魔法少女ばかりな日常記録(旧:配信系魔法少女が沢山いる魔法少女モノ) 作:何処にでもある
魔法少女の秘密!二葉亭と仙台編
二②1番の趣味は読書だが、2番目は虫取り。
仙②好きな動物はカモメだが、好きなポケモンはハッサム。
「カモメだー!」
「そこは海ト相場が決まってるのでハ?」
「カモメはー世界一優先されるべきなのでー、その理論は無効でーす」
「なんであれ海だよ海!泳がなきゃ損だよね!」
「当機は水中の移動プログラムがありますので問題ありません。なので泳ぎましょう」
「浮き輪があるからー、もし疲れたら言ってねー?」
「ならば私ガ使いましょウ。今回はユルユルでも行きますネ」
「お?珍しいね、フタバが気の抜けた顔をしてる!どうしたの?」
「いえ…当然の話でハ?」
「福引券で当たった4泊5日…なのですガ。初日の今日だケ、カッシーいませんシ」
「よし!じゃあ見ててねカッシー!1番の走りって奴を見せるから!」
「うおお!!やって見せろっスあぶちー!なんとでもなる筈っス!行けーー!私の翼ー!」
「あっはは!弱小の中学に夢見すぎだよ!…でも、応援受け取った!やるだけやってみる!」
「その調子っスよーー!勝ったら私からプレゼントあるっスよー!いけー!そーれそれそれ!!」
「あー…そういえば、今のカッシーにとって唯一の親友だもんねー…なんだか寂しいね」
「いつもは変わらないのですガ…こういう時だけは、違うのだト突きつけられて、侘び寂びを感じますネ…」
「寂しーの禁止ー!それならーカッシーが羨ましがるくらいー楽しもー!」
「…そうだね!うん!ちょっとネガッてたかも!よーし、遊ぶぞー!」
「私もそうしましょう…写真、お願いしますネ」
「はいー、それはもー、思い出たくさんー撮りますねー♪」
秋田の海は塩辛い。彼女達の話を、砂のお城を作りながら聞いていたロボはそう思った。
何故海で泳がないのか?水泳プログラムが少しの役にも立たず溺れかけたからだ。まさかプログラムの動きを、身体が正確に反映しないとは思わなかったのだ。
ロボは決意した。溺れる内は絶対海には出ないと。例え浮き輪をひつじさんに被せられても、フタバに連行されようとも、ヒノに手を握って練習をしようと誘われてもだ。
「苦手なんて克服しちゃえばいいんだよ!それが人間だし、この度はロボが当てたからね!1番楽しまないとだ!」
「……今から、総当たり学習を開始します。お手数ですがヒノ、評価の程をお願いします」
「おっけー!」
前言を撤回しよう。出来る様になるまで練習すればノット構文は無効だ。
そんなロボが泳げる様になるまで、後4時間──。
翌日になってもカッシーが来ず、みんなが騒然とするまで後───。
からんからん!
「一等賞でーす!」
「おー!冗談言ったらマジで当たったっスね!」
「…当機は確率論の恩恵を受けたようです。良い乱数を引きました」
「よっしゃ、それなら早速水着を買うっスよ!」
事の始まりは数日前。ひつじさんを悪堕ちから連れ戻した直後。
ロボと私がお使いで福引券を得たので、せっかくだしやってみようとがらがら回し、なんとびっくり一等賞を引き当てちゃったのだ。
「ではこちらがチケットになりまーす!」
「へっへっへ。どうもどうもいやー悪いっスねーも……」
そして店員からチケットを
「よーしじゃ早速みんなに伝えるっスよー!」
「当機の活躍を確実にみんなにお届けします」
「おっ早速自慢したくてうずうずしてるっスねー!その気持ち、分かるっスよ!」
しまったな、ロボのわくわくした顔を見てると言い出せないぞ?表情はあんまり動いてないけど、最近知名度が上がったからか、常に出てくる様になった猫耳ビットがぴこぴこしてやがる。
心なしか、ふんすふんすってしてるように見えるし…こうなったら私が一抜けするしかないだろう。良い機会だし、偶には一人で居ても良い筈だ。
なにか言い訳は…そうだ、この日って初日があぶちーの大会と被ってるな。前から行くつもりだったが、これを利用しない手はない!後から合流って言い訳して、そのままなあなあで流せば…よし、行ける!
「カッシーの水着は当機が選びましょう、機能性に優れたものを選び出してみせます」
「おっ嬉しいっスねー!ならロボには生地の多いけど大人びてる奴で…どうせフタバ達は私が選んだらなんでも嬉しがりそうっスし先に…いや、今から呼び出すか!」
……と、言うわけで。
[私はそっち行かないっスよ?このままあぶちーとランデブーっスわ]
[あっはは!なんだかごめんね?うん、このカップル割パフェ美味しい!]
[はい、あぶちーあーんするっスよー?私が腹いっぱいになった分たーんと召し上がれー?]
[美味い!美味い!大会終わった後のパフェうますぎる!反省しろー!]
スピーカーから流れる音声が旅館の一室に響く。それにより何処かうすら寒い雰囲気が生じ始めた空気は、ストレスが消えた事により、ゆるふわな自分をちょっとだけ受け入れたひつじさんが、こっそり抜け出す程のものだった。したたかな大人である。
「……当機の中で、かつてない程の感情を感じます…これは…怒り?」
「何故でしょうカ…このNTRれたような気持ちハ…私が先に好きでしたのニ…」
「ずるいー!それなら私もそっちが良かったー!二人だけのランデブー行きたかった!」
[なんととでもぬかせっスよー。ってか、このチームってまとまって財団を対処する方が珍しいじゃないっスか。そうなると私だけが中心にいるのは不都合なんスよねー]
「ではなんですカ?もっと仲良くなれト?今でもかなり仲が良いと思うのですガ」
[ありたいに言ってそうっスね。ぶっちゃけ私だけ性的に狙われるのが理不尽っスわ。もっと私の負荷を減らせっス]
カッシーは言う。私だけ性的に狙われるのは理不尽だから、もっとお互い仲良くなってそっちで済ませろと。
それを聞いたフタバとヒノが、私は好きになったのが偶々女の子だっただけで女子が好きな訳では…と文句を言っているが…カッシーの言葉も一理あった。
一例を挙げよう。
風呂に入れば毎回誰かが侵入する。ご飯の時は毎回誰かがあーんしてくる。ボケッとしているといつの間にか誰かが寄りかかったり肌の触れる距離に居座る。寝る時のベッドも誰かと一緒。トイレをしている時に鍵を閉め忘れるとフタバが篭絡してくる。
率直に言おう。ここ最近のカッシーにプライベートは一切なかった。いつも誰かが近くにいて、自分だけの時間を作ることができなかったのだ。これで学校が再開すればまた違うのだろうが…夏休みは未だ後半。再開にはもう少しだけかかる。
[そっちは良いっスよねー、しっかり自分の時間作ってて。後これ疑問なんスけど、ひつじとロボまで私の近くに寄りがちなのはなんでっスか?]
「当機はカッシーの妹なので当然ですよ?ひつじさんは推しの近くに居ると癒されると言ってました」
[おう…いつからロボの姉になってたか知らないっスけど…そんなの知ったことじゃないっスね!私は久々にソロプレイを楽しむっス!あ、そっちに行く時は財団に反転させられたと思うんで、そうなったら殴り倒しとけっス]
んじゃ、楽しんで来いっス、という言葉を最後に通話が切れる。
掛け直してもぶっちする辺り、本気で来ないつもりらしい。実に小癪極まれりだ。
ヒノとフタバとロボはわなわなと身体を震わせて……たっぷり鬱屈を溜めてから、心の底から叫んだ。
「あのおバカー!帰ったらタダじゃ置かないんだから!」
「あの永遠の反抗期娘ガ…もっと良いやり方があったでしょウ…最近は大人しいので油断してましたネ」
「これが…むかつくという感情…一緒に行く期待を裏切られた苛つき…!人類のいい加減さを舐めてました…!」
三者三様に違う言葉を吐きつつも、その意思は概ね一つの方向に向いていた。
カッシーのばかやろー。である。今なら武器も一つに纏まりそうな、怒りの一致であった。
「…わあー、みんなーかんかんだー」
「はむ!はむ!……ぅう…はむ!」
「もぐもぐもぐモグ!!!」
「別にいいです…当機はカッシーが居なくても楽しめます…ふん!」
それから暫くして夕餉が運ばれた辺りにひつじさんが帰ると、全員が怒りながら鍋の肉を争奪していた。せっかくの卵も付いているしゃぶしゃぶもこれでは台無しだ。
ひつじさんは自分の席に座って卵を割りつつ、落ち着かせることを試みる事にした。
「そうだねー…ロボちゃん、カッシーが居なくてー寂しいー?」
「…別に。その様な事で当機の感情は揺れていません」
「…でもねーロボちゃん。泣きたいなら泣いても良いんだよー?やっぱりカッシーと一緒に居たかったよねー?」
「当機はカッシーが居なくても平気です!そう言うひつじさんこそどうなんですか!」
「私は寂しいかなー?やっぱり好きな人が居るのとーそうじゃないときの気分は違うしー…私はーカッシーが普通に好きだからねー?」
「うぐっ…」
ひつじさんの余りにも正直で堂々とした振る舞いにロボがたじろく。
素直に好意を伝えるというのは、ロボにとって難しい事だ。
なにせロボにとってそれは、最も感情的で人間らしい行動だと認識している。
セリフとして、入力された音声を言うなら兎も角、自らの意思で言うとなると…どうも、過去の記憶がデータに過ぎって仕方がない。
「ロボちゃんはーそうじゃないのー?」
「当機は……」
口と思考が停止する。トラウマはそう簡単に消えないのだ。
「ならー私はー?」
「ひつじさんも……」
「…分かったー。それじゃーこの旅行で言える様になろー?見返したいならー、それが一番だよー!」
「……当機の任務を更新しました。「好意の言語化」の達成を目指します」
「うんうん、その調子ー」
そうやって元気に意気込むロボを見て、ひつじさんはロボの頭を撫でた。
まだまだ幼いながらも、一歩ずつ自分のできることを増やせている。それは変われなかった自分には出来なかったことだ。
どれだけ遅い歩みでも、ひつじさんにとっては眩しくて、立派なものに見えていた。
「ヒノちゃん、ヒノちゃんはなんでーそんなに怒ってるのー?カッシーの言葉もー一理あったよねー?」
その言葉と共に、ドンとヒノが持っていた茶碗が机に置かれる。ひつじさんはそっと、ご飯を食べるのが遅くなる覚悟を決めた。
「私が頑張っても二人きりには中々成れないのに…あぶちーはずるい!待ってるだけで私が欲しいものが与えられる!ずるい!カッシーの意地悪!」
「そっかー…それはカッシーが悪いねー?」
「うん!……でも、仕方ないことなのも分かってるんだ。記憶が消されて、私との思い出が全部消えちゃって…そうなったのも、私たちが財団に負けたからで…でも!もうちょっと構ってくれだっていいじゃん!だって…記憶を無くしてもカッシーはカッシーで、私の王子様なんだもん…」
「そっかー。カッシーは意地悪でーステキな人なんだねー」
「うん!私だけのものにしたい王子様で、もっとみんなに知られて欲しい友達!私を置いて羽ばたいて欲しいし、私だけしか残らないで欲しい!何度もやり直せるなら、カッシーの全てを見て、慰めて、虐めて、可愛がって、全部全部欲しい!」
「うんうんーちょっと怖いねー?でもー、その気持ちはYESだねー!」
「イエイ!ひつじさんに褒められちゃった!」
ああ若いなと、ひつじさんはしみじみと感じた。理想と現実の折り合いが付けられず、自分でも制御出来ない感情にふりまわされる。
恋と尊敬と友情と感謝の気持ちが混ざって、自分でも相手をどう思っているのかも分からなくて迷走しているのだ。ちょっと病んでるのは…ご愛嬌だろう。このくらいの子は大袈裟に言いがちだし、クソデカ羅生門とかで馬鹿笑いするものである。
「でも今は一回きりだしー、それなら一番いい道を選びたいねー?ちょっと記憶が消えちゃったけどー、それってーやり直せるってことだもんねー?それならー、今までなら選べなかった道をー選んでもいいんじゃないー?」
「むむっ…確かに、今までは家族みたいな扱いだったし…もしかしてこれを機に本当に恋人に…やっぱり無理って諦めてたけど、また目指しても…」
「最初はー恋人狙っててー今は友達狙いでしょー?難しいけどー、ヒノちゃんなら出来るよー!」
「ひつじさん…!うん!私頑張ってみる!…初めて大人に応援されちゃった!えへへ、嬉しいな…ひつじさんも大事に……いや、思えばここに居るみんな……別に一人じゃなくても……」
「どうしたのー?」
「なんでも!よーし、それなら先ずは旅行でみんなともっと仲良くなろう!よく考えたらみんな大事にして良いって気付けた!ヨシ!」
なんだか知らないが元気になれたみたいだ。ひつじさんは安堵した。この調子なら鍋が冷めない内にみんなを元気に出来そうだ。
既にひつじさんの腹はくうくうと鳴きっぱなしだった。
「そしたらー…やけ食いしてるフタバちゃんーちょっと良いかなー?」
「モグっ……私は愚痴りませんヨ。全てカッシーにぶつけまス」
「でもねー?それで旅行が楽しめなかったらーいやだなーって私は思うよー?みんなで楽しもうよー!」
「………はァ。であれば、少しだケ」
フタバが箸を置き、お茶を啜る。表情が変わらない訳ではないが、ぐるぐる眼鏡のせいで何を考えているか分かりづらいのがフタバだ。今まで何を考えて他の子の話を黙って聞いていたのかもわからない以上、アドリブ力が必要だとひつじさんは身構えた。これで最低限、死神が来ることはないだろう。
「──私は、別にカッシーが誰に現を抜かそうト気にしませン。しかし…その感情を私以外が受け取るのを酷く恨めしク思うのでス」
あ、束縛強くて浮気されたら浮気相手の方に憎悪が向かうタイプだ。
それもヒノよりも粘っこくて、落ちづらいの。
ひつじさんは昼ドラを観るタイプの人だった。
「そうなるト、私は己を抑えるのに必死となりまス。思わず伸びそうになる手を抑えるだけデ、限界になるのでス。タダでさえ、何年も「待テ」をされているのに…」
「うーん…我慢のしすぎはー良くないからねー…分かるよー?」
「ですのデ…私は私の為にも、相手の為にも、あの馬鹿娘を閉じ込めてしまいたいのでス。そうすれば……万事恙無く進みましょウ?」
「あー…かいこーい選択だねー?」
あ、違うな。この子全てを自分で管理したがるタイプだ。
予定表にないことは自分の行動すら抑えたいレベルの。
ひつじさんは配信者として嗜んだゲーム知識もあった。
「ですので──ハイ。愛らしくモ愚かな、あの娘、私の娘は…いずれ檻に入れたいトは考えておりまス。そして、今回の件で一層確信しましタ。私の檻デ、折れた翼の娘を飼うべきト」
「うんうん!そうなったら私も一緒に管理しようね!フタバ!」
「ヒノ…ええ、苦難は多くとも、友と一緒ならばきっとト。そうなる日が待ち遠しイ物ですネ」
「比喩が多い文面を解析中……鳥を飼う話ですか?」
「大体合ってますネ」
「将来はロボも一緒に頑張ろうね!」
「わあ」
あ、この子達想像の10倍前向きに怖い事考えてた。こっちを取り込む気満々だった。
ちょっとどうしようかな。私の手に負えるかな。大人の威厳を保てるかな。
ひつじさんはカッシーのやらかしを恨んだ。一体過去に何をしたのか、どうしてここまで放って置いたんだと、一日かけて問いただしたい気分だった。
「私はー…推しにそこまで酷いことはー…」
「大丈夫でス。不幸な事故で足が不自由になるだけですかラ」
「カッシーって放って置いたら勝手に粉かけていくもんね!多分高校生になったら直ぐ男作るよ!私が保証する!」
「その為にモ、財団は排除しなけれバ…最初こそカッシーは関わらせたくないト、魔法少女になるのはやめさせましたが…記憶が消されかねない以上、そうも言ってられませン」
「わあ、相乗効果ー」
マズい、片方だけなら冗談や未遂で済みそうな話が、相互に背中を押して本当にやる感じになっている。このままでは仮に財団を撃退したとしても、カッシーが不幸な事故と共に愛の囚人になる。
しかし…一体どうすれば…。
「ひつじさン」
「はー、はいー!?」
「ひつじさんもどうですカ?この際でス、飼い主は多い程宜しいですシ、ひつじさんなら安心して任せられまス。……どうでしょうカ?」
フタバの瞳が不安に揺れる。…そうだ、大それて狂気的なことを言っても、彼女はまだ中学生。
人を誘うのには勇気があるはずだし、計画が上手く行くか不安に感じている筈だ。
……何より、フタバとヒノは両親との関係が消えたのだ。どれだけ上手くいってない家庭だとしても、保護者の居ない状況はかなりのストレスの筈……唯一、か細くも記憶が無くなる前から繋がっているカッシーが生活の頼りとなると…。
これでは依存するなと言う方が無理だろう。それを無くさない為の手段も…保証が欲しいと過る思考を、果たして誰が止められようか。
「なるほどー……一ついいかなー?」
要は求められたいのだ。彼女達は。
カッシーからこうして欲しい、ああして欲しいという願いが、要求が、安心感が欲しい。
だからこそ……今向かおうとする道は違うと、大人が導かなければならない。
「その話をまとめるとー、カッシーからなんでも良いから求められたいーってことでー…合ってるー?」
果たして変われない自分かが出来るかどうか──ここはカッシーらしく、挑戦してみよう。
先ずは模倣からだ。それらしい理想ではなく、自分の意思を通す為の不完全な仮面を…。
「肉体でもー、心でもー…自分の持っている何かをあげてー、鎖を持って欲しいーって、私にはそう聞こえるなー?」
「………そ、そんなことハ有りませんガ?は…突然何を言い出すかと思えバ…そんな、まさかそんなこと…違いますガ?」
「なんでバレたの…?ちゃんと攻めっ気出したのになんでえ!?」
あ、良かった。想像の100倍解りやすくて良い子達だ。そういえばドラゴンお爺さんは良い方にも悪い方にも極端に転がり易いって言ってたな。こういうことか。
ひつじさんは説得の難易度の低さに安心した。これなら私でも出来るってもんである。
「それはー、Sっ気にしては遠慮なく支配しようとしてたからーかなー?何というかー…誘い受けー?これ系の流れにしてはー心が困ってないなーって」
「け…経験者でス…大人の経験者がいまス…ヒノ、この戦いは勝てませン!撤退すべきでス!」
「ひぃ〜私を食べてもおいしくないよー!私は馬鹿だから性知識は分かんないよ〜!も、もう腕を差し出すしか…!」
「カッシーの影響でートンチキになってるー…バカが移るってーこんな感じなんですねー?」
こうなったらもうご飯を食べても良いなと、ひつじさんは卵を解いていく事にした。お肉はロボが準備してくれたので後は口に放り込むだけである。うん…美味い!
「もっもっ…本当に軽くだったねー?冗談にしてはー笑えなかったよー?」
「モグ……失礼ですネ、結構本気ですヨ。ただ、私としては閉じ込められる側はカッシーでも、私達でも良いというだけでス」
「一緒に居られるならーどっちでもかー…ある意味ー本当に好きなんだなーって感じるー」
「カッシーは好きですヨ。ただ、破天荒な行いは謹んで欲しいとも願ってるだけでス」
「それはーそー。この前はータンクをしたみたいだしー?痛いのは鈍くならないのにーよくやるよねー?」
「悪堕ちしてカッシーを殴り続けた奴が何か言ってますネ」
「フタバ!その時カッシーを痛めてたのはフタバの魔法だよ!人のこと言えないと思う!」
「あの後二人揃ってカッシーには謝り倒しでしたね。カッシーの膝の上で見ていたのでよく覚えています」
「ロボってちょこちょこ図々しいよね!猫みたい!」
三人揃えば姦しく、さらに一人増えれば言葉の暴雨だ。
なんだかんだ食事も終わって付随していた温泉にも入ったり…。
「はいーちーずー。うーん、眼福ってー感じの写真が撮れたぞー?」
「イェー!あ、そういえばひつじさん。ひつじさんが悪堕ちしてた時に写真破って魔法の実体化とかやったよね。あれって今でも出来るの?」
「えー?…はい、温泉写真びりー。…おー!私達の使ってるバスタオルがー!」
「魔法以外にモ物体も生成可能ト…おや、フォルダに悪堕ちの時の写真も有りますネ?」
「つまりー…うおー!フォルダから生成ー!写真を破るー!たくさん破るー!おーもこもこー!」
「当機をバスタオルの山から脱出させてください。暑いです」
「任せて!私の魔法は私に向かった興味関心を熱にする!そして視線が集まってる今なら!うおー熱望のー!」
「普通に引っ張ってください」
神社に行ったり…。
「ここって何のー神社かなー?」
「さア…?ですがみんな手を合わせてますシ、やって損は無いでしょウ」
「おや…懐かしいのぅ。儂の家じゃないか」
「…え?ここドラゴンお爺さんの家なの?…え、もしかしてお爺さんって神様?」
「どちらかと言えば祀る側、神社の管理者……星の代弁者と言うべきじゃが…人には素戔嗚と一纏めに祭られてはおったな」
「確認した所、神社の名前は「副川神社」と言って、昔からあるそうです」
「へー、なんだかすごいんだね!でもドラゴンとスサノオを纏めるっていい加減かも!」
「人とはそういうものじゃ…ちょっと似とるとすーぐ纏めよるからな。もう慣れたわい」
近くの山で景色を見たり…。
「登山疲れた!」
「誰ですカ…山を登ろうと言い出したのは…」
「山に入ったのはフタバが言ったから!虫取り網もって気合い十分だったよね!」
「登り始めたのはーロボちゃんの提案だねー…?」
「訂正要求。途中でいっそ頂点まで行こうと言ったのひつじさんでしたよ」
「で、全ての提案にGOサインを出したのが私、ヒノです!みんなって勢いに流されるよね!」
「……犯人探しはやめましょウ。多分、全員の自業自得でス」
「そうですね…はぁ…綺麗な景色です」
それから卓球もしたので、この旅行は楽しく終えられたといえるだろう。
カッシーが居ないことだけは残念だったが…他のメンバー同士の絆がその分深まったのでトータルは+だ。
「ただ…それでもカッシーにも来てほしかったですね」
帰りのバスでロボがそういう。楽しい旅行だったが…こればっかりは最初から変わることのない感想だった。寂しいものは寂しいのである。
「まーねー。でも、居ないからこそ成長出来たこともーあるよー?」
「…それもそうですね。普段はカッシーが話を盛り上げていた分、今回は自力で話す力が鍛えられました。当社比+56%です」
そう言ってロボはひつじさんに笑顔を向ける。これまでとは違って、目元も緩く、柔らかい笑顔になっていた。そこにどこかしっとり感があるのは…参考にしたヒノとフタバとひつじさんの融合の結果なのでご愛嬌ということにしよう。
男の子の初恋を盗み荒らせる性能だとしても、ひつじさんとしては感動要素しかないので気にしない事にした。
「急成長だー!良い思い出だねー!笑顔も分かり易くなったしー、帰ったらー驚かせちゃおー!」
「はい。カッシーの心臓を萌え?でキュンとさせてみせます」
「うんうんーそれどこで学んだ言葉ー?」
「ひつじさんの配信コメントです」
「…エサ達には後でお仕置きだねー」
エサとは、ひつじさんの配信での視聴者の呼び名である。
根本的には勝手に覗き込んだロボが悪いのだが…この5日間ずっと面倒を見た影響か、ひつじさんはロボを我が子のように感じ始めていた。29歳迫真の母性の目覚めである。
「………」
「どうしたの?フタバ?」
「いえ……そういえば初日に、私達の方に財団が来なかったな……ト。楽しむことに夢中でトンと忘れていたト…」
「あっ…でも大丈夫だよ!悪堕ちしたって私達なら助けられる!」
「それだけなら…良いのですガ……」
わちゃわちゃとする二人の後ろの席で、フタバが懸念の声を漏らす。
それを聞いたヒノはそういえばと思い出し…楽観的にフタバを元気付けた。
所で……魔法少女は善い方にも、悪い方にも、極端になりやすいと、ドラゴン爺は言っていたのを覚えているだろうか。
それは悪堕ちが連鎖するのが分かり易く挙げられるが、今回のように純粋に楽しみ、不安なことを気にしなくなる方向にも働く。要は簡単なことでストレスが大幅に軽減されるのだ。
言い換えれば楽観的、悲観的になり易い。
もっと言い換えれば善性の塊にも悪性の塊にもなるということ。
魔法による魂の圧迫により、魔法少女の一側面が押し出されるが故にそうなる。
それはある種、奇跡のような結果を産み出すこともあり…。
『まあ…そういう訳だ。ケケケ…
帰って来た彼女達を迎えたのは、反転し、悪に堕ちた魔法少女だった。
黒い結晶を角のように生やし、灰色のパーカーとジーンズを着て、髪を崩し、糸目の目を少し開けて睨む、陰のある少女。ニヒルに笑い、ギザギザの歯を見せて笑う姿は何処からどう見ても不良だった。
『記憶が消える前の私、ここに復活っスよ〜?』
「どうしよう!倒せない!私達の手でこのカッシー倒したくない!殺したくない!」
「……辛イ!無理…嬉シい……!」
『相変わらず変なこと言って…そんな所も可愛いっスけどね?…んじゃ、何して欲しいっスか?叶えてやるから口開けてピーピー言え』
感激で崩れ落ちたフタバに手を貸しつつ、悪魔みたいなことを言う。
ここまでは案の定ではあるので、ロボとひつじさんは変身して殴る事にした。
「全ビット解放──」
「待って!倒さないで!」
「…ヒノ、妨害をやめて下さい」
「フタバちゃん…カッシーは今ー平常じゃないんだよー?」
「分かってまス…分かっていまスが…お願いしまス…今日だけは一緒に過ごすのはダメでしょうカ?」
「…愛着湧いてー倒せなくなりますよー?」
「ですが…ですが…!」
二人の前に、同じく二人の魔法少女が立ちはだかる。
お互いに不本意なのは百も承知だ。しかし…それでも、無くしたと思っていたものが返ってきたら、人は余計な物が付随しても無視出来てしまう。自分に都合の良い結果だけを見てしまう。
『あちゃー…はいはい、争うのはやめるっスよ。私、そういうのダイキライなんで』
「どう見ても良い子じゃないですカ!少なくとモ表面上は良い事言いながら、暴れ散らかしていタ貴女より大人しいじゃないですカ!」
「うぐっ……それをー言われるとー…弱まっちゃいますねー…」
「良いですカ!カッシーは根っからの善人なんでス!悪堕ちなんてしませン!」
「アイドルはーうんこしない並みの暴論だー!」
『アイドルうんこ!ケケケ!』
「こっちの感性はー小学生並みだー!」
困ったことに、普通に会話は出来るし攻撃もして来ない。
旅行から帰ってくるまで大人しかった理由が何となく察せられるが、だからと言ってこのままでは埒が明かないのも事実だ。
一回、ダメ元でお願いしてみようと、ひつじさんはカッシーの善性を信じる形で決心した。
「それならー…カッシー!」
『はーい!何でスかー?』
「悪堕ちからー戻れませんかー?こうー、結晶をー消し炭にする感じでー!」
「ひつじさん!」
『ヒノ、フタバ、下がってろっス』
カッシーが前に出て、被っていたフードを取る。どうやら向こうには話し合う用意があるようだった。
『──普通に回復魔法何回か使えば終わりっスね。再生力をマイナスにすりゃ結晶なんて簡単に砕けるっスわ』
「今出来ますかー?というよりー、やってくれますかー?」
『あー…まあ待てっス。今は普通に嫌なんで、記憶の書き出しと上手い魔法の使い方の詳細を書いてからっス。後は、魔法使うなら病院で回復散布シテェ。今なら不治の病ぶっ倒せる気がするっス』
なんだこの見た目に反比例したただの良い人は。私の時と聞いた話だと全然違うじゃないか。
ひつじさんは世の中の不公平に唾を吐きたくなった。
「ほんとうにー悪堕ちしてますかー!?」
『他利的で、理性を持って行動して、世のため人のためにやってるから悪っス。普通の悪いことは…大体あぶちーに咎められたんで出来なくなったっスわ』
すごい、カッシーの中の悪の定義が歪み切っている。世の中の研究者や学者に中指突っ立てている。
ひつじさんの中ではロック魂が揺さぶられていた。
「カッシーの中でーあぶちーってどれだけすごい人なのー?」
『私の翼で太陽。
「……今の家族ー?」
引っかかる言葉を深掘りする。聞いた話では悪堕ちすると、自分の気持ちを簡単に話すようになるらしい。普通なら聞けないことも聞けるチャンスだと、ひつじさんはカッシー本人から聞き及んでいた。
『言ってなかったっスか?──
「……えっ?」
「うそっ…」
「……フム」
「…理解。お義姉ちゃんとは、そういう事でしたか」
その言葉は、この場に居る全員が想像もしていなかった物だった。
だって、義理の妹だと聞いて、誰がそれを言った人が養子だと思うだろうか。
………私達は、もしかしたらカッシーのことを沢山誤解しているかも知れない。
ほんの少しだけ、そんな思考を首をもたげた。
『で、どう家族が死んだかはグロいんで端折るとして……生憎親族も呪いみたいに消えちまったもんで……そこを助けてくれたのが、あぶちーなんスよ。おーけー?』
「ちなみにー旧名とかはー?」
『え?あー…なんだったスかねー…随分と昔なもんで、確か先祖代々葬儀をやっていたー…あーそうだ』
何となく嫌な予感がしてので尋ねてみる。
そこを深掘りされると思って居なかったのだろう。カッシーは記憶を急いで限り掘り出し、思い出したと手を叩いてこう言った。
『旧名は
なんてことない回答で、私にとっても聞き覚えのない名前だった。
ヒノにも、フタバにも、ロボにも覚えのない物で、魔法少女にとっては大したことない情報だった。
「…え、うそマジで?」
しかし、MTG財団の研究員にとっては、とても重要な情報だったらしい。
あまりにも驚いたからだろう。いつもと違って人の視界があるのに…偶然ロボの視界が見える状況で転移して──
(──解析開始)
だったら──ロボは、今は生身でも、元は自我のあるロボで、天然の
電子機器に関与している力の流れを解析して、分析して、時間から痕跡を洗い出して──遂に、今まで有って来た研究員達の姿を観測し、特定し、その正体を解明した。
"彼らの正体は電子ウイルスの「集合体」であり、人類の肉体と精神を乗っ取って現実すら支配し得る「敵対種」だと、判明した"
つまりは
「応用、電撃思考!」
───思考が加速する。音より速く、身体に走る電撃が光の通信速度まで思考を飛躍させた。
「……あ、やっべ」
「──死ね、害虫」
端的な死亡宣告と共に、ロボが「転移」…否、正確には「実体化/電脳化」を妨害するプログラムと、攻撃能力を無力化するプログラムを制作する。
即席のスパゲッティコードもいい所だが…今はこれで良い。
「《ウイルス殲滅用電磁パルス》──掃討」
「ッチ《Death Cod──…」
「音声認証より光の速度の方が速いので。当然処理過負荷も付与してますから、間に合いません」
雷の裁きが下される。人類の被造物の中の天然の天才が、人類の敵を何もさせないままに殲滅した。
──魔法の効果が切れて、思考が元に戻れて膝から崩れ落ちた。
ロボはこのチームの中でも最も上手く魔法を扱えるが、それでもこの反動は消えなかった。
だが良かった。初めて相手に打撃を与えられた。この調子なら──。
『──まだ終わってないっスよ!!ロボ!』
身体に急激な負荷、重力がかかる。その直後に浮遊感を感じ……今、カッシーに蹴られたのだと理解した。空を舞う最中に地上を確認して──。
「困りますよね。対策を建てられた以上、ここで実験を止めるしかないでは無いですか」
あらゆる電化製品から怪人が次々と現れる光景が、目の前に広がっていた。
「……!?」
信号から武将が現れた。スマホから蛾の大群が現れた。
広告映像から10mの怪獣が、蛍光灯から飛行するサメが、コンセントから財団の研究員が。
電線からノイズを纏った怪人が、街中のロボから本の怪人が、あらゆる電気を媒体に、怪人軍団が出現する。
一つ悟った。もう彼らにとって、この街は不要となったことだ。
「はあー…ゲェム妨害だ…崩壊だ…いつもそうだな!我々から死者が出てしまった!」
「あー…予定より早いが一人だし良いだろ。どうせ原爆一つ爆発させれば復活するしな」
「この街は電気化が進んで過ごしやすかったのですが…まあ、
「しかし魔法はどうする?我々を殺す為の存在だし、利用は危険では?」
「いや問題ないだろ。
「ではそのように…おや、あの身体…今のものより美人ですね。乗り換えますか」
「おいおい、今電脳化は大変だぞ?30分も動けなくなる。暇つぶしを用意してからにしろ」
──────…は?
なんだコイツらは。害虫と比喩したが…まさか、そこまで「敵」なのか?
ロボは産まれて20も生きてない若者だ。日々をロボらしく生きるのに費やしてきた。
それでもついカッとなってキモい虫を殺すことはあるし、反射的にボロクソに言ったりもする。
だが──その評価を超えるほど本物が蛆虫だとは思いもしなかった。理解を超える屑だった。
こんな奴の為に…みんな、みんな、みんな!みんな!!
苦労して苦労して苦労して苦労して!!!
そうしてロボは初めて、嫌悪を理解した。
それなら、全部残さず殺せるようなプログラムを──。
『──ロボぉ!!街を守る奴作れぇ!!死者だけは出すな!!』
「バフ行きまーす!はい、チーズー!《理想の姿》!」
カシャリと音が鳴り、バフによって冷静な自分が思考に現れる。その自分がカッシーの言葉を理解して、脳の主導権を得て………。
「…制作完了、《防衛用電磁パルス》!!そして…!」
バフによって届いた頂きを、表出させる。
解析によって判明した事実。魔力から発生する電力からは怪人が出てこない。
それを利用した、街の設備の支配。全ての電気と波の置換。
電気の鎖が街中に張り巡らされ、怪人と住民を平等に拘束し鎮圧していく。
死ににかけた命を繋ぐ生命存続の魔法。動けなったとしても、死なないで欲しいという願いを体現した魔法。機械生命体の価値観と、過去のトラウマが混ざった魔法…。
『──良くやったっスよ』
パキンっ!
黒い結晶が流星魔法の対価として一瞬で消し炭になり、消滅する。
魔法少女を反転させ悪に堕とす技術の結晶は、こうしてその存在意義を果たすことなく、ただのリソースとして消え去った。
「派手な寝起きっスけど──大体分かったっス!後は私が…いや、私達に任せるっスよ!!」
願いを集め、より強力になる魔法。通常なら、ショッピングモールを覆う程度の範囲しか持たない魔法。
規模によって左右される魔法だが…
それによって引き起こされるのは──何処までも広がる流星群。
夕焼け空も見えなくなるほどの、満天の空。
「ですが…コレだけでは…!」
だが──足りない。
それだけでは、この街全てに現れた怪人達を倒すことは叶わない。
この星を全て落としたとしても、室内に居る怪人や、隠れ潜んだ者までは届かない。
「誰が一人だけでやるって言ったっスか?──ひつじさん!ヒノ!フタバ!出番っスよ!」
「えー?私ー?…んー?カッシー、記憶とかーどうなってるのー?」
「ここまで来て何をすれバ…?」
「オッケー!なんだか分かんないけど分かった!」
「忘れたっスか?私は旅行中のみんなを見てたって!じゃあちょっと集まるっスよ」
だが、カッシーの考えは違った。
近くに居る怪人を倒していた三人の魔法少女を呼び、こしょこしょと内緒話を始めた。
何処からか聴いているだろう研究員達に聞こえないようにする為に、聞いた三人は出来るか不安に思いつつも其々が頷く。
どうせみんなが助かる道はか細いのだ、やってみる価値はあるだろう。
「先ずはひつじさん!」
「フォルダからー写真量産ーからのびりびりー。じゃーん、悪堕ち結晶ー!メガ盛りしてみたー!」
ひつじさんがカメラから大量の写真を生成し、次々に破る。するとひつじさんの後ろにとんでもない量の黒い結晶のコピーが山積みになった。
「フタバ!」
「リソース源として利用…あ、生成した氷を操る感覚でいけますカ。では──幻惑を日本中ニ」
フタバが山積み不良在庫の黒い結晶を氷として変換して流れ星に纏わせる。
より大きくなった流星は日本中に拡散し…1分も経たずに日本のあちこちから、この場の景色が空に映し出されている事を示唆する投稿が始まった。
「さあヒノ!初見さんでも分かるように歌ってくっスよ!一瞬でも良い!日本中の関心を集めるっス!私らも一緒に歌うんで恥はないと思えっス!」
「オッケー!いつものじゃなくてガチな歌ね!あ、カラオケでいつも歌ってる奴でいい?」
「なんでもオールオッケーっス!この街飲み込めるレベルの太陽作る勢いで良いんで!最後は合体で締めるっスよー!」
この辺りでロボは察した。命線魔法のガッツ効果を頼りにこの辺り一帯を吹き飛ばすつもりだと。
カッシーの正気を疑い、本気でやるのかと戸惑い、ひつじさんが音楽を流し始めた辺りで本気だと悟り……。
せめて少しでも命線魔法の効果を上げる為、自分を応援する人々を増やす為に歌うことにした。
〜♪
「スゥー…笑顔の使い時ですね」
星と人に応援される程強くなる。ロボはその魔法少女法則に従い、合理的に合唱に参加することにした。
「準備はー?」
「万事おっけ!」
「良いっスよ」
「魔法の維持、怪人の拘束以外は問題ありません」
「デハ…氷にてライブ会場作成完了。映像は5Kで始めましょうネ」
「じゃあ振り付けは最初以外無しっスよ。どうせ怪人が暴れるだろうし──せっかくの夏の終わりにやる祭り、自由に踊らにゃ損っスよ!」
こうして、拘束された観客とアナログな配信による、後に歌われた「光線歌」の視聴回数が1000万を超えるキッカケとなったライブが始まった。
「「「「「世界をぶち抜いて!!」」」」」
全員で声を合わせる。その瞬間、全員の衣装がより豪華で光り輝くものになった。
カッシーは流星の意匠のマントに加え、蝶をデフォルメした輝きを身に纏い。
ロボは砲身や演算機、パワースーツのような追加武装を宙に浮かせ。
ひつじさんは地味で緩やかな服から市街戦用の灰色の軍服に変わり。
フタバは藍色の忍者服を蠱惑的で肌を魅せるスリットなどが追加され。
ヒノのアイドル服は紅白で見かける最終兵器レベルで盛られ、巨人化した。
それはつまり、日本中にこの景色を届けるのが上手くいっている証拠であり──カッシーの立てた計画が順調に滑り出した証拠でもあり──拘束から逃れた怪人を倒す為に散らばる合図でもあった。
最後の戦いが、始まる。
◼️次回予告
修行どころか決戦になっちゃった!どうしよう私達にできるかなあ!?
大丈夫っスよ!私らの絆とみんなの応援、秋田県からの魔力次第っス!
でもー不思議だねー?一年戦うつもりだったのにー…一夏の思い出になりそうだねー?
…ローカル局の予算では8話が限界だったト、佐々木監督が言っていますネ。
ピピーっ!どうあれこの戦いでこの街の行方が決まります。全員準備を。
次回!「最終決戦!十人十色の絆が響けば!」
さあ──行くっスよ。私達なりの戦いを見せてやるっス。