土器王紀-埴輪の愛。土偶の夢-   作:まいまいഊ

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1部-2章 司書室

 この世界-セレブロとアルシラが浮かぶエスパッシ-を救う。

 それが、僕がこの世界に呼ばれた理由。

 それをなりゆきとはいえ、引き受けてしまったからには、行動に移さなくてはいけない。

 ひとまず、ケマポンが司書室と言っていたこの部屋を軽く見渡してみる。窓のようなものはなく、まるでひっくり返した壷の中にいるような感じがする。部屋のいたるところに、壷が置いてある。むしろ、壷しかない。

 僕が出てきた転送壷の扉を含めて、扉は3つ。それから、青地に、赤い渦巻きの螺旋が描かれた円盤が壁に設置されている。

 

 その部屋の中、あるひとつの扉の前に、輝く何かが落ちていることに気がついた。

「これは?」

 ……ふと、目に付いたもの、それを拾い上げる。

 石でできた板状のものに、どういう仕組みなのかは分からないが、赤く輝く文字のようなものが、描かれていた。

 

「これは、司書長のメモみたいだけど……ん~と、バ……バルナって、かいてあるよ、何のことだろう?」

「バルナ……」

 ケマポンに分からないことが、僕に分かるはずもない。

「まぁ、一応、これは、持って行こう」

 ポケットに入れるには、少し大きいこの石版のようなものを、僕はバケツに放り込んだ。

(まさか、こういう形で、このバケツが役に立つとは……)

 

「……とにかく、メモが、ここに落ちていたということは、もしかして」

 僕の勘がメモが落ちていたの扉の中に何かあると告げる。

 

 扉を開けてみると、そこは、物置きのようなところなのだろうか、様々な、壷が並べてある。

 僕には、どう見てもガラクタにしか見えないその中に、見覚えのある物体を見つけた。

 テルミナスだった。

 しかし、そのテルミナスは、灰色で、動いていない。「うわ、何をする! やめろ!」と、何かに驚いたかのように、4本の腕が顔を覆うようにした状態のまま固まっている。

 

「しっ、司書長、こんなところに……うひゃあ、石みたいに、カチンコチン! どうしたら、元にもどるんだろう……」

 ケマポンの様子を見ると、どうやら、石化は、死んだという状態ではないらしい。そもそも、この土器人たちが、どうやって生まれ、死んでいくのかさえ、見当がつかないのだが。

 

 「バルナ」と書き残されたメモは、もしかして、ダイイング・メッセージのようなもので、テルミナスは、「バルナ」に石にされたのだろうか?

(……一体誰が、何のために? ……どういうことだろう)

 

「……この倉庫には、石化したテルミナス以外、変わったものはなさそうだね……」

僕は、倉庫から出た。

 

「この扉は?」

 もうひとつ、まだ開けていない扉の前に立つ。

「そこは、エレベーターがあるの。下に行くと、飛行器械があって……そこから、アルシラに渡れるんだけれど……でも、飛行器械のキイは、司書長が持っているから……のれないの」

「飛行器械!」

 見てみたい。

「見に行くだけでも良いかな?」

「うん、いいよ」

 

 僕は、扉を開けた。部屋の中心には、マイクスタンドのような物が立っている。このスタンドの赤い部分を押すと、動くものらしい。

 

 僕は、大きな赤い部分を押した。

「わわわ……」

 それと同時に、床だけが、吸い込まれるように、下へ動いていく……これは、エレベーターというよりは、リフトに近いモノかもしれない。

 壁や柵が無い、慣れないタイプのエレベーターに、多少の恐怖を覚えたが、すぐに慣れた。

 

 奥に見えるのは、発進口だろうか。外の光が差し込んでいる。長く続く通路には、規則正しく照明がついていた。部屋の壁際には、大きな壷がたくさんあり、太いパイプがいくつも伸びていた。焼き物で、できてはいたが、どこか、機械的(メカニカル)な雰囲気を漂わせていた。

 部屋の中央には、タコの頭のような流線型の、土器をひっくり返したような、モノがあった。

 それが飛行器械なのだろう。

 

 エレベーターから降りて、その飛行器械を調べてみる。搭乗口のスイッチらしきものを見つけたが、鍵がないと、開かないのだろう。押してみても、動く気配がなかった。

 

 残念ではあるけれど、上の階へ戻ることにした。いつまでも、ここにいては、何も始まらないのだ。

 石になってしまった司書長のことは、気になるが、司書室の粗探しもほどほどに、僕は、外へことに出ることにした。

 

「外へ出るには、どうしたらいいのかな?」

 まさか、飛行器械に乗らないと、外に出れないというオチではないだろうかという、懸念を抱きながらも、僕はケマポンに聞いてみた。

 すでに、この部屋にあった3つの扉は、調べたのだ。そのいずれの部屋にも、外に出れそうな出入り口はなかったのだ。

 

「これが……外へ出る扉だよ」

 ケマポンの3本指が指し示した先には、例の渦巻き模様の壁があった。

「え? これも扉だったの?」

「そうだよ」

 住んでいる人間が、奇怪ならば、その扉も奇抜だ。

 模様か、単なる飾りか、芸術品の類だと思っていた、螺旋が描かれた円盤が、外へ出るための扉だったのだ。

「どうやって、開けるの?」

「さわれば、開くよ」

「そ、そうなのか」

 さすが、異世界。分からない事だらけだ。

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