魔法少女ばかりな日常記録(旧:配信系魔法少女が沢山いる魔法少女モノ)   作:何処にでもある

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 魔法少女の秘密!川次と仙台編
 川②スプラッタやゾンビは大丈夫だが、和系ホラーが大の苦手。
 仙①実はバンドに憧れギターを練習した過去があるので、エレキギターを弾ける。




第4話「全員集合!中堅の魔法少女チーム結成!」

 

 

「退院おめでとー!」

「昏睡から復活して真っ先に顔見るのが仙台っスか…」

「なんだとー?緊急入院の手続きをした私に向かってなまいきなー」

「…へっ?保護者?…もしかして成人してるっスか?」

「こう見えてー三十路直前でーす」

「嘘だろ仙台」

「ほんとーですよー、12歳さーん。じゃなきゃ旅行とかー簡単に出来ないよー?」

 

 このぽわぽわで私より背が低くて、若い顔の羊が29歳?魔法少女目指してる奴が?

 え?そんな年齢でずっと魔法少女追って激写とかやってたの?マジ?人は見かけに寄らないなあ…。

 

「あーでもある意味良かったっスわ。これで家族と病院で有ったら気まずいってもんじゃないっスからね」

「怒られるのはー確定してるよー。ご両親とは相談済みでーす」

「オーマイがっ!」

「なんならー重音ちゃんの部屋を使って良い許可も降りましたー。これから一緒によろしくねー?」

「おぉ、のー…!あ、私のことはカッシーっていっスよ」

「恨むならー、無茶をしてご両親を心配させた自分を恨みたまへー。カッシーねー?分かったー」

 

 取りつく島もないとはこのことだ。これが怪人跋扈を解決した魔法少女への仕打ちか…?ご無体が過ぎちゃうな。

 …そういえば、あの後どうなったか聞いてなかったな。

 

「それで、あの後どうなったんスか?」

「聞いて驚けー死者は出ませんでしたー。負傷者もカッシーだけでーす。カッシーが助けた魔法少女達もー、カッシーをすっごくー…すっっっごくー心配しながら、元気に私と一緒に居候してるよー」

「へーそりゃ良かった。…ん?あれ、先輩達って学校とか家族とか友達とか、どうなんスか?」

「……あー、それはねー?」

 

 最短で私が魔法少女になった日の一週間前から捕まっていたとして、助けた日まで行方不明になっていたはずだ。

 家族達に会いに行ったり、友達に会ったりとやりたいことは沢山あっただろう。もう一週間とはいえ、まだまだ日常を謳歌したいに違いなかった。

 

「ほらー、ドラゴンお爺ちゃんが記憶抜かれたって話はー…聞いたよねー?」

「実験に突き合わせる為にっスね。配信を知らない理由とか分かってスッキリしたっス」

「それでねー?彼女達が拐われる時にねー?彼女達の家族やー…友達の記憶は消されたんだってー。なので家族からも友達からも他人行儀ー…めちゃつらだねー」

「あー…そりゃそっすか。財団からしたら覚えられてたら面倒だろうし…そりゃそうなるっスわ」

「それでねー?」

 

 …激アツな日差しを木陰で凌ぐ。蝉も鳴かない暑さと、憎いほど澄み渡った青空を仰いだ。

 帰りのバスを待つ中、のんびりと紡がれる仙台の言葉に、次に紡がれる言葉が嫌なものになる感覚を覚えた。

 なんとなく、面倒なことになる確信が、私の中にあった。

 

「二人が言うにはー…カッシーとあぶちーとは幼馴染だったんだってー。…覚えてるー?」

「……はぁ?そんなんあるわけ無いじゃないっスか」

「うおおーこりゃあ参ったねー?関係がーこじれる音がするー」

 

 そんな訳…え、マジ?私ったら記憶消された後なの?

 ……え、マジっスか?

 

 プシュー…と。丁度バスが到着する音が、この時ばかりは地獄へ向かうバスのように錯覚した。

 

 

 

 

 

第四話「全員集合!中堅の魔法少女チーム結成!」

 

 

 

 

 

「覚悟の準備はー?」

「出来てないっシュ」

「語尾のスもシュになる緊張感だー。おーウィッシュー」

「そのネタいつのっスか?」

「うおおー…500億ポイントの自傷ダメージと引き換えにー、緊張はほぐせたぞー。後は一人で行けー…」

「あう、ごめんっス!一人は流石にキツいんでマジで同行おなしゃっス!」

「うむーくるしゅーない」

 

 媚び媚びだが仕方ないだろう。今の私はいくじなしのカッシーだ。

 覚えはなくとも、MGP財団の超技術なら可能性がある。それを捨てきれない以上、私は彼女達をどんな顔で見れば良いか分からない。

 存在しない記憶でもいいから、復活出来るなら復活させて欲しい。親友だけが友達だと思ってたら、知らん奴が二人生えた恐怖が消えるなら何でもいい。

 

「それではごー!」

「待ってまだ心の準備があ!!」

 

 羊の背中に隠れてながら帰宅する。当然ながらいつもの我が家だ。

 いつもより暗い感じはするが…気のせいにしたい。でも気のせいじゃないな、だってこんなに暗い我が家初めてだもん。いつもなら照明が付いてるのに…。

 

「ただーいまー」

「ただいまー…っス…誰か居るっスかー?」

 

 いつもなら此処で返事が返ってくるのだが…みんな、相当カンカンらしい。

 

 ガシャ!

 

「ひい…!」

「どうしたのー?洗い物のー食器が崩れただけだよー?」

「ふ、ふーん?クーラー効いてて雰囲気あるじゃないっスか〜?」

「あれー?付いてないねー?」

「ふ…はいはいやめ。これ以上はやめとくっスよ。私はホラーとか苦手で失禁くらいなら余裕でするっスよ?良いんスか?撒き散らして」

「堂々とー変身までしてるー。みっともなーい」

 

 ビビらせてくるじゃーん?…へへっ骨が有ったら桜の下に埋めてくれや。化けて出てやるから。

 それから、私を煽ってる三十路手前の羊は後でとろとろのジンギスカンにしてやる。妹相手に鍛えたくすぐりの刑じゃ。

 

「さーて変身したからにはもう怖くないっスよ!何処からでもかかって」

 ギィー…。

「へっ今の私が銃を持たない省エネ変身だとよく見破ったっスね」

「一瞬で敗北してるー。ほんとーに情けな〜い」

 

 なんとでも抜かせや…既に仙台の背中が安置なのは把握してんだよ…へっ自分の魔力だけじゃ髪の毛と布しか変化しないとかしょっぺーわ。

 お陰で事態は一切進歩してないぜ?どうだすごいだろう。私はもう涙が出そうだよ。

 

「このままだと動かないねー?仕方ない…私が進んで行きましょー」

「待って欲しいっスよ姐御それは堪忍して欲しいっスやめろ先に行くな私を置いて行くなぁああ!!」

「いざと言う時以外はー三下ちゃんだねー?折角の強キャラっぽい糸目が台無しだー」

「へへっチベスナクソ雑魚カッシーとは私のことっスわ」

「いばることじゃないよー?ねーロボちゃん?」

「…当機に被せられたシーツはどんな意味があるのでしょうか」

 

 バサバサ。気付けば私の真横にお化けが居た。

 …うん!もうね、逃げる。

 

「これが私の逃走経路っスよー!」

「はい……捉えたリ」

「ぎゃふん!」

 

 今度はやたら冷たい手に捕まり転ぶ。なんだよもー!またかよ!

 泣き言と共に涙が出てきた。もう許して欲しい。こんなにされる謂れはないぞ。成仏しろ!

 

「冷たいっス!」

「ならあったかくしようか!」

「熱いっシュ!」

「冷たミなら此処にあるヨ」

「まるでサウナや…あーもう終わりっスね私は。ふっ…死んだら桜の下に…」

「ぐるぐるお目目のお義姉ちゃん…きゃはは、なっさけなーい!」

「…当機のシーツをあげましょう」

 

 最後は顔に白布を貼られ、私は無事死亡した。あぁ、悔いの多い人生だった…。

 

 

 

「‭─‬‭─‬…で、誰と誰スすか」

「あなたに助けられた一ノ瀬 羽澄(いちのせ はすみ)改め、鶴にございます。此度につきましては決して例の場所は覗かぬよう…」

「おーつまり出て行かせる手段があるってことっスね。何処覗けばいいっスか」

「スカートの中です!」

「へっ私にアンタを追い出す手段は布一枚によって消えたっスわ」

「見てもいいよ!」

「やめい、めくるな。女の子がそんなはしたない事す…おいそれ私のパンツじゃ…!」

「去年に私が貸した奴だからセーフだよ!」

「アウトっスよ!攻守交代満塁逆転ホームランまであるっス!」

 

 それから改めて全員で私の部屋に集まり、お互いに自己紹介をすることになった。

 だが一人目で私の心は折れそうかもしれない。だってなんかとんでもないボケがやってくるもん。

 

「いやー!このツッコミが懐かしいね!これの為に今まで頑張ってきたまであるわー」

「この色ボケ女が…!主人公面の癖に合わなすぎるっスよ…!」

 

 黒の長髪、私より高い身長と胸。童顔で主人公っぽい雰囲気。改めて見ると魔性の女と言い換えても良いかもしれない。

 そんな、一ノ瀬と名乗った彼女は、その全ての印象を台無しにするボケ担当の化身だった。

 どうやら私と戦った太陽みたいな奴らしいが…あの時感じた重圧感は何処へやら。今はピンクのパンツを見せる変態である。私、コイツと友達だったって本当なのか?疑わしい限りだ。

 

「じゃあガチな話!‭」

「うおっ!」

 

 そんなことを考えていると、両手をがっしり握られ急接近された。近くで見るとやっぱ顔いい奴だな…。

 

「─‬‭─‬助けてくれてありがとう。やっぱりカッシーは私の王子様だね!」

「…ん?王子様ってなんスか?」

「はいっ!小学生の頃イジメから助けてくれました!具体的には小4の3年前の話です!」

「知らねー話っスわ…白昼夢の線は?」

「はいこれ、小学の動物園旅行で撮った写真。私を忘れて相変わらず売春してる母のゴミ袋から取ってきました」

「うおぉわ!?マジで仲良さそうにしてるっス…!そしてサラッと言った家庭事情おっも!!」

 

 差し出された写真は、私の持っているあぶちーとのツーショット以上の数の写真が有った。

 どうやらガチ話らしく…具体的な年数も言われると信じざるおえない。はー…私ったら何やったんだ…謎だ。

 

「そして次なルは私だネ。二葉亭 浮雲(ふたばてい うきぐも)、見たままノ文学乙女であり、将来貴女様の婚約相手になると過去に誓いました。たらずの乙女にございまス」

「騙されないっスよ。流石にその変な喋りと約束は嘘だと分かるっスよ。昔の作家ペンネームの名前をネタに揶揄ってるってのは流石に分かるっス」

 

 ゆるい三つ編みと縁が太く大きなぐるぐるメガネ。外せば光のない鋭い瞳孔が氷のように思わせる、私より背も胸のデケェ女だ。変身後の姿はよく見てないから覚えてない。

 しかし…くそっこの二人私より恵体だな…とんでもない強敵が来ちまったぜ。でもこれが嘘だってのは流石の私でも分かった。

 間違ってたら?君と一緒に居る時に、満月が綺麗だと言ってもいいよ。勿論冗談だが、夜中に起きて二人だけの秘密でも作っちまおう。いやー私ってば天才だわー。文学少女へのジョークとしては完璧じゃないか?

 

「私に「ぽっきぃげぇむ」で敗北を喫して以来、律儀に語尾に「ス」を入れておきながら…その物言いは通じませんネ。その言の葉が何よりの証拠に御座いませんカ」

「はぁー?流石に語尾は私の素じゃないっスか?」

「では幼き頃の記憶を思い出しまセ。唯の男勝りがいつからかこうなったか、見返してくださいまセ」

 

 ふむ、いつからかと言われれば…思い出せないが。

 わざとやってるかと言われたら…態とだが。

 じゃあなんで何がなんでも語尾を入れようとしているかと言われれば…トンと忘れているが。

 確かに…私の趣味じゃない筈の文学小説も、何年か前に読んでたりしてたが…あの時は一人で読んでた筈だし、誰の影もない。

 じゃあなんで読んでたかと言われたら…なーんにも覚えてないし記憶にない。気が向いただけなのが私の中で有力な説だ。虚しい学校生活だったのは間違いない。

 

「うーん、一人で趣味じゃない文学小説読んだ記憶しかないっスね。やっぱ婚約は嘘じゃないスか?」

「……ならば仕方ありませン。満月の日、改メて館を共に抜け出しましょウ。あの日連れ出した思ひ出も、今一度塗り重ねれバ同じ…いいえ、それ以上にしまス」

「ふーん、なんか重いっスね。月を背負ってる気分になって来たっスわ」

 

 うーん…自己紹介が終わっても何も思い出せないな。やっぱり他人じゃないか?

 片やしっとりしてるし、片や重いし…幼馴染と言うなら、あぶちーの清涼っぷりを見習って欲しいものだ。去年まで小学生だった奴らの色気と重力か…?これが…?

 

「……では当機も改めて。国家汎用人型警備四型です。皆様からはロボと呼ばれています。事前に説明した通り、協力者カッシー様の相棒を務めさせて頂いております。今後とも、対財団戦では、宜しくお願いします」

「それならー私もー。仙台 千尋(せんだい ちひろ)、登録者10万人の魔法少女ですー。これからはこの地の魔法少女としてー…一生懸命頑張りますねー?」

 

 …ん?なんかみんな静かだな……あ、流れ的に次は私か。

 

「はま」

「はい!ではーそろそろご両親がカッシー退院記念でー、鍋の準備を終えた頃合いなのでー…下に降りましょー!」

「あーいいっスねー!」

 

 言いかけた所で遮られたので、そっちの流れに従って食べることにした。自己紹介より飯が大事なのはみんなも知ってる通りだろう。花より団子、姦しい女子会より釜飯の鍋である。

 …あ、そういえば夏休み初日から気絶してたし、そろそろあぶちーの部活のマネージャーに戻らないとな。唯一の親友をぞんざいにする訳にはいかないんだわ。

 新しい人達は…一先ず友人から始めることにしよう。過去がどうあれ、これからの積み上げれば良いだろう。

 

「んじゃ、みんなで食べるっスよ!同じ釜の仲間とも言うっスし、そしたら仲良くなれるっス!」

「正しくハ同じ釜の飯を食う、ですネ。そうでなくても我々はこの一週間で仲良しですガ」

「へっ細かい事は気にすんなっス!魔法少女チーム結成記念っスよ!」

「そしたら私があーんをしてしんぜよう…!私とカッシーはいつも隣の席に居たから実際健全!」

「記憶がないことに乗じテ嘘を吹き込むのは感心なりませんネ…」

「早く移動しましょう。たった今当機のバッテリーが20%を下回りました」

「楽しみだなー、魔法少女ーライフー!」

「あっはは!一気に騒がしくなったっスね!……あっはは、家の席と鍋足りるっスかね…」

 

 一気に騒がしくなって、私の部屋の敷地が猫の額並みになりそうな予感を無視して食べた鍋は、とても美味しかった。さすが魔法少女だ、直ぐに固形物を食べてもなんともない。

 

「あ"〜〜〜…気持ちえ"え"〜」

 

 そしたらお風呂でまったりする。ほっかほかで芯まで沁みるぜこれは…。

 色々あったが…中々、悪くないのでは?やべー総決算も終わったし……あ。

 

「…あれから一週間だからアイツら来るじゃん!…やっべどうしよ」

「カッシーのお背中流しに来ましたー!」

「あぁ丁度良かったっス!一ノ瀬、怪人とかまた出て来てないっスか!?」

「それなら朝の間に私とふたば(二葉亭のあだ名)で倒しといたよ!」

「あ…もう来て終わってた…っスか」

 

 安心して、風呂にじゃぼんと逆戻りする。いやー普通に来てたしその時昏睡してたのはアレだが…なんとかなったのは幸いだった。やっぱ人が居るって最高だな。

 

「あー焦った…マジでやらかしたと思った…ありがとうっス、一ノ瀬。よくやってくれたっスよ」

「お礼なんてそんな…それなら私のこと、ヒノって呼んでよ。昔からそう呼ばれてたし、これくらいなら良いでしょ?」

「あざっス、ヒノ!マジ助かったっスわ!流石先輩っスね!」

「お礼が適当なのも相変わらずだね!でも先輩呼びはやめて。私とカッシーは同い年でしょ?」

「うわっ急に冷たくなるっスね…」

 

 距離感が測れない。向こうと自分の感情のギャップがある。

 それが関係の亀裂にならないようにして、ほっと一息つく。

 そうやって心に余裕が出来て、折角だからと流されるまま風呂から出て背を向けて…そこでようやく私は、ヒノが何故風呂に侵入したのか疑問を持った。

 

「…なんで居るっスか?」

「なんだと思う?答えは昔の記憶の追体験です!思い出せたら嬉しいなって試みだよ!」

「へー、小学と中学は違うことを教えてやるっス」

「身体は大きくなったけど、心はそんなに変わらないって教えてあげようじゃまいかー!」

「きゃー!変態がいるっスー!てか胸触るな反則っスよ!」

「揉むと大きくなる。私が大きくしてしんぜよう…!前よりももちもちになりおってこやつめー!」

「あっははは!ちょっ、くすぐったい…やめ…やめてぇ!」

「うりうりー!くすぐりは私が伝授した技だと身体に思い出させてやろー!」

 

 なんかいつぞやに妹にやったことの報いを受けているのは気のせいだろうか。

 無防備に背中を向けたのが運の尽き、ボディソープでヌメヌメになった身体で、身体の急所を守るのは難しいものだ。涙を流すほど息切れになってしまった。

 

「ぜぇ…はぁ…よ、ようやく終わってくれたっスか?」

「むう、これでもダメか…本当にクッキリ取られちゃったんだね。身体が前より鈍感になってるし…本当に関係がなくなっちゃったみたいだね」

「…まあ、微塵も思い出せない以上、記憶の復活は無理じゃないっスか?…ご両親の記憶もそうだとすると、すごくしんどい話っスけど」

「んーママはいいや。前からここによく泊まってたし、そんなに仲良くなかったもん」

「それじゃあ、学校は?」

「いじめで嫌な思い出だけはあるし…カッシーと一緒に行けないのは残念だけど、入学したこともなかったことになってるしねー」

「そもそも…か…そりゃあ…何か、私に出来る事はあるっスか?」

「え?そうだなー…」

 

 話を聞いてると、このままだと中学中退という学歴で将来困るのが想像できた。流石にそれは偲び無い。

 なので後で両親に相談することにしつつも、当面はどうするか聞くことにした。最悪、私が家庭教師になる案で行くことにする。せめて知識だけでも入れるべきだろう。

 教科書と宿題を一緒にやればある程度の知識は保証される筈だ。

 

「昔の話、私の話をたくさん聞いて。そして思い出して、私から離れないで」

「そりゃあきついっスよ。私に人を養える力はないっスから」

 

 後ろから抱きつかれる。なんとなく、ヒノは寂しそうにしているのは分かった。

 それ以上の深い事情は…私には分からないことだった。

 

「うん、だからこれはわがままだよ。私がカッシーにだけ言える、唯一のわがまま。その内さ、叶えてね?」

「そっスね…辛抱たまらずに3回言うまでには叶えるっスよー」

 

 誰かが途中まで進めた恋愛ゲームをやってるみたいだ。

 無責任な思考だなあと思いつつも、そう思う心は止められなかった。

 

 

 

「ふぃー…魔法少女って大変っスねー…」

 

 私は先に入ったからとヒノを置いてお風呂を上がり、ドラゴン爺を側に牛乳を一杯飲む。

 なんだか大変なことになったが…一番大変なのは居候が増えてエンゲル指数が上がった両親だ。連れて来た私が何か文句を言える義理はない。それでも愚痴は溢したくなった。だって助けた相手がこんな事情持ってるとか、普通思わないじゃん。

 

「記憶失う前の私ってレズか何かだったんスかねぇ?」

「さーてーねー?」

「うわっ!…毎回後ろを取るのやめてくれっス。心臓止まるかと思ったんで」

 

 不意打ちで話しかけられたのでピョンと飛び、後ろに振り返る。

 其処には私より先にお風呂を終わらせてポカポカ、髪がお湯に濡れてストーンとした羊が居た。

 しんなり羊である。ちょっと頬が赤いのが子供っぽい。

 

「私には分からないなー。なにぶんとー新参なものでー」

「魔法少女の知識じゃこの中で最つよっスよ。ま、普通より面倒なのはそうっスけど」

「まーねー…今まで沢山の魔法少女を見て来たけどー…こんな組織との対立とかはなかったねー。魔法もすごく強いしーびっくりだー」

「そりゃ向こうの言い分によると秘密の実験場っスからね。ドラゴン爺使って魔法少女量産して、それを蹂躙出来るまで実験し続ける気狂い達っスよ」

「私達が死んじゃったら世界進出かー…責任重大だなー」

「そうとは限らないっスね。普段使いに有用なら持ち出しそうっスし」

「あー…」

 

 のんびりと羊と会話する。この穏やかな喋り口調と雰囲気は、流石10万人の登録者を持つだけはあるのだろう。

 話している内に心がリラックスしてくるし、心の波立ちが穏やかになっていく感覚がある。癒されるとはこういうことなのだろう。バフ系の魔法みたいだし、チャンネル放送の視聴者ブーストも使って今後は是非後ろから支援して頂きたい。

 

「で、羊さん。今後の配信はどうするっスか?」

「…ひつじー?」

「あだ名っすよ。雰囲気がそうなんで今後はそう呼ぶっス。動画とか本名はマズいっしょ?」

「そうだねー…うん、これからはそれで行こー!良いと思いまーす!」

「よっしゃ、ひつじさんポイント追加っスわ。この調子で景品と交換出来るまで貯めるっスよ!」

「私ポイントー?ならー300貯めたら添い寝してやろー」

「おっしゃ、やる気出て来たっスわ!」

「あ、ベッドが狭いからー今日は私とカッシーが使うらしいよー」

「貯めるまでも無かったっスね!へっ私はひつじさんの才能があるかもしれんっスわ」

「なまいきー」

 

 背伸びしたひつじさんに頭をぐりぐりと制裁を落とされる。全く痛くないし寧ろ癒されるのがこの人のすごいところだ。この調子だと何やっても相手を癒やしちまうんじゃないか?癒しの天才だな!

 

「癒しと言えば…私の魔法、ひつじさんの魔法でバフられた後に色々回復したっスよね。あれ、今後も使えそうっスか?」

「あれはねー…みんなで話し合ってー、いざという時まで温存することになったよー」

「え、なんでっスか」

「分からないー?あの時のカッシーはねー…」

 

 その後の説明を解析すると、1回目使用した私は再生能力を失い、2回目は逆に傷を勝手に負う状態になったらしい。聞いてピンと来たぜ!あの魔法、私の再生能力を配布して回復してるわ。

 なるほど、あの命を削る感覚はそういうことか。道理で2回目の時に肌がやけに黒いと思った。あれ火傷が再生してなかったんだな。痛覚死んでで全然気付かなかった。

 …あ、やけにロボが助けに来た私に期待してなかったのそのせいか?成程、重傷の奴が助けに来たとか言ってもそりゃ言い淀みもするか。

 つまり一回だけなら再生能力を暫く無くすだけで済むな。今後も使うべき時に使おっと。

 

「もー、ほんとーに危なかったんだからねー!?分かってるのー!?」

「あーはい分かってるっスよ。へっあんなん大したことないっスわ」

「分かってない〜!ほんとに、ほんとーに昏睡してた時は酷い見た目だったんだからねー!?綺麗に戻ったカッシーを見て、私、すっっごく驚いたんだからー!」

「へっ不死身の女の生存能力を舐めないで欲しいっスね。へへっ」

「あ〜世の中舐め腐ってる〜!そのドヤ顔はとっても世の中をバカにしてる〜〜!」

 

 へっ回復魔法を覚えた私に死角はない。芋スナして遠距離で死ぬでやって、前衛の回復も出来るとか人権確定っスわ。私に不可能はない!勝った!我々の勝利だ!

 

「むぅ〜〜!こうなったらーぁ…私にも手段があるよー!」

「へっ私の天狗鼻を折れるもんなら折ってみせるっスね!ま、出来ないでしょうけど!」

「ドラゴンお爺ちゃん、カッシーを一回休みにして?」

「んお?…まー良いぞ。今は戦力に余裕があるからのう。病み上がりの休みも必要じゃて」

「ふぁ!?」

 

 常に肌身離さず持っていた変身道具があっさりと回収され、ドラゴン爺の身体に収納される。

 慌てて身包みはがそうとするが…ドラゴンの身体に隠し場所がある筈なく…変身が出来なくなった事実がじんわりと私を襲い始めた。

 

「何するんスかー!?ヒノとフタバが襲われたの知ってるっスよねぇー!」

「うん!なので今回はーヒノちゃんとフタバちゃん、二人に二人の護衛を任せますー」

「二人に二人…待つっスよ。もう一人回収された奴がいるっスか?」

「ロボちゃんでーす!変身道具を取ったら戻れるかなーってやったらー…出来ませんでしたー…」

「ロボかわいそ…そのロボ、どこにいるっスか?」

「あそこー」

 

 ひつじさんが指差した方を見ると、リビングの大きなテーブルの下で体育座りで横たわっていた。

 なにやらぶつぶつと口を動かして居るので、近づいて様子を確認してみる。

 

「…おーい」

「当機の存在理由とはなんでしょうか。警備も警官もクビとなり、魔法少女も出来ない。当機に存在理由はあるのでしょうか。愛玩生物としてすごしてはなりません。当機は誰かを守るべく開発された汎用人型ロボであり…」

「…どんまいっス。私も取られたんで、お仲間っスね」

「……協力者、抱きつかせてください」

「ほいほい、泣きたいなら幾らでも貸してやるっスよー」

 

 お風呂がまだなロボでも、構わずぎゅっとする。かわいそうに、存在意義として頼ってたものを無くして不安定になってるじゃないか。

 ロボはこう見えてすごく繊細で傷付きやすい生き物だ。強引な手は使わず、そっと寄り添う感じでないと…心を持ったロボにしてはすごく不安定だが、多分過去に何かあったのだろう。

 それに関しては本人の口から言いたい時に聞けばいい。今は、信用できて頼れる人がいるのだと教えてあげないといけないのに…困った人達である。

 

「しんよーされてますねー?」

「伊達に姉やってないっスよ。小さな子の扱いなら一家言あるっス」

「流石ですねー。この調子だとーこのチームのリーダーにも成りそうですー」

「…リーダーっスか?」

「流石に人が多く成りましたからー…こういう時ーまとめる人が必要なんですよねー。じゃないと分解しちゃうんですー」

「他の魔法少女のことっスか?」

「はいー。といってもチャンネル合併とかー、箱売りでしたけどー…でもーガチバトルでもー、必要ですよねー?」

「ま、そっスね。それでリーダーを選ぶとなると…」

 

 一人ずつ特徴を挙げていく。

 ロボ。電撃拘束タイプ。幼い面があり不安。どちらかというと従う側。

 ひつじさん。魔法少女の知識が豊富でバフを使う後方支援型だが、財団相手には素人。

 ヒノ。灼熱格闘のゴリゴリの前衛、財団への知識と経験あり。私に入れ込み過ぎる側面有り。

 フタバ。鍋パで聞いた限りだと氷の万能型。ヒノ同様の利点と欠点有り。公平性に欠ける。

 私(カッシー)。お調子者とは私のこと。なんか人間関係の中心に来ちゃった。戦闘で意識を切り替えるのが得意。

 

「あー…ヒノ達か私になるっスか」

「はいー、なので次次回までにーよろしくお願いしますねー」

「うーん…それまでにみんなを纏め上げる…今のままでもまとまってないっスか?」

「それー、本気で言ってますかー?」

「冗談っスよ。みんな腹に何か抱えてるのは察しついたっス」

「勿論私もー隠し事はありますー…このままだといざという時、お互い信用し切れませんよー?」

「現に今、私が信用されずに一回休みになったっスね」

「ヒノちゃん達が言うにはー三人参加出来てれば先ず確実だそーですよー」

 

 このチームは流れで魔法少女になり、そして財団へ対抗することになった人の集まりだ。

 幸いにも戦う覚悟のない人は居ないが…私もそうだが、イマイチお互いを信用し切れてない。

 確かに、表面上は問題ない。だが、私やロボを一回休みにしたり、ヒノ達がメンタルの不安で休んだりしたら大変だ。地味にひつじさんも何処か一歩引いてるしそれも気掛かりだ。

 

 原因は主格となる人が居ないこと。自ら引っ張って上澄みに持ち上げるような、そういう人が居ない。

 潤滑油の私が居ても、これでは精々が中間…いや、中堅のチームにしかなれないだろう。

 それでも、やるしかないのだが…。

 

「…もしかしてコレ、今後はメンタルを如何に整えるかの戦いに成りそうっスか?」

「魔法少女は心が不安定な者が成るのが望ましい。故に皆が何処か善い面と悪き面がある。確かにチームとして動かせば魔法の相乗効果で強力じゃが、その分心の乱れは良くも悪くも大きくなるじゃろうのう」

「ドラゴン爺!あ、もう寝たっスね…つまり、コレからはお互いの影響には気を付けないといけないってことっスか」

 

 殆どを睡眠に費やさないとならないのに、よくもまぁここまで正確に解説してくれるものだ。めっちゃ助かる。

 解説のおかげで確かな事実が生えた。ここに居る人は全員強力な魔法を持った少女達な分、お互いに悪い方にも良い方にも極端にブレ易くなるということだ。

 

「ひつじさん、手伝いとかは…」

「私はー配信が忙しいのでー…ただー…ヒノちゃん達は今日まで、カッシーに元気な顔を見せるのを気力に頑張ってましたー。それが解けたとなるとー…」

「つまり、明日から人間関係のあれこれが始まるっスね…ロボは…」

「すぅ…すぅ…」

「ダメっスね。うん、メンタルカウンセリング受ける側っスわ」

 

 消去法で私が頑張るべきか…これ、メチャクチャ大変なことなのでは?

 今は夏休みだし、あぶちーのマネージャーしながらやれるっスけど…それ以外、チームの全員のメンタルに気を遣う必要が出て来た。なんかときメモな恋愛ゲーム始まったな。予言も出来るぞ、絶対踏み込む瞬間と爆弾解消が大変なことになるわ。

 

「兎に角、明日から日常と共にリーダーとして頑張るっスかねー?んじゃひつじさん、相談ありゃっした!」

「いーえー、配信で忙しい分ー相談でがんばるよー!」

「なんかあったら言ってくださいっス!じゃあ私は寝るんで!」

「おやすみー」

「良い夢見るっスよーおやすみっスー」

 

 寝ぼけたロボを父に預けてから自室に戻り、ベッドに横たわり…ひつじさんも中に入って来た。

 

「あれ?なんでここに?」

「言ったよー?今日はー私とカッシーがベッドを使うよーって」

「…ふ、さっきの別れの言葉は忘れて欲しいっス」

「いー夢みるっすよー…」

「うがあっ!小声で耳元はゾワリってするんでやめて欲しいっス!」

「かーわいーねー?」

「やめやめろ、私はひつじさんのおもちゃのチャチャチャじゃないっス!踊らされるのは勘弁っスよ!」

「はーい、ぎゅー…。我が抱擁でー悶えるがーいー」

「……筋肉強くて出れねぇっス…あががっ!」

 

 その後、他の人が来るまでオモチャのチャチャチャとばかりに弄られたのは二人だけの秘密とした。私は耳元に…弱い!特にささやかれるとダメになるのだと思い知らされた。

 その後、ここは私の自室ということで今後のベッドの相方はローテでされ、フタバ、ヒノ、ロボ、ひつじさんをぐるぐる回るようだ。…私はいつ、ハーレムを作ったんだ?ロボとか今まで通り妹の方を使えば…え?こっちの方が落ち着くから偶に使いたい?なら…仕方ないか…。

 

 魔法少女チームを結成したはいいが…幸先が思いやられるばかりである。

 

 






◼️次回予告
 いやーカッシーは大変そーですねー?
 そう言うひつじさんモ、カッシーだけ呼び捨てで呼ぶという、油断出来ないことしてますよネ?
 あー…バレちゃったかー。ここだけの話ー…私あの啖呵を聞いて以来ー…初めての推しなんですよー。きゃー!言っちゃったー!
 …やっぱり油断できませんでしたネ。この人は結構人を誘導する癖がありまス。
 次回!「一日千秋!夏の風物詩に文学乙女!」
 少し早いですガ…デートに連れ出しますカ。

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