【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】 作:関係ないよ
賢獣が「うちも社員ですやん」と言い出して
ともかくカノンボールは色々な事に手を出してきた結果、いい具合に話題を途切れさせないまま、
「二十万人おおきにぃ! おおきにおおきに!」
もう二十二万人だけどな
今日も車のゲーム?
「今日はなぁ……凸待ち配信をやります!」
くるの?
カノン友達いないじゃん
おもろいおもろい、で?
その時画面の右下に、ピョコッと飛び出すアニメーションで
社長?
ハセやん!
誰?
いきなり凸来た!?
『はいはーい、私カノンボール広報の
「ボーラーちゃん!」
ボーラー五号か……
バリバリの社員なのにめちゃくちゃ喋れるヤベー奴の一人だ
会長に向かって友達少ないは笑う
ラムダ回めちゃくちゃ笑ったわ
ボーラーって誰?
『私につきましては、ぜひカノンボール公式チャンネルをご覧になってくださいませ。それではカノンさん、本日のルール説明行かせて頂きます』
「うんうんっ」
『これから六十分! カノンさんに凸が来ましたら、その人と最大十分間まで楽しくお喋りしていただけます! ですがもし凸が来なかったら……その間カノンさんにはひたすらモノマネをしながら、間を繋いで頂きます!』
「ええーっ!」
パワハラの現場
チョッパーやって
六十分
ちなみに今日の司会については、会長と三人で二十万人記念配信のネタ出しをしている中で、吉沢さんの方から「あたし司会やりましょうか?」と言ってきてくれたものだ。
まぁ完全にナチュラルボーンMCだしな……
この感じでいけば将来は普通にVとしてひとり立ちしていきそうな感じもあるが、それはそれで仕方がない。
その時に関係さえ悪くならなければ、うちの箱とも半身内の関係性で絡んでもらえるだろう。
「シンジくん? 凸をしてきなさい! シンジくん! シンジくーん!!」
『あのぉ〜、
「あっ! シンジくん!?」
『違いますぅ』
(ぼっちから)逃げちゃダメだ!
おっ、誰か来た?
身内か
時間を一時間に設定したのが良かったのか、友達のいないシュシュさんでも、なんとかモノマネよりも凸の時間を長くする事ができた。
うちのライバー三人と、保健医と新聞部が紹介してくれた他箱のライバーには感謝しかない。
そしてこの配信の最後に、
「えー、まず前にも告知させて頂いたように、カノンボールはぁ!
どういうライブになるんだろ?
カノンボールはVRライブはやんないの?
家だと声出せないから現場行きたいわ
「えーっと、カノンボールFESに先駆けて、会場で販売されるグッズの先行予約販売が? えーっと、届くのが……?」
グッズ何出るの?
ハセやん呼んでこい
この会長駄目だよ
予約販売してくれるの、地方民にとっては嬉しい
『えー広報の
この新入社員、クソポンコツ会長とは安心感が違う……
声めっちゃ好き、Vtuberなったら?
ハセやん出さなきゃ納得しないよ
ーーぽを見せろ長谷川康介
「グッズはタオルとか、パーカーとかぁ、Tシャツとかぁ、あとうちわ型ペンラもあるで。あとねぇ、うちのCDとぉ、過去の限定ボイスを再録したCDも販売しまーす、やって。あっ、ステッカーもあるよ、可愛いからみんな見てみて~」
『他にも色々グッズがありますので、ぜひご覧になってくださいねー』
ボーラー五号がいるから安定感が凄い……
ハセやん入るまでグッズの一つもなかったのに……なんか感慨深いわ
あの人いつ寝てるの
普通に一期生のグッズあってネタバレになってるじゃん、買うけど
「えー、次に……カノンボールはぁ! 一期生の三人のオリジナル楽曲を、順次発表致します! 詳しくはカノンボール公式SNSをチェックチェックチェック~!」
じゃあマジで一期生もライブ出るんだ!
ラム様の曲楽しみ
カノンも新曲出したら
「えー、次にカノンボールはぁ! というか私
え? 同人誌?
一冊だけ持ってるよ、使ってないけど
どういう漫画?
「これは公式ホームページに掲載される漫画でぇ! ちゃんと漫画家の先生に描いてもらう漫画です! 連載が続いたら単行本も出るから応援してぇな! 詳しくはカノンボール公式SNSをチェックチェックチェック~!」
色々やるんだね
漫画家募集って書いてあるわ、応募来たら他のライバーの漫画も出るの?
この漫画家知ってる
普通に絵上手いから楽しみ
「次、カノンボール第二期生のデビューが決定致しました! たった今からSNSがスタートしますので、ぜひぜひフォローしたってください!」
ちょっと待って!
展開が早すぎるっピ!
ついていけてない!
毎度の事だけどハセやんは何でも一気に進めすぎだろ!
『広報の
「との事です! では次……なんやけど、やっぱこれ、うちじゃなくてハセやんが話した方が説得力あると思う!」
「えぇ……?」
やべーよこの事務所!
ハセやんの困惑の声がちょっと聞こえて草
段取り守れよカノン
「しゃちょー」
「あっ、出てきちゃったの?」
「交代しましょー、カノンさんがあんな事言っちゃったし、社長が話した方がいいですよ」
イレギュラーなのか
社長を困らすなよ
防音ブースから出てきた吉沢さんに交代を促され、俺は彼女に配信のオペレートを任せて入れ替わりでブースへと入った。
あんまり出たくないんだけど……
まぁたしかに、これからする最後の告知はあまりにビジネスすぎるから、
俺はパソコンの前に座り、Live2DモデルのトラッキングをしているWebカメラに向けて、挨拶するように手を振ってから話をはじめた。
「えー、
久しぶり!
誰?
なんだいきなり
戻して
ボーラー便利やな
「さて、長々続いてしまいました告知事項なのですが……これで最後です」
こないだの研修配信面白かったよ
カノン水飲んでて草、本来はお前が回すもんだろ
おいカノン
「Vtuber、配信者の皆さん! 配信、楽しんでますか?」
いきなりどうした?
「楽しく配信をしているのに、視聴者さんから音が悪い、動画がカクカク、内容がマンネリ、なーんて言われてしまった事、ありませんか? そんなあなたのためのサービスを、カノンボールは立ち上げました!」
ハセやん……これは一体……
今日のハセやんは一段とビジネスモードだ
どゆこと?
「マイクの設定、機材の選定、配信の設定、方向性の相談など、ぜひ弊社にご相談ください。実績あるプロの現場のスタッフが、あなたの問題解決をサポート致します」
よくわからん
新事業って事?
俺らには関係ない感じ?
マジで宣伝やん
「特にVtuberの配信で大切なのは音ですよね? 弊社では数十本の定番マイクを始め、マイクプリアンプ、オーディオインターフェース、ファンタム電源など、様々な機材を用意しております。カノンボールの配信品質向上委員会では……きっとあなたの感性に合う、配信環境探しのお手伝いができると思っています。詳しくは、カノンボールホームページ及び、公式チャンネルに投稿された動画を御覧ください」
たしかにクソみたいな音質のVtuber一杯いるもんな
まぁなんとなくはわかった(わかってない)
ほぼ
これに金払ったら誰でもカノンボール音質になれるって事?
たしかにこんな難しい話はカノンにはできんわ
生配信を見ている人たちに困惑を残した、最後の告知『配信品質向上委員会』。
これは簡単に言えば、カノンボールに色々相談できるオンラインサロンのようなものだ。
個人ではなかなか気軽に試せない音響機材の組み合わせや、初心者には難しい配信ソフトの設定など。
そういうものの相談を受けますよ、というもの。
ざっくり言えば、これから数万人規模になっていくVtuberや配信者に、武器を売って儲けようって話だ。
今月から、前の会社での有給消化待ちだった人材がうちに合流してくれる事になったし、小さな金でも拾っていきたいからな。
それに短期的な金銭だけの話ではなく、ちゃんとした下心もある。
『ほぼ
と、コメント欄でも話題になっていたが、実は今年の五月からVtuber支援プロジェクト『
『
契約はわからないが、うちみたいに金を払えば誰でも入れるってわけじゃない。
だが逆に、俺はそこに商機を見出した。
色々なサポートを手厚くやるって事は、その分労力がかかるという事だ。
企業Vはともかく、個人Vのほとんどは、どれだけ頑張っても登録者十万人ぐらいのラインが限界になってくる存在。
『
それが戻ってくるかどうかというのは、正直言ってかなり分が悪い博打になるだろう。
なら、うちは割り切った支援で固定費を削りに削り、来るもの拒まずでやっていった方がいいと考えたわけだ。
今の時期に金を払ってでも配信のクオリティを上げようなんて個人Vは、この先そこそこ上に行く可能性も高い。
そういうVと仲良くなれば美味しいし、本当に光っているならスカウトしてうちの所属にしてしまってもいいのだ。
まぁ……自分でも迂遠な作戦だと思う。
どうやったって『いちばんち』のように膨大な数の所属を抱えられず、『ウルトラライブ』のようにテック企業として上に行けるわけでもない、中途半端なうちの事務所の悪あがきと言えばその通りだった。
とはいえ、まだまだ他にそういう無審査のVtuberプロデュースサービスのようなものがない事もあってか……
生配信終わりすぐからポコポコと加入者が増え始め、十月を迎える頃には『配信品質向上委員会』のDiscordは個人Vの寄合所帯のようになり。
配信の話なんか半ばそっちのけで、活発な情報交換と交流の場となっていくのだった。