【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】   作:関係ないよ

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保険証がなくて……

時刻は深夜一時。

その声が聞こえたのは、ちょうど布団に入ってイヤホンがぽろりと外れた瞬間の事だった。

なんとなく嫌な予感がしながらも、隣からの声に耳を澄ませてみると……

 

『はせがわさ~ん、助けて~』

 

その声は、弱々しくそう言っていた。

何だろうか? あまりいい予感はしないが……

ただ、このまま無視してしまうには、部屋の壁が薄すぎた。

俺は仕方なく、部屋から寒い寒い三月の廊下に出て、隣の部屋をノックした。

 

「あの、飯田(いいだ)さん? どうかしました?」

 

そう尋ねると、部屋の中から小さく「助けてぇ~」と聞こえる。

俺は意を決して、ドアを開けた。

ファーストの感想は、小汚い部屋。

セカンドの感想は、シンプルにちょっと臭い。

そういう部屋の万年床の上に、お隣さんは小さくなって寝転んでいた。

 

「お、おみずくださ~い……」

 

ケホッっとカスカスの声で咳をしながら、彼女はそう言ったのだった。

 

 

 

「助かりました~、死ぬかと思いましたよ~」

 

駆け付け三杯水を飲んだ彼女は、真っ赤になった顔でこちらを見ながらそう言った。

これは別に寝姿を見られて照れているわけでもなんでもなくて、単純に熱が出ているのだ。

どうやら最近静かだったのは、風邪で寝込んでいたかららしい。

 

「救急車呼びますか?」

「救急車ぁ?」

「夜中ですし、ここから一人で外来も厳しいんじゃないですか?」

「いやぁ、そうなんですけどぉ……保険証がなくて……お金もあんまり……」

 

なんか、わかっちゃいたけどだいぶダメダメな人なんだな……

とはいえ俺も38度の熱が二週間続く中、誰にも仕事を替わってもらえず病院にも行けず、延々と働いた事がある。

あ、そうだ……

 

「昔貰った頓服(げねつざい)の残りがあるんですけど、飲みますか?」

「薬……ですかぁ……のむぅ……」

 

意識が朦朧としてるんだろうけど、俺は心配だよ。

男から貰った薬なんか、ほんとは簡単に飲まないほうがいいよ。

俺はセコカン時代に大量購入してあったゼリー飲料を彼女に与えてから、頓服を飲ませた。

水を飲んで飯を食ったからか、彼女はすぐに寝てしまった。

俺は枕元に残りの頓服と、いくつかのゼリー飲料を置き、あと空のペットボトルにも水を汲んでおく。

隣人としてできるのはこれぐらいだろう。

とはいえ、隣の女も見たところ今の俺と同世代。

若いからかしっかりと回復したようで、後日うちに第三のビールのパックを持ってお礼を言いに来た。

 

「いやぁ~、すっかりお世話になっちゃってぇ……えらいすいませんでした」

「いやいや、あれぐらいは……」

 

まぁ、良かったよ。

良かったから……

彼女が回復したらしい日に、外の柵に水に濡れた布団が干してあった事は、あんまり気にしない事にしておこう。

 

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