十中八九、術式「ラップ」   作:らいこう

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第二十二話 個人戦 準備

 

 団体戦が終わって一日。今日は交流会の二日目だ。

 

 現在、俺たちは木造の建物に集まっている。

 和風建築で、どこか古民家をリノベーションしたような、洒落た造りだ。

 天井は高く、梁がむき出しで、壁は障子と木の格子窓。畳じゃなくて床板張りだから、モダン寄りな造りに見える。

 

 一階には広めの談話室があり、ソファやローテーブルが無造作に並んでいる。

 奥には小さなキッチンのようなスペースもあり、全体的に"くつろぐための家"って感じだ。

 二階へと続く階段もあり、建物としての機能性は意外と高い。

 

 団体戦の終了は、あの"東堂ぶん殴り事件"の直後だった。

 スピーカーから試合終了の合図が流れ、京都校は全員リタイア。結果として、東京校の勝利となった。

 

 そして今日は、いわゆる個人戦。

 とはいえ、まだ準備中ってことで、今は自由時間だ。

 俺は外に出て、加茂と組手をしていた。

 

「だからさぁ~、ノリだよノリ! もっと感覚で動けって!」

 

「私は直感型ではないと言っているだろう!」

 

 怒鳴り合いながらも、拳はしっかり交えてる。

 俺は加茂に術式無しで、加茂は最低限の赤血操術──赤鱗躍動と、赤血操術を用いた体表の強化のみという条件での組手だ。

 

 といっても、加茂は身体を血で覆えないようで、結果、赤鱗躍動のみとなっている。

 そういった術式の応用もできるように、という目的もあってこの組手をしていた。

 

 拳を振るい、足を刈り、肘を差し込み──ギリギリで殺した打撃の応酬。

 俺の拳が加茂の側頭部を掠め、間一髪で躱した加茂が反撃の肘を打ち込む。

 それを肩で受け止め、即座に踏み込み返し、低い姿勢から足払い。

 

 加茂がよろめき、後退する。

 

「フィジカルが足りねぇんだよ、加茂。打たれ弱ぇし、打ち返せてねぇ」

 

「私は術式で補うタイプなんだ!」

 

「補えてねぇって言ってんだろうが!」

 

 俺は唇を歪めて笑う。

 直感型の俺と、理論型の加茂。根本から合わねぇが、逆に面白い。

 

「頭が固い。動きも型にはまり過ぎてる。もっとオリジナリティ出せよ!」

 

「随分と簡単に言ってくれるね!」

 

「ノリやフィーリングで分かるだろ!」

 

「分かってたまるか!」

 

 加茂は赤鱗躍動を使っているのに対し、俺は単純な呪力強化のみ。

 それも、まだ加減をしてこれだ。

 

「直感だ直感! もっとバイブス上げてこうぜ!」

 

「君は感覚的過ぎるんだ!」

 

 言い合いながらも、加茂は俺の攻撃を真剣に捌いていた。

 冷や汗をかきながらも、目は集中している。拳は鋭さを増し、足運びにも変化が見える。

 ……ちゃんと、成長してるじゃねぇか。

 

 その様子を、誰かが見ていた。

 

「なんだ、玲のやつ。案外面倒見が良いな」

 

 金次センパイが建物から出てきた。

 退屈だったのか、俺と加茂の組手を見に来たらしい。、

 

「あっ、秤さん。そうなんですよ。阿比留君って、認めた相手には優しいんですよ。好みとかよく把握してるし」

 

 乙骨の声が続く。

 

「へぇ、意外だな」

 

「二人って結構、相性良いのかも」

 

「……そうか?」

 

 言い合いながらも、俺と加茂の距離は確実に縮まっていた。

 拳を交えるたびに、言葉を重ねるたびに。

 

 ──そして、建物とは別の場所から足音。

 

「おっまたせー。ってもう勝手に個人戦始めてる感じ?」

 

 五条先生が到着。

 その後ろからは、京都校の引率と夜蛾学長、楽巌寺の姿もあった。

 

「ちっ、一旦終わりか」

 

「ウグッ……! 最後殴る必要はあったのか?」

 

「痛くないと覚えねぇだろ」

 

 最後に締めということで、ボディに一発。

 加茂は殴られた腹を抑え、うめいていた。

 

 そうして、組手を終えて俺達は建物の中へ戻った。

 

「これから1時間後、個人戦が行われる」

 

 そんな夜蛾学長の言葉の後、くじが入った二つの箱が置かれた。

 それには1~6の数字が書かれた紙が入っており、同じ番号の者同士が戦うようだ。

 そんな説明を聞いた後、それぞれ東京校と京都校の生徒が番号を引く。

 

 紙から一枚の紙を取り、中を確認する。

 

「6か」

 

 俺の手にあったのは「6」と書かれた紙。

 俺と戦うやつは誰かと、京都校の方へ視線をやった。

 

「ほう、奇遇だな」

 

 声のする方を見る。

 

「俺が6だ」

 

 そこには東堂がピースサインの間に「6」の紙を挟んで、腕を組んで立っていた。

 ベジータかよ、そのポーズ。

 

 それにしても相手が東堂とは──

 

「……おもしれぇじゃねぇか」

 

 俺の口元に、自然と笑みが浮かぶ。

 さて、今度こそ"真正面"からやり合える。

 

 これは楽しみだ。

 それに、東京高専でのラップバトルの借りも返せる。

 リベンジマッチだな。

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