【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】   作:関係ないよ

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ギャーッ!

二月、配信品質向上委員会から上澄みの三人を攫って、三期生がデビューした。

そして五月、前の周なら『いちばんち』に参加していた海外勢の人を一人確保し、四人組で四期生がデビュー。

他にも二月からのリアルイベント四連発、更にはグッズの開発、有望そうな同人作家や作曲家のスカウトなど……

年始に社員に向けて話した計画を必死に実行している間に、気づけば審判の日がやって来ていた。

つまり、六月だ。

俺が始めたビットコインギャンブルの結果が、今出ようとしていた。

 

「えー、三十八万円で買ったビットコインが上がりに上がりに上がりまして、百四十万円になりました」

「そ、その心は……?」

 

新スタジオが開設された影響で、今やシュシュ専用のスタジオとなり、ほとんど人が来なくなったこのアパート。

その自室で、俺は彼女に肩をニギニギされながらノートパソコンのタッチパッドを叩いていた。

仕込んだビットコインを全部売っぱらったその額は……

 

「……えー、諸々合わせて約七億三千万円となります」

「ギャーッ! やったー!!」

 

耳元で騒がれ、耳がキーンとなったが……話を続けよう。

 

「でもこれが全部手元に入るわけじゃありません」

「えっ? そうなんや……」

「ここからトントントンと色々引かれていきます」

「あっ、あっ……あーっ……」

 

俺が税理士の先生から貰った数字を電卓に打ち込んでいくと、後ろから悲しそうな声が聞こえてくるが……

これ個人でやってたらこんなもんじゃなかったからな。

俺も当時はよくわかってなかったが、あの時シュシュが全ぶっぱしてくれなかったら、一千万入れて五百万の儲けぐらいに終わってた可能性がある。

 

「ざっとこんだけ引いて」

「うん……」

「とりあえず使っていいのは四億円弱らしいです」

「ギャーッ!! やったー!!」

 

二度に渡る絶叫で耳がオシャカになったが、まぁ気持ちはわかる。

今すぐフリーで使える金がこれだけできたのなら、無理をした甲斐もあったというものだ。

勝つとわかって賭けた金だが、こんなにデカく勝てるとは思わなかった。

 

「ピザ頼も! ピザ!」

「シュシュの獺祭開けていい?」

「開けよ開けよ! お祝いや! お祝い!」

 

その晩は二人でピザを取り、馬鹿みたいに深酒をして、配信もせずに眠った。

ちなみに経理の森本さん(よんごう)には、次に会った時にこっそりと「どういうカラクリだったんですか?」と聞かれたが「運」と言う他なかった。

 

 

 

この金のうち五千万円は、続けて投資に使う事にした。

「たしかこの後AIが爆上がりするんだよな……」という記憶はあったので、レバは効かせずグラフィックボードのメーカーにオールイン。

これが上がるかどうかは正直わからないが……

もしVtuberが本当にオワコンになった時に残っていたら、初期メンの退職金として分けさせて貰おうと思う。

そして残りの金で何をするのかと言われれば、コロナ対策しかない。

今カノンボールの拠点はこのアパートと、安めの区のちょい駅遠の場所に構えた3Dスタジオだけ。

うちはテレワークだから、別にそれでも全然構わないのだが……

ライバーが増えるにつれ、それぞれのグッズなどの置き場がなくなっていっていた。

この問題を解決するために、倉庫兼事務所代わりのビルを一棟丸ごと借りた。

もちろんド都心ではないが、ワンフロアがそこそこデカいし……

何をやっても他のフロアから苦情は来ないビルだからな、色々使い道はあるだろう。

 

「立川さん、前やりたいって言ってた飲食事業、あれゴーで」

『えっ? ほんとですか?』

「ただし店内は前に言った通りショップにして、飲食はテイクアウトメニューを主体にしてください、コラボカフェとかは他で話が来てるんで」

『社長が言ってたキッチンカーとかはどうしますか?』

「全部やりましょう! 全国展開してアンテナショップ兼ねるっていう構想も、全部ゴーです。金城さんと上田さんを付けますんで、一緒に進めて下さい」

『わかりました!』

 

金ができたので、後回しにしていた事業も動かす。

この半年で社員はさらに十人増え、アルバイトのスタッフも増えた。

将来何百人という人を正規雇用するよそとは規模が違うが、うちもそこそこ動ける体制はでき始めている。

あとは今もぼちぼち売れているマスクのバリエーションを増やし、保健医オススメの高機能マスクを作ったり。

国内三つのマスク製造メーカーと四年間の供給契約を結んで、ビルが在庫でパンパンになるまでバリバリ納品してもらったり。

とにかく今ある金で片がつきそうな事は、ここから半年のうちに全部やっていく。

 

「社長、井口さん、コーヒー飲みますか?」

「あっ、ありがとうございます」

「これ終わったらいただきまーす」

 

一期生の白衣頼(はくいらい)の住むどデカいマンションで、俺とエンジニアの井口さんは軽い工事を行っていた。

これは各ライバーの家に、簡易的な3D環境を整えていくための工事だ。

いずれは今使っているものよりも、もっと簡単で高性能なモーションキャプチャー装置が出てくるのは知っているが……

とにかく、コロナで緊急事態宣言が出た時に使えなきゃ意味がない、マジでやるなら今のうちだ。

各ライバーには「リモートワーク推進の一環」とか言って無理に工事させてもらっているが……

ぶっちゃけ3Dなんてあんまり普段の配信では使わない人が多いだろうし、違和感を持たれているかも知れないな。

まぁビットコインで勝って、しこたまマスクを溜め込んでる時点で今さらか……

 

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