完璧な王子の物語 作:浅野明
小国の第一王子として生まれた僕は、それだけで恵まれているのだろう。世の中には今日の食事さえない、飢えている人だっているのだから。
だがしかし。はっきりいうと、僕には身分以外何もない。
顔形は悪くないとは思うのだが、実の母親は僕の顔を見るたびに顔を背け、決して正面から目を合わせてくれない。
それは、父親や乳母も同様だ。さらに、弟妹たちも目を合わせてくれない。
ちなみに、弟や妹には同年代の貴族子息や子女が友人として何人かいるのに、僕には一人もいない。
一応幼い頃に何人か紹介されたのだが、皆顔を合わせると失神してしまうか、真っ赤になって下を向き、何も話をしてくれなかった。今でも誰かと目が合うと同じ反応をされる。それどころか、年を重ねるごとに失神する人がふえていっている気がする。よほど僕の顔は見るに堪えないのだろう。
顔がダメならせめて剣術は、と思えば、指南役の騎士団長には一月でさじを投げられるほどの才能のなさ。まあ、正直あまり運動は得意じゃないからひそかに胸をなでおろしたのは秘密だ。
勉強はもっと酷く、国の最高の頭脳をもつ方々に師事したにもかかわらず、どの教師も2週間ていどでいなくなってしまった。まあ、勉強も別に好きじゃないからいいけどね。…つよがりじゃないよ?
正直、自分ではそこまでできが悪いとはおもわなかったのだが、教師から見ると求める水準にまったく達してなかったのだろう。ちなみに、弟たちは同じ教師に師事し、すでに半年が経過している。納得いかない。
まあ、つまりなにがいいたいのかというと、僕はできそこないの王子というわけなのだった。
だが、別にそれはいい。むしろ、できそこないということは大して期待もされないということだから。素晴らしいと思う。
ぶっちゃけ、僕はコミュ障だ。人と話をするのは苦手。家族とだって、うまく話せない。外にでるのも好きじゃない。できれば一生部屋から出ずに引きこもりたい。部屋でダラダラ寝たり、好きな研究をしたり、本を読んでいたい。
とはいっても僕は腐っても王子。それなりの責務がある。国民の税で生きているのだから仕方がない。それに身の周りのことも自分でしないといけない。
もともとは貴族家出身の侍女や侍従もいたが、全然言うこと聞いてくれないし、しょっちゅう失神してしまうか鼻血を出して色々汚すので、まったく役に立たなくて追い出したのだ。
弟や妹のところには優秀な侍従、侍女がいるらしい。もしかして期待ゼロのできそこないだから?嫌われてるの?まあ、常に他人がいると緊張するから別にいいけどね。
でもやっぱり誰もいないと不便だな〜とか思ってたら、部屋に子供が訪ねてきた。迷子かな?いやいや、王子の部屋に迷子とか、ないわ。
目的はよくわからないが、ちょっと遊んだら泣き出してしまつまた。イジメてないよ?そもそも子供っていっても8歳の僕より5歳くらい年上だし。年下と遊んでていきなり泣き出すってどうよ。
それはそれとして、よく見たら割と可愛らしい子供で働き者っぽい。なんとなく。いやまあ、僕と比べたらみんな優秀で働き者よね。
そんなわけで部屋にやってきたその子供を勧誘してみた。できそこないでも第一王子の侍従だから高給よ。しかも3食おやつつき。従業員寮もある超優良企業(?)よ。病気の弟がいる?じゃ、二人とも住み込みで。いくらミソッカスだってすこしは回復魔法使えるから弟くんは任せて!
そういったら何故かまた泣き出してしまった。なぜに?
でも身の回りを世話してくれる子がきたのは、正直助かります。
彼の名前はラディだって。弟はジル。なかなか美形な兄弟だった。弟くんはちょっとした病気にかかってたので回復魔法でサクッと治した。めっちゃ驚かれた。どんだけできない子だと思われてたんだろうか。地味にへこむ。
支払いはいらないよ。福利厚生だよ。そのかわりこれから兄弟二人で頑張って働いてちょうだい。
幼い兄弟をバッチリ働かせてこき使う王子ってなんか印象悪いし悪役っぽいけど、背に腹は代えられぬ。すまん。