【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】 作:関係ないよ
「シルビアやん!! これこれ! S13! これ乗ってた~!!」
そう言いながら、頭と身体にトラッカーをつけたシュシュさんはレーシングゲーム用のハンドルを握る。
3Dの身体でやるレースゲームを主軸に置いた、
このカノンボールきっての一大イベントは、夏休みの開始に合わせた土曜の夜に行われる事になった。
ここ最近、この配信の準備とクラファンのバッカーへのリターンの制作でちょっと忙しかったが、今日でようやく区切りがつきそうだ。
「え? そう! この配信のためにプレステ4と一緒に色々買うてもろてん! あっ! 筑波サーキットやん! 走った事ある~! やろやろ!」
5000円- ハセやんのリゲイン代
マイヤンだからな
まぁでも他みたいに白い空間でチョコチョコ動きながら雑談してるよりはいいかも
シュシュさんは座ってハンドルを握っているから、カメラや表情の操作は俺が担当だ。
フェイストラッキングの技術も導入していかないと競合他社に勝てないが、今はとにかく人もいないし技術もない。
ていうか、飛びまくっているスパチャを演者に見えるようにする操作だけでも大忙しだし、マジで物理的に人手が全く足りないぞ。
これまでなんとか誤魔化してきたけど、そろそろ人を雇わないといい加減にまずいな。
「でっかいコースの方で好きなだけドリフトできるの最高やん!」
ドリフトかぁ
グラ綺麗だなー
「ただやっぱこの
どこのハンコン使ってんの?
PS4対応のはそんなもんよ
せっかく持ち曲あるんだからミニライブやって
カノンが踊れるわけないでしょ
「あーっ! ほんまなんでサイド(ブレーキ)ないねん! ハンドル回しながら親指でボタン押すのムズすぎるやろ!」
イライラ3D
クラファンのリターンで動画貰ったけど、カノンそこで踊ってたよ
踊った結果事故ってたけどな
今日はコード大丈夫そう?
裏側の動画とか貰えるんだ? クラファンやっとけば良かったなぁ
「あっ! 椅子ズレた! 椅子ズレた! ハセやんやっぱパイプ椅子はキツいて! ちょお戻してくれへん!?」
レースゲームでドリフトをしながら、シュシュさんはそんな事を言ってくる。
俺も俺で今色々と操作をしてるんだけどなぁ……まぁいいか。
パイプ椅子でやってんのか
あっ
パンツ
ハセやん?
ハセやーん!
ハセやんやばいって!
草
「おし! おし! 椅子オッケー! いくでー!」
パンモロでドリフトしに行くな
ハセやんからのサービスパンツだな
あーもうめちゃくちゃだよ
下はオッケーじゃないよ
白パンで良かった
アニマルプリントかと思ってたわ
パンモロドリフトは草
パソコンの前に戻ってみると、どうやら移動する時に何かを引っ掛けてしまっていたらしい。
配信内のカメラ位置が動いて、カノンのパンツがモロ見えになっていた。
でもまぁコメントも増えて盛り上がってるみたいだし、パンツぐらいはいいか。
「え!? パンツ!? パンツ見えてんの? ハセやん? てかママいる? マジ!?」
その後もシュシュさんは三十分ほど運転を続け、その後は視聴者からのポーズのリクエストに応えたり、盆踊りのような創作ダンスを踊ったりして……
最後にクラウドファンディングのリターンとなっていた、出資者の名前呼びをガッツリとやって生放送を終えた。
「どやった!? ハセやん?」
「シュシュさん、これとんでもない事になってますよ」
「え!? え!? どっちの意味で!?」
「そりゃいい方ですよぉ!」
「なんや! 最初からそう言ってぇな! ビビったわ~」
色々なアクシデントはあったものの、結果的には撮れ高抜群の生放送となったこのお披露目。
ツイッターでトレンド入りも果たし、なんと3D化の費用の半分以上を貰ったスーパーチャットで回収するという……とんでもない利益を叩き出していた。
更にはニゴニゴ動画に上げられた『パンモロドリフト』という動画の再生数が回り、登録者数は一気に十三万人に。
そりゃあみんな、この時期からガンガン3D化するわけだな。
いろんな意味でブーストがデカすぎる。
とはいえ……さすがに俺もワンオペの限界が見えたため、事務所のスタッフを募集する事にした。
経理に明るそうな事務員が二人ぐらいいれば、しばらくは凌げるかな、と思いながら募集要項を作っていたのだが……
その途中に、たまたま見かけたツイートがあった。
『就活キツすぎるだろ、もうどこでもいいから入れてくれ』
という、就活生なら誰でも一度ぐらいはしたことのありそうなそのツイート。
ツイート主は、俺のログインしている『㈱カノンボール』と
それはうちのライバーである、
来年の春には就職を諦め同人作家になり、将来Vtuberとなって自分で箱を作る事になる才女、デッドピーマン氏のアカウントだった。
『お世話になっております。就職に関するツイートを拝見させていただいたのですが、もしお決まりでないようでしたら弊社はいかがですか? 社保完備、完全週休二日。先生でしたら手取りは三十万からで、各種インセンティブ制度もございます』
ちょっと欲の湧いた俺は、勢いとダメ元でそんなメッセージを送り。
それからすぐに我に返って「何をやっているのやら……」と苦笑いをして、首の筋を伸ばしてから作業に戻ろうとする。
その瞬間……ペポッと、Discordの通知音が鳴った。
通知が来たのは、ダイレクトメッセージ。
相手の名前は『デッドピーマン』だった。