団体戦が終わって一日。今日は交流会の二日目だ。
現在、俺たちは木造の建物に集まっている。
和風建築で、どこか古民家をリノベーションしたような、洒落た造りだ。
天井は高く、梁がむき出しで、壁は障子と木の格子窓。畳じゃなくて床板張りだから、モダン寄りな造りに見える。
一階には広めの談話室があり、ソファやローテーブルが無造作に並んでいる。
奥には小さなキッチンのようなスペースもあり、全体的に"くつろぐための家"って感じだ。
二階へと続く階段もあり、建物としての機能性は意外と高い。
団体戦の終了は、あの"東堂ぶん殴り事件"の直後だった。
スピーカーから試合終了の合図が流れ、京都校は全員リタイア。結果として、東京校の勝利となった。
そして今日は、いわゆる個人戦。
とはいえ、まだ準備中ってことで、今は自由時間だ。
俺は外に出て、加茂と組手をしていた。
「だからさぁ~、ノリだよノリ! もっと感覚で動けって!」
「私は直感型ではないと言っているだろう!」
怒鳴り合いながらも、拳はしっかり交えてる。
俺は加茂に術式無しで、加茂は最低限の赤血操術──赤鱗躍動と、赤血操術を用いた体表の強化のみという条件での組手だ。
といっても、加茂は身体を血で覆えないようで、結果、赤鱗躍動のみとなっている。
そういった術式の応用もできるように、という目的もあってこの組手をしていた。
拳を振るい、足を刈り、肘を差し込み──ギリギリで殺した打撃の応酬。
俺の拳が加茂の側頭部を掠め、間一髪で躱した加茂が反撃の肘を打ち込む。
それを肩で受け止め、即座に踏み込み返し、低い姿勢から足払い。
加茂がよろめき、後退する。
「フィジカルが足りねぇんだよ、加茂。打たれ弱ぇし、打ち返せてねぇ」
「私は術式で補うタイプなんだ!」
「補えてねぇって言ってんだろうが!」
俺は唇を歪めて笑う。
直感型の俺と、理論型の加茂。根本から合わねぇが、逆に面白い。
「頭が固い。動きも型にはまり過ぎてる。もっとオリジナリティ出せよ!」
「随分と簡単に言ってくれるね!」
「ノリやフィーリングで分かるだろ!」
「分かってたまるか!」
加茂は赤鱗躍動を使っているのに対し、俺は単純な呪力強化のみ。
それも、まだ加減をしてこれだ。
「直感だ直感! もっとバイブス上げてこうぜ!」
「君は感覚的過ぎるんだ!」
言い合いながらも、加茂は俺の攻撃を真剣に捌いていた。
冷や汗をかきながらも、目は集中している。拳は鋭さを増し、足運びにも変化が見える。
……ちゃんと、成長してるじゃねぇか。
その様子を、誰かが見ていた。
「なんだ、玲のやつ。案外面倒見が良いな」
金次センパイが建物から出てきた。
退屈だったのか、俺と加茂の組手を見に来たらしい。、
「あっ、秤さん。そうなんですよ。阿比留君って、認めた相手には優しいんですよ。好みとかよく把握してるし」
乙骨の声が続く。
「へぇ、意外だな」
「二人って結構、相性良いのかも」
「……そうか?」
言い合いながらも、俺と加茂の距離は確実に縮まっていた。
拳を交えるたびに、言葉を重ねるたびに。
──そして、建物とは別の場所から足音。
「おっまたせー。ってもう勝手に個人戦始めてる感じ?」
五条先生が到着。
その後ろからは、京都校の引率と夜蛾学長、楽巌寺の姿もあった。
「ちっ、一旦終わりか」
「ウグッ……! 最後殴る必要はあったのか?」
「痛くないと覚えねぇだろ」
最後に締めということで、ボディに一発。
加茂は殴られた腹を抑え、うめいていた。
そうして、組手を終えて俺達は建物の中へ戻った。
「これから1時間後、個人戦が行われる」
そんな夜蛾学長の言葉の後、くじが入った二つの箱が置かれた。
それには1~6の数字が書かれた紙が入っており、同じ番号の者同士が戦うようだ。
そんな説明を聞いた後、それぞれ東京校と京都校の生徒が番号を引く。
紙から一枚の紙を取り、中を確認する。
「6か」
俺の手にあったのは「6」と書かれた紙。
俺と戦うやつは誰かと、京都校の方へ視線をやった。
「ほう、奇遇だな」
声のする方を見る。
「俺が6だ」
そこには東堂がピースサインの間に「6」の紙を挟んで、腕を組んで立っていた。
ベジータかよ、そのポーズ。
それにしても相手が東堂とは──
「……おもしれぇじゃねぇか」
俺の口元に、自然と笑みが浮かぶ。
さて、今度こそ"真正面"からやり合える。
これは楽しみだ。
それに、東京高専でのラップバトルの借りも返せる。
リベンジマッチだな。