ロック・マッチ・ライカーズ!   作:忘旗かんばせ

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エピローグ

 1

 

 獅子堂熟々丸を失い、半ば活動停止状態にあったライカーズが復活したのは、新メンバーの加入と共にだった。

 

「こいつ、今日からウチでギターやらせるから」

 

 有無を言わさぬ鶴の一声と共に、ライカーズの首領、吠巻黒歌が連れてきたのは、いつぞやライブハウスで出会った、彼女のファンだという、とあるガールズバンドのボーカル、今様流桟だった。

 

「ええっ!?」

 

 一番驚いていたのは、連れてこられた当の本人だった。彼女はただ単に、クロカから「来い」と命令され、件のガレージへとやってきただけで、仔細は何も聞かされていなかった。

 

「何よ、文句あんの?」

 

 ヤクザ顔負けの威圧的な眼光で、クロカは少女を睨みつける。

 

「いや、私、自分のバンドあるんですけど……」

「解散しなさい。どうせあれ、あんた以外まともにやる気ないんだから」

「うぐっ……」

 

 痛いところを突かれたとばかりに少女は胸を抑える。

 

「まあ、あんたが本気で自分のバンドやる気があるなら、まともなメンツが見つかるまでの腰掛けと考えてくれてもいいわ」

 

 彼女は腕を組んで、そんな妥協を口にするけれど。

 

「でもきっと、そんなことは考えられなくなるでしょうけどね」

 

 すぐに、その口元を不適な笑みが染め上げる。

 

「なにせ――あんたはこれから、この私という全宇宙最高のアーティストの輝きを、もっとも間近で見つめ続ける事になるんだもの」

 

 覚悟なさい、今様流桟――

 

「私があんたを、魅了してやるわ」

 

 そんな風に、彼女は吠えた。その名の通り勇ましく、また在らん限りに妖艶に。

 殺し文句と共に差し出された右手に、流桟は――

 

「は、はい……! 魅了してください……!」

 

 屈した。

 それはもう爆速に屈した。

 

 敬愛するアーティストから、直々に口説かれて、堕ちない人間などいるものか。

 

 残るライカーズの三人は、顔を見合わせて肩を竦める。こうなればもう、賛成も反対もない。吠巻黒歌がそうすると決めたのならば、彼女たちはそれに従うだけだ。

 

 しかし――

 

「そいつに熟々丸の代わりが勤まんのかよ」

 

 メンバーの心を代表して言葉に変えたのは、不汲身虎兎だった。敵意たっぷりに流桟を睨み付け、獣のように威嚇する。流桟はすっかり竦み上がってクロカの背後に隠れた。

 

「んなもん、務まるわけないでしょ」

 

 何を言っているんだか、とばかりにクロカは手のひらを上に向ける。

 

「……じゃあなんで連れてきたんだよ」

 

 こいつ、役に立つのか? とばかりに、敵意を超えて困惑の眼差しを向け始めた虎兎に、クロカはへん、と鼻を鳴らして言う。

 

「逆に聞くわ。熟々丸の代わりが務まる人材なんてのが、この世に居ると思う?」

「それは――」

 

 いない。

 というより――いて欲しくない。

 

 獅子堂熟々丸は、ライカーズのかけがえのないメンバーで――他の誰にも、代わりは務まらないはずだ。

 

「そうよ。熟々丸の代わりなんて、誰にも務まらない。獅子堂熟々丸はこの世に一人だけだった」

 

 だが――その熟々丸は、もうこの世にはいない。

 言葉を交わすことも、共に演奏をすることも、笑い合うことも――もう、できない。

 だから――

 

「熟々丸の席は、永遠に欠けたままよ」

 

 それを埋めることなんて、この世の誰にも誰にもできはしない。

 

 できると思うのならば、それは熟々丸への冒涜だ。

 

 だから――

 

「こいつを入れるのは、熟々丸の代わりにじゃない。それは熟々丸に失礼だし、()()()()()()()()()()

 

 人を、誰かの代わりとして見ることは、あらゆる意味で冒涜だ。

 

 人は誰かの代わりになんてならない。

 

 なれやしないし、してはいけない。

 

 いつだって、そこにいる『あなた』は、『あなた』以外の何者でもないのだ。

 

 ライカーズの音楽は、そういう音楽であるはずだった。

 

「だからこいつは、ただの新人よ。誰の代わりでもない、新しいギターってだけ」

 

 へん、と鼻を鳴らして、クロカは腕を組み直した。

 

「だから、新人として、容赦なく扱き尽くしなさい。こいつ、熱意は十分だけど、技量は微妙だから。次のライブまでに、使い物になるように」

 

 その言葉に、流桟は「えっ」と濁点付きの呻き声を上げる。嘘だろ、引き抜かれた挙句に扱かれるの? 新人に対して、ちょっと厳しすぎじゃ無い?

 

 そんなことを考える流桟に、クロカは振り返ってにっこりと笑った。

 

 その笑顔はとても綺麗なそれで、思わず見惚れてしまいそうになる程だったけれど、しかし凄まれている時よりもずっと膨れ上がった威圧感が流桟にそれを許さず、背筋に冷や汗をかかせていた。

 

 クロカは笑ったまま、口を開く。

 

「あんたが今のままでもライカーズとしてやっていくに恥ずかしくないって本当に心の底から思ってるなら、免除してやってもいいけど?」

 

 クロカの言葉に、流桟は――

 

「ひゃい……練習しましゅ……」

 

 と震えながら答えた。

 

「よし。そういうわけだから、ガンガン指導してやって」

 

 彼女の言葉に、他三人のメンバーは「あいあいさー」なんて冗談めかして答える。

 

「ところでさークロカっち、次のライブってのはいつあんの?」

 

 括野完全子が問えば、クロカは「ああ、言ってなかったわね」なんて軽く振り返る。次のライブの予定を入れたのは、彼女の独断だった。

 

「一週間後、いつものライブハウスで」

「一週間後!? それまでに新人込みで合わせるの?」

 

 完全子は思わず大声を上げた。これまでだったら、既存のメンバーだけでも最低二週間は事前準備に費やしていたのに、一週間後とは。

 

「仕方ないでしょ。直近だと、そこしかハコが抑えらんなかったの」

「えー、あそこそんなスケジュールキツキツだったっけ?」

 

 いつもみたいに数曲歌う程度なら、それこそいつでも飛び入れるくらいだったと思ったが――しかし。

 

「だって今回は――単独ライブだもん」

 

 その言葉に、メンバー全員が固まる。

 

「単独ライブ、って?」

「つまり、貸切。その日一日借り切って、私たちだけでライブやるってこと」

 

 それは、ライカーズ初の単独ライブを、よりにもよって一週間後にやるという衝撃的な宣言だった。

 

「いやいやいや、無理だって!」

 

 虎兎は思わず頭を抱える。

 

「単独ライブを一週間でって、絶対無理だろ! 曲の構成も一から考えなきゃいけないし、その練習も、リハーサルも、MCだって考えないといけないし、機材の調達とか、衣装だって――」

 

 次々と不安要素を上げていく虎兎に、クロカはへんと鼻を鳴らす。

 

「死ぬ気でやりゃあ、やってやれないことはないわよ」

「根性論にも程があるだろ!」

 

 つーか宣伝とかもどうすんだよ、一週間じゃチケット捌けるかどうか――

 

 なんて次々浮かぶ心配事に絶望の表情を浮かべる虎兎とは対照的に、完全子は楽しそうだった。

 

「あっははは、そうだよね、このメチャクチャさがクロカっちだよ」

 

 眦に浮かんだ涙を拭いつつ、完全子は笑う。

 

「何よ、馬鹿にしてんの?」

「まっさかー、褒めてるんだよ」

 

 完全子は言って、ニコニコと笑う。

 ならいいけど、なんてクロカは言うが――

 

「いーや良くない!」

 

 ば、と顔を上げた虎兎が叫ぶ。

 

「一週間で、新人の調教と、ライブの準備と、客寄せの宣伝と、ぜーんぶやらなきゃいけないんだぞ!?」

「そうよ。だからこれから、忙しくなるわ」

「忙しくなるで済むかぁあああ!」

 

 絶叫する虎兎。天に向けて、「熟々丸助けてくれー!」なんて叫びながら、彼女は頭を掻きむしる。

 

「ほら、叫んでる暇あったらさっさと作業を始めるわよ。とりあえず、ライブの構成から考えないと」

「ううう、頭が痛い……」

「ロキソニンキメなさい」

 

 物理的な話じゃねぇよ……と泣き言を言う虎兎をよそに、クロカは準備を進めるべく作業を始める。

 

 そんな折に――

 

「あのさ、ちょっといい?」

 

 なんて、焱火沙羅子が声をかける。

 

「何?」

「あのさ、こないだの話だけど――」

 

 こないだの話? とクロカは首を傾げる。

 

「私さ、あの日――行かなかったじゃん」

 

 言いづらそうにそんなことを言われて、クロカはようやく思い出した。

 

「ああ、例の電話ね」

 

 ――『お前の正体を知っている。バラされたくなければ、今日深夜、私立新神海岬学園のグラウンドに来い』。

 

 事情あって、そんな電話を彼女にもかけたことがあった。

 

 結論から言えば、それは彼女を対象とした電話ではなかったので、心当たりがなくて当然だ。だから、クロカはあれについては気にしなくてもいい、と言おうとして――

 

「行かなかったくせに、こんなこと言うの、虫のいい話だとはわかってんだけどさ――黙っててくんない?」

 

 なんて言われて――彼女は思わず固まる。

 

「え、何? あんたも怪人なの?」

「は? カイジン?」

 

 いや、そうじゃなくて――

 彼女は後ろ頭を掻きながら言う

 

「私が、()()()()って話だろ?」

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

「は!?」

 

 クロカは叫ぶ。

 

「え、何、あんた、男!?」

「ばかばか、声が大きいって!」

 

 彼女ならぬ彼は、しーと口の前で人差し指を立てる。

 

「な、なんで……?」

「しょうがないだろ! メンバー募集で来てみたら()以外全員女だったんだもん!」

 

 男だって素直に言ったら追い出されるかもしれないし……なんて彼は言う。

 

「いやでも、あんた、名前――!」

「親が海賊好きでさ、キャラコ・ジャックから取ったらしいんだわ」

 

 ……紛らわしい名前を付けるな!

 

 クロカは怒鳴りたくなった。

 

 だが、いや、待て。

 それ以上に気にしなくちゃいけないことが、一つ――ある。

 

「私たち、あんたの前で普通に着替えたりしてたわよね……?」

 

 視線を向ければ――伽羅子は頷く。

 

「うん。でも大丈夫。俺――既婚者だから」

 

 一児の父です! なんて腹の立つ笑みで言って彼は続ける。

 

「嫁以外の女には興味ないから、大丈夫!」

 

 ぐ、と親指を立てられて――クロカは。

 

「……大丈夫なわけあるかああああ!」

 

 その日、吠巻黒歌は生まれて初めて、人間を本気の力で殴った。

 

 鼻が折れた焱火伽羅子は救急車で運ばれ、ライブまでのスケジュールはさらにカツカツになってしまったのだが――それはまた、別のお話。

 

 2

 

 ライブハウスの楽屋に招待されたライカは、クロカと向かい合って座っていた。

 

 他のメンバーはもう、舞台袖で待機している。楽屋に残っているのは、クロカだけだった。

 

「ここにいて大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。まだ開演までは時間あるし」

 

 彼女は時計を見ながら言った。

 

 漆黒の衣装を身に纏い、アーティストとしての姿で。あの日、初めて見たライカーズのそれよりずっと魅力を増した、オーダーメイドの一着。突貫で作られたそれとは思えないほど、よく似合っている。

 

 ライブ開始までは後二十分と言ったところ。舞台袖には、五分前までに行っていれば間に合うだろう。

 

「何より――ライブの前に聞いておきたかったしね」

 

 彼女は言った。

 

 何を、なんて、そんな問いはいまさら無粋だ。

 

「あの日の返事、まだ聞かせてもらってないもの」

 

 彼女は不適な笑顔で言った。

 

 あの日の――吠巻黒歌の告白に、六町らいかは、まだ返事を出来ていなかった。

 

「心にもやもやとしたものを抱えたままじゃ、歌うものも歌えないわ。いい加減、聞かせてもらうわよ」

 

 クロカの真っ直ぐな視線に、らいかは頷く。

 

「ああ、待たせて悪かった」

 

 クロカがライブの準備でてんてこ舞いになってしまった、という事情もあったとは言え、ここまで返事を先延ばしにしてしまったのは、単純に、らいかの心の整理がついていなかったという事情が大きい。

 

 だがそれにもいい加減、ケリをつける時だ。

 

 らいかは小さく息を吸った。

 

「あの日、お前に好きだと言われて、嬉しかった」

 

 まずは、ありがとう、とらいかはクロカに微笑んだ。

 

 クロカは、きゅ、と小さく手を握る。手のひらに汗をかいて、気持ち悪かった。覚悟はしていたつもりだったが、いざその時が来ると、どうにも、制御が効かない。心臓の鼓動が、早くなっているのを感じた。らしくないわ、と心の中で呟くけれど、落ち着く気配は見えなかった。

 

 クロカは荒れ狂う波の中、らいかの次の言葉を待つ。

 

 らいかは口を開いた。

 

「私も――クロカが好きだ」

 

 その言葉に、クロカは思わず肩を跳ねさせる。

 

「お前と付き合うことが出来るのなら――こんなに嬉しいことはない」

 

 欲しかった言葉が帰り、クロカは思わず、安堵に胸を抑えそうになった。けれど――しかし。そんな弱みを見せてやるつもりはない。クロカは務めて自信満々に、胸を張ってへん、と鼻を鳴らした。

 

「ま、当然よね。この私と付き合えるなんて幸運、みすみす逃すはずが――」

「ただ、な?」

 

 調子に乗り始めたクロカを諌めるように、らいかはさらに言葉を紡ぐ。

 

「その、あー……なんだ」

 

 言いづらそうに、視線を宙に彷徨わせる。クロカは訝しんで首を傾げた。

 

「? 何よ、はっきり言ったら?」

「その、だな――」

 

 促されて、彼女は覚悟を決めたように視線を定める。

 

「浮気の話なんだが」

 

 彼女はそんな言葉を口にした。

 浮気――確かあの時、『浮気は許さないから』なんてことを言った覚えがある。それが――どうかしたというのだろうか。

 

「その、な? 私はクロカのことが、とても好きなんだ」

「え? うん」

「クロカはとても魅力的な女性だし、その、私も、お前と付き合えたら嬉しいよ。嬉しいんだが――」

 

 その、な?

 

「こう、最高級の料理であっても、毎日同じものを食べていると飽きてしまうというかな?」

「……は?」

 

 らいかは無表情のまま、焦ったように言葉を紡いでいく。

 

「その、私も、色々と、強い方でな? 毎日、というのはクロカの方にも負担が強いと思うしな?」

 

 それでな? と、なんだかとても情けない口ぶりで、彼女は語る。

 

「その――四人くらいまでは、許してくれないか?」

「――――は?」

 

 声が、冷えていくのを感じる。

 目の前のこの女は一体、ナニヲイッテイルノカナ?

 

「いや、違うんだ、待ってくれ! これは、私だけの問題ではないと思うんだ!」

 

 らいかは焦ったように言う。

 

「クロカだって、ライカーズのメンバーを侍らせているじゃないか! クロカだけそれというのは、ずるいと思うんだ! だから、な? 私の方にも、せめて同数だけは許して欲しいというか……」

 

 わなわなと、体が震えるのを感じる。

 クロカは何かを抑えるのに必死になっていた。

 

「別に、お前のことが嫌いになるわけではないんだ。ただ、純粋に、バリエーションが欲しいだけなんだ」

 

 だから、頼む!

 彼女は顔面の前で両手を合わせた。

 

「ちょっとの浮気は許してくれ!」

 

 そんなふうに頭を下げられて――しばし、無言の時が過ぎる。

 耐えかねて、彼女が首をわずかに上げた時――

 

「……最期の言葉は、それでいいかしら」

 

 絶対零度の声が、頭上より振り落ちる。

 

「――ふざけてんじゃないわよ、このクソビッチが!」

 

 ばしーん、と。

 らいかの頬に、惚れ惚れするような平手打ちが炸裂する。

 

「誰があんたみたいな性欲魔人と付き合うか、ボケッ! あんたみたいな性悪女、こっちから願い下げよ! 一人で死ねっ!」

 

 ブチギレたクロカはひとしきり捲し立てると、そのままずんずかと楽屋を出て行った。

 残されたライカは一人、赤く腫れ始めた頬を抑えながら、小さく呟く。

 

「……振られてしまった」

 

 六町らいか、十七歳。

 初めての失恋だった。

 

 3

 

 そこには熱が満ちていた。

 

 街中の小さなライブハウス。いつもならば人気もまばらのそこには、所狭しと観客が集っている。

 歓声に次ぐ歓声。渦巻くような熱狂。

 それらは全て、舞台の上に立つ五人の少女たちに向けられたものだった。

 

 いや、正確には五人だけではなかったかもしれない。舞台の背後に置かれた一枚の絵。それを通して、観客たちはその場にいない一人の人間にも想いを馳せていた。

 

 音が、光が、声が、瞬くたびに、聴衆の心は揺さぶられ、そのボルテージは際限なく上がっていく。

 

 新進気鋭のギターソロが紡ぐアウトロが終わり、一瞬、舞台が闇に落ちる。そして――ライトアップ。

 

 舞台の中央に立つボーカルの少女が、声を紡ぐ。

 

「次の曲は、とあるバカを参考にして作った曲よ」

 

 へん、と鼻を鳴らしながら、少女は観客を睥睨する。

 

「そいつはとんでもないろくでなしで、どうしようもない遊び人で、品性下劣のクズだったわ」

 

 だけど――

 

「そいつは己の中心に、揺るがない芯を持っていた。揺るがない芯を持って、いつも真正面から人に向き合っていた。だからこそ、それに私は、私たちは影響された」

 

 ライカーズは――変わった。

 

「それは必ずしもいいことばっかりじゃなかったんだと思う。変わる過程で失ったものもあって、それはもしかしたら過去の私に取っては掛け替えのないものだったのかもしれない。そんなふうに後ろを振り返る日々もあって、ただ、それでも――」

 

 それでも。

 

「新しく、この手に掴んだ輝きは――今の私を、肯定してくれる」

 

 変わった方が良かっただなんて、口が裂けても言えないけれど。

 

 変わっても良かったとは、そう思える。

 

「今、こうして、他の誰でもない私たちがこのステージの上に立って、他の誰でもないあんたたちの前で歌っているのも、きっと言ってしまえば、そいつが原因なんでしょうね」

 

 そいつのおかげだ、なんては口が裂けても言ってやらないけれど。

 

「だからまあ? ひっじょーに憎たらしい話ではあるけれど、この曲は、そいつに捧ぐ曲よ」

 

 誰よりも自由で、誰よりも強く、誰よりも鮮やかだった――私の憧れへ。

 

 この曲を、捧ぐ。

 

「だから、この曲のタイトルは――」

 

 

 

 

 

 

  〈ロック・マッチ・ライカーズ!〉――完

 





これにて完結となります。ご愛読、ありがとうございました。

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