土器王紀-埴輪の愛。土偶の夢-   作:まいまいഊ

24 / 24
我が宇宙への帰還
エピローグ 知と粘土の宇宙《土器の見る夢》


「まさか、ケマポンが、ねぇ……」

 最初出会ったころには思いもよらなかった。今ではこんなに立派になって……。

「わても、……あの、ケマポンが……土器王の生まれ変わりやったとはなぁ……ち~とも、気ぃつかへんかったわ」

 

 今、僕たちは土器王の宮殿にいる。土器王も、テルミナスも、グアルダも、ムチャチャも、他の土器人たちも集まっている。そして、土器王の復活に沸き、賑わっていた。

 

「本当にありがとう……」

 ケマポン……いや、土器王の声が響いた。

「そやそや。ウニバルの人には、感謝の言葉もあらへんなあ。土器王はんも復活しはったし、バルナも封印されたみたいやし……ともかく、これで一件落着や! わてら、元の平和な暮らしに、もどれましたんや。ほんまに、おおきに! あんさんの活躍は、永遠に語りつがれますやろ」

 テルミナスは、ケマ……土器王の会話を押しのけて話しつづけている。彼は、この世界で一番よくしゃべる土器人ではないだろうか。僕は苦笑いしながらも、話を聞いていた。

 

「ところで……あんさんは、ウニバルに戻らはりますか? ここに残る言うんやったら、土器人の体あげまひょ。ドースに、土器のからだつくってもろて……そうや、ええ考えがおます! キュラの代わりに、寺院の司祭っちゅうのは……どうですやろ~? ウニバル生まれの土器人の誕生や! ここの暮らしも悪うおまへんでえ~」

 テルミナスは、冗談交じりに言う。

「ははは。お誘いはうれしいけれど、お断りします。僕は、地球に……ウニバルに、帰ります」

 そこが僕の生きる場所、僕の地球(こきょう)なのだ。

「さよか……やっぱり、戻らはりますか……」

 テルミナスは、どこかさびしそうに瞳の光を揺らしていた。

「短い間だったけれども、ありがとう。楽しかったよ」

 

 

「ひびの入るその日まで……」

 それが素焼きの民たちの別れの挨拶(あいさつ)なのだろう。ひびの入るその日まで、素敵な挨拶ではないか。

 僕も、その挨拶を口にする。

 

 

 ――そして、別れのとき。

 僕は、みんなに見送られながら転送壷に入った。すべてが闇に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――僕は砂浜に立っている。

 戻ってきたんだ、僕の世界に、僕の宇宙に……

 

 海や空は、僕がエスパッシへ行く前と同じ。青く光に照らされている。

 足元にある僕が作った砂のトンネルの向こうには、今は何もない。どこにも通じていない。しかし、暖かな闇がある。

 

 

 海風が潮の香りを含ませて、どこまでも広がっていく。あの青い空に浮かぶ(ほし)は、完全な球体の太陽(ひかり)。完全な球体の水平線。映し出される色は、澄んだ青の粒子。母なる海は青く波打ち、光を浴びて雲の飛沫を散らす。何かの内にいるような、アルマのように。

 

 

 

 

 僕は一歩を踏み出した。砂浜に足跡が残る。

 僕はこの世界の内にいる。この広大な宇宙に足跡を残しながら、確かに生きている。たとえ、それが土器王によって作られた世界のひとつだったとしても、僕は今ここに存在している。そして、僕の(こころ)には、宇宙の息吹。世界が広がっている。

 

 それは真実。

 それは真理。

 

 僕は思うがまま、その世界(うちゅう)を眺め、世界に触れ、世界を求め、歩き続けよう。

 

 

 

 そう……

 

 ひびの入るその日まで……

 




 エスパッシはアルマの内にあり

 アルマはエスパッシの内にある

 土器はアルシラの土より生ず


 土器花(フロン)土器樹(アーボ)はセレブロの土より生ず

 土器花(フロン)より土器蝶(マリポス)土器蝶(マリポス)より土器魚(ペスカ)を生ず

 土器鳥(バヤペ)土器樹(アーボ)より生じ、メントを食す

 土器人は土器魚(ペスカ)を食しメントを排す

 成熟した土器鳥(バヤペ)はエスパッシの下方へ降りる

 土器鳥(バヤペ)は宇宙卵となりアルマより排される


 宇宙卵を得た土器は土器人となる

 宇宙卵は土器人の食した土器魚(ペスカ)で成熟する

 成熟した宇宙卵は土器を破り宇宙となる

 宇宙卵を失った土器はアルシラの土に還る

 宇宙はライブラリーで健常に保たれる


 アルマこそ、すべての宇宙の母なり


 全てはアルマの内に……アルマは全て……


 これ世界の真理なり……


               ――土器王紀「世界の秘密」のメモより
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。