻撃を仕掛けてきた。
「What!?全っ然効いてないな!」
「効かないのはショック吸収の個性だからさ。脳無にダメージを与えたいならゆっくりと肉をえぐり取るとかが効果的だね。まあそれをさせてくれるかは別として」
「わざわざサンキュー!そういうことならやりやすい!!」
耐久力がある個性の敵は拘束して身動きをとれなくしてしまえば問題ない!脳無の腰に手を回しバックドロップを決めて――
「ぐおッ!?」
「コンクリに深くつき立てて動きを封じる気だったか?それじゃ封じられないぜ?脳無はお前並みのパワーになってるんだからな」
「うっ…そういう感じか…!!」
私はそのままゲートに体を拘束されてしまった。どうにか脱出しようにも、脳無に脇腹を抑えられて動けない。グッ、そこは弱いんだ…!!
「ふふふ、いいね黒霧、期せずしてチャンス到来だ」
「目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目。そして、あなたの身体が半端に留まった状態でゲートを閉じ、引きちぎるのが私の役目。私の中に血や臓物が溢れるので嫌なのですが、あなた程の者ならば喜んで受け入れる」
そう言いながらゲートが収縮していく。このままでは、マズイ!!
「オールマイトォ!!」
DOOOOOM!!!
「オラぁ!!」
爆破!?それに脳無を拘束するこれは氷。爆豪少年に轟少年か!!しかもこの氷、私まで凍らないギリギリの範囲に調整して!おかげで敵の手が緩んだ!!すぐにゲートから脱出して距離をとる。
「お前らがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた」
「スカしてんじゃねぇぞモヤモブが!平和の象徴はテメェら如きにやられねぇよ!!」
「出入口を押さえられた。こりゃあピンチだなぁ」
形勢が逆転し、ピンチだというのにどこか他人事のように語る。何故だ?
「このウッカリ野郎め!やっぱ思った通りだ!モヤ状のワープゲートになれる箇所は限られてる!そのモヤゲートで実体部分を覆ってたんだろ!?じゃなきゃあん時、全身モヤの物理無効人生なら“危ない”っつー発想は出ねぇもんなあ!」
「攻略された上に全員ほぼ無傷…。すごいなぁ最近の子供は…。恥ずかしくなってくるぜ、敵連合」
これ以上敵にいいようにされるわけにはいかない。私の活動できる時間も残り僅か。早く決着をつけなければ!!
~*~*~
「な!?ショック吸収の個性じゃないのか!?」
「別にそれだけとは言ってないだろう?これは超再生だ。脳無はおまえの100%にも耐えられるよう改造された超高性能サンドバッグ人間さ」
轟君に拘束されていた脳無は自身の体を引きちぎりながら無理矢理拘束から逃れました。超再生の個性があるが故の行動ですね。
「まずは出入口の奪還だ。行け脳無」
出入口、つまりは黒霧さんを奪還するのならまず邪魔になるのはかっちゃんですね。動き出すよりも早く、かっちゃんに捕縛包帯をを巻き付けて引き寄せます。黒霧さんは奪還されましたがかっちゃんにはケガはありません。
「チッ、さっきから邪魔ばかりしてくれんなお前」
「そりゃあヒーローの卵ですから、人助けは当たり前ですよ」
「その癖、素顔は一切晒さないとはな」
「プライベートは大事にしたいのです。まあすぐにバレますけど」
「言えてるな」
こんな世間話をしていますが、脳無の放った一撃は奥の壁を破壊するほどの威力でした。何もしてなければケガ所か死んでいたかもしれませんね。
「加減を知らんのか…」
「仲間を助けるためさ。仕方ないだろ?誰が為に振るう暴力は美談になるんだ。そうだろヒーロー?俺はなオールマイト、怒ってるんだ。同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ善し悪しが決まるこの世の中に!なにが平和の象徴!所詮抑圧の為の暴力装置だ、お前は。暴力は暴力しか生まないのだとお前を殺すことで世に知らしめるのさ」
トンデモ思考の持ち主みたいです。まあ一度は考えたことがあります。一つの任務に対して、ある人には光明に見えても、また別の人にとっては絶望となることだってあります。私その違いは何か、それはまだ分かりません。でも、少なくとも自分のお友達が傷ついているのをただ見ているだけの薄情者にはなりたくありません。
いつか殺せんせがおすすめしてた漫画のキャラも言ってました!”ルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。けどな!仲間を大切にしない奴は、それ以上のクズだ”って!!
「と、とんでもねぇ奴だけど、俺らがオールマイトのサポートすりゃ撃退出来るだろ!」
「ダメだ、逃げなさい!」
「さっきのは俺がサポート入らなけりゃやばかったでしょう」
「それはそれだ轟少年。ありがとな。しかし大丈夫、プロの本気を見ていなさい」
「オールマイト血が…それに時間だって…」
―時間?ケガの具合はまだ分かりますが、時間とはどういうことでしょう?まさか活動時間に制限がある?にしては今までの活動に制限時間なんてものはなかったはずです。つまり最近になって出来たもの?授業に最初からいなかったのもそれが原因…?
そんなことを考えている間にオールマイトは脳無に挑んでいきました。
「おいおい、ショック吸収があるってさっき言っただろ?」
「そうだな!だが君の個性が無効でなく吸収ならば限度があるんじゃないか!?」
ラッシュ。ただただ拳を脳無に叩き込み続けます。風圧で吹き飛ばされそうになるのをなんとか堪えます。
「私対策!?私の100%を耐えるならさらに上からねじ伏せよう!!」
腕を掴みぶん投げます。私たちはその光景をただ傍観していました。これがNo.1ヒーロー…。とんでもない力です。殺せんせと戦っていたらどっちが勝ったでしょうか?…殺せんせが負けるとこがイメージできませんね、何故か。
「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!敵よ、こんな言葉を知ってるか!?さらに向こうへ!!Plus Ultra!!!」
最後の一撃を受けた脳無はUSJの天井を壊しながら彼方へ吹っ飛ばされていきました。空いた穴からは日差しが差し込んできます。
「コミックかよ…ショック吸収をないことにしちまった…究極の脳筋だぜ…デタラメな力だ…」
「再生も間に合わねぇ程のラッシュってことか…」
「これが…トップ…」
~*~*~
その後、満身創痍となったオールマイトに攻撃を仕掛けようとしたトムラ君ですが増援で来たスナイプ先生の狙撃によって攻撃を断念。黒霧さんと共にどこかへワープしていきました。これによって今回の事件は終息していきました。取り残されたチンピラ敵も残らず拘束され、連行されていきました。
ケガ人は相澤先生が両腕粉砕骨折に顔面骨折。13号先生が背中に裂傷。イズク君が指を骨折。その他は擦り傷程度のものでした。特にケガが酷い相澤先生は、後遺症でヒーロー活動に影響が出る可能性も示唆されましたが、私の適切な処置で大きな影響はないとのことでした。治療を引継いだ隊員が褒めていたと聞いたときは素直に嬉しかったです。
事情聴取は少し時間を空けてからとのことで、生徒は教室に戻ることになり、来たときと同じくバスに乗り込みました。行きと同じくかっちゃんの隣に座りましたが、かっちゃんはずいぶんと静かです。
「何か感じるものがあったみたいですね」
「…あの時、俺は脳無とかいうクソ敵の動きが全く見えなかった。テメェに引っ張られてから初めて自覚したんだ。あのままでいたら俺は死を自覚することもなく死んでただろうな」
「そうだったかもしれませんね」
「…テメェは今までにこんなことあったんか」
「え?」
「あの瞬間、オールマイトですら僅かに反応が遅れたってのにテメェは普通に動けた。んなもん過去に同じようなことをしてなきゃ出来ねぇはずだ」
「ん~、ここまで危機に瀕した状況ではありませんでしたが、確かにありましたね」
なんせマッハ20の超生物の暗殺を1年間続けてきたのですから、あの程度のスピードには充分ついていけます。まあ会話の雰囲気的にかっちゃんは重く受け取ってそうですけどね。
「テメェの強さの根源はそれが由来か」
「まあ、そうなりますね。ですが真似はしない方がいいですね」
「あ?」
「もうこんな経験、誰にもしてほしくないです…」
この先を生きて行くための力を得る代わりに、大切な人を失うなんて悲しい経験は――
いかがでしたでしょうか?
次回は体育祭に向けての小話を少々…。
キャラ強化したくてうずうずしてます。お楽しみに!