【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】 作:関係ないよ
2020年1月半ば、テレビ番組に『新型コロナウイルスを確認』というニュースが出た。
そしてその翌日『国内で初の感染者が出た』というニュースが流れる。
来てくれるなと思いながら準備をしてきたコロナウイルスが、本当にやって来たのだ。
一月後半にあるリアルイベントはなんとか開催できるだろうが、二月以降に予告を打っていたイベントは全て無観客で行う事になるだろう。
最高効率で行くなら、そもそも去年の時点で「2020年はリアルイベントなし」という方針を打っておくべきだったろうが、さすがにそれは怪しすぎたからな。
別に俺は予言者になりたいわけじゃない、正直マスクだけでもやりすぎだ。
とはいえコロナのニュースのおかげか、公式通販のマスクの売り上げが一気に加速していて……
社内での俺の扱いは、もうすでに若干予言者寄りだ。
今も
「
今後疫病が広まるという事を仮定して、その場合どういう動きを取るかという事を決めるこの会議。
社内エンジニア筆頭の
「システムってどういう……」
「今Vtuberがテレビに出ようとしたら、相手にビデオ通話でグリーンバックの映像渡してって感じじゃないですか。一旦クオリティ下がってもいいんで、もっと汎用性高く行きたいですね」
「あーじゃあ物理的に
「ちなみにモニターって車に乗せるとしたら、どれぐらいの大きさまで乗りますか?」
俺がそう聞くと、彼はスーツの内ポケットから取り出したスマホで何かを検索しながらそう答える。
「
「じゃあそのモニターにパソコン繋いで、台車とスピーカーシステムつけてって感じで……それ準備しといてもらうのっていけますか? できたらなるはやで」
「そんぐらいなら、物届いたらすぐできますけど……あーじゃあ
「よろしくお願いします」
後の事は技術部門を纏める彼に任せ、俺はイベント担当の社員に視線を向け、すぐ次の議題に入った。
「じゃあ次に今後のイベントなんですけど、これは今後の空気を読んで臨機応変に対処するため、最悪の場合は全て中止になると思っておいてください」
「全部ですか!? もう箱にお金払ってチケットも売り切っちゃってますけど」
「最悪です、最悪。最悪イベントに人が来れる感じじゃなくなった場合は、無観客での開催も視野に入れます。その場合は一旦チケットは全額返金で、公開はネット配信のみで、グッズは通販で売りましょう」
「わっ……かりましたぁ……」
会議はその後何時間も続き、終わる頃には全員ヘトヘト。
その労をねぎらうために俺の奢りで焼き肉に行く事になったが……
「これ今年最後の飲み会になるなぁ」と思いながら、いつもよりも多めにビールを飲んだ。
『感染症対策には、まず換気、そしてマスク。そして皆さんご存知、うがい、手洗い、手指消毒が大切です』
『そんなもんでいいのぉ? 僕いっつもやってるもんね』
『素晴らしいですねぇラムダ君。感染症対策の基本的な事は、みんなが既に知っている事なんですよ。でも今日は特別にそれにプラスして、皆さんに病院仕込みのプロの手洗い方法をお教えしましょう』
『プロの手洗い!? そんなんあんの?』
新型コロナが話題になりだしてしばらく経ち、正式に指定感染症となった二月の頭。
元医師の
これは俺から先生にお願いして、カノンやラムダ他、カノンボールの人気メンバーを集めて撮ってもらった動画だ。
何でもそうだが、初動は早ければ早いほどいい。
俺は
そんな計画を新宿の喫茶店で相談していた時、
「ていうかマジで、マジの話なんですけど……社長って、何が見えてるんですか?」
たぶん彼が尋ねているのは……
元医師の彼自身をイメージキャラクターにした莫大なマスクの貯蔵から、爆速のコロナ対策までの流れが出来すぎているという事だろう。
俺は訝しむ彼に手招きをして、耳打ちするようにこう答えた。
「これは先生にだけお教えする事なんですけど」
「……っ! は、はい……」
「実は俺って、昔から物凄く運がいいんですよ……」
「え……? えっ!?」
もちろん嘘だが、それぐらいしか言える事はない。
今回ばかりは悪い事しようってわけじゃないんだ、勘弁してほしい。
とにかく、初動で打てる手はこれで打てるだけ打てたんじゃないだろうか?
動画を見ながらそう考えていた、その翌日。
横浜に感染者を乗せたクルーズ船が入港したというニュースが入った。
『社長、マスクにめちゃくちゃ注文が入ってます』
「前に言った通り、一旦売り切れにして」
『はい』
そろそろ、マスクの転売対策をしなければいけない時期が来た。
俺が考えたのは、動画サイトの
『ここからは各ライバーのメンバーシップ動画にて、視聴者限定の購入リンクを提示ですね』
「そう、ファン優先、購入時にID提示で。月に一家庭五箱までね」
『わかりました……』
そんな通話の向こうで、
まぁ、マジで会議で俺が危惧した事が、ガンガン当たっていってるわけだからな。
とはいえ、俺の舵取りには社員の生活がかかってるのだ……
わざと手を抜いて、あえて見えてる地雷を踏むというわけにもいかなかった。