土器王紀-埴輪の愛。土偶の夢-   作:まいまいഊ

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1部-3章 水の庭園

「ぼく、きみと一緒に、ついていきたいけど……ぼくは、ここで、こわれた器械をなおさなくちゃ!」

 てっきりついて来てくれるものかと思っていたけれど、そうではないらしい。

「心配しないで……きみのそのかぶっているモノで、いつでもぼくと、通信できるんだ。なにかあったら、呼んでね」

「そんな、機能がこれについているんだ……」

 見た目は、奇怪な形の焼き物の被り物だが、意外と、高度な技術が使われているようだ。そういえば、最初に呼ばれたときも、これから声が聞こえたっけ。

 

「じゃあ、いってくるよ」

 僕は、ケマポンに教えられたとおり扉にそっと触れた。

 

「うぉわ!」

 僕は、思わず叫んでしまった。触った扉が、予想外の動きをしたからだ。異世界に来て間もないのだが、一番の驚きだった。

 一見すると、渦巻きのキャンディのような形なのだが、触れると、円の中央に穴が開き、それが広がっていくような動きをする。

「ほぇぇぇぇ」

 ただただ、感嘆するしかなかった。

 

 扉が閉まるときは自動らしい、僕が潜り抜けると音もなく元の形に戻ってしまった。僕の世界に普通にある自動ドアみたいなものかしら。

 焼き物のそれが、どういった原理で動いているのか分からないが……何もかも土でできている世界のこととだ、柔らかい粘土か何かなのだろう。

 

「おおおお?」

 僕は再び声を上げる。

 司書室は壷の中と言った感じで暗く赤茶色の空間だったが、その変わった扉を抜けた先にあったのは、白と青の世界だった。青々とした美しい空、清らかな水をたたえた池、石灰のような色をした台地、その白い道の先には変わった建物がある。道に沿うように鮮やかな赤色の結晶や、棒の先に白と紫の縞模様の球体が乗った鉱石が生えている。この鉱物のような物体たちが、この星の植物なのだ。

「まさか、植物まで焼き物でできているとは……」

 

 どこかから、弦楽器の音がする。誰かが弾いているのだろうか。聞いたことがない音を奏でている。しかし、ここからはその姿は見えなかった。

 白い道、変わった建物、優雅な音楽が流れているそんな風景は、本当に異世界に来てしまったんだと言う実感をさらに強固にする。

 

「それにしても、なんだか、アラビアかどこかの宮殿にある庭園みたいだ」

 実物は見たこと無いのだけれど。絵本やアニメと言ったものから、刷り込まれる勝手なイメージと言うのか、異世界の雰囲気が漂った異国の風景と言うやつが、浮かんでくるのだ。まぁ、ここは、本当に異世界だという事実があるのだが。

 

 

「ねぇ……いつまで、そこにいるの?」

 通信機から、ケマポンの呆れた声がする。

「ん? もしかして、見えてるの?」

 そう、実は僕は部屋から出て、数歩しかまだ歩いていなかったのだ。ものめずらしさのあまり立ち止まって、景色に見とれていたのである。

「うん、ばっちり、見えてるの」

 

 

「ちなみにね、右に行くとメモータル。左に行くとライブラリーがあるの」

 と、ケマポンの説明。

 目をやると、右手には灰色のピラミッド型の建物があって、左には切り立つ崖と滝が見えた。

 

「ええとね、いろいろ知りたいなら……ライブラリーに。左の道をずっと行くと、エレベーターがあるから……それに乗って地下に行くと、行けるの。あとね、上に行くと、宮殿があるんだよ」

「わかった、ありがとう」

 メモータルが何であるかは、分からないが、今はとにかく色々知らなくてはいけない。

「まずはライブラリーか」

 僕は、左の道を歩き出した。

 

 

 

「お、第一村人発見!」

 水辺に沿った白い道を歩いていて、壷のような花に囲まれて作業している人を発見したのだ。

 

「あそこにいるのは……ウーノだよ」

 ケマポンは、そう説明する。なんとなく、常に監視されている気分になるが、初めての異世界、心強い。

「かれはね、フロンを……ええと、君たちの言葉で、『花』の世話をするのが仕事だよ。この庭園を手入れしているの」

 確かに、ウーノの手には土器のジョウロが握られている。

 外で作業するからだろうか、頭の上に帽子のような少し大きめの蓋がくっついていて、遠目から見ると、辛みそが入っているような丸壷のようにも見える。しかし、帽子の下からのぞく赤い一つ眼や、小さいながらも腹の部分から生えている2本の手は、それが土器人であることを示していた。

 モノ扱いしちゃいけないのだろうけれど、この世界の人は1品ものなのかしら。それとも、同じような形の人たちもいるのだろうか。まだ、3人にしか会っていないが、いずれも異なった形で個性的だった。

 

 それにしても、焼き物の花だけれど、世話が必要なのか。

 見た目が焼き物なだけで、もしかすると生態はあまり変わらないのかもしれない、と僕はそう思った。

 

 

 これから、しばらくこの世界にいるのだから、挨拶しておいたほうがいいかもしれない。そう思い、僕はウーノのいる花畑のへ向かった。

 

「こんにちは。何しているんですか?」

「ウーノ 、水やる……土器花(フロン)になる 」

 ケマポンよりも、さらに拙い言葉遣いで返答が帰ってきた。

「フロン、育てているんですね」

 

土器花(フロン)……マリポスできる ……好き」

「う……ん? マリポス?」

「マリポスは君たちの言葉で『蝶』だよ。花から生まれるんだ」

 ケマポンがそう説明するも、花から蝶が生まれるって? ……だめだ、イメージがわかない。

 

「ん~~とね……その大きな土器花(フロン)、ゆすってごらん。土器蝶(マリポス)生まれるから」

 ケマポンに言われるがまま、土器の花をゆすってみた。何枚かある赤い花びらのうち、一番大きなものがにわかに動きだす。花びらがツボミのように開くと中から、青い羽を持つ瓢箪型の土器が飛び出した。4枚の羽を蝶の様にパタパタと動かして飛んでいるものの、あれは、蝶と言うよりかはトンボのようにも見えた。

 まさか、花びらのほうが開いて飛び出てくるとは思わなかったので、僕は思わず「うわあ!」と、叫んでしまった。異世界に来て、何度目のことだろう。

 

「! ……?」

 ウーノは、僕の叫びにおどろいている。赤い瞳の中の光が大きくなっていたのだ。

「ウーノ、ごめんね。僕、マリポスを、見たことなかったから」

 

「ものすごい、びっくりしていたね~」

 ケマポンの笑い声が耳元でする。

「むぅ……」

 僕は、少しだけ恥ずかしかった。

 

「……やっぱり、きこえた。さっき、ケマポン、声……した」

 ウーノは、ケマポンの姿を探しているようだ。

「あ~ケマポンは……ここに、声が届くんだよ」

 僕は、自分のかぶっているヘルメットを指差した。

 

「ウーノ……ケマポン、言いたい……ある」

 ウーノは、僕のほうに向かって、ケマポンへの伝言を言い始めた。

「ケマポン いつも……ここでメント……」

 

「あ~~~~~ウーノ、言っちゃ、だめぇ~~~~」

 ケマポンは、ウーノの声を掻き消す。

「ん? メン……」

 僕は、たずねようとするが「あ~~あ~~あ~~」と、ケマポンは、すぐに声で遮る。

 

「ち、ちなみにね……土器蝶(マリポス)は、土器魚(ペスカ)になって……ぼくたちは、それを食べて生きているんだよ。……あとで、カーナのところへ……案内するよ。カーナは……釣りがうまいんだよ」

 ごまかすように、この世界の生態系と食について簡単に説明しはじめる。

 なんで、ごまかしているのか気にはなるが、そのうち分かるだろうということで、気にしないでいてあげることにした。

 司書室でひとりあわてているであろうケマポンの姿を思い浮かべて、僕は自然に笑みがこぼれる。

 

「しっかし、花が蝶に。蝶が魚に……この世界の生態系ってどうなっているんだろう」

 色々落ち着いたら、ゆっくり観察してみるのも、楽しいかもしれない。

 この事実を知って、僕はこの庭園を歩いている時に、膨らんだ土器の花(フロン)を見かけると、揺するのが楽しみの一つになってしまった。

 

 

「……そういえば、僕もその魚を食べることができるのだろうか?」

 ケマポンたちの食料である魚。この世界は、花も蝶も土器でできている。おそらく、魚も同じだろう。

「飢え死にと言う事だけは避けたいな……」

 食の確保に多少の不安を覚えつつ、僕はウーノに別れの挨拶をして、ライブラリーへ行けると言うエレベーターまで歩き出した。




ゲームは1日10分状態(笑)
自分にとって、このゲームでの第一村人は花畑のウーノでした。
人によっては、第一村人は釣り人カーナになることも。
(カーナは、そのうち登場させるよ。主人公が土器魚(ペスカ)を食べてみるために)

ちなみに、ゲーム中では、水辺の近くを飛ぶ土器蝶に触れると土器魚に変身する姿を見ることができます。

メントの意味は、そのうちね。
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